ハロー、非日常!
『朝起きたら別世界でした』



……なーんて、よくありふれた小説の中だけだと思ってた。



それにもし、「仮に」それが起きたとしても、
“絶対に”「それを体験するのは自分じゃない」と思ってたから。




……でも、世の中に“絶対”って言葉は無いんですねよくわかりました。





まあ、戻れないもんはどうしようもないし……つーか、戻る気もさらさらないし。





取り合えずしばらくこの世界で
様子を見てみようと思いました、まる。












……俺の諦めていた夢、もしかしたら……叶えられるかもしれない。
















ピピピッ……ピピピピピッ……



目覚まし独特の無機質なアラーム音が、部屋に大きくこだまする。



ピピピッ……ピピピピピッ……



猫がたくさん描かれているモノクロカラーの毛布にくるまって
ぐっすり眠っていた雪女は、そのアラーム音で目を覚ました。



「……ん〜……うっせぇ……なァ……」



アラーム音を止めるために眠くて重い体を動かして手を伸ばし、目覚ましを半分カンと手探りで探す。



「……ここ、だっ!」



振り下ろした手はうまく目覚ましのボタンをかちりと押し、うるさかったアラーム音を止める。

雪女はアラームを止めると寝ぼけ眼をこすり、ゆっくりとベッドから体を起こした。



「ん……あれ……?」



そして次第に眠気が覚めて頭がはっきりしだすと、雪女は首を傾げた。



「……俺、昨日の夜に目覚ましなんてセットしてないぞ……?」



セットしていないはずの目覚ましがさっき鳴ったことに、雪女は驚いて時計を見つめた。



「おっかしーなぁ、休みで昼まで寝る気だったから目覚ましなんてかけないはずなのに……」


顎に手を当て、うーんと考え込む雪女。
でも、また襲ってくる眠気が勝って次第にそんな事がどうでもよくなり……



「まあいいや、もっかい寝よ……」



二度寝しようと決め、もう一度布団に体を沈める。



……しかし、次の瞬間。



「雪女!!朝だぞ!!起きろぉ!!」



ドアを開けるスパーン、という軽快で大きな音とともに、美幸が部屋に入ってきた。


「ふぁっ!?」

「雪女、いつまで寝てんだ!」

「いつまでって……え?は?何のこと?」

「ハァ……まーだ寝ぼけてんなお前?」

「いや、だからマジで何のことだよ、母さん?」

「……お前、転校初日に遅刻する気か?」

「……転校、初日?何言ってんだよ、今日は休みじゃ……」


雪女が眠たそうにあくび混じりでそう言うと、
美幸は「何を言ってるかわからない」とでも、言いたそうな顔をした。



「お前こそ、何言ってんだ?」

「……は?」


「俺たち全員、先週稲妻町に引っ越してきたじゃねーか!」
「……で、雪女は転校で今日から雷門中に行くんだろ?」








「……」









「はあああああああああ!?」









その言葉を聞いた瞬間、今までの眠気が嘘のように覚めた。

そして雪女はベッドから飛び起き、ベッドの隣にある窓を開けて家の周りを見わたす。


すると……
家も、家の中の構造も特に変わってはいなかったが、
家の周りのの景色は、寝る前と全く違っていた。




「(え!?はぁ!?どういう、事だよ……!?)」




家のすぐ前にあった個人店も、家の斜め前にあった小さな公園も無くなっていて、
前の少し寂れた田舎の風景から、都会の住宅街のような景色に変わっていた。



……しかも雪女はこの景色に、嫌という程見覚えがあった。






「(ここ……稲妻町だ……!!)」






驚いて目を見開いたままで外を見る雪女を心配し、美幸が声をかけた。



「おい……本当にどうしたんだよ、雪女?緊張して変な夢でも見たのか?」

「え、あ、うん……そんな、とこ……」

「そうか……まあ急に引っ越しして転校するんだもんな、緊張するのも無理ないよな」


そう言うと、美幸は雪女を撫でる。


「まだ時間に余裕あるから、着替えて降りて来いよ。昨日制服にアイロンかけてクローゼットに入れておいたから」

「……わかったよ、母さん。ありがとう」

「じゃあ俺、朝飯作りの続きするから降りるぞ?」

「う、うん……」


そして美幸が下に降りた後、雪女は部屋をぐるりと見渡した。



「マジか……寝る前とは、部屋に置いてある小物の配置が少し違う……何か見たことないものも増えてるし……」


棚の上に置いてあったはずの猫型の置き鏡は、机の上に。
ドアの脇にあったはずの猫ベッドも、ベッドのそばに移動していた。

気づけば、『フットボールフロンティア』の文字が描かれたポスターや、
イナズママークが刺繍で縫い込まれた観賞用のサッカーボールなど、
前には部屋になかったはずの小物もいくつか増えていて、雪女はさらに混乱した。



「……どういう、事なんだ?」



「ここって、もしかして……本当にイナズマイレブンの世界なのか……!?」



雪女は自分の想像範囲を超えた出来事に頭を抱え、うんうんと唸り始める。



……まぁそもそも、「朝起きたら異世界」なんてどこぞのファンタジー小説でよくあるような体験を
自分が体験するとは微塵も思っていなかったわけで……完全に頭が混乱していた。



「あー……なんかもう、混乱しすぎて頭痛くなってきた……」



その時、雪女はぐらりとバランスを崩して倒れそうになり、近くにあった机に掴まった。

すると机の上に置いてあった置き鏡に映った自分と目が合う。
それを見た瞬間、雪女は驚きのあまりか目を大きく見開いて、鏡をガッと掴んで引き寄せた。




なぜなら……





……鏡に映っていた顔は、昨日雪女が見た「漫画顔の自分」になっていたからである。





「昨日のは、夢じゃ……なかったのか……?」





鏡にひびが入りそうなほど力強く掴むその手は、ガタガタと震えていた。


白銀色でふわふわしていて、頭のてっぺんはぴこっと触角のようにはねている髪の毛。

普通ではありえないほど蒼くて、サファイアのように綺麗な目。

目の下の、見慣れた傷跡。







これは、俄然と信憑性が増してきた。





(……まぁ正直、まだまだ信じることができないんだけど。)

















……どうやら俺は、信じられないことに……



世間で言う「異世界トリップ」をしてしまったらしい。



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