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※デュラでのイベントで聞いた話しを元にしました。
「..あれ、中村くんは?」
「抜きなんじゃないですか?」
只今朝の10時少し前。
某アニメの収録があり、現場には俺、神谷とまもちゃんや香奈ちゃんなど、共演者が集まっている中、一人だけ足りなかった。
「あーまぁ、あいつ人気だから忙しいし抜きなのかもねー」
俺がそう一言言うと、小野君やまもちゃん他の共演者も納得したのか頷き、各々ブースの中へと入って行く。
弄る対象が減ったなーとかは別に思ってないけど、まぁ自分も行くか、と台本を持ちブースの中に行こうとした時、監督が入って来た。
「..あれ、中村さんがいませんね」
「「「「「...え?」」」」」
つい最近大遅刻をしたばっかりの監督はいつも1時間以上前には楽屋に入っている。
その監督がいきなり中村さんがいないなんて言うもんだから、あれ、もしかして抜きじゃねーのかとみんな顔を見合わせる。
「え、中村君抜きじゃないんですか?」
「いや、違いますよ」
そう監督が言った事により、俺達の心は一つになったと思う。
あー中村やっちゃった
と。
俺はとりあえず電話をしようと携帯を開いた。
「あ、中村君?」
携帯に出た中村君。
俺が中村君?と言うと、周りにいた事務所の関係者や監督、共演者達はとりあえず倒れたわけじゃないんだと安心したような顔をする。
『..すみません』
「中村君今どこ?」
『すみません』
俺の問い全てにすみませんと謝る中村君に、俺はあーこいつやったなと内心思う。
『今起きました。すぐ行きます』
と、絶対にこいつ焦ってるな、と思うくらいの声で携帯がすぐに切れ、俺は静かに「中村自宅で爆睡」と一言言うと、共演者は皆爆笑。
「榊原さんはいなかったんですかね?」
と言ったのは沢城。
そうだよそうだよ!!と、責任転嫁なのかなんなのか杏里が起こさなかった事が悪い、みたいな感じになってみんながあいつに電話をしようと言う。
まぁ、その顔にはみんなこれでもかというくらいのニヤケがあるけど。
中村君がこない限り収録は始まらないわけで、マネージャーと次の仕事の時間を確認して、じゃぁだれが杏里に電話をするかと話し合う。
「ここは浩史ーでしょ」
「神谷さんお願いします」
「え、沢城にしたら?」
「てか今大丈夫なんでしょうかね?」
「まぁかけてみようか」
と、皆が期待を込めた目で俺を見つめる中、俺は一人アドレス帳から杏里の名前を探し、じゃあかけるよ、と目配せをする。
「すっげーバランの反応が気になる!!」
「焦りますかねー?」
「なんか榊原さんならすっごい焦りそう!!」
各々好き勝手に言うのを見ながら、あ、出るから少し静かに、と指を口元に寄せる。
一気に静かになる現場は少し、というか結構異質だ。
「あ、杏里?」
『..え、神谷さん?どうしたんですか?』
「今大丈夫?収録は?」
『あと30分後に収録ですけど..どうかしましたか?』
「あ、そうなの?じゃあ手短かに言うね」
『はい』
周りは同じ共演者がいるのだろう、なんとなく杉田君とか安元君とかそこらへんの低い声や高い女性の声がたくさん聞こえる。みんな酔ってんのかと思うくらいハイテンションな現場だな。
「君の彼氏、爆睡して収録に大遅刻」
俺の声だけが静かな現場に響く。周りにいる小野君達はこちらを静かに見守っている。
いや、そんな真剣に見るものでもないでしょうよ。
そして電話の向こうから杏里の返答が聞こえない。
あっちの現場の騒がしさだけが電話越しに聞こえてくるだけで、杏里の気配さえも感じられない。
「ちょ、杏里?」
少し焦ったから名前を呼ぶと、息をすぅっ..と吸う音が聞こえ、あ、大きい声だすなと思ったから電話を耳元から少しはなす。
あんの馬鹿...!!
その声はみんなに聞こえる程大きい声で、みんなびっくりした顔のまま固まっていた。
まぁ、俺もそうなんだけど。
あんだけ騒がしかったあっちの現場での声も聞こえなくなるくらいに杏里の声は効果大だったらしく、杏里の側にいたのであろう杉田君の声が小さく聞こえた。
『ど、どーした、杏里...?』
『榊原..?』
『ど、どうしたのバラン..』
静かになったはずの現場は杉田君の声を先頭にまた騒がしくなり始め、どんどん杏里を心配する声に進化していった。どんだけあいつ人気者なわけ。
『すみません、収録始まるんで切りますね』
「わかった」
とりあえず電話を切り、ふうと溜め息をつく。
周りを見渡すと、固まった表情のまま動かない小野君とか、笑いを必死に抑えてるまもちゃんとか、どう反応すればいいのかわからない杏里の後輩達と様々な面々。
まぁ、無理もないわな。あいつ滅多に大きい声ださないし。