天蓋の中、一つ

 薄暗い室内に僅かな光の感触を敏感に感じ取ったアスナはベッドの中で意識を覚醒させた。
 目が見えなくなり久しいが、目が見えずとも人は光を全身で捉えるのだという著名な医学者の言葉は正しかったのだと思える。
 皮膚の感触はやはり光のある所ないところでは違うし、まぶたを開けて光のある方へ顔を向けてみれば、光がそこにあるのだと感じ取ることができる。
 見えずとも、世界を感じることで、見えていたときよりも世界の本質が見えているような気がした。
 甘やかな香水の香りを感じて、ふと目を細め、体を包む心地の良い重さにアスナはゆるゆると破顔した。
「――殿下」
 その声は愛おしさに満ちあふれて蕩けそうなほど甘いものだった。
 日頃の騎士の姿などそこにはまるでなく、ただただ純真に人を愛する女性の姿である。
 ――殿下、と呼ばれたシュナイゼル自身の瞼は固く閉じられ、未だ眠りの中にいる。
 そっと、シュナイゼルの頬を探し当てて、グローブをしていない指でそっと撫でると、眠っているはずのシュナイゼルが僅かに身じろぎをして、アスナを抱きすくめる腕に力が入った。
 互いに何もまとわず、ただ、ゆるゆると溶けるような熱を感じ取りながら、眠りにつく。
 それがたまらなく幸福で、たまらなく愛おしい。
 アスナはシュナイゼルの唇にそっとキスをする。
 触れるだけ。
 なのに、こんなに心臓が早鐘を慣らしてうるさく、アスナはいたたまれなくなるとそっと体を起こして、シュナイゼルの腕の中から逃げ出した。
 天蓋のレースで覆われているベッドは隔絶された鳥かごのようだと思うこともしばしばあるが――それすら心地よいのだ。
(これも、殿下に妃殿下ができるまでの間だろうが)
 アスナは困ったように笑い、未来のブリタニアのファーストレディのことを思う。
(殿下に御子ができたら、さぞや美しかろう。私はそれを守り、慈しみ――殿下とその全てを守るための盾になればいい)
 乱れてしまった赤い髪を落ち着かせながら、アスナは微笑んだ。
 シュナイゼルはいずれ、自身のためになる后を娶る。
 今の所、現皇帝の子どもたちの中で結婚しているものは一人もいないが、恐らく第一皇子か宰相であるシュナイゼルが皇子・皇女たちの先陣をきって結婚することになるだろうとアスナは思っている。
 シーツから足をおろし、アスナは近くにかけてあったガウンを羽織ると、ひたひたと素足のまま歩いてシャワールームまで向かう。
(より良い、后を迎えていただこう。そういえば、先日送った写真は見ていただけただろうか)
 アスナはシュナイゼルを愛している。
 だが、それは侵してはならない騎士の誓いに抵触することを知っている。
 マリアンヌのことを挙げられるとさすがのアスナも口ごもるが、彼女自身は、自分がシュナイゼルにふさわしいと思ったことは一度もなかったのだ。
 故に大公爵として培った縁を使って、シュナイゼルの后候補を列挙していく毎日が今のところは続いている。
 尤も、忙しいとその見合いはシュナイゼルに笑顔で却下されてしまうわけなのだが。
(そろそろ、殿下にも本気で腰を据えていただかなければ。皇帝になるにしろ、ならないにしろ。――后様の存在は大きいだろうからな)
 アスナは騎士だ。
 剣となって、シュナイゼルの前で戦うことはできる。
 だが、シュナイゼルを支える盾の役割は担えないだろうと思っていた。
 そういう、シュナイゼルを慈しみ、支えてくれる后の存在を必要としていた。
 自分が後ろを振り返らずとも、シュナイゼルが大丈夫だと思えるような、そんな。
 アスナがシュナイゼルに身体を許すのは、シュナイゼルに望まれるからだ。
 シュナイゼルに望まれれば、どんな願いでも果たして上げたいとは思う。
 彼に恋愛感情があるなしはあえて問わない。
 現に皇帝だって、百八人の皇妃がおり、多くの子供達がいる。
 シュナイゼルは欲に薄い方ではあるが、役割は理解している。
 アスナはそのための準備でいいと思っている。
(……そろそろ、カノンからも進言させるか)
 最近は、この手の話はアスナの意見を聞かなくなってきているシュナイゼルに対して、新しい手をうつ必要があるなと考えながら、アスナは目覚めのために熱いシャワーを自分の体にふりかけた。
(そういえば、私自身の見合いのこともあったか)
 アスナは思い返しながら、シャンプーを探して手を動かした。
 指の感触でシャンプーを探し当てると、たっぷりと手の上に広げて、髪へと広げて泡立てた。
(まあ、苛烈なイメージでもついているのだろう。断られることも少なくはないのだが)
 アスナへの見合いは基本的にその師であるビスマルクが持ち込んだものだった。
 良家の子息も入れば、諸外国の王位継承権の低い王子なんていうのもいた。
 そういうのは大抵アスナより地位が下で、アスナの配偶者となったほうがより権力を握れるという者が多いのだ。
 女性で大公爵となったアスナが、騎士として戦い、死ねばその地位は回り回って自分に来ると思っているのだろうと思う人間も多い。
 アスナとしてはそういう相手でもどうでもいいのだが、それが殿下に害意を為すとなるならば話は別だ。
 そういう奴らはいずれ、牙をむくものだ。
 アスナという抑止力を失えば、権力を手中に収めて好き放題するような連中に、自分の夫の座を明け渡す気にはアスナもなれない。
 泡を丁寧に流し落として、アスナは髪を左右へ振ってわずかに水気を払った。
(まあ、ヴァルトシュタイン卿の用意した見合いはそこそこ良縁だったな。人柄も重視してくれているのか)
 これまで、何度か会食という形で見合いをしたし、パーティーでも会ったことがあるが――いまだ、ピンと来る人間がいない。
 そういうことを口にすると、父は快活に笑って「基準がシュナイゼルだからだろう」という。
 いや、否定はしないが、とアスナは思う。
 これまで最も身近な男性がシュナイゼル・エル・ブリタニアだったというのがアスナの最大の悲劇かもしれない。
 あれだけ完璧を体現したような男が身近にいると、並大抵の男では満足できなくなってしまう。
 もちろん、相手の男性を殿下と比べるなど殿下に対して不敬にも程があるし、シュナイゼルがそもそも規格外なのだと知っているアスナとしてはこの悪癖を抑えたいところである。
 シャワーを止めて、シャワールームから出てくると数人の侍女たちがタオルを広げて待ち構えていた。
 髪や身体についている水滴を一つも許さないと言わんばかりに彼女たちの手によって拭き取られていくのをアスナは平然と受けていた。
 騎士とはいえ、大公爵家の娘。
 このような扱いは当然のものとして甘受している。
 シュナイゼルの離宮ではあるが、ここではアスナは騎士としてではない扱いを受けていた。
 着替えも速やかに用意されており、侍女たちは慣れた手付きでそれをアスナにまとわせた。
 一つ一つ、見えないアスナのために丁寧に声をかけてくれる彼女たちにアスナは感謝を忘れられない。
「終わりました―閣下」
「ありがとう、済まなかったな」
 本来ならアスナはこの離宮に住まう人間ではないのでここまで手厚くされることもないはずなのだが、シュナイゼルはいつもアスナを破格の対応で迎え入れた。
 ただの遊び相手、だというのに、と言わんばかりに表情を曇らせたアスナを見て、やきもきするのは侍女たちの方なのだ。
(ああ、私達の殿下はなんて、なんていじらしいことを!)
(早くお気持ちを伝えて、奥方として、迎え入れられればよろしいのに!)
 アスナはシュナイゼルの結婚について自分以外のものをと考えているが、この離宮の者たちはすでにアスナをシュナイゼルの妻になるものだと考えている。
 でなくては、物事にあまり執着を持ちえず、興味を示さない自分たちの主人がここまでこだわったりしないだろうと皆が思っているのだ。
 ――知らないのは当人ばかりであるが。
 アスナは侍女たちのそういった様々な思惑のある礼を受けながら、いつもどおり寝室へと戻っていく。
 アスナがシュナイゼルを起こす時は、リバリーズに着替えて全ての準備が整ってからと決まっていて、侍女たちに何重にも確認してもらったので、そこにはいつもどおりのシュヘンベルグ大公爵がいる。
 天蓋の奥からは未だ寝息が聞こえてくる。
 普段が忙しい人であるのでもう少し休ませてあげたい気分にもなるが、今日は朝から会議が一つ、その後は諮問会があるためシュナイゼルが寝坊で欠席などと―完璧な第二皇子の名に傷をつけさせる訳にはいかない。
 アスナはまず、部屋のカーテンを開け放つ。
 夏の終わり掛けの、煌々とした朝の日差しが部屋の中にいっぱい入り込んでくると、さすがのアスナも光の度合いがわかるようになった。
 う、と短く天蓋のレースの向こう側から呻く声が聞こえて、アスナは苦笑した。
「さあ、殿下、起きなさいませ」
 レースの天蓋を開けると、アスナの腕が引っ張り込まれて、再びベッドの中だ。
「こら、殿下」
 子供を諌めるような口調でアスナはシュナイゼルに声を掛ける。
「もう少しだけ……」
「なりません。さあ、起きなさい」
 力で言うなら、アスナのほうが強い。
 伊達に騎士をしているわけではないのだから、アスナはシュナイゼルに掴まれた手を掴み返すと引きずるようにしてその体を起こした。
「最近、容赦ないね、君は」
「遠慮をしていては殿下のペースに飲まれてしまうとアスナは学びました故。カノンが起こしに来るよりも早く起きられたほうが殿下のためでは?」
 これから支度に時間がかかるのだから、とアスナが言えば、シュナイゼルは渋々と起き上がる。
 すでに洗面から何から何まで済ませているアスナはベッドに引きずり込まれたせいで少しばかり乱れてしまったリバリーズを手で直して、シュナイゼルが足置きに足を置いたのを確認して、優しく微笑んだ。
 侍従たちが部屋に入ってきたのをアスナは感じ取って、それでは先に、という。
「いてくれないのかい?」
「――見えないとはいえ、女性が男性の着替えの場にいるわけにはいきませんよ、殿下」
 少し寂しそうな顔をするシュナイゼルの頬にキスを落として、アスナはすんなりと退室した。

 ――ここ数年、毎日の光景になりつつある朝のやり取りである。

 ――皇暦 2014年9月。
 数多の問題を内包しながらも、神聖ブリタニア帝国の栄華は未だ陰りを見せず、その版図拡大はとどまるところを知らなかった。
 神聖ブリタニア帝国、ナイトオブサーティーンであるアスナは目の前で新聞をめくるシュナイゼルの対面でサンドウィッチを齧って、困ったように笑った。
「殿下、お食事はおちついて召し上がられてはどうです」
「ああ、済まなかったね。少し気になって」
 シュナイゼルは静かに新聞をテーブルの上へ置くと、食事へと手を付けた。
「エリア15も安定した統治ができてきているようですし、心配していたエリア11――クロヴィスの方も大きな問題は起きていないようですね」
 丁度一年前、エリア11の総督職についたクロヴィスの統治は大なり小なりテロに見舞われるものの、矯正教育エリアから格上げされることに決まっている。
「テロは多くとも、元々彼は世論操作がうまかったからね。――コーネリア曰く、手ぬるいらしいが、テロリストたちの牙もゆっくりと削がれていくだろうね」
 朝食を食べながらする会話としては些か物騒であるようにアスナは感じられたが、これも常のことだ。
 スープを口に運ぼうとしたところで、少しこぼしてしまった。
 「あ、」と小さくこぼした言葉をシュナイゼルは聞き逃さなかったのか、手慣れた手付きでアスナの口元にハンカチを当てた。
「慌てなくても大丈夫。手伝おうか?」
 服には幸いにしてこぼれていないのをシュナイゼルは確認して、アスナの口元を綺麗にする。
 目が見えないと時折こういうこともある。
 少し萎縮してしまったように、すみませんというアスナに優しく微笑みかけた。
「私としては嬉しいよ? こうやって、君の世話をさせてもらえるのは」
 食事の場にはアスナの介助人は入れていない。
 失明していても日常生活に大きく支障をきたしていないように見えるアスナだが、やはり不便なのは不便。
 着替えには必ず侍女がいるし、入浴にも一人で難しい時は数人の侍女を入れる。
 だが、食事は基本的にシュナイゼルと二人きりになることが多いので、必然的にアスナの介助をシュナイゼルが行ってくれるのだ。
 まさか、畏れ多い、と当初のうちは全て自分でやると言い張ったアスナだが、流石にこういったやり取りを何度も繰り返すうちに慣れてきたのか、少しだけ萎縮する程度に留まっている。
「こうやって、時間を過ごせることが私にとってはとても大切なものだから、遠慮せず甘えてほしいのだけれどね」
 シュナイゼルがそうやって優しく言うので、アスナは困ったように笑いながら、では、少しだけと手伝いをお願いした。
 そうやって和やかな朝食を楽しんだ後、しばしお茶の時間を過ごした。
 紅茶はアスナが手ずから淹れたもので、最初はハラハラと見守っていた侍女たちだが、最近ではあまり口を出さなくなってきた。
 見えなくてもできることはできる。
 時折、失敗しそうになったときや危ない時に声をかけてくれればいいというアスナの言葉はこの離宮の人間たちには伝わっている。
「今日のお茶請けはその、私が作ったのですが。――形が不揃いですみません」
「そうかな? 気にならないよ」
 紅茶のカップをテーブルの上に置いて、アスナは少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
 以前、シュナイゼルのために料理をすると約束していたのは、こういう形で果たされているのだ。
 シュナイゼルはショートブレッドを一つつまみ上げて、口へ入れる。
「ん、おいしいよ、アスナ」
 シュナイゼルのとろけるような笑顔を感じ取って、アスナも柔らかく微笑んだ。
 おいしい、と言ってもらえて何よりだ、と騎士の仮面もなく、柔らかな雰囲気を出している。
「アスナ、砂糖とミルクは?」
「あ、砂糖は一つで、ミルクは――」
「たっぷりと?」
 見えないアスナの代わりにシュナイゼルがアスナの紅茶に砂糖を一つ、ミルクをたっぷりと入れた。
 それに嬉しそうに頷いたアスナを優しく見つめて、シュナイゼルは穏やかに微笑む。
 朝食時ぐらいにしか、ゆっくりとできる時間が取れないため二人は必然的に早起きをしてこういう時間を確保する。
 夜はシュナイゼルが晩餐会だ、パーティーだと忙しく、帰ってきたら日付が変わっているなどよくあることで、その後からゆっくり話をするという時間もない。
 昼はアスナがKMFの訓練や調整、軍の仕事で引っ張りだこで忙しい。
 ――となれば、朝食だけがチャンスだ。
 でなくてはわざわざ、朝食後にお茶の時間まで用意する必要性がない。
 それに、しばらくの間はアスナもいなくなる。
 ナイトオブサーティーンは皇帝直轄十三軍を預かり、特権として騎士団も持っているのだ。
 ユーロピアとの戦争が本格的になってきている昨今、アスナという戦力をいつまでも温存しておくのは得策ではないと、ついに出撃命令が下ったのはひと月前だ。
 今日の出兵式のあと、アスナはしばらくの間本国を離れることになる。
「寂しくなるね」
「といっても、私は殆ど示威行為が目的なようなもの。ひと月ほどで、ナイトオブテン―ブラットリー卿と交代の予定ですよ。新しいラウンズに手柄を譲らなければ、周りもうるさいので」
 版図拡大のための戦はコーネリアが引き受けることも多くなり、ラウンズとして戦場へ出ることも少なくなってきたアスナは実は喜んでいる。
 今までのように焦る必要がなくなったという安定感もあるのだが――趣味であるKMFの開発により多くの時間が割けると大手を振ってKMFの研究に着手し始めたのだ。
 これまでは戦うことを主としていたが、自分の見えない目を如何にKMFでフォローし、戦場で立ち回るのか――実際、彼女とコーンウォールが開発している新技術は医療サイバネティクスという面においても優秀で、シュナイゼルのもとにも技術提供の話が来ているほどだ。
「なら、早いのかな?」
「ナイトオブテンの凶状についての査問会が終わり次第とのことですが」
 ナイトオブテン、ルキアーノ・ブラットリー卿は吸血鬼の名にふさわしく残虐な男だ。
 これまでのことを考えれば、ラウンズになるなどと誰が想像したのかというほどの大逆人であるが―ナイトオブワン、ビスマルク・ヴァルトシュタインが叩き伏せたことで皇帝に忠誠を誓ったとのことだが、決して全ての罪が許されたわけではなく、今後彼が信頼に足るのか否か、査問会が行われることは決定していた。
「君は出ないのかい?」
「……彼はどうも苦手でして」
 人の好き嫌いは比較的少ないアスナであるが、ルキアーノという人間はどうにもできるだけ避けたいタイプであった。
 凶暴なだけの獣かと思えば、その本質は人をよく見ており、その中身―本質をしっかりと見極める目を持っている。
 アスナの騎士の仮面の裏側まで見られているような気分になるのだ。
 目が見えないアスナはその人間の本質を見つめているが、ルキアーノに至っては深淵を見つめる時、深遠に見られていると言わんばかりに見つめ返されていると思うことが多くて、苦手だ。
 ビスマルクに紹介されたときも、アスナは嫌悪感にあまり早々に退室してしまったという経緯もあってか、ルキアーノとの接触はできうる限り避けていた。
「珍しいね。――と、ああ、もうこんな時間だ。引き止めて済まなかったね」
「いえ、私も楽しかったです。よろしければ、宰相府までお送り致しますよ」
 アスナは席から立ち上がり、侍女たちに片付けを頼む。
 シュナイゼルが室内から出ていき、車寄せまで歩いていく後ろをぴたりとついて歩くアスナは少しずつ騎士の顔へと変わっていく。
「だけれど、今日は軍教練があるのだろう? 方向が逆じゃないか」
 遅れてしまうよ、困ったように笑うシュナイゼルを前にしてアスナが胸を張った。
「自慢ではありませんが、私はよく時間をずらしておりますから。多少の遅刻を咎めるのはコーネリアぐらいですね。私が多忙なのは皆も知っておりますし」
「でも、そのコーネリアが一番怖いだろう?」
「今日は遠方への遠征に親衛隊、グラストンナイツも引き連れて出ておりますから、すぐには伝わりませんよ」
 すでに待機していた車のドアを開けてアスナは笑ってみせた。
 ――ああ、以前に比べて笑うようになったな、とシュナイゼルは感慨深げにアスナの笑顔を見つめる。
 騎士の仮面を貼り付けていた時は、なんだか笑顔すらぎこちなかったのだな、と今の笑顔を見ていて思う。
「では、頼もうかな。私の騎士」
「イエス・ユア・ハイネス。ご拝命賜り光栄です、殿下」
 大仰に恭しくしたアスナに対してシュナイゼルは全く、と嘆息しつつも車へと乗り込んだ。
 それについてアスナも車に乗り込むと、運転手は静かに車を発進させた。
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