本日は日曜日、お店はお休みで晴天!

少し早起きして、お気に入りのカフェでモーニングを食べてからエステ、ランチを食べたらヘアサロンとネイルサロンへ行って、消耗品を買い足して、もう時刻は午後1時。
それでもぽかぽか陽気は衰えず、少し休憩がしたくなって近場のカフェに入って一休みしていた。



「(ふー...、たくさん買い物してしまいました...。でも、満足ですわ。)」



化粧品や服飾品、常備用のコーヒー豆や紅茶、シャンプーなどがたくさん詰まった紙袋を向かいの席に置いて、運ばれてきたコーヒーを飲みながら、街の様子を眺める。

イチゴのタルトケーキは自分への御褒美ですわ!

カフェテラスからは、手を繋いでデートをする恋人たち、家族で日曜日におでかけをする心和む姿。


スキンヘッドの団体の集団お散歩.........?




「な、なんですのあれ...。


...ま、いいですわ!せっかくのお休みだし楽しまなくては!」



流石のわたくしもお馬鹿ではありませんので、問題を起こしかねないことに自分から関わったりなんてしません。コーヒーに口をつけて、最近買った自己啓発本をパラパラと読み進める。
店内のクラシック以外にも「なぜ働かなければ...!!!」と声が聞こえるが、紀元前、ましては類人猿のころからそれぞれ役割を持って仕事をこなしてきたのだから仕方ない。あの方たちはあれですわね、デモというか、そういうものと解釈致しますわ。

本の1章を読み終えて、少し休憩しようとコーヒーを口に運んだ時。



ドドォオン...!!

「きゃっ...?!」

「キャー!!!!!」
「なんなんだ?!」
「び、ビルが崩れ落ちたぞ!」


「な...!!た、ただの青年団体のパレードでは無かったのですか?!」



ものすごい地響きと轟音がして、風圧でガラスがガタガタ鳴く。
店内の人たちはそれぞれ逃げ出してしまった。
先ほどの人物たちがビルの破壊を行ったらしく、辺りではハゲがー!と悲鳴が上がっている。わたくしも荷物を持って急いで自宅へ帰ろうと走っていると、進行方向から悲鳴があがった。



「キャー!誰か救急車を!!」
「無免ライダーがやられたぞ!!」



視線の先には、先ほどの団体「桃源団」の遠ざかっていく背中と、瓦礫の真ん中で頭から血を流して倒れている男性の姿。思わず走り寄ると、どうやら頭を強く殴られたようでとめどなく血が溢れてくる。



「あ、あなた、大丈夫ですの?!」

「私は...だ、じょうぶ...あなたも早く、逃げ、なさい...。」

「目の前に頭から血を流してる男性がいて逃げるほど、わたくしは薄情じゃありませんことよ!もうどなたかが救急車を呼んでくださってます、辛抱なさって!」




頭の怪我ということだし、傷口を強く圧迫するにしても骨がやられていたらと思うと下手なことが出来ない。
人混みは彼がやられたことによって一瞬で引いた。先ほど演説?をしていたハンマーヘッドが、彼、無免ライダーさん(と誰かが言っていた)を1発でのしたことによって恐怖し、みんな逃げ出したのだ。

ものすごい出血量で、たらたら流れるなんてレベルでは無くなっている。顔は青白くなって、そこまで暑いわけでもないのに汗が流れ続けている。このままでは危険です、目視できるぶんだけでも血溜まりが広がっているし、このガレキや道路の破壊具合では救急車が来るまでなんてもたないでしょう。

父様の教えに従って...使うしかないですわね。



「意識をしっかり持って...!」

「ぜぇッ...早、逃げ......ヒュ...。」

「見捨てたりなんてしませんッ........少し、失礼しますわ。」



この混乱では救急車もしばらく来ないし、みんなここから逃げ出してしまって、瓦礫の中にはわたくしと彼の2人だけ。このままでは彼は失血死してしまう。

わたくしは自分の手のひらを傍らに落ちていた大きめのガラスの破片で切り付けた。ゆっくり刃を走らせるあのチリチリした独特の痛みに耐えると、それなりに深くいったのか血がたらたらと流れてきた。

傷口を唇で覆って血液を口内に溜める。



「...ぜぇ、...ぜぇ.........ッ?」

「(もう少しですからっ...!)」


膝をついて無免ライダーさんの顔に自分の顔を近づける。頭を負傷してるのだから痛いだろうけど、零されたら意味が無いので頬を包んで上を向かせる。


ぐいっ
「ウグッ...!」

「(我慢してくださいね。)」

「ふっ...んぐっ?!(血、なのに、甘い...?!)」



無免ライダーさんの唇に自分の唇をぴったりと合わせて、口内の血液を流し込む。舌を絡めて口内の血液を綺麗に舐め取らせたら、パッと口を話して手で無免ライダーさんの口を押さえる。



「飲み込んでください!!気持ち悪いかもしれないけど、こうしないと貴方は失血死してしまいますわ!」


「んぐッ...ふ!ウ......ゴクッ、ぷはっ!はぁ、はぁ、い、一体何を




あ、あれ?..............痛みが、消えた?す、すごい!傷口も塞がってる!!あなたは、一体...!」

「お願いです、どうかこの事は誰にも話さないで。」

「あ...!ま、待ってくれッ...せめて名前を!!」



無免ライダーさんの制止を聞かずにその場を後にする。彼はきっと誠実な人だと思いたい。この血のことが世間にバレたら、わたくしはきっとこの街には居られなくなって、サイタマさんからも離されてしまう。
だけど、目の前で死にかけてる人がいるというのにほうってなんておけなかった。

荷物を持ってビルの影に入って、翼を生やすと(わたくしは2300年以上生きているので翼があるのです)そのままZ市へと飛び去った。

途中、交差点の巨大スクリーンには、彼ら桃源団の目的はゼニールさんのビルの破壊、そして働かなくても生きられる世界にするまで暴れ回る。という事だ。なんとも馬鹿らしい...。


Z市はまだ彼ら桃源団の目的であるゼニールさんのお屋敷とは反対方向だったために、途中までタクシーに乗って(タクシーのおじさんに病院を勧められたけれど、早く自宅へ帰りたかったのです。)Z市の入口にやっとのことで到着した。
車は渋滞、電車は途中まで止まっていたから、マンションへ着いたのはもう午後3時半になっていた。



カツン、カツン
「(自分の傷の治癒力は無いというのに、馬鹿ですわね...。)」


ガチャッ!
「○○さん!!」
「じぇ、ジェノスさん、どうなさったのです、慌てて...」

「先生が今しがた倒してきた桃源団が街で暴れた...と...」



ヒールの音を聞きつけたのか、廊下へと到着したと同時にサイタマさんの部屋のドアが開く。そこにはクセーノ博士に完全修理してもらったのか傷一つ無いジェノスさんが。

ジェノスさんはわたくしの肩にかかっている荷物を手にしようと近づいてきて、わたくしの手のひらに気がついたようだった。




「これはっ...どうしたんですか?!」
「あの、こ、転んだ拍子に破片で...。」

「すぐに手当てします!」
「えっ、あ、お邪魔致しますわ!」



腕を引かれて、そのままサイタマさんのご自宅へとあがる。サイタマさんはこちらに気付くと立ち上がって荷物を床に下ろしてくださった。キッチンで手を流して、促されるままに座布団へ腰を下ろす。



「○○どーしたんだそれ...。」
「これはっ転ん」
「転んだというのはきっと嘘でしょう、切り口が綺麗すぎる。切りつけましたね?」

「ウ......。」



サイタマさんがキッチンでタオルを濡らして下さりながらカウンター越しに問いかけてきて、それに答えようとしたけれどジェノスさんがわたくしの嘘を見破った。
確かに、不自然なくらいにまっすぐな傷ですものね...。

サイタマさんは濡れタオルで(あったかい)優しく溢れ出る血液を拭って下さると、交代するようにジェノスさんが消毒液をたくさん含ませたティッシュで傷口を拭う。いたた...。



「...誰かに、血を与えましたか?」

「え、そーなのか。お前それバレたりしねぇの?」


「ヒーローの方で、あまりの出血量で、放っておいたらきっと死んでしまってましたわ!そのまま素通りなんて出来なくて...。でも、あの方はきっと誠実な方です!そんな気が、するんです...。」




自分の軽率な行動に今更ながら反省する。

この血のことがバレたら、世間は大騒ぎだろう。怪人としてヒーローに処分されるかも。
きっと何かの研究所につれていかれたり、それこそ大昔に起こったイェルクヴェイン狩りのように、血を狙った誰かから殺されたりされかねない。

わたくしは、おふたりに心配を掛けてしまった。
きっとおふたりとも怒っていらっしゃるわね...。



「...ま、お前がそう言うんならいいんじゃねえか。なんかありゃ、俺もジェノスも居るし。」

「そうですね。でも、あまり使わないでください。○○さんの体に傷がつくことから俺は嫌ですから。」



「......怒らないんですの?」



「別に?○○がそいつを助けたかったんならいいじゃねえか。間違ったことしてないんだし。」

「○○さんは、優しい方ですから。」



「.........はい...!」



ああ、やっぱりおふたりは優しい。

わたくしは、こんなに素敵な人に心配を掛けてしまったのですわね。やっぱり、反省ですわ。
ジェノスさんは優しくガーゼをあてて包帯を巻いてくださった。
それから手当てを終えて、お礼に、と夕飯をご馳走することにしたわたくしは1度自宅へ戻り食材を手にまたサイタマさんのお宅へとお邪魔した。
ジェノスさんとサイタマさんには手の怪我を濡らしてはいけない、と言われたので、ゴム手袋をつけて、重いものはジェノスさんにお手伝いをお願いした。

今日は昨日ゼニール様から頂いた高級牛肉を使ってすき焼きをすることにした。



「○○さん、鍋は俺が運びます。」
「ありがとうございますジェノスさん、じゃあお願いしますね。」

「おーーーー!いや、ほんと、こういう時はまじで○○が隣人で良かったと思うわ...!!」

「今日はおふたりへのお礼も兼ねてです。わたくし1人では食べきれなかったし、気になさらないでたくさん食べてください!」



「んじゃ、「「いただきます。」」」



3人で手を合わせて、夕食を頂く。うーん、やっぱりぜニール様からの頂き物はとっても美味しい!今度、お菓子と一緒にお礼を致しましょう!

3人でお鍋をつついていると、サイタマさんは「あ。」と思い出したように声を出した。



「?」

「○○、俺とジェノス、ヒーロー認定試験受けてくるわ。」

「まぁっ!素晴らしいことですわ!やっとサイタマさんのご活躍が皆様の目に触れるのですね...サイタマさんとジェノスさんなら、きっと満点で試験に合格致しますわ!頑張ってください!」

「ありがとうございます、○○さん。」
「さんきゅーな○○、あ、卵取って。」
「どうぞサイタマさんっ!」



サイタマさんとジェノスさんなら、きっとS級ライセンスへ合格致しますわ。明日は残念ながら出勤日ですが、明後日にでも結果をお聞きしましょう。
もし、いいえ、きっと合格しますから、何かお祝いをご用意しておきましょう。紳士向けプレゼントのカタログがあったから、それから選ぼうかしら……。

わたくしは高鳴る気持ちを落ち着けるように卵を絡めたお肉を口に放り込んで、一心不乱にご飯をかき込むサイタマさんと、姿勢よくしてすき焼きを咀嚼(そしゃく)するジェノスさんを見てとっても気分が良くなった。


ぜったい、ぜったい、おふたりともS級は確定ですわ!!


お腹いっぱいになって、ジェノスさんは明日に向けてそのままサイタマさんのご自宅へと泊まるそうなので、わたくしもお礼を伝えて自宅へと戻った。



そこに先客がいるだなんて思わなかったのだけれど。