【急募】この感情はなんなんだ


※現パロ。ゲーマーなロー注意。


おれは恐らく、というか確実にネトゲ廃人だ。
仕事はしてるものの空いた時間はオンラインRPGに時間を費やしている。勿論恋人は居ないし欲しいと思った事がない。

(今日からイベントが始まるってのに…)

かなりイライラしながら他人のミスの尻拭い。休日の前の日に限ってどうしてこう速やかに帰れないものか。
鬼のような気迫でキーボードを入力していたら後ろや横からヒッと小さく悲鳴が上がった気がするがどうでもいい。それどころではない。

「お疲れ様です、トラファルガーさん」

同期だが一定の距離を保つ地味な女、リンドウがコーヒーをおれの机に置いた。

「あァ…すまねェ、助かる」
「いえ、ついでなので」

淡々として必要以上の距離をとらない彼女は好きでも嫌いでもなく、大した接点もない。時折このようにコーヒーを淹れてくれるぐらいだ。
リンドウの淹れたコーヒーを飲みながら残りの仕事に取り掛かる。



思いの外早く仕事は終わり、日付が替わる1時間ほど前に自宅に着いた。
さっさと入浴と食事を済ませ、ゲームを始める。

「イベント限定のアイテムめちゃくちゃ使えるじゃねェか…」

ゲームの中でのおれの職業は回復職。
物理か魔法かでいうと魔法に分類されるおれにとってどうしても取っておきたいアイテムだった。
しかし今回のはボス討伐。前回のは交換用のアイテムを集めて交換するシステムだったが今回はボスから直接ドロップするしか方法がない。
あとはゲーム内の通貨でプレイヤー同士でやり取りをするか。後者のこの方法は詐欺も多い為信用ができる相手としかできない。

「あー…パーティ募集はいくつか出てるが…」

タイミング悪くおれの職業の空きがない。
仕方なく自分でパーティを募ることにした。

今日から始まったイベントなのもあってすぐに人が入ってくる。
現実での人間関係よりネットでの人間関係の方がいくらか楽だと感じる。簡単に挨拶をし、残りの人数を募る。

…残る1人は火力枠となった。火力は確かやや人口が少ないのと、ボスによっては不適正なのもあったりする。だが今回はイベントのせいかバランスの取れたパーティであれば攻略・周回もできそうだった。

「お、来たな」

募集していた火力枠のプレイヤーが埋まる。
Nover、という人だ。

「どういう意味なんだ…?」

挨拶ついでに聞いてみるか。

Dr.H:Noverさん、よろしくお願いします。ちなみにNoverという名前はどこから?

…Dr.Hとはおれのことだ。
それにいきなり名前の由来聞くとか失礼だったか?

Nover:Dr.Hさん、よろしくお願いします。11月生まれなので11月の者という単語を勝手に作って名前にしました。

おぉ、律儀に返事が来た。そして誕生日ときた。初対面(対面はしてないが)の相手にいきなり個人情報を出すのに危機感はないのか?

Dr.H:そうだったんですね、いきなり失礼しました。そんじゃ、行きますか。
Nover:お手柔らかにお願いします。

「すごい淡々としてるな…」

しかし冷たさは感じなかった。


結局この日はアイテムがドロップしないまま終了したが、火力のNoverというプレイヤーはかなり鍛えられていて周回のテンポが非常に良かった。これは次回以降もタイミングが合えばお願いしたい、とフレンド申請を申し出ると良い返事を貰いフレンドになった。



それからというものNoverと少しずつゲーム以外の雑談での会話をするようになった。
女性であること。社会人でOLらしいこと。ゲームが趣味でずっと生きてきたこと。
おれは彼女の話を聞くのがなんだか楽しくなっていた。

そしてある日、

Nover:Dr.Hさん、オフ会とかしてみませんか?

仲良くなってはいたがまさかここまでになるとは。警戒心はないんだろうか?

Dr.H:良いな。じゃ〇〇はどうだ?

おれはタメ口だが彼女は落ち着かないので敬語だという。

Nover:では〇〇にしましょう。職場の近くで分かる場所なのでありがたいです。

職場…おれと近いんだな。

それぐらいにしか思わなかった。
詳しい日程を決めて、いざ会うまでは。

「…トラファルガーさん」
「リンドウ…」

そう、会社の適度な距離を保っていたリンドウだった。信じられねェ。
しかしゲーム内とは言え多少話していたので負の感情はなかった。とにかく驚いた。なんせ職場と全然雰囲気が違った。

「なんというか、雰囲気違うな」
「職場の人にはよく言われます。変ですか?」
「おれは女の服には疎いが、似合ってると思う」

思った事を伝えただけだが、リンドウは頬を染めていた。

何故かおれの胸がザワついた。



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Dr.H=キャラソンより

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