はじまりは音もなく
・・・美術館なんて、生まれて初めてだ。
僕はママに手を引かれながら、美術館に向かっていた。
「フェレス、今日見に来たのはね、「ゲルテナ」って人の絵画展で・・・」
「「げるてな」?」
「そう、「ゲルテナ」。絵のほかに彫刻とかもあるらしいから、貴方でもきっと楽しめるわ」
「楽しみだなぁ!きっと、ステキなんだろうなぁ・・・!」
・・・そして美術館。
受付をしているパパとママに、「先に見てる」と告げて、僕は絵を見始めた。
僕には絵なんてさっぱりわからないけど、
「げるてな」と言う人は凄い芸術家なんだと思った。
だって、僕は今・・・なんていうか、凄く、感動している感じがする。
そうしていると、ママ達とバッタリ会った。
「・・・どう?フェレス。」
「楽しいか?」
「うん!すっごく楽しいよ、ママ、パパ!」
「そう。それならよかったわ。」
「いいか、フェレス。くれぐれも人に迷惑をかけちゃダメだぞ」
「わかってるよ!僕、もう一回絵を見てくるね!」
「気をつけてね。」
あの時、もっとパパとママと話しておけばよかったな。
まさか、あんなことになるなんて。
「・・・♪」
絵を見ながら歩いていた僕の足は、
ある、一枚の絵の前で、
ぴたり、と止まった。
「・・・わぁ」
タイトルは習ったことの無い漢字だったからわかんないけど・・・
“???の世界”
何だかこの絵が、僕を引き込むような、
そんな気分になった。
・・・すると。
ぴたっ、と
さっきまで流れていた音楽が消えた。
そして
電気がちかちかっ、と点滅しだした。
「・・・えっ?」
気づくと、僕の後に居たはずの人たちが、
1人残らず消えていた。
・・・僕は、勢いよく走り出した。
嘘だ嘘だ嘘だ。
どうして、誰も居ないんだろう?
美術館中探し回ったけど、僕以外には誰一人居なかった。
「・・・うそ・・・」
僕は急いで階段を下りて、美術館の入り口のドアを開けようとした。
ママから勝手に出ちゃいけないって言われてるけど、そんな暇はない。
とにかくここから出なくちゃ・・・!!
・・・だけど。
ガチャ・・・ガチャガチャ・・・
そんな僕をあざ笑うかのように、ドアは開いてくれなかった。
「・・・そんな・・・」
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