君が流したユメナミダ。


会って3秒で鬼ごっこ


「うわあああこっちくんなああああああああああああああ!!!!!」


着物の裾をガッと掴み、必死で逃げ惑うシキ。

何でこんなはしたない恰好で逃げているかと言うと、
その後ろから、目をハートにした大ガマと土蜘蛛が超スピードで追いかけてきているからである。


「シキ!吾輩の嫁!今日こそ吾輩と祝言を上げるぞ!!」

「シキ!俺の嫁!今日こそ俺のために白無垢を着てくれ!!」

「どっちも嫌だよバーカ!つーか誰が嫁だ、誰が!」

「「お前に決まってる/だろ/であろう」」

「うぜええええ!!!」


ひーん、誰か助けてー!


そう心の奥底で泣き叫びながら逃げていると、
地面に出ていた木の根に躓き、盛大に転んでしまった。


「いったあ〜・・・」

超スピードで逃げていて、それで転んだものだから、
思いっきりあちこちを擦ったりぶつけたりしている。

「(あ、やば、涙出てきた)」

あまりの痛さに少し涙が零れる。

そしてまた立ち上がって逃げようとした瞬間、
シキの背中にぞくっ、と悪寒が走る。


「捕まえたぞ、シキ」
「捕まえたぜ、シキ」



・・・ああ、ほんとなんで私がこんな目に合うんですか。

私・・・生前、そんなに悪いことしましたっけ?


喧嘩する二人に交互に担がれながら、
私はぐすんと泣いた。


今度は大ガマに担がれ、一体今日は元祖と本家、
どっちの方に連れてかれていくのか、と考えてると・・・

後ろからものすごい土ぼこりを上げ、付き人である五徳猫のツキヨと
猫又のまろやがやってきた。


・・・わーい助かったー!
あの二人が来たら、必ず逃げ切れるんだよね!


「またてめえらかぁああああ!!うちの姫返せやああああああ!!!!」

「・・・やべえ、五徳猫が来やがった!」
「逃げるぞ!」

「逃がすか!行け、まろや!!」
「あいっす、姐さん!」


まろやは、猫である自分のスピードを生かし、
シキを担ぐ大ガマに向かって走り出す。


「うわっ、こっち来るな!」
「・・・断る!それよかうちの姫さん返せ!」

まろやは素早いスピードで、担がれていたシキを抱き上げて取り返し、
そのままツキヨのもとへ戻る。

「姫さんを奪取しましたっす、姐さん!」
「よくやった、まろや。あとで大きな魚を捕まえてやろうな」
「あいっす!それよか姫さん、無事っすか!?大ガマとか土蜘蛛にやらしい事とかされてないっすか?」
「だ、大丈夫だよ・・・」

「あ゛ーっ!俺の嫁が!」
「違う!吾輩の嫁が!」

「姫はどっちの嫁でもないわ、この愚か者どもめ!毎回毎回いらんことをするな!」
「姫さんはうちら猫妖怪一族の姫さんなんだかんな!」

そう言い、まろやは抱いたままのシキをぎゅう、と抱きしめる。
その様子を見て、大ガマと土蜘蛛は心底悔しそうな顔をした。

「帰るぞ、まろや」
「あいっす!帰ったらお昼にしようっす!」

そして、ツキヨとまろやは
そのままスピードを上げて、二人から逃げ切った。



そして、村に帰り着いた3人。

「よいしょっす」
「ありがとう、まろや。・・・私、重かったでしょ?」
「姫さんはぜーんぜん重くないっすよ!猫じゃらし抱いてるように軽いんっす!」
「・・・まろや、私は昼飯の用意をするから、姫をしっかり見ているんだぞ」
「あいっす、姐さん!」

「・・・わぁ、姫様だ!」
「姫様ー!」

「みんな、今日も元気ね」
「姫様、大丈夫だったー?」
「今日も大ガマと土蜘蛛来たよー!」
「追い払おうとしたけど、あいつらすばしっこかったー!」
「ありがとうね。捕まったけど、なんとかツキヨとまろやが助けてくれたから」
「まろネェ、ありがと!」
「姫様助けてくれたんだねー!」
「もちろんっすよ!姫さん奪い返すのはあちしの役目っすからね!」

そんな話を聞きながら、自分の家へ戻る。


・・・ここは、猫妖怪の村。

この村で、生前の私が暮らしていたらしい。(全然覚えてないけど)

昔は普通の村だったらしいけど、戦で滅んで人っ子一人いなくなり、
今じゃ猫妖怪たちが住み着く村となっている。

猫又に化け猫、大山猫(おおやまねこ)に火車(かしゃ)に化け猫遊女、
猫南瓜(ねこかぼちゃ)に猫魈(ねこしょう)といった、猫妖怪のオンパレード。
(たぶん人間が入ってきたら生きては出られないだろうな、これ)

私はそこで「姫」扱いされている。
(生前の私は猫好きで、大量に猫を飼ってたらしい。確かに今でも猫好きだけど)


「・・・それにしても、今日はいい天気よねー・・・」


そんな感じに縁側でほんのりしていると、
手紙を咥えた猫又がやってきた。


「姫しゃま、お手紙でっす」
「ありがとう。いつも偉いね」
「えへへー、姫しゃまにほめられちった!」


そうニコリと笑うと、猫又はまた
ぱたぱたと、どこかへ行ってしまった。

「・・・誰からかな?」


宛先を確認すべく、
裏を見てみると、ご丁寧に水色のハートのシールが貼られていた。
しかも下のあて名は・・・

「あ・・・えんらえんらのだ、これ」

いつも大ガマと土蜘蛛に追い掛け回されてるおかげで、
えんらえんらや女郎蜘蛛、大やもりなんかとはとても仲がいい。

仲良くやってる、にはやってるんだけど・・・
あの人たち、「助けて」って言っても助けてくれないからな〜・・・

そう困った表情で手紙を見ていると、
向こうから化猫遊女のタマがやって来た。

「姫様〜、わっちが切りたてのおいしい西瓜を持ってきましたよぅ」
「・・・あっ、タマ!」
「今日も大変だったみたいですし〜、喉も乾いてるでしょう?これどうぞ〜」
「ありがとう!ちょうど喉乾いてたんだよねー」
「あちしにもちょーだい!」
「はい、どうぞ。」
「わーい!」
「今月はまおが「西瓜作るよ!」ってやる気出したので、畑にごろごろ西瓜があって大変なんですよぅ」
「・・・去年の冬みたいに、村中南瓜だらけになるのは嫌だからね!」
「言っておきます〜」


「あっそうだ、手紙手紙」

西瓜に気を取られて手紙の事をすっかり忘れていた。

シールをぺり、とはがして
中の手紙を取り出す。




―――――――――――――
シキへ


最近暑いけど、元気にしてるかしら?
急に手紙を出してごめんなさいね〜

さっき小耳にはさんだ話によると、親方様たちが今日の夜中、
そっちの村に行って、あなたをさらう気なんですって〜。

今日の夜は気を付けたほうがいいと思うわよ〜

忠告だけはしておくわね〜






えんらえんらより♡
―――――――――――――





「また大ガマと土蜘蛛の悲鳴を聞く羽目になるんだろうなー・・・」

呆れたような顔で文面を見ていると、
一番下のあたりに、小さな文字でこう書いてあるのを見つけた。




「追伸・いつ親方様の嫁に来るの?」



ブルータス、お前もか。


「・・・やかましいわっ」



べし、と八つ当たりに手紙を地面にたたきつける。

ごめんよえんらえんら。君に罪はないんだ。




大体全部あのアホ共のせいなんだ。


ちくしょう。

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