ふと目を覚ますと、そこはとてもきれいな場所だった
草原にはいくつか花が咲いており、遠くの方で声がする
『…何処だ此処?』
首を傾げて声の方向に向かう為に身体を動かす
誰かが居るのは確かだが、高い声を聞いた覚えがない
…いや、あるにはある。
でも、江戸では聞いたことが無い
と言う事はここは何処だろう?
「あ!きたー!」
『おっ…と、お嬢ちゃん、君何処から…
いや、この場所を知っているかい?』
「しってる!私ミーちゃん!こっちが綿菓子のわっくん!」
わっくん。
ふわふわと小さな綿菓子と言うか…タンポポの綿が浮いている
その現実離れした場所に私は夢かと直ぐに断言出来た
いやいや、こんな天人居るか馬鹿。
『みーちゃんはどうしてこんな処に居るの?』
「みーちゃん此処から出ちゃ駄目って言われて…」
監禁…?にしては外の様に開けているが、此処は内部と言う事になる。
天人の船か何かであれば確かに土やリアル感を追求した部屋と
考えてもおかしくはない…いやでもこんな妙にリアルだと現実離れした
現実みたいな感じかもしれない。
『そっか…お父さんとお母さんは?』
「パパとママは…居ないの」
居ない?連れ去られていることが理解出来ないと言う事だろうか?
まぁ可愛らしい姿をしている為、相手が連れ去っても別に
問題ない位の可愛らしい子供である事は確かだが…
身長からして5歳児だろうか、真っ白とは言えない
ピンクのドレスワンピースみたいな可愛らしい服
おかっぱ頭でぱっちりとした目はキラキラと私を映している
肌色はとても白く、透き通っており触れば
モチモチしてそうな感じだが、
如何せん何処か細すぎる様な気もする
虐待の可能性も無くはない。
食事を採っていない証拠に爪周辺にささくれが出来ている
爪の先も幾つか白く濁っており、かなり栄養が偏っている証拠だ
まさか両親の虐待で放置された子を天人が連れ去っているのだろうか
と言うか仕事脳になってるな私、何処のマヨラーだよ。
頭を乱暴に欠いた後大きなため息をついて自分を落ち着かせた
『みーちゃん、君は何歳かな?』
「9歳」
『きゅ!?えっ!?うっそ…』
女の子の9歳なら130p程は行く筈なのだが
少女は明らかに身長が低く100p少し位に見える
それに腕も細く恐る恐る聞くと、14程しかないとの事
眩暈がする…なんだこの低身長と体重は
年齢と全く一致しないんですけど。
『ご飯ちゃんと食べてるの?』
「ごはん…嫌い」
嫌い?なら少女は自ら食べずに生きていると言う事でもある
それなら親が頑張っても少女が食べなければこれほどにまで
低く体重も増えないのも頷ける事だが
それでも、見れば見る程かなり細いし低いし力も無いだろう
嬉しそうに笑って居た顔が食事の一言だけで反転した
余程嫌な食生活を送っていたのだろう。
『私も周りにそういや居るなぁ…
ご飯にマヨネーズかける人とか
タバスコかける人とか、甘い物かける人とか』
「う、うわぁ…食べれるの?」
私も正直何で観て食べれているのかわからない。
お腹が空くから食べているのであって、正直観て
少女の様に食そのものが嫌いになりそうだった頃は何度かあった
いや寧ろ隣で食わないでくれ。
と思った時もあったくらいだ
…私何で生きてるの?えらいな?
『頑張って何とか食べれてる…かな』
「凄いんだね!おねーちゃん!」
『あ、あはは…みーちゃんは何が好き?』
「…ごはん?」
『ん?そ、うだ、けど…あれ?白いご飯の事?答え?』
白い?
あの、白いご飯?
もしかしなくても、そう恐る恐るまた
少女の顔を観ると嬉しそうに笑って居るのを観て
どうやら本当に白いご飯が好きらしい。
甘くて美味しいので色のついた物は嫌らしい
お肉はちびちびではあるが食べれるとの事
食はそれなりに成り立っているので安心した。
『私も白いご飯昔好きだったなぁー
そういえば君みたいにご飯しか食べなかった時あったな』
あれは確か幼い頃だったのは憶えている
白いご飯が好きで食も細く人に心配されていた
そういえば食を嫌いになったのはどうしてだろう
確か誰かに言われてうんざりして食べなくなった様な憶えはある
ただ、全て曖昧で、何時だったかも忘れてしまった
少女と同じ様な体験をしている事にふと「似たもの同士」
なだけだと言い聞かせた
「みーちゃ、ね?ママ怒らせるの」
『みーちゃんが?』
「教えて欲しい事、沢山あんの…
でもっ、ママ、怖いのっ…」
どうやら母親がキーらしい。
少女は見る見る涙目になりそのまま少し声を抑えながら泣き始めた
オロオロしている私に、綿菓子のわっくんが少女の涙を吸い取り始めた
すると涙の重さに耐えきれず地面に落ちていくわっくん
観てるだけも辛くなってきた私は、わっくんを片手で取り
少女の涙を片手で拭ってやる
『ママはみーちゃんのことが好きだから怒るんだよ。
叱るって事だけどね。』
「しかる?」
親は何時でも子供を心配するものだ
少女が家庭内の問題を抱えている事は確かなので
少なくとも家庭環境は最悪と言っても過言ではないだろう。
こんなやせ細った小さな少女が何をしたのだろうか?
私は胸が痛くなり、少女を思わず抱きしめた
胸の中に押し込まれる少女はびっくりはしたが
「ママ」と涙を流し始めた
『(私もそういえば母が何も観てくれなかった
食事も何も気が付けばしてなかったのを観ていた)』
その夜は父と母が喧嘩をしていた
それを私は止めようとして「トイレ」と言ってしまった。
臆病者だと知った私は涙を流して布団の中で眠った
母の愛情が欲しくて、母に何か得ようと必死だった頃があった
手を出して、手を繋ぐ、笑って居る他の親子の様に
私も手を出して、繋ごうとした
あの時の母は「邪魔だ」と言って手を払った
気分が良い時は嬉しそうに手を繋いでくれた
そんな母を観て、私は欲を疑問に思い始めていた
『…大丈夫、きっと、此処から出られる。
ママに会えるよ…きっと』
この子のママはきっと心配している
私のママとはきっと違う。違って欲しかった。
違うと言い切りたかった。
そうすれば、全く違う人と、思えるのに。
少女は泣きながら言ったのだ
”そんなことはない。ママは私を嫌っている”
その現実が私の心を突き刺した
そういえばこの子の様な頃だった
何かを得ようとしてもがいていたのは
欲を出して我儘を言っていたのは
それが迷惑だと知ったのは
それを我慢に変えてしまったのは
親でさえも素を出さなくなったのは
『(たった、9歳だった)』
欲を我慢し始めた頃は目が死んでいたらしい
直ぐに気が付いた父が母を殴りかけ
出ていけとの声に母が私を呼び泣きそうな声と顔で言ったのだ
「パパとママ、どっちがいい?」
『っ!?…おか、あ、さん?』
「ママっ!!」
『駄目っ!!』
少女の腕を掴み急に現れた母に驚きが隠せない
心臓が急に高鳴り始めて、かなり混乱している
いけない、少女を守らねばならない。
現実だとしたら何故母が目の前に居る?
何故この場所に入られた?
この人は天人ではないのか?
この場所は一体なんなのだ
「ママっ!ままぁ…」
「パパと、ママ、どっちかに、して…」
『…嗚呼、やめて、そんな、顔…しないで』
涙を流し始めた母に私も涙が溢れだし頬を伝い
少女の頭に落としてしまう
気付いた少女は乱暴に私の腕から離れママの元に行く
ママの元にたどり着いた少女が不安そうな顔で心配をかける
「大丈夫?なんで?ママとパパがいいよ?」
そう首を傾げる少女の元に私は足を進めた
ドン
音が響く、鈍痛もだ…
どうやら見えない壁があるらしく少女の元にはこれ以上いけないらしい
此れが罠なら少女の命すらも危ない
そう、言い聞かせたかった
この世界がおかしい事は最初からわかっていた
これが現実であってほしい
此れが現実で在れば良かった
「ごめんね…パパと、元気で暮らしてね。」
『止めて…ママ』
ママは少女の中から離れる
少女は固まったまま、動かなかった
涙を流しているのは確かだ
けれど、顔が見えない、背中だけだ
その背中を抱きしめてあげたい
私の様な感情を持たないで欲しい
なのにこの場所の先からいけない
術を先ほどから使おうとしているのだが
全く出てこないし、部屋全体がチョーカーの
役割をしているのかもしれない
そうでなくても、そうであっても
私は少女の背中を抱きしめてあげたい
なのに
『…みーちゃん、泣かないで』
なのに、私は無力だ。
少女一人の涙さえぬぐえない
嬉しそうに笑った少女を観たい
みーちゃんを、泣かせたくない
…そうか、これは夢だ。
白いご飯が好きで、おかっぱ頭で優しくておっちょこちょいで
笑って居る姿がとても愛らしく、やせ細っている少女は
『わた、し?』
ふわりと地面から綿が舞い上がっていく
えんえんと泣く少女の声が痛々しい
この花畑の中で息をしているのは私
ママとパパが、居なくなった私
綺麗な場所で、綺麗なまま、涙を流している
薄狼になったきっかけの記憶だ
+++
突如目が覚めた
目を開けると、そこは自分の…自室だった
畳の間で布団を敷いている、私
和服姿の、私が、居る。
花畑の世界が妙にリアル過ぎて、咽ながら涙が溢れ出た
時間がまだ夜明け前の事もあり、誰も来ない
その来ない時間が妙に花畑の時に味わった感覚が似ていて
私は世界を夢なのに、夢と言い聞かせ、声を押し殺し涙を流した
それから私は夢を何度も見始めた
目を閉じれば少女が私の夢の中で笑って居る
然し覚める前は涙を流して終わるのだ
まるで今も泣いている事を伝える様に
胸が痛み痛み、居たいと願う様になってきたのは
それから三日目の昼の時間だった
沖田さんが急に私に向かって悩んでいることがあれば
自分で良ければ言って欲しいと言ってきた
それに私はやんわりとお断りした。
勿論「何ででさぁ」と少し真面目な顔付きにもなったが
私にそんな相談を持ち掛けるなんて心配は要らない
私は知っているから。
『言っても無駄なの』
この感情は二度と楽にならない事を。
勿論沖田さんは負けずと言い寄って来たが
それに頷く気持ちすら出なかった私にyesなんて答えは無かった
『(みーちゃん、貴方は私だった。)』
ママに捨てられた最愛になるママに愛情を得られる
唯一無二の両腕は、背を向けて離れて行ったのだ
すると沖田の目の前で涙が零れおちた
それには沖田だけでなく周りに居た隊士や近藤も慌てて
どうしたのかと心配して駆け寄って来た
嗚呼、捨てられたのだ。
その現実が更に私の心臓に小さな針を突き刺し呑み込んでいく
ママすら愛されなかった私は一体誰なのだろう
どうして生きているのだろう
『…っなん、でもない、です』
我儘を言うな。我慢を憶えろ。迷惑をかけるな。
その言葉が酷く鮮明に頭の中で響いてくる
嗚呼、駄目だ。沖田達の傍から逃げる様に走り出した
後を追ってくる人なんて考えずに私は走る
あの花畑を見つければ、あの少女に会えば
あの人に会えるかもしれない
『はっ、はっ…っく、ふっ…嗚呼』
無駄だ
部屋の扉を全開にして外を観た
前も後ろも右も左も、居ないのだ
『嗚呼…戻って、お願い、ねぇ…何で?』
ママ、どうして?
私はママのお荷物だったの?
だからママは嫌ったの?
ならもっと嫌って欲しかった。
痛めつけて私がママを嫌いになるまで侮辱して欲しかった
なのにママは私に甘い蜜をくれるの
だから今も、いいや
もう想い出してしまったの
『ママぁ…あいたい』
会って、笑って、貴方の手で抱きしめて。
私を抱いて、「好きだよ」って言って。
そうして、私を愛して欲しい。
愛して
愛して
愛して
『(あの場所は私の心の奥なんだ)』
前世で辛く泣いて、もがき苦しんだ
あの時間に創りだした小さな逃げ場所
それが晴天で広い花畑の優しい世界
小さな少女は今も笑って泣いている
私の中(魂)で、息をしている
嗚呼、それなら少女が笑顔になればいい
『私は…もう、いいから、諦めるから』
だからどうか少女を愛して欲しい。
貴方の為に、私は少女を生かすから。
愛してもらうために
先生
『産まれた理由、やっと、わかったよ』
幼い自分を愛して貰う為に産まれて来たんですね
『嗚呼、なんだ…そっ、かぁ…私、偉いなぁ』
こんな苦しみを感情を二度と戻らない現実を
全て抱えて愛おしい感情にまで創り上げて
夢として心の核にしてしまっていたのだ
手を伸ばしても届かない。届いても、望みは叶わない。
愛おしいと笑って欲しいと願っても叶っても
叶ったとしても、もう、叶わない
食べ物を嫌いになったのはママに叱られたことが原因だった
残さず食べないとママは怒って愛してくれなかった
だから無理でも喉に押し込み毎回吐き気と闘った
友達が食欲をわかせて食べている姿が怖かった
皆食べているのに私は食べる感覚が分からなかった
分かりたくなくて、食べなかった
無理して食べても成長は遅く、発達もしなかった
その分ママは私に食べさせようと必死だった
愛情が少しでも分かった
私は食事をする事が嫌になった
それからは食欲も沸かなくなり
感情もかけて行って、ママは出て行った
食べなかったから、甘えたから、ママは捨てた
私を捨てて出て行った。
何度も感じる感情に頭がおかしくなりそうだ。
だけど、この感情を味わう事をしなければしないで
胸が苦しくなって仕方がない
自室に入り布団の中に居ると
数分後、ドタバタと外がうるさくなってきた
土方「入るぞ」
柏木「…都佑ちゃん、悪夢でも見たかい?」
入って来た柏木の声に私は直ぐ反応した
バッと布団から飛び上がり膝を布団につけて
上布団を鷲掴み視線はしたに降り、言葉を噛みしめた
『あれは…あれ、が、悪夢なら』
どれ程良かったか。
あんなものが悪夢なら、悪夢はもっと悪い
あれは良い夢なのだ。私の一番愛してる夢。
なのに胸はずっと覚めても夢を追いかける。
あれは別世界だ
夢ではない。悪夢でもない。私とは別の”世界”。
土方「話してくれねぇか?…俺らじゃ、不満か?」
『そんな事ない!でも…あんな、あんなの』
あんな顔をどうやって話せばいいと言うのだ
嬉しそうに笑ってくれる少女がかつての私で
少女はずっと泣いている事を
ママを過去を前世を
抱く情が続いていた事を、どうやって話せばいいのだ。
『…此れも夢であれば、良いのにね。』
柏木「此処は現実だ。…現実、なんじゃ」
『嗚呼、夢ならよかったのに。』
そしたらママに愛されていたのかもしれないのに。
そう感じると、ママの愛情を欲する情が込みあがって来た
嗚呼、こんなにも愛されたいと願っていたのですか。
私はこんなにも無力だったのですか。
『夢なら、夢でも、夢は…所詮夢なんです。
現実は変わらない変われない確実に在った物なんです。』
だからこんな感情とっとと無くせば良い
なのに沸いて出てくる。案外一番驚いているのは
自分だったりするのではないか
『先生、これは、コレを、持ち続けろと言うのですか。
こんな、こんな感情を?今からも?ずっと?何で?』
何故叶わない情を100年経った
今(転生後)も持たねばならぬのだろうか
苦しい苦しいのに、嫌な筈なのに
柏木「嗚呼、捨ててはならん。…辛いのは承知の上じゃ。」
『ううん、先生、ごめん、ごめんね。』
嬉しいと感じてしまうのだ
そう笑ってみると、泣きそうな顔で土方さんが観てくれた
嗚呼、そんな顔して欲しくないんです。
土方「先生」
柏木「…薄狼ならではじゃ、都佑ちゃんや。
想い出したんじゃな?この世界に産まれて来た理由がある事を。」
『…うん、きっと、此れだよ』
胸に両手をあてて俯いた
ママをパパを望んだ幼い私が望んだ世界だ
『敢えて悪夢として呼ぶのなら
私はこの悪夢に名前が付けられるよ』
沖田「名前…?」
笑って泣いて、ずっと変わらない場所
それは私が一番愛した場所それは私の好きな場所
名前を悪夢の名前を使って言うのであれば
『”酷く優しい醒めない悪夢”』
嗚呼、ぴったりではないか。
ママもパパも幼い私も居る、現実に在った場所
その場所は優し過ぎるが故に悪夢と呼ばれてもおかしくないだろう
優しいは度が過ぎれば苦しくなる
柏木が突如「何故、その言葉を・・・」と
酷く動揺して手に口を当てて驚いていた
柏木「薄狼が夢を見た時に言う言葉じゃ。
お前さん、それは悪夢じゃよ、人が堪えれない悪夢じゃ!」
土方「先生?…おい羽黒そ、うなの」
土方は羽黒の顔を観て最後まで言い切れなかった
嬉しそうに微笑んでいたのだ
涙を流して
『ううん、違うよ…アレは良い夢だよ。優しい夢』
柏木「お前さんら薄狼は本当に強いんじゃのぉ…
一番愛されたかった人と己が居るものをそう呼ぶのじゃから」
沖田「愛されたかった…?なんでぃ」
『ママは私を捨てたの。
私が悪かった…いいや誰も悪くなかったのだ』
ママもパパも私だって悪くなかった
あの日は確実に起きる事だった
逃れる事は出来なかった
私は無力だった
土方「捨てた…?」
『親にさえも自分の欲を押し付けず我慢し作り笑いを創りあげ
食を嫌い、手を伸ばし欲しい物を取る事を諦め、離縁を見届けた』
たった9歳で
その言葉に土方らの目は開いた
『たった9歳だ、なんだアレ…おかしいよ。そんな我儘も言えばいいじゃない。
言って良いんだよ、だってたった9歳だ!なのに…私ったらお人好しね』
”どうせ手に入らないなら伸ばさなければ良い”
なんて言い出すんだから
柏木「…それを悪夢と言うんじゃよ」
『なら私は醒めない悪夢を”また”観るのね。
100年も昔の夢を、また、この胸で躍らせられるんだね。』
沖田「な、んで…そんな嬉しいんでさぁ、辛いんじゃ!!」
辛い?
これは、辛いという”感情”なの?
『嬉しいの、苦しい感情は痛みを愛おしく感じさせた。
そうして私は心の核にして、今を生きていく。だって居るの。』
私が一番会いたかった人が夢の中に居る
それが何よりも嬉しい証拠だ
そして何よりも、悲しい証拠であるのだ
『どうか夢なら醒めないで。そのままで居(痛)て。』
この感情はもう、変わらない変われない変わりたくない。
ならば私が飲み込んでしまえばいい。
小さな痛みも小さな思いも小さな存在さえも。
『…沖田さん、私相談しなくても、ほら!乗り越えたよ?』
沖田「とてもじゃねぇがそりゃ乗り越えたんじゃねぇでさぁ
そりゃ”堪えている”だけでさぁ…」
『痛む物も愛せば良い…柏木さん
私こっちの方が私らしいですわ!』
だってこんなにも楽しいのだから。
追蹤ポートレート
(何故痛む悪夢を優しいと呼ぶ)
(だって見たかった夢だから)
人に寄っては悪夢と見える
彼ら(薄狼)はその悪夢を観ると皆呼ぶのだ
”酷く優しく醒めない悪夢”
優しく微笑みながら笑って
泣く