偶然に乗じて必然

「まさか土方さんのご先祖と未夜さんの前世が繋がっていたとは」

『正確には全然前世ね』

「ちょっと公式に悟られない様にって漢字変えても
知ってる人は知ってるからねぇ!?何言ってんの!?
後聞く所によっては絶対前々世でしょ!?一つ飛ばさないで!!」

そう鼻で笑う未夜に新八が突っ込みを入れる

それにしても未夜と土方が仲が良いというのも
繋がりがあったという事で納得が出来た
新八はとりあえず他の皆にも知らせる為にも
とりあえず万事屋に戻る事にした

「では僕はこれで」

「待て待て、薄暗くなってきたんだ、送ってくよ」

そういった土方に新八は何を言っているんだと反論した

三日三晩付き添いをしていた者が目覚めたのだ。
それも先祖であり何であり、ずっと昔に出会っていた二人が
こうしてまた出会った事を互いにしったばかりだ。
野暮用が無くてでも作って姿を消した方がいいってものだと
新八は土方をとにかく未夜の傍にいる様にいうが
後に引かない土方に医者が前にでた 

「俺が送っていく、それでどうかな?」

「…すまねぇ、頼んだ」

了解。とほほ笑んだ医者は未夜にウインクで合図をした
それに未夜は苦笑いでいってらっしゃいと手を振った




のが、十分前だ。


なんで、と声を出して質問から会話が始まったのは土方の方だった


「何で、あいつの記憶を消す様な事をした?」

『元々狼族自体人間と関わってはいけないと言い伝えられていたの。
感情的になると暴走が止まらなくなり、迷惑がかかるからっていう意味があってね』

仮に周りに知らしめた所で、悪い人間であろうと
良い人間であろうと必ず漬け込んでくる
薄狼がいない頃、朝狼が回復を担っていた為
重傷でも元気になる、長生きしてしまう事がわかってしまうからだ。

そうなれば人間噂を広めるのは早い為
場所がバレた上に居場所処か朝狼処か狼族を狙って
無駄な争いが大きくなる事にあるかもしれなかった

だからそんな事を遠ざける為にも
人間と関わらない様にしたらしい。

「だがお前らの中で記憶を消せる術があるなら
それを使ってしまえばいいじゃねぇか」

『それが一人にしか効果がないのよ』


術は術でも簡単な術なら何度だって使えるが
範囲が広くなればなる程、高度なものになる
高度な物を続かせる為にはかなりの体力と
強大な力が必要になってくる。

村一つの規模の記憶を消した所で
何時まで記憶を忘れているか。といった所なのだ

幸いな事に狼族一人で人間一人の記憶を忘れさせると
小さな子でも10年は忘れたままに出来るらしく簡単な物だった


『けれど、少女は…小籠は力を持っていなかった』

「は?」

強大な力を持っていた夜狼の母と
回復量なら群を抜いて強かった朝狼の父の子が
全く使えない、人間程の力しかない者が産まれるとは思わなかったのだ

加えて使えるのがせいぜい“花を咲かせる”位で
女性なら喜びそうなのだが、小籠は身体を動かす方。
他に力を使える様に努力をしていたが
10歳の誕生日に出なければ二度と出ないと言われていた。


『小籠は泣いて泣いて泣き叫んでた
そんな時、白いツユクサを生み出す事に成功したの
そのツユクサを綺麗だと言ってくれた少年って
苗字が走水(はしりみず)っての知ってた?』

「ああー何となく言ってた様な気がする」

土方の母親、今はもう亡き者であるが
幼い頃苗字があった事を珍しく覚えていた

『おかしくて覚えてるんだよねー
水が苦手なのに苗字が走水って笑ってた』

「可哀そうだからやめてやれ」

走水優太(はしりみず ゆた)

それが土方の母親の祖先
小籠が笑い仲良くしていた少年だったらしい

「そういや小籠って言ってたなあいつも」

『ちょっとご先祖様でしょう…言い方変えてあげようよ』

「先祖の苗字を笑いものにしてる奴に言われたくねぇな」

にやりと笑っている土方に未夜は頬を膨らました
少しご機嫌斜めであったが、少年走水のあだ名で
“ハッシー”といってた事を伝えると
まるでトッシーみたいだねぇと笑う

勿論先祖まで例の刀の件みたいな
元々変だった言い方をするなと突っ込む土方に
未夜は笑い話を切り替えた


『そういやその子言ってたんだよね?ずっと待ってるって』

「ん?嗚呼、やっと思い出したって泣いてたぞ」

『そっか』

「ずっと好きだったとさ」

『…そっか。』

良かった、と嬉しそうに微笑んだ未夜に
土方は軽くため息を吐いた
未夜は狼森小籠の生まれ変わりであるのだ
走水の事を想う事だって間違いではない

記憶を何度でも繰り返している彼女の世界では。



『あーあ!それにしても小籠ってそんなに元気だったかなぁ』

「記憶にねぇのか?」

『いや夢に観る位鮮明ですけれども』

「日本語になってねぇぞ」

苦笑いする土方に未夜は苦笑いで返した

『小籠って名前ね?意味がちゃんとあったんだよ』

















































『…また帰ってきてしまった』


都佑はそう深い溜息を付く

あれから一瞬寝ていたと思っていたら本当にそうで
気付けば土方の背中で眠っていた



それに帰りたくなかったのかと後ろから
向かって左に顔が乗って来た土方に
都佑は振り向き余りの近さに一瞬固まったが
「おぉおおお////!?」と顔を真っ赤にして近藤の後ろに隠れる

『ななっ!ちっちちっ近っ!?なにしゆうん!』

土方「何って、そりゃ聞いてるんだろ?
なんだ?それともー」

『あーっ!あーっ!何でもないってば!
もう!狼族は基本産まれた土地以外に定着しないから
五年おきには移動してるから!その意味だし!?』

両手でグーを作り下に勢いよく押してプリプリと
怒っている様にしか見えない都佑を見て
土方や近藤、隊士の皆も何時もの真選組が帰って来たと実感した

彼女が居なかった、若しくは感情も何も無かった時から
少なくとも二週間程近くは経っていたので
かなり久しぶりだと感じたのも無理は無かった

『むぅ、ほんま、何なの。皆してキモイ。
特にゴリラキモイ、ゴリラはキモイ。』

近藤「ええ!?何で!!」

ふふっと笑いながら都佑は小走りで屯所の門前を回る

土方達から見るとその姿は正に子供
きょろきょろと不審ながらも目は顔は嬉しそうにキラキラとしている


あの惨事から血も流し、大分体力が落ちたであろう都佑だったのだが
そのまま倒れ目を覚まし、屯所までパトカーで帰って来た

『10数分で頑張った結果で倍以上の時間で
帰ってくるとは思わなかったけど』

土方「悪かったなぁ遅くてよぉ…」

軽く眉間に皺が寄っている土方の言葉は軽く無視して
ふわりと涼しい季節の風が皆の髪を流す

隊士は門前に整列し、一斉に敬礼をした
それにまだ門外に居た都佑は目を丸くして驚いていた

沖田「おかえりでさぁ」

にこりと笑っている沖田がいつの間にか前に居た

屯所内の門前で、その眼は安堵の色を見せていた
嗚呼、やっと帰って来るのかという様な、気持ちが見えて

首を動かすとその場には近藤さんや土方さんらが見えた
沖田の隣に立って此方を見ていた


皆、同じ眼をしている


嗚呼、日常が帰って来ると言いたい様な


ー岡本、その人達はだあれ?



その落ち着いた女性の声に眼を見開いた
聞けるはずのない声が遠くから聞こえたのだ
在り得る筈がない、その声に嬉しくなり直ぐに振り向こうとした、が


『(落ち着け、急いだって始まらない)』

へそを向ける様にゆっくりと後ろを振り返る
遠くの方にキラキラと夕陽だろうか?
見える場所に二人の影が見えた

私は声を飲んだ
目の前がキラキラして止まない

キラキラと身体は光り、何となくだが足も見えないのは
確実にこの世のものではないと感じる

今ではこれが遠くからという言い訳になったら
全く違う人物では?とも思う

でもこの時ばかりは違った
私は一番観ていた二人だと思った


『っ…私、ね!紹介するよ!!
此処私のお仕事場なの!』


ねぇ、どうか私を見て?


そう何時か望んでいた時間を思い出す
確かに望んでいた時間

そんな時間が、今目の前に在る


現実に在ってはならない存在が
目の前に存在してることが妙に現実離れしていて

でも、確かに現実だった者で
気分はおかしいと何処か他人事のようにかんじた


それなのに、涙は直ぐに溢れてきて
徐々に夕陽がぼやけて見える
彼ら二人の場所に行きたくなる足を必死に止め
一歩二歩出た足をグッと堪え後ろに引いた


もう戻れないから
だからせめて彼らに報告をする。
もう大丈夫だよ、もう心配しなくていい
この場所(真選組)で生きていくと決めたのだと

涙を流しながら足を揃えて深くお辞儀をした


『…っ、お世話にっ、なりましたっ!!』


近藤「都佑ちゃん…」


空気を斬るほどに上半身を起こす
其処には誰も居なく、夢かと感じながら
都佑はどう気持ちを整理していいのかと考えながら
屯所の方を向こうとする

「”頑張っておいで”」


その声に振り向こうとしたが目を開いた後
涙がまた零れていくのを堪えずに都佑は
勢いよく足に力を入れて屯所をくぐり
そのまま土方の胸の中に飛びついた

驚いたのは胸の中に飛びつかれた土方本人だが
都佑が来た方向を見ると其処には嬉しそうに
笑ってお辞儀をした黒髪の男性と茶色の女性が立っていた
遠くからして身長は都佑程かと思っていながら
軽く頭でお辞儀をし目線をそらせると、消えていた

えぐえぐと泣く都佑を優しく抱きしめたまま
「おかえり」と呟くと小さな女の子はぎゅっと力を入れて
土方の背中に腕を回した

+++

『ふぇ、泣き過ぎた…』

沖田「こりゃ明日腫れやすぜぃ」

困った表情ながらも久しぶりに子供の様に
否、前世の幼少期でさえ泣いたことが無いかもしれない

と経験の少ない大勢の人の前で大泣きしたことに
時間が経って顔が茹でダコ状態の都佑に
優しく冷えたタオルを山崎が取って渡していたのだが
全くつけないので押し付けていた

山崎「それにしても怖かったんですか?あんなに泣いちゃって」

どうやら彼らには私が見えた姿を目撃していないらしい
それもその筈、彼らは私の夢や幻の形である
彼らが見える筈がない

彼の言葉を知るまでは


土方「あ?居ただろ、あの二人が親御さんだったんだろ?」

そう未夜の顔を見る土方











薄狼として禁忌の終焉