dc/景光 ティファニーブルーとハイヒール
「結婚式も挙げられないし、…写真すら、撮ってやれない」
やけに沈み込んだ表情で彼は言った。
─気にすることなどないのに。
「うん、知ってる」
つい先程薬指に指輪のはまった手を握ったまま、項垂れるようにしてしまった彼に、私はくすりと笑いを零した。
きっと気にしていないと告げても、彼の表情は晴れてはくれない。
それならいっそ、女の子らしく我儘を言ってやろう。
「ね、だからひとつお願い」
「…なんだ?」
「私が買うから、結婚式用のスーツ、私の前で着て欲しいな」
「え…」
「この部屋で、景光くんの晴れ姿をみせて欲しいな。写真もいらない。私だけが見るの」
ね、いいでしょ?と、普段より幾分もあざとい様子で小首を傾げてみせる。
そうすれば、景光くんは力の抜けた笑いをこぼす。
「あ、でも私はウエディングドレス着て写真撮ってきていい?」
「はは、ああ、もちろん。…スーツは俺のなんだから、俺が出すよ」
「私が景光くんに似合うのを選ぶんだからいいの。うーん、じゃあ、ウエディングドレス買ってちょうだい。私に似合うやつね」
「ああ、ヴァレンティノのドレスでも、ティファニーのアクセサリーでも、君に似合うのを」
ティファニーブルーとハイヒール
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