都佑は少女を殺す寸前で止める
刀は蒼く目は赤く
その姿はまさしく鬼の様だった
「何故?殺さない?」
『何故だって?そんなの』
その質問には鼻で笑えた
力は鬼の様に強大な物だというのに
何故だろうね?
『君が好きだから』
眼の色は、悲しそうに遠くを観る
幼い頃押し殺してしまった色と全く変わってなかった
チャキっとした音を立てた刀を
未夜は冷静に息を吐きながら左腰に鞘の中に入れる様仕舞うと
刀自体が徐々に消えてなくなった
++++
「にしてもアレは一体何だったんですか?
小さな女の子を殺そうとするだなんて!」
その後、私は気を失い土方さんの腕に包まれながら
病院に搬送されたらしい
眼を醒ますと何時も観ていた白い場所にいた
近くには新八君と土方さんが座っていた
「分からねぇ、だが少なくともこいつが大きな力を持っている事は確かだ。
なんだって俺は一度死んでいるんだからな」
「え?」
眼を瞑っているままなので、
彼らが私が目を覚ましている事等つゆ知らず
話の途中らしいので目覚めないままで居てみよう
「刀刺されて確実に死んだはずだった。
開けた花畑の中に暫く居たんだからよ」
「そういや沖田さんそんな事言ってた様な・・」
「そんな中、一人のガキに出会ったんだ。
そいつ俺の事だけでなく未夜の事知っていたんだよ」
『(私の事?)』
一体誰だろう?子供といっても知り合い等いない
というか花畑にいるという事は恐らく死んで間もない
三途の川を渡ると正直困るが、そこまで行ってなかったから
あの術も使えたのだろう。
「元気な癖して途端に臆病になる。
そんな時は大きな木の下にある花畑に連れて行けばいい。
そうすりゃあキラキラした眼で笑いだすんだとよ」
「へー、そんな所ここら辺にありましたっけ?」
「近くに川が流れている、かなり山奥だがあるにはある。」
そう、確かに川が流れていて、とても綺麗だった。
大きな樹の下には色とりどりの花が咲き乱れていて
四葉のクローバーを見つけて渡していたんだっけ
「そいつがな、悪い事をしたって謝ってたんだ。
何度も思い出そうとしたのに、何故か思い出さなくて
死んで漸く全て知って今も三途の川渡り切れずにいるんだとよ」
「その相手って、恋人か何かですか?」
「分からねぇから聞いたんだ。
そしたらそいつ泣きそうな顔して笑ったんだ」
“僕はずっと君から貰った花を持ってるから”
その言葉に、文字通り眼を醒ました
その優しい口調、丁寧な言葉遣い
大きな大樹の下で花畑の中
「っ、未夜さん!起きて」
『その子、その子の』
嗚呼、起き上がった衝動か眩暈がする
急に起きるからだとか言われている気がするが
そんなこと関係ない未夜は倒れそうになった身体を
土方に掬われたまま話を聞こうとする
然し喉の中は水もなく、音にしにくい。
水と医者を呼んで来いと新八に頼んだ土方
急いで向かった為か、何度か転びそうになりつつも
医者を呼びに出て行った
「馬鹿!お前何時から寝てると思ってんだ!
もう三日も寝たきり状態だったんだぞ!!」
『その子、記憶戻ったの?』
頑張って無理矢理出した音は
そう寂しそうな声だった
「お前、さっきの話聞いて」
『なんで』
記憶が取り戻されたのだろう?
死んでも記憶を取り戻す事のない様にしていた筈だ
死んで記憶が取り戻されたら、ずっと生まれ変われなくなってしまう。
だってそうだろう?
あの子は約束をずっと守って待ってしまう子なのだから。
「…眼を醒ましたか」
「嗚呼」
水を飲んだ
ゴクゴクと音を鳴らしながら飲んだ水は
とても冷たく気持ちがよかった
「未夜さんは何でそんな目を瞑ってまで聞いてたんですか」
「“合わせる顔も無い”からだろう?」
そう不意を貫いてきた医者に未夜は頭を下げた
「男の子は迷い込んで涙を流していた。
そんな中女の子は泣いている男の子を見つけた。
二人は仲良くなった。破滅の話」
「破滅?」
「なんだそりゃあ」
疑問を抱いた土方と新八に未夜はそっぽを向いた
「伝説で言い伝えられているんだよ。
初めて薄狼が産まれたキッカケがね」
『昔々、少女が泣く男に声をかけ慰めた』
「未夜?」
少女は少年が何故泣いてるのか分からなかった
だから自分が好きな場所に連れて行ってみた
其処は大きな1000年以上も生きている大木
葉っぱの下には木漏れ日が差し込み
その地面には沢山の花々が咲き乱れていた
「え、それって土方さんが聞いた子と同じ」
少女が川の中に飛び込むと元の場所に戻れる事を教えた
すると少年は水が大の苦手で溺れてしまうと帰らないと言い出した
それに困り果て、少女は勇気を出して少年を突き飛ばした
すると少年は元の場所に戻ったのか
次の日から迷い込んだ場所を通って通う様になった
突き飛ばした事を謝った少女に少年は謝らなくていいと手を横に振った
それから桜が散り蝉が鳴き終わる頃だった
遂に村の人間に人と関わっている事が知られた
その村には一つの掟があった
“人間と交われば大いなる災いがもたらされる”
「え?人間って他の村ってことですか?」
「まぁ、そんな所かな」
少女は大人を早く村に戻す事で精一杯だった
今日は少年の誕生日前日なのだ
少年から教えてくれたお菓子が作れなくて
何度も失敗してしまったから
ここら辺で一番綺麗に咲いていた
四葉のクローバーを渡そうと手に握りしめていた
「(ん?四葉って…まさか!)」
少女の手に何を隠しているのか調べだした大人
男が少女の手を捕まえていると少年が大きな声を出して出てきた
その子に手を出すな!!
少女はひやりとした気持ちを知った
来てはいけない。此処の掟を教えていない。
何故もっと早く教えてあげれなかったのだろうと
自分をすごく、凄く責め立てた
少年が走り出し、近くに落ちていた小枝で戦おうと歯向かっていった
少女は来ないでと叫びたかった。少年が傷つく所を観たくなかった。
ポタリ
液体が花畑の花に落ちた
『少女は目の前の光景を疑った。
少年は戦う事が苦手だったと喋っていたのを思い出した。
何を上げれば喜ぶかと少女は周りの花を渡した
少年は困り顔で笑っていた。少女は知った。』
二度と、その顔すら観れなくなる事を
少女はそれから周りの大人を殺した
赤い花を咲かした眼の中を観て
大人は気が狂ったと騒ぎ立てた
少年が花畑の中で横になっている所に
少女がゆっくり歩いて立ったまま見下ろした
片目を瞑っていた少年が
片手を無理やり上げ、言葉を発した
“おたんじょうびおめでとう”
眼を瞑った少年に、少女は涙を流した
皆みたいに力が無くて、でも人間でもなくて
白でも黒でもない私でも、この子を生かせたい。
全て投げ出してもこの子が助からないのなら
どうか神様、私に一つ呪いをかけて下さい。
少女は少年を膝に寄せ、片手を胸に置いた
それは、とっても悲しい願い。
『“一度死んで願いが叶わないのなら
何度死んでも死にきれない姿にして”』
それは不死身と少し違っていた
少女の願いが届いたのか、少年の血色は少しだけ明るくなった
その寝ている顔に手を触れ、頬に摺り寄せた
かかれ!と炎を使い此方を攻撃してきた大人に
少女は最後の力を使い、後ろに流れていた川に少年を押し込んだ
燃え広がる木々の中、何故か大樹だけ燃えていない事に
水の波紋が波打つっている間、少女は知らず、水の中に落ちた
「…おわり?」
「いや、俺が知っているのはその先がある」
『え?』
終わると思っていた話に未だ続きがあったとは
未夜は不思議そうな顔で土方の方を観た
「その後少年は眼を醒ました。
少女の事をすっかり忘れ、村でコツコツ努力し村長になり女をとった」
少年は花が好きで詳しい事にも
水が苦手だったのに大好きになった事も
思い切りが大事だという事を知ったキッカケすらも
知らずに過ごしていた事を、孫に観られながら眠っていた
半月の月夜を観て気付いたそうだ
珍しく白いツユクサを教えて嬉しそうに笑っていた子
家に帰れず泣き喚く子を蹴飛ばしてでも勇気を出した子
来ないでと言いたそうな顔で手には四葉のクローバーを持っていた子
未夜は眼を開いた
「少年は死ぬ寸前、やっと気づいたそうだ。」
嗚呼、君に恋をしていたんだ。と
「なぁ、白いツユクサなんて物は日本何処に行っても無いが
偶に花を自在に操る事が出来る種族がいた事は知っているな?」
『…』
「白いツユクサではない事に、少年は気付いた
“ブライダルベール”という花だった事を」
顔を上げた未夜
寂しそうな、何処か遠くの人を観る様に土方を観た
「春あるいは秋の花で、この花を観て仲良くなった。
少女は優しかった。大人になれば少女とずっと居れる事を願っていた。
なのに忘れていた。思い出す事を拒まれていた。」
花言葉は“幸福”“願い続ける”
「少年は、男なのにメソメソしてたが、
大人になったら厳しい父親になっていた
理由がわかるか?」
首を振る未夜に土方は外を見た
遠くの方に、うっすらだが半月が見えた
「“君を守れる力”が欲しかっただからだそうだ」
あの時、涙を流さず君を引っ張り、笑わせられたら
あの時、君を喜ばせるプレゼントを送れたら
あの時、君を捕えてる手を放せる力があったのなら
僕は君とずっと居れただろうに。
『君と』
居られたらなんて、等願っては成らなかったのに。
少女も願い続けていた。
「嗚呼、そういやこうも言ってたな」
土方は月から目線を未夜に向けた
「少年の子孫が君を守る為に強くなり戻ったと」
『…え?』
「少女はとても優しく、でも時には臆病が強くでる事があったそうだ。
大樹がある場所は代々お前達が守り続けて来た神様が眠っていたらしいな」
『え?ん?ええ!?』
「待て待て待て、何故お前が知ってる?
さては少年が乗り移ってるな!?」
ちげぇ!と声を上げた土方だったが舌打ちしながらも
未夜の方ではない方角を観ながらつぶやいた
「俺の、先祖が少年だったんだとよ」
++++
『ごご、ごめんね!考えてたんだけど
どうしても四葉のクローバーで…』
「いいよ!幸せになってって意味もあったんでしょ?」
パぁと明るくなる少女を観て
少年は嬉しそうに笑った後、四葉のクローバーを観て
母親から聞いた花言葉を思い出した
ー四葉のクローバーは幸運って意味ともう一つ意味があるのよ?
もし好きな子が出来たら、渡してあげなさい。
++++