博士に、ポケモンと話せることがバレてしまい質問攻めにされて早数時間。博士はまだまだ聞き足りないみたい。
いつの間にか時間は過ぎ、せっかくだからとお昼ご飯までご馳走になってしまい……。こうなってしまったのだからと、博士のお力になれればとなるべくきちんと答えを探していたら、それをどんどん上回る早さで質問が飛んできてもう限界が……。
ヒトカゲくんはソファで丸くなって寝ているし、腰のボールをつついて助けを求めても、しん、としていて動かない。この裏切り者!

「アナタ、こんなに引き止めたらチサトちゃんはまた昨日と同じポケモンセンターにお世話になることになっちゃいますよ?」
「えっ、ああ!もうそんなに経っていたのか!ごめんねチサトちゃん。ボクは研究に没頭すると周りが見えなくなってしまうみたいで……!」
「い、いえ!大丈夫です……!」

奥様に後光が見えた……。
きっと普段から夢中になると時間を忘れてしまうタイプなのだろう。そしてそれを奥様が止めるのも恒例なのだろう。

「あの、博士。1つお願いが……。」
「うん、なんだい?」
「今の話、ウツギ博士が本当に信頼している人以外にはしないでほしいんです。」
「……わかっているよ、チサトちゃんの持っている能力は本当に珍しいものだ。キミの安全も考えて、この話を聞いたことに責任を持つよ。」
「……ありがとうございます。助かります。」
「さてと、随分長居をさせてしまったね。ごめんよ。」
「いえ、こちらこそすみません。今日は本当にありがとうございました。いつかまた、お邪魔してもいいですか?」
「もちろんだよ!いつでもおいで。」

本当に優しい博士だ。もし灯李が進化したらちゃんとご挨拶に来よう。

「では、お邪魔しました。失礼します。」
「元気でね!楽しい旅になることを祈ってるよ!」
「はい、ありがとうございます!」
『……。』
「……?灯李?」
「ヒトカゲ!いや、灯李くん、だっけ?ボクはキミに何もしてあげられなかったからね。チサトちゃんとは上手くやれるといいね。仲良くするんだよ?」

パッと目の前が明るくなる。2、3度まばたきをして目を慣らすと、灯李が人の姿をとっていた。

「……。」
「……灯李くんなのかい?そっか、人の姿になれるようになったんだね。」
「……、驚かないんだな。」
「一応博士だからね。知っているよ。研究所の中で暮らしている子も時々見せてくれるからね。」
「……そうか。」
「灯李……?」
「お、オレ!ここ嫌いだ!オレが選ばれなくて残ったとき、他の奴らは俺を笑ったんだ!検査はなんか怖いし、……とにかく嫌いだ!だから逃げた!」
「ちょ、ちょっと灯李……!」
「でも!……お前は嫌いじゃなかった!じ、じゃあな!博士!」

灯李はバタバタと音をたてて、研究所から出ていってしまった。

「……そっか、嫌われてなかったんだね。」
「……灯李、意地っ張りですね。」
「そうだね。でも素直でいい子だ。こうしてわざわざ挨拶してくれるんだね。」
「はい。」
「チサトちゃん、灯李くんを頼むよ。」
「はい、頑張ります。では、失礼します。」
「うん、またおいで!」

博士は目元を潤ませて、穏やかな顔で手を振ってくれた。
この人がいてくれたから、灯李は意地っ張りだけど素直な彼になれたんだろうな、なんて思った。

研究所から出ると玄関のすぐ横に、灯李は壁にもたれかかって立っていた。
「博士、嬉しそうだったね。」
「……。」
「また、ご挨拶に来ようね。」
「……おう。」
「……ん〜!だめだ我慢出来ない!灯李、挨拶出来て偉かったねぇ〜!」
「ばっ、やめろ!ぐちゃぐちゃになんだろ!ああもううぜぇ!!」

素直な彼が真っ直ぐ大きく強くなれるよう、いい旅をしたいな、なんてね。

「ほら、出発するよ!」
「お前が頭ぐちゃぐちゃにしたからだろ!」
「しりません。あとまたお前って言ってる!さっきは名前で呼んでくれたのになぁ?ねえ、もう1回呼んで?」
「知らねぇよ!」

海からの風が大きな風車を回している。とても平和で、のどかだ。
ワカバタウン。若葉マークのトレーナーが飛び出していくにはピッタリの町なのだろう。
私もここから新たな1歩を踏みだそう。







「なんて、上手くいくと思った?チサトちゃん。……迎えに来たよ。」


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