涙に乗せた声
「まっさか、こんな事になるとは・・・」
「ダイヤモンドダスト・・・エイリア学園にはいったい、あとどれだけのチームが・・・」
そう言う鬼道の横を、ボールが通り抜けた。
「・・・?」
「豪炎寺!!」
「・・・円堂・・・」
「分かってるって!」
そう円堂が言うと、豪炎寺はボールを持って、
軽くうなずいた。
「よかったっスね、豪炎寺さん!間に合って!」
「・・・ところで、君は?さっき俺の名前を言ってたけど、なんで・・・」
「俺の知り合いで・・・」
「雪女の?」
「あ、自己紹介が遅れてすまないっス!あちきは物怪狐狸。よろしくっス!」
「狐狸・・・か!よろしくな!」
「はい、よろしくっス!」
「・・・狐狸。」
「あ、はい。何っスか?」
「豪炎寺を連れてきてくれたのは有難かった。だが、なぜ・・・」
「んー、あちきと雪女さんが阿夏遠島で会った時、豪炎寺さんの話になって・・・」
「・・・」
「実はあちき、一度豪炎寺さんを見かけてるんスよ!それでおぼろげな記憶を頼りに探し出して、連れてきたってワケっス!」
「・・・ふむ」
「まぁ、それより・・・」
「お帰り、豪炎寺!!」
そう円堂が笑顔で言うと、
豪炎寺は一瞬戸惑ったような顔をしたが、
すぐに笑顔になって、こう言った。
「・・・あぁ。」
「待たせやがって!」
「本当っスよ!」
「・・・ありがとう。」
そして、豪炎寺は瞳子に向かってこう言った。
「監督!」
「「「・・・」」」
みんなに緊張が走る。
「・・・お帰りなさい、豪炎寺君」
「「「わあっ・・・!」」」
だが、その時・・・
「監督、ありがとうございました」
「「「えっ・・・?」」」
「監督があの時行かせてくれなかったら、俺は奴らの仲間に引き込まれるところでした」
「・・・さぁ、何の事かしら」
「監督!」
「あいつらって・・・」
「それは俺が説明しよう」
「刑事さん!」
「あっ、土方さんじゃないっスか!」
「・・・おー、狐狸!こんなところにいたのか!」
「はい、バッチリ豪炎寺さんを連れてきたっスよ!」
「そりゃあよかったぜ!」
「鬼瓦さん!あいつらって・・・」
「あぁ。豪炎寺が姿を消したのには、ワケがある。」
「ワケ・・・?」
「妹さんが、人質状態になっていたんだ」
「えっ!?」
「夕香ちゃんが・・・!?」
「エイリア学園に賛同するものと自称する奴らが、妹さんを利用して、仲間になるように脅してきたんだ」
「そうだったのか・・・。でも、一言言ってくれれば!」
「・・・言えなかったんだよ。口止めされてたんだ」
「・・・「もし話したら、夕香ちゃんがどうなるか」・・・ですか?」
「当たりだ。だから我々はチャンスを待ってたのさ。豪炎寺を、そいつに預けてな」
そう言うと、鬼瓦は土方を指さした。
「土方が!?」
「・・・おやっさんときたらひどいんだぜ〜?「人を隠すなら人の中!」なんて言っちゃってさ!」
「・・・」
「ま、俺んちは家族の1人や2人、増えたってどうってことはないけどな!」
「いろいろあって遅くなってしまったが、何とか妹さんの無事を確保できた。」
「・・・ありがとうございました!」
「礼なら土方に言ってくれ。」
「やめろよ!おやっさんとは親父の代からの付き合いだ。これくらいするのは当然だろ?」
「いや、お前のおかげだ。」
「お前がいなかったら、爆熱ストームも完成できなかった。」
「よせよな・・・!」
その時、雪女が茶化すようにこう聞いた。
「豪炎寺!どうだ?久し振りの雷門は!」
「・・・あぁ、最高だ!」
そして練習が再開した。
・・・が、士郎と俺は、グラウンドの隅っこのフェンスにもたれて、
無言で空を見上げていた。
「・・・」
「・・・。」
「ねぇ」
その無言の空気を破ったのは、士郎だった。
「・・・何だ?」
「僕は、君にとって必要?」
「あったりめーだろ。士郎が居ないとか考えたくもない」
「・・・そう?」
「そう」
そんな話をしていると、
ボールが俺たちのもとに転がってきた。
「・・・あ・・・」
それを取りに来たのは、豪炎寺だった。
「・・・」
「豪炎寺くん・・・」
「・・・ボールが怖くなったのか?」
「・・・!」
「怖くなって当然だ。・・・俺も怖い。」
俺は二人の邪魔をしないように、
さりげなくそばを離れた。
「・・・俺、どうすればいいんだろう」
正直言うと、もう全て投げ出してしまいたい。
昔のように小さくなって、頭を抱え込んでしまいたい。
「(でも・・・そうは行かないんだよな)」
「雪女?どこ行くんだよ!」
「すまねぇな。俺ちょっとその辺ランニングしてくる」
「あ、あぁ!」
タオルを首にかけて、俺は一生懸命走る。
嫌なことも、つらいことも忘れたいから、
足が痛くなっても、必死に走った。
「・・・」
あちこち走り回ってると、
いつの間にか日はほとんど沈んでいた。
夕日の写る海が本当に綺麗で、じっくり見たくなったから、
俺は砂浜に座り、海を見つめた。
「雪女さんッ!よーやく見つけたっスよ!」
その時、狐狸の声が響いた。
「狐狸・・・」
「はい、差し入れっス。」
そう言って、狐狸はスポーツドリンクを差し出した。
「・・・あ、ありがとな。」
「大丈夫っスよ!」
そんな話をした後、狐狸は雪女にこう尋ねた。
「雪女さん、好きなもの上げてみてくださいっス!」
「・・・好きな、もの?」
「はい!」
「何で・・・?」
「いいですから!」
「可愛い猫」
「キャラメルマキアート」
「サッカーボール」
「雷門のみんな」
「父さんの手」
「兄ちゃんのくれたペンダント」
「夕焼けの空の色」
「士郎の、「雪女が好き」って声・・・」
何故かその時、目から涙が零れ落ちた。
「あれ、俺・・・なんで・・」
「・・・漫遊寺の時と、同じ顔してるっス」
「え」
「また何か、沢山溜めすぎたんじゃないっスか?」
「そう・・・かも・・・」
「まぁ、無理には聞きませんけど、無茶はしないほうがいいっスよ?」
「・・・」
「雪女さんを必要としてる人がいるんスからね!!」
そう言うと、狐狸は立ち上がった。
「・・・じゃあ、あちきは帰るっス!またどこかでお会いしましょうっス!」
「・・・あぁ。」
そう言うと、狐狸はどこかに行ってしまった。
「俺も戻るか」
そうして戻ってきたら、
もう夜になってしまっていた。
「あ、お帰りなさい雪女くん!今日はカレーだよ!」
「・・・すまねぇ秋ちゃん。俺、今日はいい」
「えっ?」
「俺、もう・・・寝るな。」
そう言って、雪女はキャラバンに乗り込んだ。
「雪女、もう寝ちまうのか?」
「疲れたんだろ」
「(雪女くん・・・)」
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