満ちることのない杯

私は何時も通りだと思っていたのだが…

どうやら日常は徐々に変わって行ってるらしい

『え?また来てるの?』

「そうなの。懲りない人間よね。」

ある日男性がこの泉を奪いにやってきたのだが、
綺麗にエレインに落とされたのが一昨日
昨日もおとし、そして今日だ。

あまりにも執着されているので、一度話していたらしい

「あ?こいつは誰だ?」

「この子は都佑。妖精族じゃないけど」

『人間だよ』

「人間って、こんなところに来て良いのかよ」

それはこっちのセリフだとツッコミを入れて、咳払いで誤魔化した。

『ある日村の集落で妖精族がいじめられてて、助けてね。』

シナリオはこうだ

ある日村の集落でいじめられていた妖精を助け、尚且つ送り届けた。
そして村でいじめられており、生贄として捧げられる予定だった私は
つい数年前にこの森で暮らし始めたというわけだ。

…そういうわけだ(大事な事なので二回言おう)

「ふーん、俺はバン。なぁ嬢ちゃん、おめぇ歳幾つだ?」

『あ?私はこう見えて23歳なの!』

という設定にしておこう。
あとがとってもややこしい事になるが…

「そんな風にみえねぇよww歳偽ってんじゃねぇのか?」

「(違う意味で偽っているわよ…)」

そうエレインが冷や汗をかいているのをすかさず私はツッコミを入れた


「所で、どうしてあの杯を奪わせてくれねぇんだ?」

「それはー」

『あれは不死の泉。その名の通り飲めば不死になるものよ』

それにエレインが名前を呼ぶ

だって仕方がないじゃない?どうせ聞いてくるよ。

「へーじゃあ…」

「でも、エール飲めなくなるのよ?」

エール?慣れないその言葉に彼が説明してくれた
どうやらビールの一種らしい。一体何処で聞いたのやら…

「じゃあやめだ。」

「え!?」

「奪える事は出来るが、エール飲めなくなるのは嫌だし」

それに、

「お前が居るという事は、こいつを守ると同時に泉を守ってくれてるんだろ?」

なぁ。人間。

そういって私を軽くにらんだ

いや、にらんだというのもおかしいのか、分からないが…

『そういうことだ』

そういう事にしておくことにした。


++++++++++++++++++++++++++

『エレーーまたあいつか』

男性がエレインと煩く話している

だが、何故か落ち着いた。

それは分かっていた。

『…やっと笑っていてくれてる。』

私が何度考えて、試行錯誤を繰り返しても
彼女は迷惑をかけていると、不安そうに笑っていてばかりだったのに
彼が来たことにより、全く違う世界を遠くから見る事が出来た。

『私では役不足だったものね』

そう腕輪をさすりながら、空を見上げた

綺麗な青空だった。

その、綺麗な青空をみて、三日、四日程だっただろうか。

彼が私を呼びだしていた


『なに?どうしたの』

「いや、何となく」

私はあまり知らない人に何となくで呼び出しされたのか。

そう思うとあきれてものが言えない状態で察したのか
ちげぇよ。と笑われていた。

『エレイン、こいつぶんなぐっていい?』

「駄目よ!バンは優しい人なのよ!」

「…優しい、ねぇ。」

こいつは、優しいのか?
そう疑問に思う事はいくらでもあったが
エレインが嫌がる事を好き好んでするものでもない。

私は受け入れ、怒りを鎮めた

「…ねぇ、都佑」

『ん?』

「一つ、聞きたい事があるんだけど…」

青空に雲が徐々にかかり、包まれていく





「今日、魔力を抑えきれてないの、どうして?」










「ーーーっ!!!おいバカ!エレイン!!!」

その声の後、エレインは背後を見た

大きな、赤い魔人がたっていた


魔人は雄叫びを上げながら何か言っていた
低いような、何処か高いような声で


ーーマジョ、イル、マリョク、ホシイ



その言葉を聞いているうちにエレインの身体に大きな穴が開いた


本当に一瞬の出来事で、私はエレインの名前を呼び駆け出す前に
男性が居た事に、ブレーキがかかった


尋常じゃない状況だと目を覚ました私は
バンが泉の杯をよこせと言ったので
私は急いでとってバンに持って行った

すると木の枝が杯を取ってエレインが飲む


ーーーそう、それでいい

『(ーなにが?)』

そんな疑問が脳内でよぎった直後




エレインはバンに口移しをしながら杯の水を身体に移した

その行動に、私は固まった。


ーー都佑、知ってる?

やめて

ーーこの泉の水はね?

止めて

ーー私の命なの。


『やめろおおおおおおおおおお!!!!』

声を大にして私は男性の

バンの前にいた魔人族を殴ったあと、呟いた。




ーパージペイン(聖なる痛み)

++++++++++++++++++++++++++


「お前、知ってたのか。」

違う、知らなかった。

「魔力が暴走すると、魔人が寄ってくる事を」

知らなかった。本当だ。

本当?

ホントウに?

『…だから?』

その言葉に、私の胸倉を掴み震えた声でエレインの名前を呼んだ

「っ、あいつは!!そのせいで死んだんだぞ!!!」

そうだ。その通りだ。

彼の言葉に、すとんと胸が降りた気がした。

『ていくさ』

これは私の罰であり、罪だ。

「あ?」

『この森を出ていく。此処に長居すると、きっと厄災を寄せ付ける。』

こんな有様の様に。

そう、焼け落ちた木々や、腐敗した場所を見ながら呟いた


…見せたかったのはこんなものじゃなかったのに。


花が散るあの時間が綺麗で、見せたかったのに。
こんな所で、力ある言葉を使って守れないで、
ハーレクインもヘルブラムも、エレインも

居なくなればいいのは、私の方なのに。


『…っ、』

私はバンの顔を見れずに逃げ出した。
妖精の森からも

自身のうちに秘める膨大な魔力にも。