[忍足謙也の証言]

え? 駒沢のこと?
そんなん俺やのうて白石に聞いたらええやん……って、ちょお待て! え? 何? 何なん? もしかしてみんな知っとるん!? ホンマに!? 嘘言うたらあかんで!? 信じるで!?
ああ、まあ、確かにせやな。自分いつも駒沢と一緒におったもんな。ん? いや、そら知っとるで。ま、まあ……自分も知っての通り、いつも見てたし……。
え? 駒沢のどこが好きやったかって? な、何やねんもう! んな恥ずいこと訊くなや! どっ、どこて……言われたら……雰囲気っていうか、空気ちゅうか、オーラちゅうか……顔? いやいやいや、そら最初は顔やろ! 初めて会うた人の性格なんて見抜けるわけないやん! な、なんかこう……駒沢のことを見てたら、心臓バクバクー言うて、顔やら手やら、全身熱くなんねん!
そんで、その、あの……駒沢、俺んことなんか言うてた? ……あ、そう……。あっ、ええねんええねん! 俺が勝手に好きになっとっただけやし!
まあ、逆にそれで良かったちゅうか。うん。
ほ、ほら、白石と駒沢って、めっちゃお似合いやん。美男美女で。白石は男の俺も惚れるくらいのええ男やし。他の女ならあかんかったけど、駒沢なら渡してもええわ。って、いやいやいやいやいや、マジにとんなや! 冗談やって! これで俺までホモやったら男テニやばいやろ! せや。あの二人や。俺でさえもネタなんかマジなんか分からへんときあるわ。な。自分かてやばい思っとったやろ?
……って、なんの話やったっけ?
ああ、駒沢な。うーん、前はちょくちょくうちのクラス来てたけど、最近見とらんな、くらいにしか思ってへんかったわ。まあ、俺らも大会近いし、気ぃ使ってくれてんのやなって。うん。違うクラスの人間までそんな気にせぇへんし。……え? いや、普通、姿見えんかって、見にいかんやろ……。それストーカーやん。普通せんやろ。え? する? 自分意外と大胆やんな。まあ、人それぞれやけど。
うん? 白石? いや。別に何も言うてへんかったな……。そもそも駒沢の話は俺が訊かん限り言わ……って、もしかして白石気づいてたんかな!? ええ〜? 嘘やん……めっちゃ俺恥ずいわ……。……、ん〜……、うん、まあ、確かに……。うん。せやんな。普通、親友の好きな人と付き合ったりはせんよな。うん。って、おい。なんで彼女いないだけで白石に不憫に思われなあかんねん。自分言うこときっついな。いや、謝らんでもええねん! ただのツッコミやろが! 謝られたらほんまに俺が不憫やん!
……ああ、駒沢な。これ二回目やんな。
でもさっきも言うたけど、そんなに気にしてへんかったのや。ほんまに分からんねん。いつからいなくなったかも……え? 二週間も? それやばいのとちゃう? 捜索願とか……ああ、せやな。そら親にしてみたらせやろな。えっ。自分とこにも警察来たん? ジジョーチョーシュ、ちゅうやつか。ほんで? ほんまに警察手帳とか見せるん?
……悪い。こんなときに不謹慎やんな。ん? 白石と駒沢が一緒に帰ってたかどうか? うーん、二週間も前やんな? ちょっと分からへんわ。でも大体いっつも駒沢と一緒に帰ってるイメージあるな。せやからその日もそうだったんとちゃう? 知らんけど。
……まさか、自分白石のこと疑ってんのとちゃうやんな? 俺ら中学生やで。そんなことできるわけないやん。ああ、うん。まあ、せやんな。ちょお、テレビの見すぎやんな。悪い悪い。
と、そろそろ俺行くわ。ん? 部活。まあ、俺、これでも元レギュラーやし? 後輩の指導とかあるんよ。身体なまるし、受験勉強ばっかしとっても集中できんしな。ははは。おーきに。
え? ああ。気にすんな。こっちこそ力なれやんでゴメンな。駒沢、はよ帰って来るとええね。じゃ、またな。


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