プロローグ

·····雄英高校、入学試験当日。


緑谷出久が試験会場で転び、麗日お茶子がそれを助けて———数分後の事。

まだ春には遠い風が吹く中、
とことこ、と小さく軽やかな足音が近づいてくる。

桜を思わせる淡いピンク色の髪を揺らして、現れたのは一人の少女。


久智付 琉音。

———この物語の主人公。




琉音
「·····ごめんね、ちゃーちゃん。トイレ混んでて、来るの遅くなっちゃった·····」

お茶子
「ええよええよ、全然待ってへんし!ウチが呼び出したんやしな」

琉音
「ほんと?よかったぁ·····あ、ちゃーちゃん!忘れものとかない?大丈夫?」

お茶子
「もー、大丈夫やって!」


くすっと笑ってから、お茶子は胸を張る。


お茶子
「ちゃんと合格して、るーちゃんと一緒に通うって決めとるし!」

琉音
「·····うん、私も絶対合格する!ちゃーちゃんと一緒に雄英、通いたいもん」


琉音はそう言うと、少しだけぎゅっと拳を握る。


お茶子
「·····それにるーちゃんの幼馴染の子も、雄英を受験するんやろ?」

琉音
「そう!この前ね、『受験する』ってメールが来たんだ·····だから私も、頑張らなきゃって!」

お茶子
「へぇ·····初恋の人なんやろ?ウチもるーちゃんを取られへんよう頑張らなきゃアカンな〜?」

琉音
「も、もー!そんなんじゃないってば!!」

お茶子
「あはは、顔真っ赤やで?」

琉音
「·····と、とにかく!怪我したら試験官の先生に言ってね?お母さ·····じゃなかった、ナイチンゲールやリカバリーガールが居るからね!」


慌てたように言う琉音に、
お茶子はくすっと笑って、ぽんぽん、と琉音の頭を撫でた。


お茶子
「あはは、るーちゃんの心配性は相変わらずやね。」

琉音
「·····だって!私、すごい緊張してるんだから!」

お茶子
「そういえばるーちゃんの試験は、ウチらとは違うんやっけ?」

琉音
「·····う、うん。治癒系の個性の人だけ集めた実技試験なんだって。内容まではまだわかんないんだけど·····」

お茶子
「よーし、同じ場所にるーちゃんがおるならウチ、さらに頑張れるわ!」


そう言って、お茶子は琉音に勢いよく抱き付いた。
その反動でふらつきながら、琉音もお茶子をぎゅっ、と抱き返す。


お茶子
「るーちゃんチャージ完了!·····ほな、行ってくる!」

琉音
「うん、行ってらっしゃい!健闘を祈るよ、ちゃーちゃん!」



·····そうして二人は手を振り合い、それぞれの試験会場へと向かっていった。




———これは、
優しすぎる少女がヒーローになるまでの物語。



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