あれからジェノスくんのパーツを拾い集めて一旦わたくしの家まで連れていくことに。サイタマさんはパーツを拾っている間に人が来たらやばいから、と先に全裸で自宅へ帰っていかれた。



「ん、よいっ…しょ...。」

「あの、」
「?はい、なんでしょう?」


「......貴女は、あの人とはどのような関係で...?」

「わたくしですか?しがないただの隣人ですわ、過去に1度危機を救われて、わたくしが彼にべったりですの。」


「.........貴女はあの時街でぶつかった、○○さん、ですよね。」

「そうです、わたくしも覚えていましたわ、ジェノスさん。」




破壊されたビルから探してきた荷台にダンボールを置いてパーツを詰め込んでいく。目玉のパーツを最後にして、ジェノスさんを抱えあげて(機械だから上半身のみでもかなり重たくて苦労した。)歩き出した。

ジェノスさんは何か考えるような顔をして黙ってから、重々しく口を開いた。




「○○さんは、その、あの人の恋人、なのでしょうか?」

「えっ……?!そっそんな、わたくしとサイタマさんが恋人に見えるだなんて!!!そりゃ、まぁ、わたくしはあの方をお慕いしておりますけど、でもそれは敬愛であって恋情などでは無くてですね、そりゃ、あの腕に抱かれたくないわけではないけれど、今はまだそういうアレではないと言いますか、どれだけアピールしてもスルーされてしまうというか......」

「つまり、恋人ではない、と?」

「ウッ……ええ、そうですわ…。」
「………!そう、ですか。」



それ以降ジェノスさんは黙りこくったままでしたし、わたくしは戦闘で疲れたのかと思い話しかけることもしなかった。

マンションに帰るとサイタマさんはどうやら買い物かどこかへ向かったようで、ノックをしたけれど応答は無くお部屋にはいなかった。わたくしは部屋へジェノスさんを通して、ゆっくりとベッドの上へ寝かせた。ジェノスさんが片腕で手伝ってくれるとはいえ、やはりサイボーグ、鉄の塊だから重い…。ここまでしてもらわなくても!とおっしゃるけれど、床に転がすのも気分良くはありませんからね。



「さて、これからどうしたら良いでしょう…。」



バラバラになった身体をくっつける技術なんてないし、と悩んでいると、ジェノスさんは大丈夫です、とベッドの上でもぞもぞ身じろぎをする。わたくしは立っていた状態から、振動を与えすぎないようにベッドへそっと座った。



「俺から俺を作ってくださった博士の元へ回収信号を送るので、現在地を博士の元へ送っても良いでしょうか?」

「回収信号?」

「俺が自力で移動が困難になった時は、俺から博士へ信号を送ると回収ロボットを派遣して下さるのです。なので…。」

「ま、便利ですのね!構いませんわ、ロボットでしたらZ市へ来るのにも安心ですわね。住所をお伝えした方が?」

「お願いします。」


わたくしが口頭で住所を伝えると、ジェノスさんは一瞬じっとしてから、「送りました。」と笑顔で頷いた。
その顔がなんだかとても可愛くて(身長はわたくしよりもうんと大きいのだけれど、今はコロンとしてるからかしら)そのふかふかな金髪に指を絡めてそっと頭を撫でた。ツヤツヤでさらさらで、どこのシャンプーを使ってるのか知りたいくらいに触り心地が良い。

ジェノスさんは一瞬呆けたあとに頬を赤らめさせて、(残っていた)左目をキョロキョロさせて、情けなさそうに俯いて、口を一文字に結んだままそっと目を閉じた。



「......ジェノスさんは眠りますの?」

「疲れる、ということ自体は、普段はありません。ですが今は破損した部分が大きいので、それらを別の機能を使って補っている状態ですので、人間のように言えば、多少疲れているような、状態です...。」


たしかに少しウトウトしてるように思える。撫でられるのが気持ちいいのもあるのかしら。さっきの戦闘中のようなキリッとした表情は一変して、まるで子供のようにとろんとした顔のジェノスさんは必死に落ちてくる瞼を持ち上げ、また落ちてくる瞼を持ち上げの繰り返しをしている。たまに薄い唇がむぐむぐ動いてあくびを噛み殺すような仕草をするのがなんとも可愛らしい。

血液のことに関して少し聞きたかったのだけど、今は不粋ですわね。



「...少し、眠ります?」

「...今は、寝てしまうと、完全にスリープモードになってしまう...から、」

「回収ロボットさんが来ましたら、わたくしが対応します。今は眠ってくださいな。」

「ですが.........、はい、...甘えさせて、頂きます...。」


そう呟いて、ジェノスさんはゆっくりと瞼をおろして首の力を抜いた。規則正しい呼吸音が聞こえてくる。そうとう疲れていたのでしょうね。
そっと腰を床に降ろして、ジェノスさんの顔をのぞき込む。

貴方は完全にロボット?でもサイボーグというなら元は人間なのかしら。貴方に何があったの?どうしてサイボーグになったの?

聞きたいことは沢山あったけど、どれもこの愛おしい寝顔を邪魔する理由にはなり得なかった。


























コンコン、


「! 回収ロボットさんかしら。」





「はい、」

「お、○○。悪ぃなあの後任せちまって。」



玄関を開くと、そこにはスーパーの袋を持ったサイタマさん。そういえば今日は少し離れたスーパーの特売日だったっけ...。



「サイタマさん!...いいんですのよ、あのままじゃ、目のやり場にも困りました。(コソッ)」

「いや普段の自分に言えよ...っていうかなんで小声?」

「ジェノスさんが疲れて眠ってらっしゃるんです。スリープモードと仰っていたので目覚めはしないと思うのですが、一応。」



サイタマさんはそっと近づいて寝てるのを確認すると苦い顔をして玄関まで戻った。袋を極力音を立てないようにして探ると、わたくしの手のひらにぽんと冷たいものを乗せる。

それは今期限定おもちで来るんだアイス、ハーゲンビッツの花もちシリーズの黒蜜ときなこ。


「さ、サイタマさんこのアイスお高めなのでは...!」

「いや、まぁ、この前食いたいって言ってたし、今日のお詫びも込めてだな...。」

「............!!!!た、大切に食べますね!!!」

「おう。そいつどーすんだ?」



サイタマさんから受け取ったアイスをきゅっと抱き締めて大切に冷凍庫へ入れる。サイタマさんはジェノスさんを指さして、蚊に刺されたこめかみをポリポリかいた。



「どうやら、博士から回収ロボットさんが来るそうなので、引き渡します。きっと修理したりとかあるんでしょうね。」

「へー、便利だな。じゃあ任せちまっていい?俺もう(蚊を倒すのに)疲れて眠くなっちまった。」

「きっと力持ちのロボットだと思いますから、任せてください。おやすみなさい、サイタマさん。」

「おう、○○も終わったら寝ろよ。おやすみ。」

「あ、は、はいっ。」



サイタマさんは私の頭を少し乱暴に撫でてからあくびをして自宅へ戻った。サイタマさんから触れてくれるなんて珍しい...どうしてかしら?疲れていたから??

...とにかく、私もお風呂にでも入りましょうか。相手はロボットですから、突然来られても平気ですわね。






シャワーを浴びて下着(パンティのみ)とタンクトップを着て髪を拭いていると、時刻は22時半をまわっていたからか、ごく控えめなノックが聞こえた。
のぞき穴に目をこらすと、ガンメタ(メタルっぽい暗いグレー)の人形ロボットと大きなプロペラのついた箱の形のロボットがあった。


(ガチャ、)

「ジェノス ヲ 回収 ニ 参リマシタ。」

「お疲れ様です。」

「ワタクシ ガ 作業シマスノデ、モウ暫ク 御迷惑 ヲ オ掛ケシマス。」



「オ邪魔シマス。」とつぶやくと、ロボットは懐から取り出したウェットシートで足の裏を拭いてから別のシートで乾拭きをして、床にあるスリッパを履いて部屋にあがった。箱型のロボットは玄関先までキャタピラを回して移動するとフタをカパッと開き沈黙した。

人形ロボットはジェノスさんのパーツを衝撃吸収スポンジの上にそっと並べる。やはりロボットだからか軽々とわたくしが苦労した下半身を箱に納めると上半身を持ち上げて一番上へと乗せた。



「パーツは以上ですわ。」

「御足労 ヲ オ掛ケシマシタ。デハ、失礼致シマス。」

「あ、待ってください。」



丁寧にお辞儀をして廊下へ出たロボットに声をかけて、キッチンで立っていたわたくしはジェノスさんのいる箱へ近寄る。
ジェノスさんはすやすや眠っているようなので、バラバラにかかっている前髪を整えてからそっとおでこにキスをして離れる。それを見送った箱型ロボットはゆっくりフタを閉めてキャタピラを動かして階下へ降りていった。人形ロボットはじっ...とこちらを見てから、もう1度軽くお辞儀をして同じように階下へと姿を消した。

なんというか、可愛くて、守って、甘やかしてあげたくなるような方ですわね。




「.........あ、サイタマさんから頂いたアイス...は、明日頂きましょうか...。わたくしも眠いですわ...。」




大きく伸びをして玄関の鍵をしめると、電気を消してベッドへ滑り込む。すると、さっきまでジェノスさんが寝ていた温もりが残っていて、ほんのりと暖かかった。まるで誰かと寝ているような感覚になって、その心地よさに気がついたら意識を飛ばしていた。




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