町の商店街は、自宅から20分ほど歩いたところにある。
 荷物が多ければバスを使うのも手だが、歩いて行き帰りすることがほとんどだ。とくに今の季節は陽射しがほどよく気持ちがいいし、まあ雨の日は雨の日で嫌いじゃない。

「ランサー行くよ」

 「あいよ」と2階から下りて来たのは常夏のアロハシャツを見事に着こなすランサーだ。左胸のポケットにはラクダのイラストが描かれた煙草がしまってある。

「俺は荷物持ちっつー了見だったか?」
「……本当にその服で行くの?」

 行きの道のりは緩やかな下り坂だ。遠くに見える海は透明度の高い日差しを反射し、万華鏡のようにきらめき踊る。その景色が意外とよかった。初夏の景色として、ひどく正しいもののように思えて悪い気はしない。

「ナスにひき肉。卵はまだあるからよし。あとは朝用の野菜ジュースと」

 指折り買うものを数えていると、吹かした煙草を咥えたままのランサーがこちらを見た。

「そんなに買うか?」
「あ、何か食べたいものある? 作れる範囲のものなら作るけど」
「俺は食わねえぜ」
「えっ」
「サーヴァントにとっての飲み食いなんざ結局は娯楽の範疇だ。わざわざおまえさんの手を煩わせるまでもない」
「ふうん? そういうもの?」

 「受肉したわけでもあるまいし」と甘いにおいの煙が浮かんではまた消えていった。






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