ボーダー本部のノントリオンルーム、そこで迅は模擬戦をしていた。
相手は名高いキャンサー隊の現隊長、三谷アレクシア。
ボーダー隊員であれば誰もが知っている有名人で、実力派エリート・迅悠一の恋人としても有名である。



·····そして、風刃がアレクシアのトリオン体を引き裂く音がノントリオンルーム中に響き渡った。


「うっそ·····!!アタシが負けるとかマジぃ!?」

「·····っは、マジか!!」


10本勝負、最後の1試合。

今まで何戦も無敗で押していたアレクシアが、
·····その時初めて、迅に負けた。


「ママぁ、ごめん!!ママが居るのに油断しちゃったー!!今まで悠一に負けたことなかったのにぃーー!!くーーやーーしーーいーー!!!」


ひーん、と半泣きのアレクシアはすっぱりと切れているトリオン体を気にせず、黒トリガーを撫でながら地面に横たわったままでじたばたと駄々をこねる子供のように足をばたつかせた。


「初めて負けた気分はどーよ、アレクシア」

「·····めっちゃ悔しい」


ずび、と鼻をすすりながら起き上がったアレクシアはぐいっとその涙を拭ってから換装を解く。
そして、そのままぺたりっと床に座ってしまった。
その顔は「不貞腐れています」とありありと主張しており、その様子に苦笑しながら、迅もまた生身の身体へと戻る。


「ほら、不貞腐れてないで立った立った。おれはお前に言わなくちゃいけない事があるんだからさ」

「·····?」


迅がぽんぽん、と頭を軽く叩いて促せば渋々と立ち上がるものの、やはり納得いかないのかアレクシアの頬はまだ膨らんだままだ。
そんな彼女に小さく笑ってから、迅はその手を取って歩き出し、ノントリオンルームの中央に誘導する。
そんな迅に、アレクシアはずっと頭に?を浮かべていた。


「·····ねぇ悠一、ちょっと·····」


アレクシアがそう言おうとした瞬間、迅はアレクシアの前に跪いて、隊服のポケットから箱のような物を取り出した。
·····それは、サイズ的にどう見ても指輪を入れるための箱で、まるでこれからプロポーズでもするような光景であり、その場に居合わせてしまった観客達は思わず息を飲む。

しかし当人達は全く気付いていないようで、迅は指輪の入っている箱を開け、そのまま口を開いた。



「前にした約束通り、おれと結婚してください」



·····まさかの公開プロポーズである。しかもボーダー本部で。


アレクシアは以前、迅と「おれがお前に勝てたら結婚してくれ」と約束を交わしていたが本気にはしておらず、まさかこんな場所で公開プロポーズすると思わなかった面子は唖然としていたが、言われた本人はきょとんとした表情のまま固まってしまっている。情報過多すぎてフリーズでもしているのだろう。

その時、アレクシアの黒トリガーである「サジタリウス」がまるで「早く返事しなさい」とでも言うようにちりん、と小さく鈴の音のような音を鳴らした。
それにハッとして我に帰ったらしい彼女は慌ててこくこく、と首を何度も縦に振る。

それを見た迅はほっと安堵のため息をつくと、指輪の入った箱を開いて中に入っているシンプルなデザインのシルバーリングを取り出すと、それを彼女の左手薬指へ嵌めた。

その様子を見ていたギャラリー達からはおぉ〜!という歓声が上がると同時に拍手が巻き起こる。
だが肝心の本人はあまり実感がないらしく、未だぽかんとしている。

それもそうだろな、と思いつつ、迅は立ち上がって彼女を抱き締めると耳元で囁いた。


──やっと手に入れた、もう離さないぞ、と。


ようやく状況を理解し始めたアレクシアはぶわりっ、とそのオッドアイの瞳に再び涙を溜めたが、すぐに笑顔になってぎゅうぅっと抱きついた。
それから2人は見つめ合い、どちらともなく唇を重ねる。
その様はとても幸せそうなもので、見ている者達まで幸せな気持ちになるようなものだった。

·····そしてこれは「ボーダー初の公開プロポーズ」としてしばらくボーダー内のいい話のネタになったという。
ちなみにこの日を境に迅とアレクシアは左手の薬指に指輪をつけ、ボーダー内でイチャイチャする姿が目撃されるようになったとかならなかったとか。




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迅さんとアレクシアのプロポーズのはなし。
ちなみに力也はこれを真似して栞に告白したとかしてないとか·····

20211231


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