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せーめて頼りない僕らのー強がりを一つ聞いてくれー
「..だっけ?」
「カサブタ?」
「あ、これカサブタの方か」
「方ってなんだよ」
珍しく二人共に最後の収録が一緒だった。
一緒に帰るか、と終わった時に言い、今は共に帰路に着いている。
榊原も俺も明日は早くから収録があるからどちらの家にも泊まれない。
だからせめての、としてこいつの家まで送ってやる事にした。
「いや、デジモンの方の」
「だから方ってなんだよ」
今は駅から榊原が住んでいるマンションまでの道を歩いている。
さすがに夜遅い時間だからか誰一人として歩いていない。
こんなヤツでも女だからな、それに俺の女だし、夜遅くてもいくら人がいないとしても送ってやんねーと、という使命感。
「Butter-fly ってどんな歌でしたっけ?」
「なんで今?」
「いや、たまにごっちゃになるんですよねーこの二つ」
いきなりカサブタを歌い始めた榊原に、俺はもう驚きはしないけど、いきなり言われてもすぐに思い出す事はできない。俺もごっちゃになってきたじゃねーか。
こうなると気になって仕方なくなるんだよな。
「なんだっけなー...」
「あれじゃね?」
むげーんだーいなーゆーめのーあとのー
「あ、それだ!!」
なにもない世の中じゃーそーうさ愛しいー?
「歌詞は忘れたけどまぁいいや」
「いいのかよ。最後うやむやじゃねーか」
歌詞は結局思い出せなくて鼻歌で歌い始める始末。次は俺までもが頭から離れなくなって。
気付いたら榊原の住んでいるマンションに着いた。
「あ、着きました!!」
「無事に着いたな。じゃ、俺は帰るな」
「はい。ありがとうございました」
「いや」
「おやすみなさい」
「ん」
少し俺より低い身長の榊原の為に、俺は小さく屈み、小さいリップ音が鳴るくらいのキスをする。
恥ずかしそうにはにかむ榊原を見、頭をなでてやる。
「早く中入れよ」
「悠一さんの姿が見えなくなったら」
「へいへい」
踵を返して手を振り、明日の収録に間に合うように早く寝ろと少し大きい声で言う榊原に近所迷惑だぞ、と心の中で思いながら、でもまぁ図星なのもあったからあいつが見えないくらいの大きさで頷く。
おやすみ。
駅まで歩き、そこからタクシーを捕まえた。
明日は10時から収録があるから家に帰って風呂入ったらさっさと寝よう、と心に決める。
次の日、俺は大遅刻をする事になった。