その日々を齧る

泣いて現況を知った次の日の夜

私は神楽とはっちゃけた後で
「ただいま」なんて必ず言いたくなる
可愛らしい前世の思考を持った都佑は

昨日も土方に挨拶をして今朝もしようと起きたのだが
本人は朝方から出かけたらしく
丁度入れ替わりだったのを隊士から聞き、少し眠りについて
三時間ほどで目を開けて飛び起きる


『はぁ、はぁ…くそっ
日に日に前世の感覚が体に染み込んでいく』

医者が言っていた通り、都佑は前世の名前に戻して
周りの環境のかいもあっての賜物か、
幼体の初期は三日もせずに過ぎ
今中期の真っただ中に位置しているのか
前世の夢がかなり鮮明になっている

少女が自分だと知った日からふと気を抜けば
軽く頭が夢の中を歩いていくのだ
神楽に少々心配されたが、問題ない事で
色々言ってなんとか誤魔化せ…たと思う。


つい先ほど迄夢を見ていたのだが
その内容が余りにも見たくない現実で

『…もう望んでないのに、なのに何で!!
込みあがってくるんだよ!!』

ダンと音を立てる様に布団に手を握り締めて叩き付ける

苛立ちはすぐに収まるその感情が忌々しくなるも
いとおしい感情は拭い切れず、汗を流す為にも部屋から
此間神楽と一緒に買い物を楽しんだ時に買った服を持って
今日は何処に行こう、そう言えばお父さんに話してな

『は?私今なに思った?』

ひやりと汗が左横の首筋を沿って流れるのを感じる

父親?父親の事を思いながら部屋を出て
3歩ほどの廊下の真ん中で止まる
汗だくでただでさえ気持ちが悪い

早く考えるのを止めたい
この時間が消えて笑っていたい
そう望む、望むことが増えてきた

『嗚呼駄目だ止めろ私、望んだ処で
叶わないのは私が一番知っているだろ?
…そうだ、そっちに居れば”まだ”居られる』

そうすれば”まだ”新選組の中で息が出来る
此処にどれだけ執着したいのだろう?
いっその事全て溶けて無くなった方が
この心も楽になるのではないのだろうか?

『駄目だ、それこそ成長止まって土方さんや
お医者さんまでも大目玉食らっちゃう…
うう、この感情は成るべく持ち続けたくないのに』

望む事を覚えてしまえば必ず現実を見て傷付く事がある。
その時に前世では幼い己を閉じ込めてしまったが故に
今世でそのリバウンドとして感情コントロールが出来ていない気がする

服をぎゅっと握り締めてふと、また立ち止まる

『あれ?私一体何時から”望み手を伸ばす行為を諦めた”?』

初期は大体12歳と言われていた
9歳頃と知ったのは少女の証言なので
正確な事はわからない

『…そういや私前から自分で”これがあれがしたい”
なんて自然に思考が働かないけどまさか前世の幼少期に
”何かしらの精神状態の異常”があったから?いやまさかー』

ま、

『未夜ちゃん掟その一、都佑の第六感は大体8割は当たり』

真顔で半目状態でドバっと嫌な汗が噴き出る
無い!無い!無いよ!ゼッタイナイヨー
と声を出しながら半笑いで棒読みになっている自分が
空し過ぎて最後に鼻で笑った

『幼少期か、そういや夢に出るのは中学〜か3歳児前後だなぁ。
と言う事は5歳〜11歳の間に何かあった?』
4歳児なら小学生高学年なんて長い期間には至らない気がする
確実に小学生の時期がすっぽり無いのだ
と言う事は

『その時間帯で何らかの精神的ショックが起り
其処で望む事も怒りも起きなくなった?』

そう察した方が一番しっくりくる
そうと決まればすぐにでも夢に出てくると思ったが
そう簡単に問屋が降りたらサツ(警察)も要らないだろう

歩いては止まり歩いては止まりを繰り返しながらも
今の現状と他人との接し方について分析するのに
声に出してブツブツとしゃべっていると
なんとなく自分の今の状態が分かり始めた


『そういや初期に入った位から本気で腹立った事一度も無いな…
あれがこれがしたいって頭で浮かぶ事もない、偏食に加えて
風呂も正直勇気出さないと行けないし…虐待?幼少期に??』

然しパパママの顔も声すらも思い出せない状況の今なら
その虐待であれば説明がつくかもしれない。
いやしかし「でも」だ

『結びつかないよなぁ…無邪気だからこそ怒る事を知らないとか?
いやそれはないか…寧ろ元々怒る事の引き金事態が無かったとか?』

それはそれでかなり怖い話だ
人間喜怒哀楽があってこそ成り立つものだ
怒ることを忘れたなんてそんなのまるで

少女の笑顔がふと鮮明に色が紙に水が滲む様に染まっていく
笑っていた少女、前世の私はあの時何故笑ったのだろう?
苦しそうに笑ったあの顔はまるで

『”悲しみを喜びで隠し続けたが故に怒りの余裕すら無かった”
なんて、いや…そんなのが仮に幼少期にあったとしたら、私』

とんでもない闇を抱えているのではないのだろうか?
薄狼は特に必ずと言って前世の記憶を持っている
+悲しい過去を持っていると此間医者から聞いた
私が腑に落ちないのはまだ「思い出していない」過去があるから?

シャワー室にたどり着き、私は重い足を動かして
ゆっくりと温かい日差しを背に部屋に入った

熱い雨に一瞬でもこのモヤモヤを拭えればと目を瞑って
土方さん達は今頃どうしているのだろうかと考える方向を切り替え様とする
然しその瞼の裏には少女の笑顔が張り付いていてとてもじゃないが切り替えられない

シャーと水が地面に打たれる音と蛇口から勢いよく噴射される水の音に混じり
自分の感情もそのまま勢いよく地面に打たれて流れていろんなものを混ぜて
流してしまいたくなった

『…君は何でそんなにも困った様に笑うの?』

目をきつく瞑り眉を寄せて横髪から前髪を両手で一気に上げて
オールバックを作って目は瞑ったまま上を見上げる


笑顔が何処か寂しそうで、その玄関先は確かに自分の家なのだろう
誰かを迎え入れる様に立ち尽くす少女の笑顔がとてもじゃないが
見ていられなくて、今にも抱きしめて「大丈夫だよ」と自分の心にも
言い聞かせてあげたかった

夢は所詮夢ままごとで、そんな事も
手を伸ばして抱きしめることさえも叶わない
少女の笑顔がどうかそれ以上崩れない事を祈るしか出来ない

『…幾ら力を以ても、幻一つも救えや出来ない』

だが、夢を救おうと考えてもこの感情に
救いを求める様な意味は無いのを、私は知っている。


『(だってその現実はもう終わったお話しだから)』

今更ストーリーの変更なんて求めてもナンセンスだろう
むしろ、そのストーリーの一部になりたいだなんて
土方さん達に話せばどんな顔をするだろう?

『…休息は私にとって毒以外のなんでもないのに』

医者も皆私に良くしてくれるし、心配をかけている
この世界でも私は心配をかけて生きるのか?
嗚呼そんな事はしたくなんてないのに

皆私の”止めた筈の幼心”を動かしてしまう


+++

シャワーを浴び終えた後、私は調子が悪い気がしたので
紺色の外でも歩いて問題ないフリル抑え目のワンピースを着て
裸足のまま部屋に足を進めていると

沖田「何処行ってたんでぃ、姿無いから軽く探したでぃ…」
『ごっごめんなさい…シャワー浴びてたんです。』

昼食を取ろうと部屋に沖田が訪問したらしいのだが
既に悩みながら歩いてシャワー室に行ったのを
誰にも言っていないのを思い出して反省した

沖田は疲れたのか安心したのか、廊下の外側に座って大きなため息を吐いた

沖田「今日の予定は?」
『今のところ何も入ってませんけど…』
沖田「それじゃ俺と飯食いにいきやせん?」

したいのは、山々だが…

『…こんな服でも別に問題ないですかね?』
沖田「別にって外出用の服じゃねぇんですかぃ?」

ぱちくりと目を瞬きする沖田に寧ろ都佑は驚いた
部屋着だったことを説明すると「全く分かんなかったでさぁ」
と女をそれなり?に見ている沖田さんまで気付かなかった

そりゃあそうだ。なんせ買った当初には「外着でも化」
と書かれていたのをすっかり都佑の頭の中では忘れていたのだ
ひざ下迄ある為別に近くのお店なら外に出ても良いかと考えたが
そもそも土方や近藤に許可を取っていない事を思い出し
都佑はまず土方に許可を取りに行くと沖田の目を見て言った

一瞬駄目だ、と言われるかと思ったが
頭をかきながら「あー」と言った後ふらりと
前を歩きだした

沖田「何突っ立ってんでぃ、土方さんとこ行くんでしょう?」
『あっ、はい!』
そう返事をした後そのまま
沖田の後ろをヒナの様にテトテトつま先で歩く
そわそわとする感じに沖田は頭をかくのを止めて
スグに横を向いて止まった

『わぷっ』
沖田「…土方さーん都佑と昼飯食って来ても良いですかぃ?」
土方「…分かった、何かあったらダメだ。俺も行く、が…大丈夫か?」

沖田の横腹(正確には頭は胸より上)に当たった都佑は
2、3歩後ろで鼻を抑えて首を横に振ってなんとか痛みを
拭おうとしている処に土方から声がかかり驚き目を丸くして
ビクリと身体を上に少し浮かせた

ブンブンと縦に上半身を使い声も出さずにOKを出した後
土方は少し冷や汗をかきながら「…そうか」と困惑した声を出した


+++

土方「…何でてめぇが此処に居るんだ」
銀時「そりゃこっちのセリフだ…って
おっ都佑と総一郎君じゃねぇか!
あれから元気してるか?」

そう此方を見てきた銀時に都佑は
土方の後ろに少しだけ隠れて首だけを
ぶんぶん降って答えていると
沖田は「総悟でさぁ旦那ぁ」と突っ込みを入れる

その沖田の反応に都佑は面白くなったのか
声を押し殺して笑っているのを見た銀時は内心安心した
都佑が遊びに来れば来る度にキャラがコロコロと変わる

特にここ数日は都佑から自然に隣には来なくなったのが
若干ショックだったりするのだが、本人には言えず
医者の所に相談しに行ったら「前世の性格じゃのぉ」
と言っていたので恐らく性格と言うよりかは…

銀時「とりあえず、隣来る?」
『あ、あの…すいません、上って空いてますか?』
土方「上?」
「嗚呼!お嬢ちゃんか!良いよ、上に上がっても!
今日は引き連れて、モテるねー」

そう店主に肘をつつかれながら言った言葉に
都佑は「そんなんじゃ無いです、良くてお友達です」
と言って少し俯き土方の肘部分の服を少しだけ強く握った



銀時「で、俺も良いの?」
『うん、私はとりあえず横になれる
場所があれば大丈夫だから』

そう言って広い間に4人で座るのだが
都佑は1人日当たりの良い方に座った後
そっと横にこてんとパチクリ目を瞬きしながら寝るので
土方は具合が悪いのかと少々不安になった

勿論土方だけでなく誘った沖田もついてきた銀時も
不安な顔をして様子を見るが、都佑自身今日は
外に出たかったのもあったので、別に問題は無かった

それに

『大丈夫です、前世のこの歳位ではちょっと病患っていて
結構人だかりは苦手で体力や体重も減っていたので・・・
柏木さんからも成るべく外に出る様にって言われてたし』

沖田「…具合悪かったらすぐに言って下せぇ、
土方がパト回してくるでさぁ」
土方「なんで俺なんだよってか
どさくさに紛れて呼び捨てすんなご…すまん」

銀時に人差し指で「シーっ」とされ、腹が立ったが
すぐに隣に横になっている都佑の事を思い出して
謝るが都佑は寧ろそうやっていつも通りの3人の様子が
見れるのなら別に頭の痛みの3つや6つは覚悟しているつもりだと
思っていると3人とも成るべく声は張らない様にしようと
目配せで頷いて決意した

土方がすぐに都佑の服に目が行き自身の上着を脱ぎ
そっと身体にかけてやるのに都佑は驚いた顔で起き上がろうとする
勿論体調が悪いのは本当なので行き成り起き上がろうとしたのに
頭がくらりと周り吐き気まで来たのに「無理すんな」と頭を撫でた

『でも…』
土方「俺は別に大丈夫だかー」

そう話しをしていると若い女の人が現れる
最近仲良くなった人で笑顔が素敵な人だ

「失礼します、未夜ちゃんお体は大丈夫ですか?」
『ちょっと調子は良くないから…
今日はおうどんお願いしても良いですか?』
「分かりました、お連れさんは…」

土方「俺は何時ものを頼む」
沖田「じゃあ俺は蕎麦ランチのあったけぇ奴で」
銀時「俺はーパフェ一つで」

パフェなんてあっただろうか…とボケっとしながら
注文を聞いた若い女性は失礼しますと部屋を出て行った後
すぐに沖田が「具合悪かったんですかぃ!?」と丁度
都佑の真正面に座っている為困惑した顔がよく見える

『えへへ具合悪いって言ったら2人とも
お外に連れてってくれないだろうし、こんな時間
滅多に無いから、私今嬉しいんだけど…嫌?』

沖田「あ、いや…俺は別に、
都佑が良けりゃいいでさぁ…最近」

ん?

沖田「飯の量、減りやした?」
土方「嗚呼それは俺も感じた、お前俺達が居ない処では
殆ど食ってねぇらしいじゃねぇか…ザキから聞いたが
あいつだけじゃなく他の隊士も心配してたぞ?」

そうため息を吐いた土方さんに「ごめんねぇ」と笑って答えた
この時期の身体は本当に口に喉に押し込むのが辛くて堪らない
なのでウィダーみたいなゼリー飲料があればと思ったのだが
この世界にウィダーみたいな画期的な飲み物はかなり高価だ

なのでそんなものにも手が付けれないまま
前世の状態で尚且つ食べれる時に食べ物を手に付けていると
自然と体重も減るし動く事が極端に減った為余計に体重も減り
やつれたような感じに見えなくもないだろう

ミツバの件から沖田や土方、近藤さんも都佑の体調が悪くなると
かなり動揺して焦ったような顔をしたりするのを見てすぐに
「嗚呼、心配かけてる」と思い無理にでもと口に物を入れていたのが
いけなかったのだが、案の定成人前後の一番辛かった時期に入って結構しんどい

それに

シャワー室で考えていた少女の顔を思い出して
土方さんの上着に隠れて目を閉じて顔を変える
笑っていれば、きっと、皆笑ってくれるから

ヘラヘラとしてりゃ、私が大好きな皆の笑顔が見れるから
そう思い笑い出した日は一体何時からだろうか?
かなり早い段階で感じた気がする

そう考えていると土方さんに呼ばれて返事をする
今私は上手く笑えているだろうか?

土方「…何かあったのか?」
『え?あ、いや何も』
銀時「嘘付くな、最近うちの神楽もお前の事ばっかで煩いんだよ」

神楽ちゃんが?

銀時「「都佑何時もふと誰も居ない場所で寂しそうな顔してるネ」
って昨日何度俺に相談を持ち掛けられたことか…」
『…マジですか、神楽ちゃんにバレるって』
銀時「神楽にも話せないのか?お前一体何があったんだよ」

そんなの
『そん、なの…私が一番聞きたい、よ』

胸がぎゅっと苦しくなる
この痛みは病気とかじゃない事は分かっていて
少女の、夢の世界が一気に頭の中にあふれてくる

『…最近ね、何処かの屋敷みたいな玄関先に
やせ細ったおかっぱの黒髪少女が立ち尽くしている夢を見るの』
土方「夢?」
『その子は何時もへらへらと笑って、父親がやってきてこう言うの』

”ママは2度と帰ってこないよ”

その言葉に3人は目を開いた

『それに少女は涙を流して、抱きしめてあげたくなって手を伸ばすの』
それでもその少女に私の手が触れることは無くて
ふわりと其処に存在しないかの様に手が空気を取る

少女は二、三涙を流した後、嬉しそうに笑う
その笑顔が痛々しくて、救えられない自分に苛立ちを持つはずなのに
イライラすら、怒りすら出なくて、出てきた感情は

ただ空しくて


沖田「…」
『その子が前世の私だとは分かってるから
仮に救ってもきっと報われないと思うと胸が痛くなってね』
銀時「救っても良いんじゃねぇのか?」

『バットエンドをハッピーエンドには変えたくないんだってさ』

そう私は少し痛くなってきた身体を動かして頭を天井に向けて
膝を立て寝直した

『あの子は笑い泣きして寂しそうだったのに
私も空しくて胸が痛くて堪らなかったのに
救ってしまえばきっとあの子も私も絶望するんだ』

だってストーリーを変える事は私も少女も望んでいないのだから。
そう考えれば少女は余りにも早く現実を見てしまったのだろう
あの頃であれば大体体つきにしても…

『たった9歳?』
土方「9歳?」

たった一桁の少女があんな胸痛々しい感情を宿したのか?
胸が焦がれて息もしにくく食事も喉を通らない
置いて行かれたと、自分が駄目だと傷つけ始めたと同時に
自分の幼い心を深い場所に突き落として閉じ込めたのが?

あの笑顔の裏にどれ程の感情を抱いたのだろうか
今は分からずとも必ず私の心は真実を知る
それまでどうか、笑ったままで居てほしい。


『ごめん、何でもないよ。』

たった一桁の幼い少女は手を伸ばす行為を
一番甘えて仕方がない時期に伸ばす事を諦めたのだ
目は涙で潤い、斜め下を向いて寂しそうにしたと思いきや
にかりと笑って周りを心配させまいとする

『(嗚呼、気分転換すらさせてくれないのか君は)』

余りにも残酷な夢に都佑は気分が悪くなり
少しだけ眠ると言って話を途切れさせた
それに銀時は少しため息をついて頭を手で乱暴にかいた

銀時「…あれ?ガチで寝た?」
土方「…寝てる」
沖田「眠れてなかったんですかねぇ…苦しそうな顔しちゃって」

土方の隊服である右の袖を握りしめて眠っていた
規則正しい寝息に、本格的に寝ている事を察した三人は
小声で先ほどの話をまとめてみる


銀時「こりゃかなりこじらせてんなぁお宅のお子さん」
沖田「お子さんって歳じゃねぇですぜぃ23になるって聞きやした」
銀時「マジかよ!…うっわ、みえねぇってか幼顔だったのか」
土方「おい、話ずれてんぞ」

銀時「嗚呼、そうだな…まぁ話して
楽になりゃ俺達でもって思ったんだが
見た感じ”現状を整理するだけで手一杯”って処か?」

土方「チャイナが言ってた様に何人かの隊士もこいつの
痛々しい顔を目撃したと聞いているが」
銀時「え?放置してたの?」
土方「ちっげ!…柏木さんに相談したら
「何もしないでやってくれ」って言われたんだよ」

かと言って放っておける程鬼でもない土方
その相談の後丁度いい時に都佑が外出許可をと
久しぶりに自分からの願いを言ってきたのだ
それに許可を出さないのは苦であろうと
少し体調が悪そうではあるが直ぐに帰れば問題ないと思い
許可を出したのだ


土方「柏木さん曰く前世でかなり抑え込んでいた感情が
今になって鎖もない状態で軽いパニックになっているらしい」
沖田「…見た感じ全くそんな風に見えねぇですが」

土方「それも岡本都佑として生きていた前世の性格らしい
本心を隠し人に出すオーラも全く心配させない様に面被ってるから
カマかけて動揺させねぇと浮彫にはなんねぇって言ってた」

銀時「普通の女の子が?餓鬼の記憶なんだろ?」
土方「今はその時期らしいが、本人も一部の記憶が無いって言ってる。
恐らく今その一部の記憶の夢で本人の本音と仮面と現世が混じってるんだろ」

まぁ何方にしても面倒な事この上ない
そんな事は都佑本人が人一倍知っているのか
カマをかけても全く本音のほの字も出てこない
いや正確には出てはいるのだ

然し普通の女の子、とは余りにもかけ離れている
その夢がどうか本当の夢であれと望んでいるものと
その夢がどうか自分の現実であれと望みごちゃごちゃに
感情が混ざっているのは最近様子を見るだけでも分かる

本人は上手く隠していると思っていたらしいが
正直周りには勘のいい奴が揃っている為バレバレだ


沖田「…早くお手合わせして何時もの怒った顔見ねぇと
なんか気分悪ぃでさぁ」
銀時「そうか?俺はどっちかって言うと笑った顔が良いと思うけどな。
万事屋で時々笑っている都佑ちゃんって見るぞ?」
沖田・土方「マジか!!」

それに勢いよく食いついた土方と沖田に銀時は後ろに背を引いて
少し焦って両手でドウドウと手を開いて上へ下へ折り曲げている

銀時「機嫌も体調も良い時に来た時にゃ定春触ってて
嬉しそうに無邪気にはしゃいでいたのを俺が隠れてみてたが
何時もなら攻撃してくるんだがその日はへにゃってした顔で笑って
定春にくっついてったぞ」

そう言った銀時に土方も最近一度だけ無邪気に笑っているのを思い出す
ケタケタと腹を抱えて笑ったりクルクルと自分の感情を表現する様に
体を回して喜び目をキラキラとさせていたりする

その行動こそが都佑本来の性格でありありのままであるのなら
そのままで居りゃ良いものを、本人は数分後に顔を真っ赤にして
見ていた人に反発していたりするので、それもそれで可愛らしいのだが
本人がそう周りが和んでいる事など知らないのだろう


沖田「へぇー…犬が好きってのは聞いてましたが
あのでっけぇ犬もですかぃ」
銀時「初めて会った時に噛み付かなくてな、寧ろ最近
お宅の方を散歩して時々会って遊んでいるって神楽が言ってたからなぁ」

流石に監禁とはいかないので終始人を監視つけているわけでは無かったのだが
予想以上に都佑がいろんなことを周りに振りまいている事が分かった
土方はため息をついて我慢出来なくなったのか煙草を取り出して火を付け
都佑の眠っている方向とは逆の方に思いっきり吸って吐いた後
先ほどの女の人がもう一人の男性を連れて食べ物を持ち、入ってきた

それに都佑は目を覚ましゆっくりと起き上がった
ゴシゴシとまでは行かないが目糞を取り女のひとを呼び止め
「ありがとう」と笑うと女のひとは嬉しかったのか
今度調子が良い時に遊びに来てと口約束をして出て行った


『いただきます』
土方「おぅ、たんと食えよ。マヨ要るか?」
銀時「ちょっと多串君具合悪い子にそりゃ苦痛だよ
銀さんの宇治銀時分けようか?」
『ぶっ、ふっ、2人共の要らないですからっ』

クスクスと笑い口元を片手で隠しながら席に座り
土方の隊服をもう少し借りようと肩にかけ直した
仮眠前の思い詰めた顔とは正反対のその笑みに
喧嘩しそうになっていた銀時と土方は小さなため息をついた後
微笑み少しずつだが食べる都佑に安心した沖田だった

『ん?食べないんですか?』
土方「そういや久しぶりに一緒に食うなと思ってよ」
銀時「え?お二人さん付き合ってんの?」

そうニヤニヤとする銀時にちげぇと怒り箸を割りそうになる
土方に「ドウドウ」と都佑がつい先ほど銀時が
やっていた様にする

まぁノリで土方も「馬じゃねぇ!」と言うが
すぐにハッとして怒鳴ってすまねぇと謝罪してきた
それに都佑は別に気にしていないと横に手と首を振った


『面白いので大丈夫ですよ、ね?総一郎君!』
沖田「都佑、総悟でさぁ」
『えへへ、知ってる!』
そう笑った後都佑の視界はうどんに落とされる
ちゅるちゅると音を立てて食べているのに
安心した三人はそのまま暖かいご飯に手を付けた







貴方のその笑顔を変えようとしてもそれはお門違いなの
だって貴方は今も私の心の中で笑って花を咲かしてくれるから
だから私はそのお花を少しでも周りにまき散らすの

貴方(前世の私)の笑顔が余りにも眩しくて
皆に自慢して回したくて、そんな願いは、悪いかな?