寝物語に伝説を(プロローグ)


·····幼い頃からよく聞かされた、テーテュース一族に伝わる伝説。

私はその話が昔から大好きで、私の叔母であるバンシーによく寝物語代わりにせがんだものだった。


「·····ふふ、リルったら。またバンシーさんからテーテュース一族の伝説が聞きたいの?」

「うん!リルね、リルね、そのお話がいちばん大好きなの!」

「それじゃあ読んであげるから、お布団入っておめめつむろうね」

「はぁい」

「それじゃあ·····むかし、むかし、そのむかし·····」



その話は、二色に分かれた美しく長い髪と七色に輝く美しい鱗を持つ人魚の女神が出てくる話。

この世界にある四つの海にいる全ての魚たちが住んでいる海『オールブルー』の中にあるとされる島、
『オーシャン・ラグナ』にその女神が暮らしているという。

その女神は様々な力を持ち、水も、植物も、海でさえも彼女を愛して力を貸した。
そして人の心をとろかすような美しい歌声で、素晴らしい歌を歌うという。

彼女はオーシャン・ラグナに来た海賊の1人を愛し、その海賊も彼女ただ1人を愛して添い遂げた。
そして彼女は誰よりも愛したその海賊と、その海賊との子供たちの髪の色に、自分の美しい鱗の色を全て分け与えた。
色を分け与えたあとの彼女の鱗は、そのまま汚れひとつない美しい純白になったという。

その鱗の色には彼女の『私の子供達には末代まで海の祝福と、大いなる幸福を』といった願いが込められて、
それからテーテュースの一族は、海に愛された幸せな一族として暮らすようになったとさ。



·····なんて、その伝説は誰が聞いても夢物語のようなものだったけど、
私たちテーテュースの一族は、その伝説が昔のことであれ本当のことだと知っている。


なぜなら、その伝説の女神と同じく二色に分かれた髪を、テーテュースの一族はみんな持っているから。


そして·····テーテュースの一族が関わった者には、
本人含めて例外なく、様々な幸福が来るということも知っているから。



「めでたし、めで……ふふ、リルったらもう寝ちゃったのね」


バンシーはそう小さな声で笑うと、リルの頬にキスをひとつ落とし、お互いの肩までしっかり布団を掛けた。


「·····大丈夫よ、リルはバンシーさんがずっと守ってあげる。」

「バンシーさんのこの世で1番の宝物、シアン姉様の可愛い子·····」


そう呟くと、バンシーはリルを抱きしめてウトウトと眠りに落ちていった。






·····しかし、この先リルは成長していく先で様々な出来事に遭遇することになるのだが、
この時、リルも、もちろんバンシーでさえ、それを知る由はなかったのだった。



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