『はぁー、いっぱい買えましたわね…!』

「おう、ヒジキが安くて助かったぜ。」

「○○さんもお目当ての物が手に入って良かったですね。」

『はいっ!』



あれから急いで支度をして、チラシを手に開店前のスーパーへと向かった。S級ヒーロー2人がチラシを片手に開店セール待ちだなんて、すこしジロジロ見られてしまいましたけれど、一般市民に変わりは御座いませんのよ。



「!」

「んあ?どーしたジェノス。」

『あれは……。』



ヒジキのダンボールを片手に持つジェノスさんと、前衛的なシャツを着るサイタマさんの後ろを歩いていると、ジェノスさんがピタッと立ち止まった。それに気付いて前を向くと、どこか見覚えのある後ろ姿が。




「先生、あれはキングのようです。」
「誰だそれ?」

「先生を差し置いて地上最強の称号を手にしている…だがこんな所で何を?」

『ちょうど電気街から出てきたみたいですわね…以外と【萌え萌えきゅん!】なものがお好きだったりして!』

「○○さんそれもう1回してくれませんか?」
「新型バトルスーツは決まりだなぁ。」

『?』




いつぞやのテレビで見たカフェ店員の真似をすると、ジェノスさんとサイタマさんがウンウンと頷く。なんでしょう?

すると、突如 街中で大きな悲鳴があがった。




「キャアアアアアアア!!!!」
「か、怪人だァ!!」

「怪人だと?!」
『行きましょうジェノスさん!』

「ハッ………いえ、ここはキングの実力を見るいい機会です。すこし様子を見ましょう。」



ジェノスさんの言葉に、3人でサッと物陰に隠れて前方のキングさんを見つめる。怪人、鬼神G4と名乗るロボットは、どうやらキングさんのデータが欲しくて戦いを挑んだ様子。……ですが、可笑しいですわね?万全の状態で戦う為に1度お手洗いへ向かわれたキングさんが帰ってきません。



『遅いですわ…このままでは市民が……あっ!』


「逃げたか…?まぁいい、1分過ぎた、10人殺してやる。」


「ひ、ひぃいっ!」
「いやぁぁああ!!」
「逃げろぉおお!!」



『ジェノスさんっ!』
「はい。」


ザッ……!


「ム……お前はS級ヒーロージェノス。」

「……お前を排除する。」

「キングが現れるまでの暇つぶしにしてやろう。」


ブンッ!

バキッ、メキメキ……!!


鬼神G4が剣を振り上げた時、ジェノスさんが鬼神G4の前に現れて標的がジェノスさんへと変わった。ジェノスさんは鬼神G4の振り下ろした剣を砕くと肘から先を噴出させて鬼神G4を殴り飛ばす。



『まぁ!』

「なにそれロケットパンチ?」


ヒュッ……ドズン!!!


『ああっ!ジェノスさん!』


メキ、バキバキ……
「グウ……ッ!!!!」


「手ェ貸そうか?」

「いえ!先生に課せられたS級ヒーロー10位以内というノルマを達成するには、これしきの相手…努力で勝たねばなりません!!○○さんも手出しは無用です!!」



先ほど殴り飛ばした鬼神G4はブーストを使って勢いよくジェノスさんを叩き潰す。ジェノスさんはそれを腕で受け止めながら持ち堪えて、自分ひとりでやる、とわたくし達へ告げた。

サイタマさんはアッサリ引いてしまって、わたくしも手出しをするわけにはいかないので先に自宅へと向かうこととなりました。

でも……



『?サイタマさん、このマンションは……?』

「ん?ああ、キングが帰ったみてーだからさ。さっき見えた、窓から。」

『え!ほ、本当に逃げてしまわれたのですか?!』

「それがわかんねーから、本人に聞くしかねーよな。○○は飛んでこいよ……ッと。」

『え?さ、サイタマさん?!……っもう、せめてヒジキも一緒に持って行って下さいませ!』




サイタマさんは帰路とは違い、住宅街の中でそびえ立つ大きな高級マンションへと向かっていたようで。なんとキングさんがご帰宅されたのをあの位置から確認なさったらしく、ここへ来たのだと。

そんな…S級上位ともあろうお方が市民を捨てて逃げ出すなんて……!寡黙な方ではありましたけれど、冷酷ですわ。

サイタマさんが置いていったヒジキのダンボールを抱えて、背に翼を生やす。ううっ、重い……!ジェノスさんはこれを片手で持っていたのですか?!

マンションの壁にある大きな窓が開いていたので、どうやらサイタマさんはそこからおじゃましたのでしょう。そっと室内へ入り、足をつける前にサンダルを脱ぐ。



「でもこれドキドキ☆シスターズってかいてあるぞ。」

「マジで?!怒気怒気☆シューティングスターかと思ったあー間違えた!!29歳にもなって恋愛ゲームと間違えるとか恥ずかしいなぁハハハハハ!!!」

「じゃあこっちのゲームやろうぜ。」

「え、や、やるの?」

「別に暇だしいいだろ?」

「(ええ〜〜な、なんだこいつB級のくせに…。)」



『サイタマさんっ!』


「あ、わりぃ忘れてた。」

『お、お、重かった……!!!』



(視点change)



えええええええええええまた窓から誰か来たかと思えば、○○たんじゃん!!!

特例S級ヒーロー、身長158センチ、体重46キロ(○○たんは筋肉質)、好きな食べ物は新鮮でみずみずしいもの、刺身、スイーツ、嫌いな食べ物は特になし、趣味は料理、歌うこと、映画鑑賞、今期アニメ『マキュロスF』の歌姫シェリーの歌を代役する今1番注目の若手女優じゃん!!!!CD買いました!!!

まさか○○たんがこいつの知り合い?C級なのに?あーでも集会で甲斐甲斐しく世話を焼いてたような気もするな…ていうか普段着も可愛いな〜でも欲を言うならデニムじゃなくてスカートだったら良かったなぁ〜。



『すみませんキングさん、窓から失礼しますわ。』

「あ、あぁ、いいよ別に…はは…。冷蔵庫に飲み物あるから……。」

「まじ?貰うわ。」
「(お前じゃねえよ…いいけど…。)」

『ありがとうございます、頂きますわ!』

「うん…。」



C級の奴が冷蔵庫から取り出した紙パックのジュースを受け取ってにっこり笑う○○たんにドキッとしつつも、C級の奴が横で見てるから仕方なくゲームを始める。
○○たんはオロオロしつつもC級の奴と俺を挟むようにして画面を見つめている、ああっ!噂に聞く女神の香り……!普段は集会以外じゃ会えないからめいっぱい吸い込もう。



「お、お、…ゲームうまいなキング。」

「まぁシューティングゲームなら昔からいくつかの大会で優勝してるしね…(いつまでいんだよ早く帰ってくれよ〜。)」


「ところでさ、お前なんでさっき逃げたんだ??」




「ぶほッッ!!!!」




「ジェノスが今 戦ってんだけど、もしかして強くなりすぎて戦うのが嫌になったのか?なんでなんだ?ゲーム始めてるし怪人とかに興味無いのか?何を考えてんだ、聞かせてくれよ。」

『…サイタマ、さん。』



ウウウウゥゥゥゥ!!!!!

【緊急避難警報!巨大怪鳥が現れました!災害レベル鬼!】


「今日はやけに多いな……お前は行かねーの?俺は行くぞ。」

「ッ……!!」

『キングさ


……市民が危ないですわッ!''盾''!!』



ドゴォオォ!!!



『ッ…はぁ、はっ。』

「なんかしたのか。大丈夫か ○○?」

『ふぅ…はい、街に盾を……鳥自体を弾いてしまうと下の住宅街へ被害が出ますので住宅街全域の上空とマンションの壁面をツタで覆(おお)いました。市民への被害は無いかと。』

「良くやったな。…にしても、災害からキングのとこに来るなんてな。もう家まで来られちゃ戦うしかねーんじゃねえのか?」



突然の轟音と襲い来る巨大な怪鳥。怖くて目を閉じてしまって、その後にそっと目を開けるとC級の奴が突っ込んできた怪鳥のクチバシを片手で止めていた。な、なんなんだこいつは?!こんなデカイ鳥を どうやって片手で?!っていうか、やめろよ!俺は本当は強くなんかない、ただ運が悪くて、運がいいだけなんだ!!

たまたま怪人が俺の前に現れて、怖くて目を瞑ってる間にたまたま強いヒーローがそいつをやっつけてくれる。俺だと勘違いした周囲が俺を祭り上げていつの間にか誕生したのがキングなんだ。俺はなんの力もないただの弱虫なんだよ!!!

ああ、言わなきゃ、今言わなきゃ、このままじゃ確実に死ぬ運命だ……それなら、それなら、誰かに本当のことを……!!!



「○○、下がってろよ。」
『はい!』

「俺、実は……」

「グギャギャギョアアアアア!!!」



ボギャッ……!




な、なんだ今の音は?C級の彼は食われたのか?なぜ災害レベル鬼を前に逃げなかっ……ああ、俺が居たからか。最強の男がそばにいたから逃げなかったんだ。ごめん!!!俺は君を見殺しにしてしまった……。ゆ、許してくれ……!!

俺が目を開けると、吹き抜けた壁から照らす太陽光が彼を包んでいた。




「その話本当かよ、戦歴も強さも全部嘘だったって。」


「…………!」

「今のでションベン漏らすってことは本当なのか。





…大丈夫か?」




……この、声は。

それは、忘れられない優しい声だった。俺が数年前に怪人タコヅメの災害に巻き込まれた時、俺はその時にこの顔の三本傷を負った。その時に優しく声をかけてくれた男、あの、青いジャージの、黒髪の青年……この人は、この、人が……!!!




「……ウッ、ウゥ、ううう……!!」

「あ、おい泣くなよ!どうした?」

「アウッ…あ、あなたが……ウゥ!」


『……クス、わたくしは下の住民の確認へ参ります。申し訳ないのですが、荷物はサイタマさんにお任せしても?』

「あ、おう。頼んだ。」

「うぅ、ぐすっ…ひっく。」



会えた、俺のヒーローにやっと会えた……!S級になっても正体が掴めなかった、俺のヒーロー……!!!






(視点change)





……きっとあの人は、過去サイタマさんに助けられた1人なんでしょう。キングの偽りについて名乗り出さなかったのはいけませんが、その名前の圧力で救われた人がいたのも事実。…やっぱり、サイタマさんは素晴らしいお方です。



『……わたくしも、あの城を破壊した方に、会いたいですわ。』



「あっ!フラワーヴィーナスだ!」

「このツタの壁は貴女がしてくれたのね?ああ、ありがとう……これが無ければ怪鳥の下敷きになって死んでいました……!」



『お怪我がなくて何よりですわ。鳥さんも、良いハンモックになったでしょう。

さぁ、これからヒーロー協会の道路整備が始まります!皆様ご自宅へ戻って、何が起こるかわかりません、怪鳥を撤去するまでは家から出ませんように!』



サイタマさんが殴り飛ばした怪鳥は設置したツタの網によって街を潰すことなくうまく乗っかってくれたようですわね。
物珍しさに道へ出てきた市民へ声かけをして、逃げ惑っていた人たちの案内を到着したヒーローさんたちに任せて、わたくしは急ぎジェノスさんの所へと向かった。



『ジェノスさんっ…!』

「○○さん。」

『ああっ、こんなにも損傷が…!』

「平気です、俺はサイボーグですから。」




ジェノスさんと鬼神G4の戦いにも決着がついたようですが、ジェノスさんは顔面の半分の人工皮膚を持っていかれて、腕も無くなってほかの部位もボロボロ。やはり、よほど強いロボットだったようですわ。

ジェノスさんに駆け寄って、人工皮膚が残っている方の頬へ手を伸ばす。そっと頬を包むと、ジェノスさんは手へ頬ずりをした。




『……あまり無理はなさらないように。』


「ありがとうございます、○○さん…。

鬼神G4は俺も知らない高度な技術のロボットでした、俺は更に強くなる為に、この残ったコアパーツを持ってクセーノ博士の所へ行きます。2日程は帰って来られないでしょう。」


『わかりました、サイタマさんには伝えておきますわ。道中、お気を付けて。』

「はい。」



ジェノスさんは鬼神G4のパーツを引きずりながら、クセーノ博士の元へと向かってしまいました。……大丈夫でしょうか?なんだか、とてもギラギラしていました。

…とにかく、まずは帰宅してサイタマさんへお伝えしなくては。夕飯はどうしましょう…ヒジキと豆のごはんと、和え物と、ヒジキの卵焼きと……。






















【ヒーロー協会本部】




「ッハァ!!!おいおいおいおいおい!!!


当たってるぜェ!すごいな大預言者ってのはよぉ!!?災害レベル神がやってくるってわかってたんだな!!」



ヒーロー協会本部へ集められたならず者たち、その中で、数分前にソニックがばらまいた資料を手に、一人の男が声をあげていた。



「チッ、やはり裏の世界で生きてきた奴らは頭のネジが外れてやがる。」

「こいつもイカレ野郎だな。」



「さっきのオッサンの言った通りだ、ここの全員が束になっても俺は殺せねぇ!!!

俺は''ガロウ''、怪人に憧れて修行し、数々の武術道場をぶっ潰してきた。ここにも俺の強さを引き出す餌がたくさん居る…さぁ、やろうぜぇ!!!」



一見、頭のイカれた男だった。怪人という程の見た目ではなく、むしろただの男。いきがって喚いているようにしか見えない彼が会場の人間の注目を浴びるのは簡単だった。弱そうだったからだ。なんせ、会場には巨体を持つ大男や、物騒な武器を所持した者が何人も居たから。

だから油断した。

彼らは、ガロウの手によって血の海へといとも容易く沈んでいったのだ。




ドチャッ!!!

「ひいぃっ…!」


「ふぅ……怪人ガロウの鮮烈なデビューショーはこんなもんでいいだろ。流石に今の俺じゃS級ヒーロー数人を相手にするのはちょっとキツイからな……。」


バシャッ、バシャッ


「……半年以内に今より数倍パワーアップして、そんときゃあ正門から堂々と帰ってきてやる。それまでは武者修行でもすっかな……、最強といわれるキング辺りに相手でもしてもらうか?」















ピシュン!ピシュン!
『あ!サイタマさんまた……。』

「バカお前キングお前バカ!なんでお前ばっかりアイテム取ってんだよ!」

「早い者勝ちだから…あ、○○氏パイの実欲しいな…//」

「俺も!!」


『はい、どうぞ!あー……』


「もぐ、(両手ふさがってると○○氏がこーやってあーんしてくれるから、どんなに突然でも来てくれて構わないんだよなぁ//)」

「あっ、バカお前バカまた…!チーム戦だろ!」
「俺1人でもボス倒せるから。」

『ま!サイタマさん負けてられませんわよ?』

「くそーーっ!クソゲー!!」


















「あー、そうだそうだそうだ、協会のお偉いさん。」

くるっ

「ヒッ!!な、なんだね……?!」



シッチは地面に倒れるならず者たちの中で頭を抱えて震えていた。内心、ガロウが部屋を出ようとするのにホッとしていたので、歩みを止めて振り向かれた時は心臓が跳ね上がった。

ガロウはその場でシッチの方を振り向いて、少し考えるように顎に手を当てると、ニヤリと笑う。



「特例S級ヒーロー、フラワーヴィーナスもとい○○・イェルクヴェイン、あいつの血は怪我を一瞬で治すんだよなぁ?」

「……!!や、やめろ!!彼女には手を出すな!!」



シッチが恐れていたことをガロウは口走った。ならず者たちを集めなくてはならない事態だ、現存している上位ヒーロー達を失わない為にも○○の力は何よりも大切だったのだから。



「ククク、やっぱ噂は本当かよ。ま、元怪人仲間として殺しはしねぇ、それに……いい女だしな。


だから、









必ず捕まえてやる、すぐにだ。」


「ッ…、ッひぃ……!」


「どんな奴かなぁ〜?S級だし、強いといいんだがな。早く会いたいぜ。」


















『アハハハハッ!さ、サイタマさん逆走してらっしゃる!』

「くそっ、そこで赤甲羅とか卑怯だろ!」

「サイタマ氏いっつもアイテムボックスをスルーするよね、あれわざと?」

「ちげーーーよ!!!」


『アハハ、も、おな、お腹痛いです……!!見てるだけで、ほんと、面白いですわ……っくくく、アハハハッ!』












「さて、どんな味がするのやら。楽しみだぜ……○○。」