いざ行かん河川敷!
その夜、雪女は机の上の古ぼけたノートとにらめっこしていた。


「そういえば俺……小学生の頃イナイレに憧れて技を作ってたんだよな。」
「まぁ、そのノートを後生大事に持ってた俺も俺だけどさ」


考えたはいいが、絶対に出来ないと思い知っていた技。


「(……あっちは超次元サッカーなんて、絶対出来ないもんな。)」



ミミズがのたくっているような字(でも何とか読める)と、雑な絵で描かれた技。
雪女はそのノートと彰人の写真立てを前に、小一時間ほど悩んだ。


「……練習、してみっかな。せっかくトリップしたんだし」


そう呟くと、雪女は彰人の写真立てを手に取る。


「なぁ兄ちゃん、もし俺がやばくなったら……吹雪とアツヤみたいに入れ替わってくれるか?」
「……ふふ、なーんてな。」


雪女は苦笑いしながら、そっとペンダントを外す。
すると、エターとレジェが雪女の膝元に上って来た。


「……みゃー!」

「お、エター。俺のこと応援してくれるのか?」

「にゃあん!」

「おっ、レジェもか……ありがとな!」
「「にゃーっ」」




雪女は、そっとエターとレジェを抱きしめた。










……そしてその夜。

美幸と正義が眠ったあと、雪女はこっそり家を抜け出して
サッカーボールとノートを片手に、河川敷へと走って行った。

走っていく最中、雪女の持つ懐中電灯の揺らめきと、街灯の少し頼りないちかちかとした光が
雪女の体を照らしては消えていく。


「(……よし、この辺でやってみるか)」


ベンチの上にノートを開いて置き、雪女はサッカーボールを蹴り始めた。




……そして長い時間が足ち、町から少しずつ明かりの消えていく時間になっても、
雪女の必殺技は、ひとつも出ることはなかった。





「……はっ、はあ……っ……クソっ……ぜんっぜん、できねぇ……」




どれだけ息を切らしても、足にいくつもの小さい内出血が浮かんでも、必殺技が出る気配すらない。
疲れ切った雪女はぺたりと地面に座り込み、ぜえぜえと切れた息を整えた。



「フーーー……」



·····何やってるんだ、俺は·····

出来るかどうかも確証のない事に時間を使ってる暇はあるのか?それよりも、他に出来ることがあるんじゃないのか?

そんな考えが何度も頭をよぎる。
それにうんざりした雪女は頭をがしがしと掻くとそのまま勢いよく後ろに倒れ込んだ。


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