もどかしく愚かしく

鼓動がドクドク、ドクドク

何かを警告するように

何かに気付けと向かす様に

ドクドクドクドク

サイレンを回してる







捉えたと思っていた敵をあっさりと逃してしまったという事で
かなり叱られた未夜

唯土方達に言っていない事があった

それは


ー”岡本都佑”を知っているか?


『(聞かれた、でも知っているだけで知らない気もする)』

あのアニメの主人公は分かるけど生い立ちは知らない位の曖昧さ
それに大きなため息を吐いた敵はスッと消えていった

狼族とも言っていた事も、殆ど話していない
唯報告したのは「固まって動けませんでした」という事だけ
間違って居ない現実に大きなため息を漏らすと
それでも大目玉を食らって、今は部屋で謹慎中だ

『(”岡本都佑”って誰だろう)』

私はその人の名前を、知っているのに知らないのだ
嗚呼もどかしい。白黒はっきりしない事に声を上げる
うがーっと鬱憤を晴らす様に、でも晴れる訳もない

だって何一つ真実を知っていないのだから。
突き止めてすらない処か取り逃がしてしまってるのだ
大いに反省する点はある

『…狼族』

彼はそう言ってた
狼族は私の生みの親である人達の総称と言う事は知っていた
だからこれは身内なのでは?とも思ったのだ。



私未夜
実は人間の部類とは少々かけ離れた位置にいる。


『(彼は狼族の血を汚されたと言った。”岡本都佑”に?
でも狼族の中に苗字が一致する人など聞いた事がない)』

ましてや滅びているとなれば探さないであろうに
なのに今になって探して居ると言う事は
生きている可能性が出たと言う事になる。

然し何故ひっ捕らえる?
殺そうとしたような感じではあったが
何方かと言えば心配している様にも感じた

どうやらこの件、余り深入りしない方がよさそうだ。

とりあえず結論が出た未夜であったが
謹慎中である上に部屋の外には味方も居る
逃げ出そうにも難があるし、今先ほど関わらない方がいいと結論が出たはずだ


『(でも、他人事には感じれないんだよね)』

昔の記憶が少々曖昧になっており
里をそもそもどうやって抜け出したのかも忘れてしまっている始末
恐らく何らかの事件を起こし、崖からでも飛び降りちゃって
この江戸に辿り着いたのでは?

それなら記憶が多少おかしいのも頷ける
そうしよう。うん、それがいい。


で、今の現状だが
正直謹慎命令を出されたと言っても
この事件にかかわるなと言う事では無く
単にお灸をすえられてる状態で

ぶっちゃけ明日にでも反省文を提出してしまえば
明日に復帰出来る事がまぁ可能だろう。

こんな失態を今迄した事がなかったからだ
そうなら土方や近藤達も不安がり此方に聞いてくるのだろうが…

『(そんな状況じゃなくなってしまったんだよなこれが)』


私が取り逃した後、実は死亡者が見つかってしまったらしい。
というのも噂を聞いたので曖昧なのだが恐らく確かな情報だろう。
狼族を探して居るだけで、ひょっとすると
その殺された人が”岡本都佑”なのではなかろうか?

いやでも本人が殺害されたのが二日前の死亡になっている
だとすれば私が聞いてきたのはおかしいと言う事だ。

それに私を取り逃がしたという風にも感じるおかしな点があるのだ


『(話した方が良いんだろうけど、生憎すぐに出てしまったし
話も出す様な雰囲気してなかったしな)』

あちらも此方の情報が欲しいだろうが
最終的には良く入って来る情報と変わらないだけで
強いて言えば「私は狼族の血を受け継いでいる人間」という事だけだ。

逆に捕まる可能性があるのは避けたい。
というか誰だよ私の祖先か知らないけどさ
何へましてんだよ、こちとら困ってんだよ物理的に動けなくてさ!

大きなため息を吐きつつ、布団の中に戻る前に
反省文を完成させておこうと机の前に胡坐をかいて座った

チュンチュンと雀の鳴き声がする
朝起きてからそのまま謹慎が出るとは聞いてないぞ土方十四郎


でも、お陰様で逆に好都合なのかもしれない。

一番整理したい時は時間が大幅に在る方がいいと思う。
と言う訳で、今の現状整理をしてしまえば良い


『殺害されたのが今から三日前になるのか昨日の遅くに聞いたし』

そして見たのが昨日の夜
狼族として探して居る感じだった
顔はフードで覆われており、とてもじゃないが素性という感じもへったくれも見えなかった

此方から仕掛けても良かったのだが
相手が狼族しかも私の知り合い(だと思う)人を探して居た
逆に仕掛けてしまえば私が探して居た張本人と言われても困る。

だって私その子じゃないもの。

そう決めつけると、何処か胸の奥がツキンと痛んだ
何故痛んだのか分からず首を傾げたが、直ぐに現状を整理する事に戻る


『遺体は殆ど原型をとどめておらず、というか血のみ』

死亡推定というよりかは「声を聞いてその時は死んでいた」という発見者が複数

たったそれだけで今は何処に行ったのか遺体が見つからずそれも探して居るのだ
なので私が謹慎中というのも人手が足りないのにそんな事している場合じゃないので
明日にでも復帰し何としても捕まえろ。との言葉で説教は終わってるのだ。

なので私は次ヘマするわけにはいかない。

時刻はお昼を過ぎたあたりで外が何だか騒がしい



「ーなぁ、おかしいんだよ」

「あ?何がだよ」

「昨日の晩聞いたところに寄ると”誰一人も証言が出ていねぇ”ってさ」


ん?証言が出てこない?

その声に聴き耳を立てていると
ぽろぽろ出て来る情報が。

簡単にまとめると

私が目撃した時間が夜の八時頃で
その間住民は風呂に入るなりテレビをみているなり寝てるなりで
一切物音を聞いていないと来たらしい

周りを歩いていた形跡も当時殆ど見ておらず
江戸中に聞いている処だとか


『(そういやあいつ、髪の毛少々観れたな)』

揺れていた髪色は、明るかった気がする
真っ白というか銀というか…

あれ?確か狼族は三種類の種族に分かれると聞いた事がある
というか、今狼族と言えば


山崎「保護対象なんだけどなぁー」

『山崎さん?』


やっほーと言って部屋の中を覗きに来たらしい
山崎が未夜に元気と調子を伺う

『保護対象とは?』

山崎「あ、聴いてた?ってか知らなかったけ?
ずっと前からこの地域の近くに幻の種族が住んでいるって言ってね?
その種族が絶滅になってるっぽくて、保護対象になってるんだ」

ほら、と持っていた書類である狼族と書かれた紙を受け取り中身を確認する
正確な情報は分からないとの事に他の隊員が「は?」と声を上げた


山崎「狼族には三種類に分類されていてね?」

髪の色が明るい朝狼
髪の毛が暗く攻撃的な夜狼
そして三つ目が?マークで書かれていて
その下には”不明”との文字

『不明?』

山崎「何でもこの三つ目がもう絶滅したとかなんとかで
生きている確率が無いに等しいんだって、さっき知っている人が居て
その人に聴いたところ関わらない方がいいってさ」

そう言って山崎はこんな漢字だったかなと紙に書き足す
その言葉を彼はこう言った


”薄狼(はくろ)”と


その言葉に私は頭を殴られた感じがした
その言葉を私は知っている
狼族が一番恐れている者であり、厄介な人間たちと聞く

正確には人間では無い者になるのだが

『はく、ろ』

山崎「その姿は正に純粋無垢。子供の様な心で澄んでいる
その子達が確認されたのが今から100年前」

「ひゃ、ひゃく!?」

山崎「其処から徐々に消えて行って、今では狼族だけで20も居ないって話だよ」

因みに純潔の狼族となると今は2人しかいないとか
そう言った山崎のご丁寧な紹介に私は動揺を押し殺した

もし、もし彼があの髪の明るい彼が”朝狼”で
その”岡本都佑”という人間がもし”薄狼”なら?

彼らが薄狼が生きている事に血眼で探すのも無理は無い
ずっと前に聞いた事がある



ー薄狼はね、父と母何方も朝狼と夜狼一人ずつで産まれて来る
極々稀に観る転生の子と言われている貴重な人間なんだよ。


一体何処で聞いたのかは忘れてしまったが
でもその言葉を何故だか鮮明に憶えて居る私が要る
と言う事は、この事件は少々厄介ではなかろうか?


山崎「未夜ちゃん?」


だって私は知っているのだ
その”岡本都佑”を
彼の追い求める、”薄狼”を。


目の前が真っ暗になった。
嗚呼知っては取り戻してはならないと
心の奥底で警告を鳴らされている様だ

駄目よ駄目よ、今は思い出さないで。

そんな声が、聴こえた気がして



『何でもないです、もう昼なのかって逆に驚いただけなので』

山崎「今何時だと思ってたの!?」



私はそっと、その警告に従えないという事に
目を瞑って、話を逸らすついでに
その事実事、眼を逸らした