君が流したユメナミダ。


「攫いに来ました」「帰れ」


そして夜。


暗闇に紛れながら、シキの屋敷へと向かう
二つの影があった。


「前回は猫神の婆さんにコテンパンにやられたが、今回は絶対そんなヘマはしねぇぞ!」
「静かにしろ、大ガマ。居場所がばれる」


・・・そう。
えんらえんらの密書(?)の通り、
シキの周りの警備が薄い夜中に忍び込み、
シキをさらおうとする大ガマと土蜘蛛の姿であった。


二人が歩くたび、カサコソと僅かな草ずれの音が鳴る。


「(ん、何か来た・・・またあの二人だな)」


そのわずかな音をキャッチしたのは、
猫南瓜のまお。


「(もう、こちとら眠いのにぃ・・・)」


そう不満そうな顔をしながら、思い切り息を吸い込み・・・



「にゃーーーーーっ!!!!」



・・・村の隅々に響き渡るような大声で一鳴きした。



その鳴き声に眠っていた村民は目を覚まし、
村に侵入した者(大ガマと土蜘蛛)を探し出した。

起きたのは村民だけでなく、屋敷でおとなしく眠っていたシキ達もだった。

「むにゃ・・・今の、まおの声?」
「・・・あいつら、性懲りもなくまたうちの姫攫いに来やがったんだな・・・」
「懲りない、やつっすねえ・・・」

寝ぼけ眼のシキとまろや。

「まろや、ここで姫様を見てるんだぞ。私はあいつらを探しに行ってくるからな」
「・・・あいっす・・・」

まろやはうとうとしながら、そう返事した。


「・・・お前のせいでバレたじゃねーかよ!」
「何を言う、お前のせいだ!」

二人は必死に逃げながら、口喧嘩を続ける。

そしてその二人の前に、ツキヨが立ちふさがった。

「ゲッ、五徳猫・・・!」
「お前ら、性懲りもなく来やがって・・・」

そう言うと、
ツキヨは火打石を打つ要領で、拳をカツカツとぶつける。

ぱちっ、と火花が散り、
すぐに大きな炎が手に燃え広がった。

「・・・こちとら眠いんだ、昼に出直せ!!」

そしてツキヨは炎のついた手で二人をわしづかんで、
村の外へ、思い切り放り投げた。


「・・・あっぢぃぃいいい!!!!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」


二人の断末魔は、さっきのまおの鳴き声に負けないほど大きな声で村に響き渡った。

「ふう、まったく・・・」

そう言うと、ツキヨは手をぶんぶんと振って、
手についていた炎を消す。


そして村民は全員帰り、
ツキヨも屋敷へ戻っていった。



「・・・ただいま戻りました・・・」


もしかしたらシキが眠っているかもしれない、と気にして、
小声とそーっと忍び足で部屋に入ったツキヨ。


すると・・・ツキヨの考え通り、二人はぐっすりと眠っていた。
シキはまろやをぎゅっと抱きしめ、幸せそうな寝顔で。

ツキヨはすこし笑って「やれやれ」、とため息を一つついて、
二人の腰までずれていた布団を肩までかけ直し、自分も眠りについた。


・・・そして、次の日。


「ねぇ、まろや。行きたいところがあるんだけど・・・」
「いいっすよー!・・・でもどこっすか?あちしが送り迎えするっすー」
「えっとね・・・女郎蜘蛛のところへ連れて行って欲しいの。」
「ひっ!・・・じょ、女郎蜘蛛、っすかぁ・・・?」

女郎蜘蛛の名前を聞いて、まろやが震え上がる。
以前女郎蜘蛛に(死なない程度だけど)毒を盛られ、ひどい目にあったため
完全にトラウマと化してる。

「呪術に使う薬草をもらう約束をしていたの。怖いだろうけど・・・私ひとりじゃ行けないから・・・」
「あ、あいっす!がが、頑張るっす!」

そう言いつつも・・・足がぶるぶる震えているのがよくわかる。


「(・・・ホントごめんね、まろや。)」

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