ぶっ本主の監督に注意される新人時代
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「...とまぁ、そんな事がありましたねー。実際、監督に言ってもらわなきゃ、俺は今ここにはいません」


そう、はっきり言うのは黒沢晃君。
僕がかつてのアニメの監督をしていた時に、叱咤をこぼした声優だ。

今やすっかり有名になり、あれほどまでの僕に説教をさせるような雰囲気も意識もなくなり、しっかりと後輩声優たちをひっぱっていく人物へとなっていた。

あれから彼は意識を改め、他の先輩声優達も見直すような声優へと変わった。
お遊びでやっているわけではない、職業として、プロとしての声優になると決めた彼の演技は、それはもう。多くを語らなくても分かってくれるだろう。


「俺は監督に救われて、このアニメに救われて、今、こうやって頑張っていけてるんです」



彼が大学を卒業し、立派に声優としての道を進み出して2年経った時。
まだそんなに有名なアニメにも役にも恵まれていなかった彼を、いきなり主役に抜擢させたのは僕だ。




いつか、このまま彼がまっすぐ歩いていて、まだそこまで有名になれていなかったら。
この原石を磨き上げ、そして輝かせる存在に、僕はなろう。



まぁつまり、僕が彼を有名にさせたんだぞ、と。



そう自慢出来る様な存在に、あの時彼はなっていたのだ。



「まだまだ新人だった黒沢君を、主役に抜擢する事に少しの躊躇もありませんでした。

いずれもっと大きくなっていくだろう。でも、そんな彼の代表作に、初主役に、僕の名前も連ねたいなと。そう思っていたわけです」




彼が声優になって12年。名前のある役を貰ってから10年。

そして、初主役をもらってから8年。




あの時、面倒そうに流されるままに生きていた彼を、大人にさせる事が出来た事。

僕はそれを、誇りに思っている。






とある監督の心の内。






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