いつもの日常


「・・・あっ、火月様!」
「「「「キャ〜!!!」」」」
「今日もカッコいいです、火月様!」
「ちょっと、2年生邪魔なんだけど!3年生にそこを譲ってよ!!」
「こっちを向いて下さーい!」


きゃあきゃあと女の子の黄色い歓声の中、
ゆっくりと歩く、一人の少年・・・


にしか見えない少女。


「(・・・何回女って言ったら、信じてもらえるんだろうか・・・)あぁ、おはよう・・・」


雪女が少し苦笑いでそう返事をすると、女子がますますヒートアップする。

「「「「「「「キャ〜〜〜〜!!」」」」」」

「ハハ・・・(頼むから、いい加減俺を女だって気づいてくれよ・・・。)」


俺は心で半べそをかいた。

・・・ちなみにコレが、俺のいつもの日常だったりする。


そもそも俺は女なのだが、
元男役の母さんのおかげで、昔から男らしいというか、なんというか・・・。

とりあえず女とは思えない性格なわけだ。

・・・あと、自分ではまったくそう思っていないのだが、
どうやら俺の顔は女の顔と言うより男の顔に近いらしく、
世間でよく言う、「イケメン」の部類に入るらしい。


・・・うわあ、すっげえ迷惑。




てなわけで毎日女子の取り巻きに追い回されて
生活してるわけです。誰か代わってくれ。




・・・そして授業中ですら、俺の苦労は絶えない。


なぜなら・・・。


「(火月様・・・!)」
「(なんであんなにカッコいいんだろ・・・)」
「(・・・あっ、あくびもかわいらしくてステキ!)」
「(あぁ・・・そのしぐささえも愛おしいなぁ・・・)」


「(・・・お願いだから、あっちを向いてくれ!!)」


女子に凄くガン見されているから。


・・・目からキラキラとハート飛ばして、うっとりと見つめられても困るんですが。

本当に・・・俺って、何でこんなに「女に」モテるんだろう。

・・・言っとくけど、俺そう言う趣味無いからね!?
見た目男でも心は女の子だからね!?


そう頭の中で文句を垂れるものの、
他の女生徒はお構いなしに雪女を恋情のこもった熱い目で見つめる。

それにいい加減耐え切れなくなった雪女は・・・。

「・・・先生、俺・・・腹が痛いんで保健室行っても良いですか?」
「火月・・・またか。まぁいい、行ってこい。」
「はーい。」

もちろん、“腹が痛い”なんて嘘。

俺は廊下に出て、保健室とは逆方向の屋上へ行く階段へ向かった。


・・・先生もこんな俺の事情を知ってるみたいだから、
ばれても何も言ってこないのが助かる。

こんな感じで授業はよくばっくれるけど、
後でほかの女子のノートを借りて勉強するから成績は普通。
(この顔に感謝する、少ない機会だぜ。)

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