押され押されて気概は折れた
……超次元サッカーって、アレだよな?




足から炎出してシュートしたりとか、

分身してドリブルしたりとか、

手からでっかい手ェ出して、ゴッドハンドー!とか叫んじゃう


アレだよな?






まぁ確かに俺はガキの頃、
元いた世界で必殺技のマネくらいはしたことがあるけど、もちろん出せるわけもなく。

「やってみたいやってみたい」と、今まで散々言ってきたわけだが……




「(実際にできるとなると……なんかすっげぇ複雑な感じがするなぁ……)」




……そんなことをぼんやり考えつつ、気づけばもう放課後。

雪女は緊張の連続だった一日を終えてホッと胸を撫で下ろし、
帰る支度を終えて、外に出……られるわけはなく。



「……だーかーら、火月!サッカー部で俺と一緒にサッカーやろうぜ!!」




……雪女は、円堂の「サッカーやろうぜ」攻撃を何度も食らっていた。


「……えー、やだ」


雪女はため息を一つついてそう言い、
自分の下駄箱から靴を取り出す。



「だって帝国と試合すんだろ?悪ぃけど俺、サッカーはかじる程度しかやったことねーぞ」



本当に今更だが、帝国戦の前にトリップってのは超次元サッカー初心者にはレベル高すぎやしませんかね?

そんなことを思いつつ円堂の方を見れば、眉を下げた困り顔でまたこう誘ってきた。


「火月!!頼む!!サッカー部に入ってくれ!!!」
「明日の試合に、サッカー部の存亡がかかってるんだよ!!」

「なぁ円堂、お前俺の話ちゃんと聞いてるか?……だーかーら、そんな急に言われても困るんだよ!」

「……で、でもさっ、お前さっきサッカーかじってたって言ったし、お前は男らしい良い体格してるし!選手として申し分ないぞ!?」




……ピクッ。




円堂が発した「男」と言う単語に、雪女の耳が反応した。



「……円堂……誰が、男だって?」

「な、何言ってんだよ……お前、男だろ?」



「俺は女だぁあああああ!!!こんな格好してるけど女なんだよ!!!!」



雪女は、なるべく円堂だけに聞こえるような声でそう叫んだ。


「(こんなに反応するのもアレだけど……だって俺、本当に女だからな!)」


憧れのキャラにまで男認定されるとは思ってなかったよちくしょう!!



「(そういや円堂って、変に鈍感なところあったよなァ……)」




雪女が女という事実を知り、円堂は驚きのあまり目を見開いた。


「えっ!?お前……女、なのか!?」

「そうだよ……なんか、文句でもあるのかよ?」



……しかし雪女は、胸は男並みにぺったんこで、
お世辞にも女の子っぽいとは言えない、きゅっと引き締まった二の腕と太もも。
そして極め付けに、イケメンな顔立ちのセット。

雪女は、誰がどう見たってパッと見は男子。
よほど勘が鋭くないと、初めて会った人が間違えるのも無理はなかった。


「……女子はサッカー、できないんだろ?」

「うっ……」


雪女は何か言いたそうな円堂の頭をぺしっと軽くはたいて、
円堂をなんとか黙らせる。



「円堂、悪ィな。」

「……俺、火月とすげぇサッカーしたい。」



しかしまだ、諦めのつかない顔と目で見てくる円堂に





……雪女は、ぽきりと折れた。




「あーもう!……わーったよ!俺が折れりゃいいんだろ!」

「!!」

「お前の熱意にゃ負けたよ……俺はこんなカッコだし、しばらくは女子ってバレねーだろうから、サッカー部員として活動してやってもいいぜ?」

「!」



雪女がそう言うと、円堂は飛び切り嬉しそうな笑顔になった。


「笑顔って事は、入部してもいいんだな?」

「……もちろんだ!雪女、こっちに来てくれ!!」



そう言うと、円堂は心底嬉しそうに雪女の手を引いて思いっきり走り出した。



「……わっ、ちょ、おまっ!?」

「こっちだ!」




そしてサッカー部、部室前。



「氷月、ここがサッカー部の部室だ!」

「は、はあ……はぁ……ゲホッ」



……あっ俺、円堂の脚力舐めてた。
ゴールキーパでもあんだけ早く走れるとか、さすがだぜ……



「それで、俺達はフットボールフロンティアに……」

「……ぜー、はー……」



円堂に手を引かれ、全力で走った雪女はいまだに荒く息を切らしていた。
そのため、円堂の嬉しそうなサッカー部の解説もなかなか耳に入らない。

……すると、部室から出ようとしていた秋が円堂に気付いて声をかけた。



「円堂くん!」

「……おっ、秋!」

「そんなに嬉しそうな顔をして、一体どうしたの?」

「サッカー部に入部してくれるって奴を連れて来たんだ!」


秋はそれを聞くと、いまだに息切れしている雪女を見つけて駆け寄った。
そして円堂の「入部」と言うその声につられてか、ぞろぞろと他の部員も部室から出てくる。


「……入部希望?」

「誰でヤンス?」


染岡、壁山、栗松、半田……
生の雷門イレブンを目の前にして、雪女の頬が少し緩んだ。


「円堂、そいつは……?」

「雪女って言って、今日転校してきたんだ!」


円堂が笑顔でそう言うと、少し息が落ち着いて来た雪女は、
すうっ、と息を吸い込んで一呼吸。


「えっと……さっき円堂が紹介してくれたけど、俺は火月雪女。」
「今日からサッカー部員……って事になんのかな、やっぱし。」

「ん?当たり前だろ、火月!」



……うわあ円堂の笑顔眩しい。
言葉で表すとしたら、太陽を裸眼で見てる気分。


「火月さん……すごく息を切らしてるけど、大丈夫……?」

「あ、あぁ、なんとか……(あー、秋ちゃんの優しさが凄い身に染みる……)」

「あっ、自己紹介してなかったわね……私は木野秋。これからよろしくね、火月さん!!」

「こちらこそよろしく。……あと、苗字じゃなくて雪女でいいよ。」

「いいの?じゃあ……雪女くん!」

「ん、オーケー。……みんなも、俺の事は苗字じゃなくて雪女って名前で呼んでくれ、な?」



そう言うと、雷門イレブンのみんなが笑顔になった。


「よっしゃ!今日からサッカー部員として頑張るぜ!!」

「え、えーと、それなんだけどな……」

「あのね……雪女くん。本当はね、冬海先生にちゃんと入部届を出さないとダメなの……」

「……え゛、そうなのか?」

「……まあ、体験入部って事にしといてくれ!」

「う、うん……」



なんとなく出鼻を挫かれた気もするが、気にしない気にしない!


……結局、その日は部の事をいろいろ教えてもらったり、雷門イレブンのメンツと話をして仲良くなったりして過ごした。




そして、帰り際に円堂から「明日は絶対来てくれよな!!」としっかり念を押され、雪女は(仕方なく)頷いた。


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