その他いろんなお話
[4/5]


「本当に着なきゃだめ?」
「「「「だめ!!!」」」」

とある某日。某アニメのイベントのために出演してる声優陣が楽屋で騒いでいた。王家を模したアニメのため、イベントに出る声優は全員演じたキャラクターに合わせた衣装を身に纏うことを観客に約束していた。

「お前がラジオであんな公約するから!」
「だって晃君のその衣装皆見たいかなーって思うじゃん〜!」

主人公の王女役の私、井上麻里奈は真っ赤なシフォンドレスを着ている。とっても可愛くて主人公で良かったな、なんて現金なことも考えてしまった。
アニメのラジオで、今度行うイベントで私たち演者はそれぞれキャラクターに合わせた衣装を着ます!と大々的に宣言をしてしまった。だから私だけじゃなくて、皆それぞれ衣装を着ている。

晃君の隣には白いロングコートをはためかせた騎士役の宮野さん、同じようにシフォンの、だけど色は白色のドレスをした妹役のみゆきちゃん、グレーの燕尾服を着てる叔父役の達くん。皆にニヤニヤ笑われながら晃くんは一人だけ普段着のまま、手にしたその王子様の服を睨んでいた。

「ほらほら早く着替えろって」
「あっきー似合うってー!」
「お前らはなんでそんなにノリノリなの?」
「むしろ晃くんは何でそんなに嫌なの?かっこいいんだから勇気出しなよ!」

みゆきちゃんに思い切り背中を叩かれた晃くんが、ゲホゲホと咳をした。

「笑うなよ絶対!」
「「フラグじゃん」」

ほんとあの3人は仲良しだなぁ。達くんと宮野さんにニヤニヤされながら着替えブースに消えていった晃くん。達君が、じーっとみていた私に気付いて、椅子に座ったままの私に近づいてきた。

「晃の服気になるよな?」
「そりゃーねー、だって顔が見るからに王子様系統だもん」

デビューした当時のあの顔から全く変わらない、むしろ色気も増してきた晃くんに、似合わない筈がないんだけど。
私だけじゃなくて他の共演者、特に女の子達なんてそわそわしながら晃くんが出てくるのを待っていた。

既にドレスや騎士の服を着てる女の子達に可愛い、やらかっこいいやら似合ってるやらと褒め言葉をふんだんに使い切った晃くんへ返す言葉を探しているかのように、皆が衣装ブースに注目していた。

「あああ絶対出たくない無理やっぱ服に着替えていい?」
「「だめーーー!」」

着替え終わったのだろう、そんな晃くんの悪態を無視して、達くんと宮野さんが勢いよくカーテンを引っ張った。まだ着替えてたらどうするんだろう、と苦笑げに見ていれば、カーテンの向こうから晃くんが現れた。

「おお……」
「かっこいい…」


その姿に、この場がとてもどよめいた。

キラキラ輝くエナメルに反射した、私とお揃いの赤色の長いスーツに、金色の刺繍が施されたパンツ。白のモフモフしたスカーフはまだくびにつけずに手に持っている。そのせいか、ワイシャツがはだけていてさらに色気が醸し出されていた。

「いやもう似合わなすぎじゃない俺?」
「いやいやいやあっきー流石だよすっごい似合ってる!」
「ジャニーズじゃんもはや」
「これのどこが?」

はぁーとため息をつきながらブーツを履く晃くんに近づけと言わんばかりに、みゆきちゃんに背中を押された。
なんかお揃いの赤色っていうのがものすんごくはずかしい。

「お!お揃いのまりな嬢がきたぞ晃」
「俺とお揃いでごめんね〜」
「むしろ私とお揃いでごめんなんだけど」

ブーツの紐を結んだままの体制で晃くんが私の顔を見上げる。にへら、っといつものように気の抜けた笑顔を浮かべたまま、晃くんはその手で私の指先をすくった。

「お綺麗です、姉君」

私の弟役として出てる晃くんが、まるでそのキャラクターかのように、そう言った。一瞬で静まるこの場に、私と晃君が主役みたいに中心に立っている。たしかにこのアニメの主役は私と彼ではあるんだけれど。

私も内心驚きつつも、主人公役としての威厳を保ちながら、笑顔を浮かべて。


「あなたも、とても似合ってるわよ」


なんて、声の演技者として申し分ない言葉を伝えてみたりした。




* 前へ | 次へ #
4/5ページ

LIST/MAIN/HOME

© 2018 憂いにキエル。