行くも戻るもいばらの隘路

土方「おそい!何今迄たらたらしてた!!」

『いやあ住民の話を聞いてきてました』

のんびりと会話する未夜にイライラしている土方に
怖い怖いと内心思いつつ食事を先に済ませてきて良いかと
許可を取ろうとするが、先に情報だと言う事だろうか?待てと言われる

『はぁ、山崎さんの言った通りですよ?』

土方「その山崎が姿をくらましたんだ」

その言葉に、は?と声があがる
嫌だって彼が帰宅についたのは真っすぐ行っても夕方にならない時間だろうに
何処に行ったのだろう?と首を傾げる未夜であったが
土方に情報を渡す


この張本人が狼族の朝狼である事と
情報主が私の知り合いでもあり医者で幼い頃良くしてくれていた
柏木という人間が狼族の一員である事

そしてお世話になった私は柏木という男と
私の親同士が仲良かった事もあり、幼い頃のみ
世話を焼いてくれていた事も

その事に土方は後で送れと言わんばかりに煙草を吸い吐いた

土方「じゃあその爺さんが言うには、朝狼は人を殺すわけがねえってか?
ってか何で狼族の知り合いがいんだよ」

『だそうですよ?私も聞く迄知らなくて‥ってか数年の話で
隊員になってすっかり忘れていましたので』

此れは事実であり、現実的に観たくない為そっと顔を逸らす未夜
フーンと言った土方は何処に出没するか等聞かなかったかと聞くが
未夜がそんな事を知っている訳がない

だが、

『あ、でも朝狼は朝型なので、夜は姿をくらましているらしいです。
その上攻撃はしないので複数人の可能性が高いとの情報です』

土方「じゃあ何か?朝狼ってやつともう一人が手を組んでて
そいつが今回の連続殺人犯って事か」

ん?連続?

『え?一人じゃなかったですっけ?殺害されたって言ってたの』

土方「それが今日詳しく調べているとな、今までに何人も殺されているらしい
然も全員殺害の切り傷が一致していて」

その切り口は穴をあけたような形の死体を確認し
その近くにあった壁には文字が書かれていたそうだ


”やっとみつけた”

土方の低い声に驚いた未夜だが
声だけに驚いたわけではない事を、しっていた


土方「やっとっつーことは一度見つけた事があり、そいつを探しに出たと言う事だ
なぁ今日見て死亡時刻が昼の12時って解ったんだよ。」

ザワザワと心が荒波を打つかのような感覚に
抑えようと必死で土方の声もろくに聞いていなかった

土方「お前、未だ知ってる事隠してんだろ。」

狼族が狙っている。それは柏木が危ないと言う事も感じたが
今は山崎が危ないと悟った

私が関わった時にスッと消えていた朝狼である犯人が
”あの時姿を消して見えない術を使っていたとしたら?”


嗚呼、山崎さんが危ない。
それに気付いたのか未夜が急に動いた手を捕まえ土方は話は終わっていないという


土方「てめぇの心の内を言ってからなら、
山崎が行く場所も俺は聞いて今から向かう予定だった
なぁ?この意味、分かるよな?未夜」


『(嗚呼!この人はずるい質問をしてくる)』


私は帰っている間ずっと考えていたのだ
何故この数日間朝狼がウロチョロしており
柏木さんが記憶を失っているという言葉に不思議に思い

何故心がざわついて仕方がないのか


私が狼族の人間であるという決定的な答えに
彼は白状しろというのだ


『言わないというなら?』

土方「この場で敵とみなしお前を斬る」

敵、まぁ実際狼族の一員であり、血を引き継いでいる為
捕まるのも時間の問題だと思ってはいた

それに術を使っているのがバレた時から
彼は薄々気付いて居たのかもしれない

でも私は言いたくない。

だって言ってしまえば、本当になりそうで

『…山崎さんの処に行く途中で話します!
今は時間が無いんですよ!!』

私が人間として生きていた時間を否定されそうで、怖い。

声を荒げた私に、土方は仕方ねぇとため息を吐いて
直ぐに行くように刀に手を置き走り出した

どうやらついてこいという様で
私は息を飲み彼の後ろに引っ付き見失う事の無い様に移動を開始したのであった


++++

『私はどうやら記憶を失っているらしいです』

そういきなり大きな事を言い出した未夜に
何を言ってんだと土方は後ろを向いたが
直ぐに前を向く様に指示する未夜

『最初はおかしいと思ってたんです。
何で出会ったのに触れられる位置にまで迫ったのに逃げられたのか
私、彼を知っていたんでしょう』

同時に、彼も最初見た時は気付かなかった。
何かしこりがある。でも、何かが分からなくて殺せない。

恐らく、今は生かした方が良いと思ったから私は殺されずに済んだ
彼の攻撃は一瞬で終わる筈のモノ
でも、彼は攻撃をしなかった

私が柏木さん(狼族)の知り合いという事を知ったから。


『今思えば辻褄が合うんですよ、彼が名前を聴いて来たのは理由があった』

知っているか、知らないか。

恐らく殺害された人間たちは知らないと答えたのだろう。
だから無用だと思い殺した、ただそれだけの理由だろう

然し私はその時違う答えを返したのだ


”その人の名前を私は知っている、でも思い出せない”と


何故その事を言わなかったと、パトカーに乗った土方に責められる
然し私とてまさかその時も記憶を失っているとは思ってなかったのだ

運転手である隊員が速度を速める様土方がいうと
私は後部座席に座って自分の膝を観てぽつりぽつり言う


『私、知ってる筈なんです。彼女の名前を。』

土方「彼女?」

『咄嗟に思ったのが名前を聴いて女の子だと分かった事。
普通なら知り合いと言ったら性別位分かりますが
私の場合そういうのでなくて、寧ろ曖昧だった』

なのに、私は彼女を知らないかと聞かれた事に困惑した
”岡本都佑”という存在を憶えてないからだ

『朝狼の人が私を生かしたのは、私を放って置くと
情報を思い出す可能性があるから、じゃないと逃がさないし
それに隊服を観て真選組とバレている筈です。相手も馬鹿じゃあない』

なら今やるとすれば?
気付いた朝狼が真選組の人間を片っ端から聞いている事だろう


”女の隊士は何処に居る”と
知らないという隊士が今多い中
危険行為になって居る事を知ったのだ


『奴が次に狙うとしたら、私の近くにいた山崎さんだと思う』

知らないとは言わせない、が彼も私が女と言う事を知らないだろう
となれば話は分かるだろうか?
未夜が顔をあげ助手席に座っていた土方の眼をミラー越しに見る


土方は目を合わせなかった


OOO


山崎の居る場所、それは今付けようとしているそれこそ朝狼に接近しようとしていたのだ
奴が狙っているとも知らず、呑気に居られるのは今の内だろう
未夜が遅くならないでと願い、パトカーが止まると直ぐに降り足音を立てない様にと
成るべく力を足に入れビルの隙間にある路地裏に入る

土方「あっ!おいこらっ!!っくそ」

飛び出した未夜を追いかける様に走りだす土方だったが
急に止まった未夜の目の前を背の高い土方は止まった事をすぐに知る


目の前には、敵である朝狼が
足元には、倒れていた山崎であろう隊士が転がっているのを足で踏んでいた


嗚呼、と空笑いの未夜の声に気付いた朝狼であろう黒いフードを被った者が此方を観る
まずいと感じた土方は未夜を後ろから腹に手を回し避ける様に右に逸れる

避けた後、体制が取れなくなった未夜が土方に寄りしがみついた状態で
それを傷付けない様に土方は未夜を庇う様に丸くなり抱きしめて壁に激突した

舌打ちをした土方が未夜の意識を確認した後
確かに切りかかって来たというのがスレスレで避けたと言う事が分かる
左腕の二の腕部分に服が切れているのを観て知る


土方「てっめぇ、何しやがる」

「…記憶は戻ったか?”岡本都佑”」

『は?』

嗚呼、止めろ。まだ疑問は晴れて居ないのだ。

コツコツと音を立てて此方にゆっくりと歩き出したことに
土方は山崎を連れて逃げろと言い黒いフードを被った人に走り出す

「記憶が未だ曖昧か、でも私は気付いたのだ。
狼族に生き残りが一人居た事を」

多くの狼族が捉えられたという黒フードの人は
土方の出した剣を刀で受けてふるいもしない

土方「(っ!?こいつ、馬鹿力かよ!)」

カチカチという刃に、引いた土方に振り下ろしたフード男のフードに
風が入り、そのままフードが後ろに降りて顔が見えた

白い髪に、青いギラりとした眼
私は、この人を知っている



「朝でも無く夜でもないその中間ですらない
決まった時間に産まれ目覚める時は世界の破滅」

唯一の生存

薄狼

それはお前(未夜)だな?


そう言った言葉に、私は逃げ出したくなった。