【Z市、サイタマ自宅】
「なんつーか……いろいろあったけど、なんとかなって良かったな。」
「そうですね。俺がここをあけた三日間の間に○○さんも回復されましたし、良かったです。「」
「○○の血って本人にも効くんだな。」
「はい、1日で傷が無くなるのはとても素晴らしいです!
……ただ、忙しくてあれからお会い出来ていませんね。」
「ああ……ま、しょーがねーよ。あいつの新しい仕事なんだしさ。」
「……はい。」
例の海人族の襲来から、3日が経った。
深海王を倒した後に現れた怪物となった○○さん。何も出来ない不甲斐なさに泣きすがる俺の隣にサイタマ先生が現れた時、○○さんは力尽き、安心したように目を閉じた。
その後にひと騒動あったが、突然○○さんの体はハラハラと崩れ落ちていき、次第に小さくなっていくと、俺達がよく知る美しい姿の○○さんへと変わった。
その後、ヒーロー協会は○○さんに対する説明などに追われ、連日ニュースでは謝罪会見などが流れた。
○○さんはヒーロー協会の運営する病院へと運ばれたが、自分の血液を用いて瞬く間に回復して、今は仕事に復帰している。
【三日前、避難シェルター前】
『ずっと見つけてやれなくてごめんな、○○。』
『う、ぐ、…○○さ、○○さんッ……!』
『……ん?』
サイタマ先生が○○さんに触れると、○○さんは力尽きたようにまぶたを閉じて、動かなくなってしまった。
○○さんにすがり付いて泣く俺の背後で、無免ライダーが何やら声を出した。無免ライダーがこちらへと駆け寄るのを感じて振り返ると、そこにはシェルターの中にいた他のヒーロー達やヒーロー協会のヘリに乗り込んでいた人間たちが大勢こちらへと近づいてきている所だった。
『……!彼女はまだ生きている!サイタマくん!早く手当てをしなくては!!』
『…本当か?!なら』
『おい、C級のサイタマ!こいつは何なんだ?!』
『あ?……えーっと…タンクトップ…?』
『タンクトップブラックホールだッ!この化け物が生きているならトドメをささねばならんだろう!』
『あ?こいつは敵じゃねーから。お前手が空いてるなら手伝えよ。今から手当てして病院連れてかなきゃなんねー。』
『なっ、た、助けるというのか?!このバケモノを?!』
『退きなさい!さぁ退いて退いて!』
押し問答をするタンクトップブラックホールとサイタマ先生の間を割るように、突然背後から聞こえた多数の足音と声。それは黒いスーツに身を包んだヒーロー協会の人間たちだ。そいつらは○○さんへ近付くと何やら慌てた様子で奥から医療班や特殊部隊を呼び込んでいる。
『く、貴様ら、何をするつもりだ?』
『おお君はS級ヒーロー ジェノスくん!彼女は未来をより良くする為にヒーロー協会に協力してくれたのだが、前回の隕石によって破壊されたシェルターからこの怪人に連れ去られてしまってね。』
『協力だと?』
『ああ、彼女は自ら名乗り出てくれたのだ。…だが、やはり不可をかけ過ぎたせいか感情が暴走して覚醒してしまったようだな。しかしまだ自我があったのか凶暴性は無かったから良かったよ。』
やれやれ、と面倒そうに○○さんを見上げるヒーロー協会の役員に殺意を抱く。こんな風にしておいて、やれやれだと?
しかしそんな俺を制するようにサイタマ先生は俺を○○さんから離し無免ライダーに託すと、走って傷口を確認しに走った。
その時、○○さんの身体がモゾッと身じろぎをした。周りのヒーロー達やシェルターの民衆は驚いて悲鳴を上げる。
『ほ、ホラ見ろ!また襲ってくるぞ!!』
『タンクトップブラックホール!やっちゃって!』
『よしきた!俺に任せ』
『う………。』
『?!』
『……サイタマ、さん?』
『お!○○!気が付いたか!』
○○さんは、身じろぎをして頭を動かすとサイタマ先生を見る。発言した声は先ほどのしわがれた声ではなく、いつもの綺麗な○○さんの声だ。
タンクトップブラックホールは振りかぶった拳を驚いて宙で止めている。
○○さんはまだ苦しそうだが、荒く呼吸を繰り返しながら謝罪する。
『すみません…黙っていなく、ゥ!なって…。』
『ったくよー。ほんとだよ。』
『名前#さんっ!体は…?』
『ちょっと、だけ、痛いですわ…。ああ、わたくしは、こんなに街をッ、破壊して、しまったのですか?ごめん、なさい…。』
○○さんはぐるりと周りを見回す。すると地面に立つヒーロー協会の役員と目が合ったようで、(雰囲気だが)しょんぼりとした様子で再び謝罪を口にした。
ヒーロー協会の役員は眉を歪めて○○さんを見るとため息をついた。
『それは良いのですが…現状として自制は聞くのですかな?そのような姿になられては、またメタルナイトに依頼を出さねばなりませんぞ!』
『な、キサマッ、○○さんをまたあそこへ閉じ込めるつもりか?!』
『そういう契約だ!未来の為にも、彼女には協力してもらわねばならん。』
『なんだと、』
『ウゥ…ッ!』
『?! ○○さん!』
『体が、いた、い……!!!』
『……これは、花びら、か?』
俺と役員が言い合いをしていると、○○さんは小さく唸って苦しみ出した。すると、びゅうっと風が吹くと同時に白い花びらが風に舞う。○○さんの体からパズルが剥がれるようにほろほろと崩れだして、しだいに獣の体が小さくなっていく。
蚊帳の外だった民衆もざわめきだし、サイタマ先生は後方へと回っていた為に舞ってくる花びらをかき分けながら○○さんの頭の方向へと走ってきた。
『なにあれ?花びら?』
『いい匂い…フリージアよ。』
『ヒーロー協会の人間と話してたぞ?』
『どんどん小さくなってく……!』
『うわっぷ!前が…、おい○○!ちっちゃくなってってるけど大丈夫か?!』
『サイタマ、さ…なんだか疲れたみたい、で…。でも、元の、姿に、戻れそう、です……。』
『お前ちょっと休め、ちゃんと病院連れてってやるから。』
『ほほお!素晴らしい!人型へと戻るぞ!』
サイタマ先生が駆け寄ると同時に、花びらが一際強い風に煽られて散らばると、花弁の中から、白いワンピースを着た○○さんが現れた。
○○さんは立っていた状態からフッと力を失って前のめりに倒れると、サイタマ先生が体を抱きとめた。
サイタマ先生の腕の中で気を失う○○さんは、いつものように美しい真珠の肌をして、淡い薄紫の髪を流していた。だが、獣姿だった時に受けた傷はそのままで、横っ面を腫らせて、鼻と口からは血がぽたぽたと滴り、脇腹と腰からも流血が見られた。
『ああっ!イェルクヴェインの貴重な血液が!!おい医療班早くしなさいッ!!流れ出る血液は出来るだけ採取しておけよ!』
『み、見てあれ!女の人よ!』
『あれってさっき水槽にいた人?』
『やっぱり!あの無免ライダーを助けたっていう人だよ!』
『女神があの獣の正体なのか?』
『じゃあ、ヒーロー協会が捕まえてたの?』
『不老不死の血を自分たちのモノにしようとしてたんだ!』
『酷いわ!!』
『みんな殺せって言ってたじゃないか!』
『そりゃあんな姿じゃ怪人だと思うだろうが!』
『人をあんな風にしちゃうなんて!』
『ぐぅ…クソッ…ヒーロー協会のイメージダウンだ…!』
『ヒーロー、サイタマくん!早く担架の上へ!』
『…おう。』
『急いで病院へ向かうわよ!出して!』
○○さんはサイタマ先生の手から担架へと乗せられて、緊急車両に乗せられヒーロー協会設立病院へと運ばれていく。尚もシェルターからワアワアと聞こえるヒーロー協会へのバッシングに、役員は苦い顔をしているが、そんなことよりも俺は○○さんの容態が気になって仕方がなかった。
だがサイタマ先生に『とりあえずジェノスは博士んとこ行って直してもらえよ。○○にも会いに行けねーだろ?』と言われてしまい、それから三日間、俺は街を離れた。
修復が終わって帰宅し、サイタマ先生の自宅で見たニュースでは、ヒーロー協会の役員たちが長テーブルに額がつきそうなくらいに頭を下げていて、それに対してたくさんのフラッシュがたかれていた。
『ここ毎日テレビはどれつけてもこれだな。』
『当然です。うら若き女性をあんな風にして、その上 獣の正体が○○さんだとわかっていたにも関わらず攻撃をしたのですから。』
『……ま、○○が元気ならそれでいいけどさ。』
『……はい。』
ヒーロー協会の会見の内容はこうだった。
・彼女は世界最古の癒しの血を持つ種族で、無免ライダーの件でヒーロー協会も初めてその存在を確認した。我々の呼びかけにより''未来の為に協力させてほしい''と自主的にヒーロー協会へ訪れ申し出てくれた。
・世間が混乱するためにただの噂、都市伝説に話を捏造した。
・体の様子を調べるために一時的に水槽へと入って貰っただけで、その一時的な間に怪人によって攫われてしまった。血液を採取するための装置ではない。
・感情が暴走してあの獣へと変わっただけで、今後はそうはならない。彼らはそういう種族であるが、同時に覚醒すれば強大な力を得るので街を守ることが出来る。
・しかしながら、どれ程の力があるか分からなかったために一時的に動きを鎮めるために攻撃をしたまで。
・今後も続けて協力をして貰うが、あのような装置に再び入ることは今後一切無い。
・特例S級ヒーローとして認定し、今後も友好的な関係を続けていく。
……というものだった。些かヒーロー協会が話をねじ曲げたところもあるような気がするが、それはまぁ良しとしよう。
○○さんには特例S級ヒーローの称号が与えられた。1度 獣として覚醒した○○さん自身に自らを守る強さやS級ヒーローに匹敵する強さがあることなどから、週に何度かのヒーロー協会への呼び出しへ従うこと等を条件に、ヒーローとして日常生活へ戻ることが許された。
しかし世間が「人を水槽で薬漬けにした」という衝撃の事実を許すはずもなく、ヒーロー協会は○○さんの元気な姿をたくさん見せようと○○さんをPRキャラクターへと起用した。その為……
【チャラリーン!】
「お、きたきた。」
「ハッ!今日はそういえば……!」
軽快な音楽とともにテレビに流れたのは人で賑わうショッピングモール。仲睦まじい母と子が手をつないで歩いていると……
どかーん!
【に、逃げろー!】
【きゃーっ!怪人よーっ!】
【怖いよママー!】
【げっへっへ!俺は怪人チョキチョキマン!お前達を切り刻んでやるう〜!】
突如現れるハサミの姿をした怪人、チョキチョキマン。転んだ我が子を庇う母親。逃げ遅れた親子に巨大な影が差し掛かる、その時!
【待ちなさい!!!】
【あぁん?】
【とうっ!】
シュビシュビーン!
スタッ!
テーテッテレー!
「お、今回のは初めて見るな。」
「はい!今日から放送されるBパターンのCMですから!」
「よく調べてんな。」
【わたくしは正義のヒーロー、フラワーヴィーナス!市民の平和を乱す怪人は許しませんことよ!】
【わあっ!フラワーヴィーナスが来てくれたぞ!】
【かっこいいー!】
市民がピンチになったその時、なんともテラテラとしたエナメル素材のヒーロースーツを着たミニスカートの○○さんが現れる。○○さんは決めポーズをして怪人に対峙する。
【げへへへー!ヒーローだとぉ?お前も木っ端微塵に切り刻んでやるー!】
【そうはさせませんわ!くらいなさい!フラワーアロー!!】
ドスドスドスッ!
【ぎゃあぁああぁあ!!!!】
○○さんが能力を使って作り上げた弓矢から矢を射ると、それはチョキチョキマンへと突き刺さり、チョキチョキマンは消滅する。民衆は拍手をしながら○○さんへと駆け寄り、ピンチを救われた子供が○○さんに抱きつく。(チッ)
【ありがとう、フラワーヴィーナス!】
【助かりました!】
【いいんですのよ、市民の平和を守る。
それが…我々、ヒーロー協会の役目ですもの。】
【こうして平和は守られた…ありがとうフラワーヴィーナス!ありがとうヒーロー協会!みんな!困ったことがあれば、ヒーローを呼ぼう!!
ヒーロー協会は、皆様からのご支援で成り立っております。】
テレレレーーーン♪
「……なんつーか、仕事してんなー○○。」
「……AパターンのCMより、スカートが5センチ短くなっていました。」
「うわ、ジェノスそれはお前きもいぞ……。」
そう、○○さんはヒーロー協会のPRキャラクターとなり、CMにも出ている。元々外見も美しい人だった為か、今では他にもお茶のCM(和服姿の○○さんが見られる)や、頭痛薬のCM(ナース服の○○さんが見られる)などにも出ている。ちなみに俺のイチオシは烏龍茶のCMに出てくる白いチャイナドレスの○○さんだ。
その為、○○さんはあれから1度もZ市の自宅へは帰ってきていない。
「今日も帰られないのでしょうか……。」
「まーそう落ち込むなって。そういや○○のフィギュア出るらしいけど知ってた?」
「既に予約済みです。」
「あ、あぁそう……。」
ピンポーン
「ん?誰だ?」
「俺が。」
○○さんのフィギュアはフラワーヴィーナスVer.とあの時の獣Ver.(これが以外とゲーマーや戦隊モノ愛好家に人気があって入手困難だった)があるが、フラワーヴィーナスVer.はこのCMにあるヒーロースーツのものであるから、発売は最近決定したものだ。
玄関へと向かい、覗き穴を見るが大きなダンボールを抱えているのか姿がわからない。
ガチャ
「誰だ?」
「わっ、とと、と…!」
「……!その声は、○○さん!!」
「え、○○?」
「ぷはっ!……サイタマさんっ!ジェノスさんっ!
ただいま、です。」
「…………ッ!!!」
ガバッ
「きゃっ!!」
玄関を開けた表紙によろけたのか、ふらふらしながらダンボールを床へ降ろすと、そこには先ほどテレビを観て焦がれていた○○さん。思わず抱き締めると、○○さんは驚きつつも、俺をぎゅうっと抱きしめてくれた。ああ、この香り、柔らかさ、温もり……○○さんだ。
○○さんが帰ってきてくれた。
すんすん(※匂いをかぐ効果音)
「(○○さん。)」
「あ、ふふ、ジェノスさん?」
すん、すんすん、すん
「(○○さん、○○さん○○さん)」
「じぇっ、あふ!く、擽った…あ!」
すんすん、すんすんすん、すんすんすん
「(○○さん○○さん○○さん○○さん○○さん)」
「あっ、ン!じぇの、あ、うぅ……///」
ぐいっ
「いつまでやってんだ。」
「ハッ!俺としたことが、すみません!」
夢中になって○○さんの匂いを嗅いでいると、先生に首根っこを掴まれて引き剥がされた。○○さんは苦笑いしながら俺の前髪をさら、とかき分けると親指で頬を撫でてくれる。
「おかえりなさい、○○さん。」
「おかえり、○○。」
「……ただいま、です!」
「まぁ中は入れよ。んで、その箱、何?」
「あ!そうでしたわ!これはヒーロー協会からおふたりへの物です!ドローンを使えばよろしいのに、羽があるからって任されてしまってもうクタクタですわ。」
「俺がお茶をいれます、○○さんは休んでください。」
「お言葉に甘えますわ、ジェノスさん。」
○○さんからダンボールを受け取って、○○さんを室内へと通す。○○さんは部屋をくるりと見回すとにんまり笑って、何かを考えるように深く呼吸をして目を閉じた。俺はそんな○○さんを微笑ましくキッチンから見つつ、お茶の用意をする。
「○○何してんだ?」
「サイタマさんの匂いを嗅いでいるのですわ…帰ってきたんだなぁって。」
「ぎゃーーー!ヤメロ!!換気換気!!」
ガラガラガラッ
「あぁ!もったいない!」
「もったなくねーよ!」
「お茶が入りましたよ、サイタマ先生、○○さん。」
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「で、どーなんだ?身体の調子とか、仕事とか。」
「身体はもう何も異変はありませんわ!獣化のコントロールも出来ていますし。仕事も順調です…わ。」
「……何か問題が?」
「……A級ヒーローのアマイマスクさんの主演ドラマに出演することになったのですけれど、わたくし、あの方がどうも苦手で…。」
「あー、うどん食ってた時に来たやつか。」
「……それはどのようなドラマですか?」
○○さんは湯のみをテーブルに置くと唇を尖らせて苦い顔をしている。A級ヒーローのアマイマスクと言えば、メディアの顔でもある。だいたいのテレビ番組に出演し、俳優、声優、アーティスト、モデルなど多様な面を持っている今 女性から一番人気のヒーローであり芸能人だ。
「恋愛ドラマなのですが、わたくしはアマイマスクさんの職場の後輩で、先輩女性とアマイマスクさんを取り合う泥臭い恋愛物です。……何というか、仕事ですから仕方ないのですけれど、あの方が苦手なので上手くやれるか不安で……。」
「大丈夫ですよ○○さん、アマイマスクを俺だと思ってください。そうすればきっとやりやすいです。」
「お前たまにビビること言うよなジェノス…。」
駄目でしょうか、いい案だと思ったのですが……。俺がくちびるを尖らせていると、○○さんはあっ!と声を出してダンボールを引き寄せて封を開く。そういえばそんなものもあったな、存在を忘れていた。
中を見ると、ぎっしりと色んな便箋や包装されたプレゼントが詰まっていた。
「サイタマさんやジェノスさん宛のファンレターやプレゼントです!」
「おお!俺のは…5通か。」
「あら?わたくしのも……。」
それぞれが手に取って封を開ける。俺のは……はぁ、まぁいつもと変わらないものだ。○○さんにはフリージアのポプリや花の栞(しおり)、高級ボディケア用品や婚姻届(瞬時に燃やした)が入っている。
サイタマ先生のは……。
【インチキ野郎お前なんかヒーローじゃない!!】
【ヒーローやめちまえ!】
「………………。」
「俺がその差出人を探し出しましょう。」
「あらあら、お手伝い致しますわジェノスさん。」
「ヒマな奴がいるもんだな。
ジェノスも別にしなくてイイし、
○○に至っては顔半分獣化してるぞ。」
「ギャウッ?!……あらやだ!!おほほほ////」
「(○○の場合洒落になんねーんだよな…。)」
「(○○さんの場合は笑い事になりませんね。)」
○○さんがここで獣化すればこのマンションごと無くなってしまう。俺とサイタマ先生が心の中でため息をつくと、サイタマ先生はもう1つ便箋を取り出した。
「お、もう1通あった。」
「(誹謗中傷なら燃やす…。)」
「(誹謗中傷なら切り裂く…。)」
【〜〜〜〜〜 ありがとう!!】
「…なんだこれ?お礼言われてんぞ。」
「(ホッ)サイタマ先生のご活躍を目にした誰かでしょう!」
「サイタマさんのお強さと優しさに気付かれるなんて、きっと心の清い方ですわね!素敵ですわ!」
「お前ら切り替え早いな……。ん、これはヒーロー協会からか?」
サイタマ先生が乱雑に破いた最後の手紙を三人でのぞき込む。そこには、サイタマ先生をC級ヒーロー1位とする。との通知と、ヒーロー協会本部への出頭命令の紙が同封されていた。サイタマ先生は俺と○○さんに留守番(○○さんは疲れていたので命令)を任せて、ヒーロー協会へと向かわれた。
さすがサイタマ先生!!C級ヒーロー1位ということは、きっとこのままB級へと上がられるでしょう。
「さすがサイタマさんですわ!本来ならばS級でもおかしくありませんのに…。」
「控えめなところが先生の良いところでもありますよ。」
「そうですわね。……あの、ジェノスさん。」
「? はい、何でしょう?」
○○さんはC級一位の通知に嬉しそうに微笑んでから、俺の名前を呼ぶと、テーブルから離れて、俺の前まで擦り寄り、俺に向き直った。俺は○○さんの纏う空気が真剣なものになったので、足を整えて、○○さんに向き直る。
○○さんは、両手を床につくと、頭を下げた。所謂、土下座というものだ。
「?! ○○さんッ、頭を上げてください!どうしたんですか?!」
「…あの時、わたくしのせいで怖い思いをさせました。ジェノスさんをあんなに不安にさせてしまったのです。ずっと謝りたくて…申し訳ありませんでした。」
「そんなッ……おれ、俺だって!貴女を見つけられなかった!あの時、俺が○○さんの異変に気付いていれば、あんな……。」
「…やっぱり、優しいんですのね。ありがとうございます、ジェノスさん。」
○○さんは、頭をあげて、一筋涙を流すと幸せそうに微笑んだ。俺はこらえ切れなくて、○○さんの胸に飛び込む。ああ、弟は嫌だと言ったのは俺なのに、こういう時だけ甘えてしまう。
○○さんは腰に腕を回して胸に額をすり寄せる俺の髪を撫でてくれる。○○さんの心臓の音がして、とても安心する。実をいえば、あの時、本当に死んでしまったのではと怖かった。でも、今こうして○○さんがここにいるのが真実。
「……もう、相談も無しにいなくならないでくださいね。」
「はい、約束します。」
「それと、あまり男性に気を許さないことです。」
「? (何の事でしょう…。)わかりました。」
「今日は手加減しませんからね。」
「はい、手加減…え?」
とんっ
どさっ
「俺に心配をかけさせたお仕置き、しなくちゃいけませんね。」
久しぶりに上から見る○○さんの姿。一緒に風呂に入ったあの時以来か。それなら随分お預けを食らっていたことになる。
○○さんは突然押し倒されてパニックになりなんとか逃げようとするが、俺がそれを許すはずもなく。○○さんのブラウスのボタンを片手で器用に外すと、それを阻止するように○○さんは服の前をぎゅっと握る。なので、手を離してスカートのサイドのチャックをおろしにかかる。
「な、なんでこの流れでそうなるんですの?!や、す、スカート……!あ、わ、わたくし体が痛いんですの、アイタタタ!」
「おや、それはいけませんね。俺が診てあげます。さぁ服を脱いで下さい。」
「きゃっ!や、ダメですジェノスさん!さ、サイタマさんが帰ってきますわよ?!」
「今日は遅くなるでしょう。それに、帰ってきたら見せつけます。俺と○○さんの仲を公認のものにしてもらう為に。
さぁ、○○さん……。」
「アーーーーーーーーーーーー!!!!」
本当を言えば、俺はかなり嫉妬深く、貪欲で、卑しい獣です。
○○さんがヒーロー協会へ出頭する日の朝にサイタマ先生が以前牢獄へぶち込んだという音速のソニック(笑)と一緒に手を握りあって泣いていたということにも、もっと遡れば、たとえ応急処置であったとしても無免ライダーに口づけをしたことにも、獣から人型へと戻る時のきっかけがサイタマ先生だったことにも。ずっとずっと嫉妬していたんですよ。そろそろ、憂さ晴らしさせて貰っても良いと思います。
でも、本当に無事で良かったです、貴方が帰ってきてくれて、俺も先生も本当にほっとしているんですよ。
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