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鬼道が私に触れる手は、いつも少し震えている。
「鬼道」
「なんだ」
「そんな、緊張しなくていいよ」
鬼道が緊張してると、私も緊張しちゃうよ。
鬼道はいつだって、私を割れ物みたいに、大切に大切に扱う。頭を撫でたり、頬に触れたり。
鬼道の暖かすぎず冷たすぎない手が私は大好きだけど、欲を言えばもっと堂々と触ってほしい。だってせっかく両想いになれたんだ。
「…すまない。」
「私こそ…お互い慣れるまで、待とうって思ったんだけど、」
ちょっと、限界、かもしれない
私は鬼道の肩を押してぐっと距離を詰めた。
…なんかこれ、思ってたよりだいぶ、恥ずかしい。
「…好き、だよ」
「俺も好きだ。みよじを、とても大切にしたいと思ってる。…だからこそ、怖いんだ、少し。みよじに触れるのが。」
「わかってる、大切に思ってくれてありがとう」
私はちゃんと知ってるよ。鬼道がどんな時でも私のことを一番に考えてくれてるってこと。それが、涙が出そうなくらいうれしいんだよ。
「でも、私は大丈夫だよ。もっと、触っても、平気。」
「だが…」
「大丈夫。自分の身の危険を感じたら、鬼道のこと殴り飛ばすくらいの覚悟はできてる。」
半分冗談半分真面目に言ったら、鬼道は抑えてたものがなくなったみたいに思い切り笑った。
それから、私の額にキスを落とした。
「みよじ、好きだ」
「うん、私も」
二人の間にはゆったりとした空気に包まれていて、 ああ、幸せだなあ、と感じる。
私たちはこれから、ゆっくり、ゆっくり、前に進んで行くんだろうな。
ゆっくりな分、たくさんのしあわせを噛み締めて生きて行くんだろう。
この人と一緒なら、どんな道でも、どんな進み方で、なんでもいいや。
そんなことを考えながら、鬼道に思い切り抱きついた。
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前のサイトに載せていたものを少し修正しました。付き合い始めくらいは、鬼道さんには苗字で呼ばれたいなあと思ったので苗字にしてみました。
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