はじまりとひずみ
・・・ここはBABEL。
超能力者が多く集まるこの場所に彼女はいた。
パタン
「面白かった♪やっぱナルトはカッコいいってばよっ!」
ナルトの単行本を手に、嬉しそうな表情をする少女。
この少女こそが、この話の主人公。
「・・・はぁ、ナルトと一緒に任務とかしてみたいなあ・・・」
そう彼女が呟くと、
彼女の友達である薫達が現れた。
「ヨウちゃん!」
「・・・あれ?またその漫画読んでたのか?」
「あ、薫!それに葵、志穂も!」
「ヨウ」と呼ばれた少女は、
金色の綺麗な髪の毛を揺らして、薫に笑いかけた。
「その漫画面白いのか?えーと・・・何だっかな・・・?」
「「NARUTO」だよ!凄く面白いんだってー♪」
「そうか。面白そうだし、あたしも今度読んでみるよ!」
「ところでヨウ、皆本はんが呼んどったで?」
「えっ、何だろう?呼び出されるような事やってないケド・・・?」
「・・・何か、新しいリミッターとかレベルの限界だとか、何とか言ってたけど・・・。」
「何にしろ・・・早く行ったほうがいいわよ。」
「せやね!さっさと行ったほうがええで、ヨウ!」
「うん・・・ありがと。行ってみるんだって!」
・・・私は、その時気づかなかった。
まさか、「あんなこと」が起きるなんて・・・
「・・皆本、ヨウちゃんは・・・」
「あぁ・・・ヨウは確実に、ESPのせいで、すべての細胞が異常に変化している!」
「傷ついても、驚くべきスピードで回復するし、傷痕も残らない・・」
「それは、つまり・・・」
そう言うと、皆本はカルテを握りしめて
悔しそうにこう呟いた。
「この状態を簡単に言うなら・・・不老不死と言う言葉が一番近いだろうな」
「不老不死・・・」
「くそっ、どうしてヨウだけにこんなESPの影響が・・・!!」
「・・・本当に、ESPだけなのか?」
「えっ?」
「その不老不死のような状態になった理由が、ESPだけとは・・・とてもじゃないが考えにくい」
そう言うと、賢木は口元に手を当て、
何かを考えるそぶりをした。
「俺のように生命活動をコントロールすれば、確かに不老不死になれるかもしれない。」
「・・・だが、それには途方もない力が必要なはずだ。まだ幼いヨウちゃんに、そんな力が出せるわけがない・・・」
「どういう意味だ?賢木・・・」
「俺は、ヨウの腹にあるあの黒い模様に何か秘密があるんじゃないかと踏んでいる」
「黒い、模様・・・」
「・・・皆本、何の用事だろ?この前受けたESP検査の結果かな・・・?」
「あーあ、このお腹の変な模様のことだったらどうしよっかな。」
私のお腹には、生まれつき変な黒い模様がある。
こすっても洗っても消えないし、タトゥーか何かだろう、って皆本は言ってたけど。
私の家は赤ん坊の私にタトゥーを彫るほど
荒んでいたのかな・・・。
・・・まあ、家族のことなんて全く覚えてないけど。
私は捨て子で、
生まれたての赤ちゃんなのに、山の中に捨てられていたらしい。
そのころから、少し超能力があったから、
そのせいでって言われてるけど・・・
大きくなるにつれてレベルも能力も上がって、
薫達以外からは、ノーマルはもちろん、
同じエスパーの子からも避けられるようになった。
・・・考えてたらバカらしくなってきた、さっさと行こう。
ヨウ・・・ヨウ・・・
その時急に聞こえてきた、優しい女の人の声。
「ふぇっ!?だ、誰なの!?」
目の前じゃ・・・ヨウ・・・
そう言われて、バッと目の前を見る。
そこには・・・
「!」
ヨウの目の前に居たのは、
それはそれは、とてつもなく美しい女性だった。
しかし・・・普通の人と違う部分を挙げれば、
まるで花魁のように綺麗な着物を着ていて、
狐の耳としっぽがついている、という事だった。
「えっと・・・あなたは・・・誰?」
「わらわは、玉藻・・・人はわらわを「九妻」と呼ぶぞ」
「・・・た、たまも?」
「陽妃、わらわと共に来るのじゃ」
「え、どこへ・・・って、ええっ!?」
次の瞬間、
玉藻と言う綺麗な女性は、私の手を思い切り引っ張って、
真っ暗な変な空間へと引き込んだ。
次の瞬間、悲鳴が出せないほどの痛みが、私を襲った。
体はぶっ壊れそうなほど痛むし、
「何でこんな事に!?」という思いとか、
「いつものテレポートと違うな」とかいうバカな考えが、頭をくるくると巡る。
そして最終的には、痛みで気絶した。
「ひっ・・・く、ひっく・・・」
玉藻が、泣いてる・・・?
手で顔を覆い隠して、悲しそう・・・
「どうしたの?・・・どうして泣くの?」
「わらわは・・・わらわは夫に会いたいのじゃ・・・」
「夫・・・?」
そう私が呟くと、玉藻はこくんと頷いた。
「遠い昔に生き別れになった夫に、会いたい・・・会いたいのじゃ・・・」
そう言うと、玉藻はまた泣き始めた。
青色のオーラみたいなものを纏って、玉藻は泣き続ける。
次の瞬間、まるで映画のように
目の前に移る景色が変わった。
そこは真っ暗な洞窟で、中はまるで戦場のように荒れ果てていた。
そして目の前には玉藻と、
燃えるような赤い髪の男性と、私の髪の色と同じ金髪の女性が立っていた。
女性と男性は体の半分以上をゼリー状の水に包まれ、
玉藻は宙に浮いた扉の前で、鎖でぐるぐる巻きにされていた。
「ぐああああああ!!・・・ビゼンめ、クシロめぇえええ!!」
「・・・大丈夫か、ビゼン!君は出産したばかりなんだよ!?」
「大丈夫よ、クシロ!これでへこたれてたら火影の妹の名が泣くわ!!」
・・・あれ?
あの2人・・・どこかで、見たような顔してる・・・
そしてまた、景色が変わる。
「・・・これで終わりよ!異世界に飛びなさい!」
「くそっっ・・・お前たちに復讐してやりたいが、体が動かぬ・・・」
「せめてわらわが封印されるこの赤子に呪いをかけてやる!」
「なっ・・・」
「この赤子はこれから行く世界で最強の力を手にするであろう。」
「・・・だがその力のせいで恐れられ、ずっと孤独に苦しむのじゃ!」
そしてそう言い放った次の瞬間、
また景色が変わった。
二人とも、ゼリー状の水にすっかり体全体を包まれていた。
狐の女性はいなくなっていて、周りも静かに。
その時、女性がぽつりとつぶやいた。
「クシねぇ・・・お兄ちゃん・・・」
「・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
「この腕で・・・もう一度・・・」
そして彼女は涙を零したが、
すぐに周りのゼリー状の水に吸い込まれた。
・・・どうして、みんな泣くの・・・?
そう思ってヨウが涙を流したその時、目が覚めた。
・・・で、目が覚めたら・・・
そこは、見慣れたBABELの廊下じゃなくて、
来たことも見たこともない、わっさあと生い茂る森の中だった。
「・・・え?」
・・・何これ、笑えないんだけど。
狐のおねーさん・・・えーと、玉藻だったかな・・・に手を引かれてテレポートして、
いつの間にかここに居るわけだけど・・・
・・・ここ何処ですか。
あれー、おっかしーなー、
私、自分でこんなところにテレポートした覚えないぞー?
「・・・というか、ここ日本?こんな森・・・見たことないんだって」
気を失っていた時に服に着いたであろう土を払いながら、
私はそう呟いた。
「はー、それにしても・・・出動後だったから制服じゃなくてよかった・・・」
制服は(薫の趣味で)ミニスカだから、動いたらパンツ見えそうで怖いし。
今の格好は、ショートパンツにパーカーといった動きやすい服装。
・・・不幸中の幸いって奴だって。
「・・・とにかく、何とかしないとやばい気がするんだって!」
そう言って、後ろを振り向いた瞬間。
シュッ、と音を立てて
私の頬近くに、何かが飛んできた。
そして同時に、私の自慢の金髪が少し切れて、
ぽさ、と軽い音を立てて落ちる。
「・・・え?」
恐る恐る後ろを振り返ると、
飛んできたものは、なんときれーに研がれているクナイ。
あ、あぶねええええええええ!!!!
・・・あ、あと数センチで当たるところだった・・・っ!!
ありがとう、私の髪!私の代わりに犠牲になってくれて!
・・・って、違う違う!
「・・・な、何でこんなものが急に飛んできたんだって!?」
オロオロしていると、後ろから男の人の声が響いた。
・・・あと、男の子の声も。
「・・・動かないでー、次は当てるよ」
「カカシ先生、クナイはやりすぎだってばよ!」
・・・「だってばよ」?
勢いをつけてまた後ろを振り向くと、
そこには、ナルトとカカシ先生、
しかもサクラちゃんにサスケまで居た。
「(・・・なっ、カカシ班全員居る・・・ッ!!)」
一瞬、また意識を失いそうになったけど、
何とか気力でこらえる。
・・・ああ。
私はとんでもないことに巻き込まれた感じがするんだって・・・
・・・い、一応何も知らないふりをしよう・・!
「君、ナルトたちと同い年みたいだね?どこの里から来た忍?」
「・・・さ、さと?しのび?・・・何それ?」
「え?忍じゃないの?」
こく、と私が頷くと、
カカシ先生は頭を軽くかいた。
「まいったなあ、とにかくちょっと来てもらうよ」
「・・・え、ど、どこに?」
「火影様のところ」
・・・もう一体全体、私に何が起こったというんだ。
そう言っていても仕方ないので、
カカシ先生達に大人しくついて行くことにした。
「あのさ、あのさ!・・・お前、名前はなんて言うんだ!?」
「え・・・あの、その・・・」
何故かナルトに見つめられると、無意識に顔が赤くなる。
・・・あれ、今ならヒナタちゃんの気持ちわかるかも。
「こーら、ナルト!そんなに急に話しかけちゃだめよ!」
真っ赤になっていると、
私とナルトの間に、サクラちゃんが入ってくれた。
ちょっとほっとした・・・
「私は春野サクラ、サクラって呼んで。・・・あなたの名前は?」
「・・・えっと、私は空乃陽妃。みんなからはヨウとかヨヒって呼ばれてるんだって」
「陽妃かぁ、可愛い名前ね!」
「そんな、サクラほどじゃないんだって・・・!」
「・・・ねぇ、ヨウって呼んでもいい?」
「もちろん、いいよ!遠慮なくそう呼んで欲しいんだって」
「ありがとう!・・・ところで、さっきから語尾についてる「だって」ってヨウの口癖?」
「うん。物心ついたころからの口癖なんだって」
そう照れながら言うと、サクラは私をぎゅう、と抱きしめた。
「・・・ヨウって本当に可愛いわ!」
「うぐ」
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて
ちょっと苦しいけど、何だか嬉しくなった。
「サクラちゃんばっかり、ずるいってばよー!」
「・・・あ、アンタの事忘れてた。」
「え・・・」
しょぼーんとなるナルト。
やだ、ちょっと可愛い・・・
「あっちのうるさいのがナルト。あっちのイケメンなのがサスケ君よ!」
「うーん・・・二人とも、カッコよくていいなあ。なんかサクラが羨ましいんだって」
「・・・そんなことないわよ!」
そんな話をしている私達には、
後ろで真っ赤になっている二人が見えなかった。
「・・・///」
「(ヨウかあ・・・可愛すぎるってばよ///)」
そして、しばらく歩いていくと木の葉の里に着いた。
漫画と同じ、「あ」「ん」の文字が書かれた、
大きい門が目に入る。
私が居たのは、どうやら里近くの森だったらしい。
「(・・・うーわ、超でかいんだって!!)」
やっぱこれ夢じゃないわー、マジでトリップしちゃったんだってー、と心の中で思った。
その瞬間、お腹がちくり、と痛む。
・・・あれ、お腹冷やしちゃったかな?
まあそのうち治るだろうから放置放置。
「じゃあこれから火影様に会いに行くよ」
「はっ、ははは、はい!」
「・・・あー、そんなに緊張しなくていいからね?」
優しい人とはなんとなくわかってるけど、凄く緊張してしまう。
「(が、頑張ればなんとかなるんだって!)」
そう思いながら私は歩き出した。
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