最近、なんだかおかしい気がする。
ご飯にかけたケチャップは美味しくなくなったし
誰かと一緒に食べるご飯程美味しい物はない。
血の味がするはずの口の中は
とてもきれいな白い歯が並んだままで
そんな事はどうでもいいんだ。
「いつもの日常」が「おかしい日常」だっただけで、
このままで良かったなんて、思うのは
「おかしい日常」を「いつもの日常」と思い込んでいただけで、
『(こんな気持ちに入り浸るのは、何日、いや”いつから”だろう)』
青いペンキで塗り潰されたかと言わんばかりの晴天で
雲を探そうとする処は、何処か「おかしい日常」を探す自分にそっくりだ。
まぁ、そんな日常も、もう感じる事は少なくなってきているのが現状なのだが
『(感じる事が少なくなっている現実を受け止めきれないだけなんだろうな)』
人は変わる。
赤ん坊でさえ数日で大きくなるし
高校生の女の子だって、父親と喧嘩しても数日経てば元の仲に戻る。
それは、とてもありふれたもので、
それは、何処か胸の何処かに必ず引っかかるものだ。
『…まぁこんな平和な時間を過ごしていれば、そりゃそうか。』
最近、色んな人間と立て続けに関わっていたからか知らないが
何故か一人の時間を欲するようになった。
まぁ元々一人で居る事に楽を感じていたのもあり得るのだけれども。
『(この子とも決着は付いている、ついている筈なのに、)』
その子が居る筈であろう、胸のあたりを探す。
そんな子は妄想で空想の人物であれば、どれ程良かっただろう。
妄想であれば、誰かに笑って貰って、話のネタにされる位だ。
それなら、どれだけ良かっただろう。
『(ふと思い出す。君が痛みを伴っていた地獄を)』
大きな見えない刃物から、誰かが私を守ってくれていた事を。
それはとても大きなものではなくて、小さなもの。
私とそっくりな、でもとてもじゃないけどそっくりとは言ってはいけないような
そんな子供が、私をずっと見守ってくれていた。
とても嬉しいとは思いたくなかった。
寧ろ申し訳なくて、悲しくなった。
”どうして私を守ってくれるの?”
その答えを私は聞いている。
『(”君が助けてって言ってくれたから、私は君が感じる痛みを取り除いて、痛みから守るんだよ”)』
その言葉に、どれ程助けられただろう。
私は、嬉しかった。
その言葉で、何度も救われた。
今こうやって血の雨を降らさずに生きていられるのも
勿論周りの人間のおかげではあるけれども、
生きる事も出来た筈だ。血の雨を降らす人生を。
そうしなかったのは、そうできなかったのは
全部、あの子が私を痛みから守ってくれたおかげだ。
『(あの時、あの子に出会ってなければ、私はこの場所で生きてすらいないし)』
何より分からない事が幾つか分かった事がある。
まず一つ
現状私が”別世界に来ているだけの人間”なのか”一つの世界で死亡し、別の世界の記憶を保持しているか”だ。
これははっきり言って前者だ。
記憶を保持するのは、申し訳ないが在り得ない。
在り得たとして、肉体が崩壊する。勿論精神が先だろうけど。
私の場合はこうだ
”そもそもこの世界の住人だった”につきる。
銀魂という世界は色んな人が生きている。
勿論それは宇宙人と呼ばれる筈の種族も交えてだ。
その中の括りの、一人にすぎなかった。
銀魂として登場しなかったのは
あまりにも特殊能力過ぎて、紹介されなかっただけだろう。
この世界に生まれて幼少期は過ごした。
其処までは間違っていない。
そして、厄災を振りまいた瞬間
”別の全く同じ人間の精神体の中に取り込まれた”だけだった。
それなら「誰かに守られている」の話がつく。
あれは「全く違う人間の精神が私を守ってくれていただけ」だったのだ。
私は気付いていなかったが、今思えばその子は気付いていた。
”この子は私と違う人間の精神だ”と。
でもそこで突き飛ばさなかったのは、その子の現実が余りにも悲惨だっただけだ。
肉体的虐待ではなく、精神的な虐待ばかりで
衣食住はまとまってもらえるのだが
精神的に頼れる人間が一人もいない世界だった。
その中で彼女は笑っていた。
ただ、笑顔で笑っていたのではなく、”綺麗な笑顔”だった。
その笑顔に、私は守ろうと決意した。
守られて、怖くて泣き叫びたかったのに
彼女は「大丈夫、大丈夫だよ。」と何も分からない私をあやしてくれた。
そりゃあそうだ、たった9つで大事な人を亡くしたのだ。
怖くて泣き叫びもするだろう。
幸いな事としたら、彼女の体内の中以外に声が伝わらない事だけだった。
まぁ正確には伝えられるのだが、皆私を認識してくれることはなかった。
…偶に認識してくれているかもしれない人は数人いたが、まぁそれは良いだろう。
そんな彼女は、一言で言うと弱かった。
此処まで来て「え?強いんじゃないの?」と思う方も多いだろう。
所がどっこい。この人、打たれ弱いのだ。
どれ位打たれ弱いというと、近くにいる男子辺りに
軽くバカ呼ばわりされるとすぐに泣く。
まぁ良く言えば素直。悪く言えば鵜吞みにし過ぎ。というところで
とても素直でとてもいい子なのだ。
だからこそ、私は彼女と約束をした。
ー君が沢山の言葉に傷付き、沢山の人から嫌われても、私は君を好きで居るよ。
その言葉に、彼女は救われたのか、目を輝かせた。
その目を、私は忘れる事は出来なかった筈なのに、
今まで忘れていたのだ。
ーありがとう、うれしいって、こんな気持ちなんだね。
その言葉に、私は涙した。
彼女は”怖い”や”辛い”や”助けて”しか感情を生み出さなかった。
なのに私の言葉で、よく私や周りが言う”嬉しい”を感じてくれたのだ。
嬉しいと思う気持ちと同時に、とても悲しくなったのだ。
何故何もしていない彼女が、こんなにも愛されずに育っていくのか。
周りの人間は何故、こんな可愛らしい彼女を放って置くのか。
もっと自信を持つべきだ。
君はとても素晴らしい人間なんだ。
少なくとも、精神体の中で感じた君の感情は素直でとても純粋な物だった。
”うれしい”気持ちを感じてくれた彼女に
私は精神体の中で多くの物を拾えた。
そして身に付けた。
人は傷つけてはいけない物だと
人は守るべきものだと。
そうして、少女は彼女になり、女性になった。
初めて出会った時は、10歳の頃だった。
パパもママも構ってくれず、クラスの人達も怖くて声をかける事も出来ず
隅っこで日向ぼっこしていた少女が
日に当たり、多くの人と会話をする位まで育ってくれた。
今日も私に色んな感情を入れてくれる。筈だった。
時間は来た。
親に言われたのだ。
「そんな感情を持つのは大人にふさわしくない」
その言葉で、彼女は、女性は、ひどく傷付いた。
そしてその夜。私達は話し合った。
ーいいよ、君がしたいようにすれば。
ーなんで、そんな事言うの。
ー君はとても強くなった。
ーそれは貴方が守ってきてくれたから!!!
ーいいや、少なくとも君の力もある筈だ。
ーいい、の?
それは大人の階段を上る行為だ。
そう、私は言い聞かせた。
ーいいよ。寧ろ今まで生きていたのが不思議なくらいだからね。
どうか幸せになりな。
そう言い残して、彼女に私を×させた
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ーそれからすぐに眼を覚ました。
真っ暗闇の世界に一人白いシーツにくるまれたまま。
辺りを探すと、お爺さんに出会ったのだ。
それからはほぼ話した通りだ。
これが、一つ目の話。一つの解決。