「おい。」



「おい!」
「はい?」

「○○!あんまくっつくな!歩きにくいだろ!あと、当たってんだよ!」

「あら、当ててますのよ?」

「当てんな!!!」



あれから、「たかがスーパーなんだしズボンはけ!ズボン!!」とサイタマさんに叱られて(しょんぼり)スキニーデニムに着替えてからサイタマさんと隣の市にある行きつけのスーパー『むなげや』へと向かっていた。
サイタマさんの右腕に腕を絡ませて胸を肘にあてて歩いていたが、それもサイタマさんに怒られてしまった。



「普通の殿方なら喜ばれるんですのよ?」

「そんなことしなくていーんだよ!」

「わたくしもサイタマさんに女として相手にして頂きたいのです…。何度誘っても襲っても気が付くと自分の部屋に帰っていたりするんですもの。」



そう、彼を誘うためにわざとノーブラで薄手のニットを着て家にあがりこんだり、晩御飯を作りつつもお風呂の支度をして彼が入っている時に背中を流そうと入り込んだり、いっそのこと吸血行為をして快楽の虜にしてしまおうともしたのだけど、気が付くと服を着せられていたり、気が付くと後頭部に鈍い痛みを残して自室のベッドで眠っていたり。



「わたくしがこんなことするのはサイタマさんだけですのよ?」

「あーせんでいいせんでいい。今日はキムチ鍋だっけか。」

「はい!サイタマさんがたくさんたくさん汗をかいて下さればわたくしがその汗を…!!」


「…お前 ただの変態じゃねーか。」



そこそこの具材をかごに入れて、お酒を買ったりして、お会計を済ました。サイタマさんは優しいからエコバッグは私に持たせて下さらずに、わたくしは最初のバッグのみを持ったままで2人で帰り道を歩いていた。


ズズゥゥン…!

「きゃ……!」

「んあ?何だ?」

「これは、巨大な何かが動いている振動のようですわ…サイタマさん!お着替えを!」

「は??」

「サイタマさんがいついかなる時もヒーローとしてご活躍出来ますように、ヒーロースーツをわたくし持ち歩いておりましたのよ!」



肩にかけていたバッグからスーツを取り出すとサイタマさんはあっ!と叫んだ。あら、盗んだのバレちゃった。


「ちくしょう予備無くなってたのは○○のせいだったのか!まぁいいか…とりあえず行ってくっから、先に帰って待ってろよ。」

「はい!いってらっしゃいませサイタマさん!下準備はお任せ下さい。」

「おう。頼んだぞ。」



サイタマさんは服を素早く着替えて助走をつけて飛び上がってしまった。姿が見えたのは巨大な男の姿。ぱんつ履かないのね…。

怪人はどうせサイタマさんにワンパンチでのされちゃうから、わたくしは先に帰ってお風呂と夕食の支度を致しましょうか。

暫く歩いてから後ろで「兄さーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!」と雄叫びが聞こえたけど気にせずにわたくしはZ市へと向かって歩いた。












「サイタマさん、遅いですわ…。」


あれから夕食の支度も整ったし、お風呂も沸かしてあるし、なんなら遅すぎてお部屋の片付けや1度帰宅してから下着を総レースものに替えることだって出来てしまった。

何かあった?まさかサイタマさんに限って??

うーうー言っててもしょうがない!不安を振り切るようにわたくしはエプロンを外して夕方になって冷える寒さに外套を羽織りアパートを出る。



「どうなさったのかしら…。」



心配で心配で仕方ない。サイタマさんがいないこの世界なんて要らないといっても過言ではないくらいにわたくしはサイタマさんを愛している。どうか何も無いように…!!!

いつしか早歩きから駆け足になっていたわたくしは曲がり角で横から現れた青年に気付くことが出来ずにぶつかってしまう。



ガシャ!
「あっ!」

「すまない、大丈夫か。」



走っていた速度そのままでぶつかってしまい、反動で弾き飛ばされそうな所をぶつかった人物が抱き抱えてくれた。腰に回されたものが固くて違和感を覚える。



「ッ…いいえ平気ですわ、こちらこそ前を見ていなかったようね、ごめんなさい。」



ぶつかった肩が酷く痛いのだが、なんだか感触が硬かったような気がする。よろけた身体を支える手のひらはひんやりとしているが、ふと顔を上にあげると端整な顔立ちの青年が立っていた。身長はサイタマさんよりも少し高いくらいかしら?



「………ッ//!」

「やだ、わたくしったら……!ごめんなさい、支えてくださってありがとう。」

「…いや、俺の方こそ、すまなかった。」

「あの、わたくし人探しをしていまして、黄色いヒーロースーツを着たスキンヘッドの男性を見かけられなかった?


………!」

「いや、み、見かけていないが



…ッ?!」




視線の先には鋼鉄の肉体をした青年の鼻から流れる血液。匂いがそうだから本物のようね……一見ロボットかサイボーグかと思ったけどまだ生身の部分もあるんだ…。

こんなにそそる香りの血液ははじめて。

わたくしは相手を見つめて、にっこり微笑むと背伸びをして彼の顔へと顔を近づけた。


ぺろっ
「なッ…!」

「ん………んん?!お、美味しい…!!」

「は?」

「あなたッお名前を教えて下さらない?!わたくし達、きっとこれも何かの御縁ですわ、ぜひ食料…お、お友達になりませんこと?!」




彼の血液は舌先に触れてからじわりと広がると甘ったるくて蕩けそうな香りが鼻腔に広がって全身を震わせた。初対面の人の鼻を舐めるなんてまぁなんてはしたないことなんでしょう!でもそれをせざるを得ないくらいに彼の血液はとても美味で。

ですが、それはほんの少しだけだった様子で、もう流れてこないのを見るとほんとに少しだけ鼻の中が切れていただけなのか。

彼は驚いたように身体を仰け反らせたけど、わたくしは彼の腕を掴んで身体をぎゅうと押し付けた。ふふ、Fあるこの胸を使ってこのまま関係を作ってしまってもいいのだが、(彼はどうやらまだ若いようだし不健全ですわ)今はサイタマさんが大切だからとりあえずこれ以上の吸血行為は控えておこう。

どうせ首筋に噛み付いたところで歯が欠けるだけでしょうし。




「いや、俺、は」

「えっと、ごめんなさい。うふふ、わたくし元怪人でして、吸血鬼のような生き物ですの。だからつい…。」

「怪人、だと?」

「いえ!あの、元怪人、ですわ。今は普通に生活をするただの女ですの。元々力も弱くて、クビにされたようなものですから。この辺りによくいらっしゃるの?」

「(怪人にも会社や組織があるのか…。)ま、まぁ確かにそうだが…怪人が現れるところへ行く、俺は単独でヒーロー活動をしている……それよりッ」

「まぁ!じゃあまたお会い出来ますわね!わたくしは○○と言いますの。あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

「俺は、ジェノス、だが」
「ジェノスさん!またぜひお会いしましょう!突然ごめんなさい、それではまた!」

「あっ、おいッ!!」



何か言いたげだったけれどマシンガントークをしてそのままジェノスさんに背を向けて走り出す。

さて!彼のような(わたくしが飲める)五つ星血液保持者を見つけるのはとても難しいからたとえ血液量が少ないにしても何らかの方法で製造又は保管しているのでしょう、彼とは絶対に仲良くならなくては!


でも今 大事なのはサイタマさんですわ!
どこにいらっしゃるのか…。


街から街を走り回っていると、やっと前方に見慣れた背中があった。




「サイタマさん!!!」

「あれ?あ、そうだ悪ぃ、待たせちまってたな。」

「わたくしは良いのですが、何かありましたのか心配になって…!」

「わーっ、まじか!○○、これ好きだろ?ちょうど帰りに歩いてたら売り切れる前だったから並んで買ってた。デザートに食おうぜ。」



サイタマさんの手には私の大好物のスイーツ店の人気プリンが。ココ最近はお休みの日も無くていつも閉店していたところしか見たことがなかったから、すごく嬉しい。

サイタマさんは「ちょーどミルクプリンとチョコがあってさー迷ったから2個ずつ買っちまったけど食えるよな?」と言いながら袋の中を確認してる。私はそんなサイタマさんに抱きつくと背伸びをして首筋に甘えるように顔をうずめる。



「わっ。落とすだろ、危ない!」

「わたくし、サイタマさんのことを、愛しておりますわ!」

「え?あ、あー…あー…えっと、うーん。」


ちゅっ


「あ!ば、バカヤロー!そう簡単にそんなことすんじゃねえ!大事にとっとけよ!」

「わたくしの身も心もサイタマさんへ捧げるために存在しているのですわ…。」

「………はあーーーー。っじゃ。帰るか。」



サイタマさんのくちびるの端っこに軽くリップ音を立ててキスをするとサイタマさんは顔を真っ赤にして怒った。サイタマさんのお優しいところがわたくしは大好きですの。だから、あなたのためなら、なんだって出来ますのよ。

行きと同じように腕を絡めてZ市へと帰っていたけど、帰りはサイタマさんはその腕を振りほどくことはしなかった。







(ジェノスも男の子だしアレ立たせるためにはほら、血液も欲しいし性欲もあるなら精子だって…博士がたぶんなんか血液製造とかしてんだよ、うん。というご都合主義ですわよ。ごめんなさい。)