それもひとつの愛情表現(SS)

·····くいっ


「痛ッたぁ!!」


ここは敵連合のアジト。
あおぎが静かに椅子に座って、針と糸でハヅネのスカートのフリルをちくちくと直している時に、不意にあおぎの背中のコルセットピアスに着いているリボンを荼毘が引っ張った。


「·····ちょっと荼毘、なにすんのよ!引っ張られたら痛いじゃないの!」

「お前こそ彼氏の俺をほっといて何やってんだよ、あおぎ」

「え?昨日の戦闘で、ハヅネったら個性発動したままでスカート引っ掛けちゃったのよ。だから直してるの」

「·····ふーん」


心底どうでも良さそうな反応にあおぎはイラッとしながらも、「(そういうのが荼毘だったわね·····)」と自分に言い聞かせながら、さらに針を進める。


「·····ふー、やっと終わりが見えてきたわ·····そもそも、私は縫うより切るほうが得意なんだけど·····」

「なら·····んなもん、操子に頼めばいいだろーが」

「操子なら、今トガちゃんの服縫ってるのよ·····トガちゃん、ハヅネと双子コーデってやつがしたいんですって。2人とも仲が良くて何よりだわ。」


そう言うと、あおぎはくすっと微笑んだ。
そのまま糸を玉留めして余った糸を切ると、針を針刺しに戻す。


「さて、縫い物も終わったし·····さっきから構ってちゃんの彼氏サマの相手をしてあげましょうか?」


あおぎの言葉にムッとしたような顔をした荼毘だったが、その言葉を聞くなりニヤリと口角を上げた。


「じゃあ·····膝枕してくれよ」

「はいはい」


あおぎは自分の太腿の上に彼の頭を乗せると、優しく撫で始めた。
荼毘は最初は撫でられるのに少し抵抗していたものの、すぐに気持ちよくなったのか、抵抗をやめてウトウトし始める。


「·····ふふ、私の前じゃ青い炎も形無しね」

「うるせぇ·····」

「私は好きよ、荼毘に甘えられるのも、甘えるのも。·····もちろん、荼毘自身もすっごく大好きなんだから。」

「·····バーカ」

「あら?照れ隠しかしら?」

「もういい·····俺は寝るぞ」

「はいはい、お休みなさい」


呆れたように笑ったあおぎが再び荼毘の頭を撫で始めると、今度は本当に眠ってしまったようだ。


「全く·····可愛い人ね」


そんな呟きをこぼしながら、あおぎはまたふふっと微笑む。

·····そんな彼女のハイロングのポニーテールが、ゆらゆらと空調の風に揺れていた。




――――――――――
だびあお推したい。

20220214

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