出久の記憶

———薄い紫色の、キラキラした瞳。

桜みたいに薄いピンク色の、長い髪。


琉音ちゃんお気に入りの、緑色のワンピース。

ひよこの刺繍がついたポケットには、いつもお菓子と、可愛いハート柄や星柄の絆創膏が入っていて——いかにも琉音ちゃんらしい、可愛いものばかりだった。

誰かが転んだり、擦りむいたりすると、
「だいじょうぶ?」ってすぐ駆け寄って、個性で治してくれて。

(·····まだ個性が発現したてだったから、全部は治りきらなかったけど)



·····そういえば。

僕が怪我した時だけは特別に「癒しのキス」を使ってくれたっけ。



僕が「オールマイトみたいになりたい」っていつも言っていたみたいに、
琉音ちゃんはいつも、「お父さんやお母さんみたいなヒーラーヒーローになりたい」と笑ってた。


———今思えば、あの頃からもう覚悟があったんだと思う。
ヒーローになるってことは、誰かの痛みを背負うってことだから。


琉音ちゃんはいつも僕を「いずくん」って呼んで、どこに行くのも、何をするにも、いつだって一緒だった。

かっちゃんに遊びを邪魔されることも多かったけど、
そんな時、琉音ちゃんは決まって———


「いずくんをいじめるときのかっちゃんは大嫌い!」


って言って、よくかっちゃんを言い負かしてくれた。

僕をかばってくれたことも、何度もあったっけな。



———そして。

僕が「無個性」と分かった日も、
琉音ちゃんはずっと側に居てくれた。


琉音
「·····いずくんって、「むこせー」なの?」

出久
「そうみたい·····僕、オールマイトみたいなヒーローにはなれないんだ·····」

琉音
「ううん·····きっと、そんなことないよ!」

出久
「えっ?」

琉音
「あのね、あのね!!·····いずくんは、いつだってわたしのヒーローだよ。わたし、オールマイトも好きだけど、いず
くんのほうがもっともーっと好きだもん!」

出久
「琉音ちゃん……!」

琉音
「こせいがあっても、むこせーでも、いずくんはいずくんでしょ?わたし、いずくんがだぁい好きだよ!」



そう言って、琉音ちゃんは僕をぎゅっと抱きしめて、頬に優しくキスをしてくれた。




·····そんな優しい琉音ちゃんを、
僕が好きにならないわけがなかった。








———夏休みの、あの日。

アスファルトが焼けるように熱くて、セミがうるさいくらい響いていた。

僕の手のひらの中には、
お手伝いをして貯めた、なけなしのお小遣いで買った小さなおもちゃの指輪がふたつ。


買った帰りにかっちゃん達に見つかって追いかけられて。
からかわれたり壊されたりするのが嫌で、必死に逃げて———

それでも、ちゃんと渡したくて。


「·····大人になったら、僕のお嫁さんになってくれる?」





·····今思えば、僕はとんでもない告白を琉音ちゃんにしたものだ。



———僕の机の上にある、おもちゃの指輪の話をしよう。



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