君が流したユメナミダ。


はじまりの遭難





私は、星を旅する少女。

どこへ行く 当ても無い
誰かに会う 当ても無い

あぁ、あんなところに
綺麗な 蒼い星があるわ・・・

そうね、次はあの星にしましょうか

あの星には、私の求めるものが
きっと眠っているはず・・・

きっと、きっと・・・









ザクッ、サク。





「参ったなぁ・・・」






砂と岩しかない不毛の地に、
一人、不時着するまでに


僕なみに、いろいろありました。





それは、士郎がまだ6歳だった頃。




「わぁっ、お母さんが本をくれた!!」
「・・・げんし、りん・・・原始林のことが書いてある。」

わくわくしながら見てみると・・・

「・・・」


{大蛇というものは、獣を丸ごとペロリと飲み込む。}
{すると獣はもう動けなくなり、半年の間眠っている。}
{その間に、飲み込んだ獣が、腹の中でこなれるのである。}


「ジャングルってすごいんだなぁ・・・半年も蛇のお腹の中なんて。」
「蛇も獣も、どうしているんだろう?」


ふと、そんなことを考えた士郎は、
鉛筆を片手に、絵を描き出した。




「お母さん、お母さん!この絵見てよ!」
「あらあら、絵を描いたの?」
「うん!僕の最高傑作だよ!これ、怖くない?」
「帽子は怖くないわよ。良く描けているわね。」
「(帽子じゃなくて、ゾウを飲み込んだ蛇なのに・・・)」

お父さんにも見せたけど、
やっぱり帽子にしか見えないって。




・・・それなら、こうすればいいのかな。




「お母さん、お母さん!書き直してきたよ!」

それは、さっきの絵にゾウを書き足した絵だった。



「これは帽子じゃなくて、蛇がゾウを・・・「士郎、絵もいいけど勉強もしなさいね。」




「(分かってもらえなかった・・・)」
「(ジャングルはこんなに凄いのに。)」
「(蛇はこんなに怖いのに。)」

士郎はうなだれると、考え始めた。

「絵を描くのは楽しいけど、僕は絵描きに向いていないみたい。」




だから、パイロットになった。




世界中を飛び回り・・・まぁ、正直な話、
お母さんの言っていた勉強は役に立った。

現在位置が一目でわかる地理なんか、特に。


「あ、アリゾナ州入りしたなぁ・・・」



そして。


「ふーっ・・・」

カン、カン、と音を立てて、僕ははしごを降りる。

「よぉ、お疲れさん。
「いきなりで悪いんだが、お偉いさんの接待にお前も出席して欲しいんだ。」
「・・・えぇ、かまいませんよ。」

とまぁ、大人達の中で生きて、いろいろな人に会った。



いや・・・僕自身、
一人で生きていけるくらいは大人になった。
だけど・・・



「やれやれ、肩が凝った。悪かったな、こんな時間までつき合わせて。」
「いえ、これも仕事ですから。」
「同じ仕事なら、空を飛び回っていたいもんだけどな。」
「そうですね。」
「なぁ、見てみろよ。月も星もこんなに明るいのに。」
「えぇ、確かに綺麗ですね。」
「・・・そうだろ?なのに、やれゴルフだサッカーだ車のローンがどうしただ・・・正直聞き飽きた。」
「同感です。ところで、見ていただきたいものがあるんですが・・・」


この人なら、きっとあの絵を分かってくれるはず。
そう思って、僕はあの絵を取り出した。




「ん?」
「これをどう思いますか?」
「帽子だろ?・・・帽子がどうかしたのか?」
「いや・・・新調しようかと思いまして。どこか良い店、ご存知じゃありませんか?」
「あぁ、そういうことな。この前新装開店した店が・・・」
「(分かってもらえなかった・・・)」

だけど・・・

あの日、本で読んだ蛇の記憶は
あまりにも鮮明に残ってる。
やっぱりジャングルは凄くて、やっぱり蛇は怖いよ。


そういう意味じゃ、僕は大人になりきれていないのかもしれない。



「・・・と、思い出に浸っている場合じゃなかった。」
「・・・どうしようかなぁ・・・。」

ふぅ・・・とため息をついて、僕は飛行機を見た。

「モーターの故障かな?」
「まいったなぁ、飲み水は一週間分しかないし・・・」
「ここから人里まで1000マイルはかかる・・・。とにかく、早く直さないと・・・」

ふと、僕が空を見上げると
星がちらほらと出はじめていた。

「・・・もう夜じゃないか。今日はもう寝て、明日直そう・・・」


「はぁ、まさか砂漠で寝ることになるとはまったく考えてなかったよ。」
「だけど・・・何かこうしてると、世界に一人きりのような・・・」

そう呟くと、僕は眠気に負けて、意識を手放した。


《・・・を描いて。》




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