soda summer!


※学生パロ

「あっつい…」

夏休み。私はコンクールに出す絵を仕上げるためキャンバスに向かっている。
今日も例に漏れず真夏日で汗がたらりと垂れる。鬱陶しいったらない。

「ここに青入れようかな…うん、良いかも」
「ブツブツ言ってるねぇ。どう?調子は」

同じ美術部の友人から声をかけられる。

「まぁまぁかな〜。そっちは?」
「少し早いんだけど、もう完成したのよね。見てくれる?」
「さすがだね!見たい!」

友人は絵を仕上げるのが早い上に素敵な絵を描く。仲良くしてくれて尊敬している人物でもある。
今回の絵はまさに今見えてるような夏の空に入道雲、海と砂浜が描かれて、遠くの方に人の後ろ姿が描かれていた。金髪の…男の人?

「もしかしてこれ…」
「そう!サンジ!」

サンジくんは友人の彼氏だ。友人は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑っている。

「彼氏とはいえ絵にするのまずかったかな?」
「そんな事ない!こんなに綺麗なのに!」

海と空の青色と彼の金髪のコントラストがとても良い。今感じてる夏の暑さを絵からも感じられるようなものがある。

「良いなぁー…彼氏…」
「早くミヤビも好きな人作りなよ!」
「うっ…そうだね、まずはそこからだよね…」

実は誰にも言ってないけど好きな人は居る。
剣道部のロロノアくんだ。ほとんど話した事ないけど、かっこいいなって自然と目で追ってしまう。
自分なんかが、って思っちゃってこの仲のいい友人にすら未だに打ち明けられずにいる。

「それにしてもあっついね!」
「本当だねー…ね!絵の完成祝いにジュース買ってきてあげる!」
「いやいや悪いよ!それにミヤビはまだ途中じゃん?むしろ私が買ってくるよ」
「私もちょっと休憩したいから良いの!何が良い?」
「じゃあお願いしようかな…オレンジジュースかリンゴジュースが良いな」
「分かった!行ってくる!」

私はお財布を持って美術室を出る。

自販機の近くに剣道部が普段練習している道場がある。覗いたりなんて全然できないししようと思わないけど、運が良いと休憩しているロロノアくんに会えたりする。
…と、噂をすれば自販機の前に緑色の短髪。ロロノアくんしか居ない。
後ろ姿もかっこいいなと思ってたらパッと私の方に振り向いた。

「お前…リンドウだよな、美術部の」
「う、うん」

私の名前覚えてたんだ。驚いてちょっとどもっちゃった。

「良い所に来たな、これ貰ってくんねェか」

渡されたのは透明の炭酸…サイダー。

「気まぐれで買ったんだが甘くてよ…いらなかったら部活の奴らにやるから無理はすんな」
「ちょうどサイダー買おうって思ってた…ありがとう」

嘘じゃない。これだけ暑いから冷たい炭酸でスッキリしたかった。ロロノアくんも同じ考えだったのかもしれないけど味の好みには合わなかったらしい。

サイダーは受け取ったものの私はまだ友人の分の飲み物を買っていない。自販機を見てるとまたしても低めの声が降ってくる。

「他にも買うのか?」
「あ、えっと、友達の分を…」
「どれだ」
「リンゴジュースにしようかと…えっ」

さっさとお金を入れて迷わずボタンを押すロロノアくん。ごとん、と取り出し口に目当てのものが落ちてきた。

「ロロノアくん、お金、」
「気にすんな」
「でも」
「良いから。なァ、今も絵描いてンのか」
「描いてるよ。まだ終わりそうにないけど…」
「…今度…いや、なんでもねェ」

どうしたんだろう。ロロノアくんが歯切れが悪いなんて珍しい。

「ロロノアー!再開するってよー!」

道場の中から声がした。

「悪いな、もう行かねェと。部活頑張れよ!」

ニッと笑った彼のいい笑顔。それは彼が仲のいい麦わら帽子の友達に向ける笑顔のようだった。
キラキラして、弾けるような笑顔。
私は考えるよりも先に言葉を掛けていた。

「ロロノアくんも!頑張って!」
「!おう!」

笑顔で応えるロロノアくん。目で追ってるとかそんなんじゃない、もっとたくさんロロノアくんのことを知りたいと思った。

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