『オズ〜今週の土日暇?』
「ん?いや別に構わないけど…何で?」
そう職員室でサラッと名前を呼ぶメルに、
オリアスは自分のデスクに向かっていた目線を
メルの立っている方向に向けた
メルは此間のーと指を立てて唸るのに
リンちゃんの?と言ったオリアスの言葉に
そう!と言って指をオリアスの方向に向けた
『リンちゃんの約束余り長く置いておくのは不味いし
それに連絡先一切交換しないまま
このお花だけになっちゃってて…』
「あーそうだったね」
『なので出来ればと思ってせめて
休みがありそうな休日を狙う予定で!!』
「いいよ。俺はどっちも空いてるから。」
『じゃあ土曜日の10時頃から
予定空けて置いて欲しいかな!』
そう言ったメルに了解とだけ答え、
メルはそのまま職員室から出る
それを見計らってツムルがオリアスに声を掛けた
「オリアス先生、メルちゃんと何処か行くんですか…?」
駄目ですよ!なんて言うツムルに
お前は一体何時から彼女の兄になったのか…
過保護者がこれ以上増えても
仕方がないとは思うのだが。
変な用事とかでもない為、
オリアスはあのなぁと言って帽子を直しながら答えた
「ちょっと世話になった友人の所に
菓子折りで出掛けるだけだよ…
連絡先交換しないまま出ちゃったからね。」
いつでも良いとは言っていたものの、
流石に夜中に行くというのは気が引ける。
かと言って平日はオリアスメル二人とも
学校で忙しい毎日を送っている。
平日の夜に出向くよりかは
休みの日に行った方がまだ無難と考えたのだ。
「成る程〜そう言う事だったんですね」
納得したツムルがなんだぁと早とちりを考えていたらしく
特に問題なければ何も言う事はないと去って行った。
「(あの子も大分過保護に育てられてんだなぁ…)」
何せ元担任は統括教師のダリ先生で、
オリアスの祖父は助けて貰ったお礼と言って
自分が死ぬまで効果がある魔術をかけてまでして
メルを陰ながら守っていた。
オペラやサリバンも入間程ではないが
メルが何か迷惑をかけてないか
心配をしているし、
モモノキはメルの友人として
世話を焼いているのを見かける。
最近になってはダリだけでなく
スージーまでメルを狙うし
ツムルはメルが余りにも
危なっかしい所を見かねて
お兄ちゃん面をしている
「(そう考えたら…真面目に授業はするし
点数も伸ばせるように教える方も上手くなった)」
最初の方から比べると一段と違って見える。
まぁ最初は何を喋っているのか半分勘に頼って
聞いていた所はあったため、どう教育していいか
実際分からなくなってしまった時もあったが…
今では一度不安になったらまぁ聞いてみようかな?
位のレベルまで落ち着いた為、
殆ど此方に聞いてくることは無くなった。
…昔だと毎回のように聞いて来て、
一時期魔ガモの親子なんて呼ばれてたりしてたが。
彼女も成長しつつ、
生徒が成長出来る様に学び続けている。
その姿を皆知っているからこそ、
彼女を応援するのだろう。
「(そろそろ授業か)」
チャイムが鳴る前に気付いたオリアスは
次の担当授業の準備をして席を外すことにした
とりあえず今週末の菓子折りを何にするか
後でメルに聞いておくことを
頭の隅においておいて。
+++++++++++++++++++++
『お待たせしました〜』
そう言ってメルがオリアスの所にやってきた
何時もの魔女服ではなく…
「あれ?その恰好…」
『えへへ…結構可愛いので着ちゃいました。』
前にライム先生に遊び半分で着替えさせられた
白雪姫のワンピース姿だった
リン曰く魔女服じゃなくてもいけると聞いていた為
どうせなら仕事着を考えさせられる服よりかは
まだ少しだけ綺麗な格好で会いたかった。
『似合ってますかね?』
「うん。似合ってるよ」
そう微笑んだオリアスに、メルはそっと笑い
アネモネを鞄から取り出してみる。
ふわりと浮かんだアネモネが空を舞い始める
飛ぶよ!そう言ったメルにオリアスは頷き
メルが箒を取り出したのに後ろにまたがる
『リンちゃんの元に!!』
+++++++++++++++++++++
空を飛んでいると雲が出て来てそのまま突っ込む
数秒すると雲から出てきた場所は
『うわぁーーー!!!』
目を丸めてキラキラした世界を見る
大きな樹の下に赤い三角屋根に煙突。
後ろには果樹園とか菜園っぽいのが見える
手前にお茶を楽しむ場所なのか円卓があったりと
まったりした空間が広がっていた
「よっ、と」
そう言って箒から降りたオリアスが声を上げる
メルもおいで。そう言って手を出すオリアスに
メルも頷いてそっと箒から降りる
箒は役目を終えたのが分かったのか
すっと消えてポシェットの中に入った
「あら!!ひょっとしてメルですか!?」
『その声は…ひょっとしてリン!?』
そうパタパタと音を立てて此方に歩いて来たのは
ピンク色の髪の毛の色ではなく、
緑色の髪色をした女性だった。
メルも淡い緑色の髪の色だった為
リンの声で判断した。
「メル緑色の髪の色だったんだね!」
『へへ、折角だから素の僕と
…その、お、お友達にっておもって…』
そう段々声が小さくなり下を向いてもごもごするメルに
フルフルと震えながらリンはオリアスに言う
「お、オリアス様…なんでこんな可愛らしい子
捕まえるんですか羨まし過ぎるんですが…」
「はは…そりゃどうも」
「おい話をさせるなら奥まで連れてこいよ…」
そう出て来たリオンに久しぶりとオリアスは手を振った
そのリオンの言葉にブーイングを入れるリンだったが
一理ある言葉に深くは否定しなかった
「そうですねー、では家の中に是非入って下さい。」
連れて貰った中はとても広い印象があった。
強いて言うならヨーロッパの農家の民家より
少し裕福な家と言うべきか。
下は少し暗めの木のフローリングに、木の椅子や机
机の上にレースの布が敷かれており
清潔感溢れた落ち着いた空間だった。
『はわー!はわわー!!』
「何かアレルギーとかはありますか?」
「ないですね」
「丁度先程取った茶葉があるんですよ!
すぐに飲めるように改良してて、今出しますね。」
メルは…聞いて居なさそうですね。
そう苦笑いするリンにオリアスはすまないと謝る。
メルのテンションは上がりまくっていたのだ
『リン!この家自分で作ったの?』
「そうよ。メルも作ってないの?」
「っえええ!?じ、自分で!?」
『んー一応作ってはいるんだけど
…まだこういう空間に入れてない。』
「あーじゃあまだ悪魔が入れる状態?」
『いや、悪魔が入れないようにシールド貼ってる。
一回目は大やけどで
二回目心臓止まって身体消滅するレベルの』
「…あんた鬼だよね」
悪魔だよ?そう言ったメルに
いや良いわとリンは苦笑いした
「え?魔女って自分で家作るの…?」
そう疑問に思っていたオリアスにリンがそうでもないと首を振った
「魔女は死ぬ時間が迫った時に
逃げ込める用の家を作るだけの生理的現象だよ」
『そうなの!?』
「そうだよ…嗚呼魔女学校行ったこと
なかったもんね…」
本いる?もういらないものだから上げるよ?
そう言ったリンにいやいやいやと首を振るメルだったが
オリアスがいると言って手を上げた
「どうせ隠される位なら知って置いた方がいいだろうと思ってな」
「…メル、貴方」
『ちっっがう!だって…迷惑、かけたくなくて…』
「もう…心配かけたくないから、
悪魔を守りたいからって言わないのは守るとは違うのよ。」
本当にレア過ぎて本に乗ってるレベルね。
そう言ってリンはオリアスに渡す前にページをめくって
開いたページをオリアスの前に見せる
そこには悪魔と人間が手を合わせる姿と
人間が別の悪魔と一緒に手を合わせる姿
人間と人間が手を合わせる姿が描かれていた
「メル貴方オリアス様と契約してから力使った?」
『力って…こう目の色が変わるやつ?』
「おー!
テ?そうオリアスとメルの二人が首を傾げるのに
あのねぇーと言いながらリンが指を立てて
席に座りながら説明をする
「
悪魔の力と魔女の力を半分ずつ交換した状態のことをいうの。
例えば炎の悪魔と水の得意な魔女がいるとする。」
炎の悪魔の力を水の得意な魔女が使用出来て
炎の悪魔は水の力を利用して魔術を使用出来る。
ただし通常の水の力ではなく、精霊魔法限定。
「精霊魔法って言うのは?」
「魔女が使う魔法の主な元素火水風地氷木の範囲かな。
オリアス様もメルが使用していた詠唱だったら使えた筈。
片目が相手の色に変化するのが特徴よ。」
ああ、そうオリアスはつい先日に行った
メルの帽子争奪戦を思い出した。
確かにダリ達と戦った時
メルの目は片目が黄金色に輝いていた
そう言う事だったのかと納得しているオリアスに
リンが付け加えて説明を入れる
「制限時間はほぼ無限で慣れればずっと同じ様に居られるわ。
止めと言って手を叩かないと効果は切れないし
交換している間はお互いの心が見えるから注意すること。」
『へぇーーーー』
もう一つ行くわね。そう言ってメルが指を左側に指す
「これは
特定の悪魔であれば
悪魔の特徴を詠唱呪文に入れると召喚されるもので
対価を必ず支払えばぶっちゃけ無限に居座れるわ。」
『おぉう…此間やったダリ先生みたいなものか。』
「んー多分下に金色か何か出たならそうかな?」
「そうだった気がする」
「まぁ召喚して良いのは家系魔術系ならマシって所ね。
基本的に呼び出して戦わすのに疲労が半端ないから
極力使わない事。」
そう言ったリンにオリアスがジト目でペンを取り出して
付箋に何かを書いてからその場所に張り付けた。
心なしか「これは駄目」と言っている気がする。
「最後に、これは後で私が試したいって言うのだけど
息が合う魔女と魔女が手を合わせて出来る魔法があるのよ」
お互いの家系魔術を使用するもので
特徴をとらえられたらもう無敵呪文間違いなし。
「呪文の詠唱はお互いの家系魔術で変わるから話そうと思ってて」
『家系魔術言ったら死ぬとか…』
「そうだったら今頃ほとんどの魔女が死滅しているわよ…
…本当に何年前の本を読んでたんだか」
そう脂汗をかくリンにメルは苦笑いする
「まぁ後は特典の
『待って?』
なんて?そう言ったメルにリンがもう一度言う
魔女の占星術、いわば占いみたいなものだ。
「…試しに外の樹でやってみましょうか。
アレ一応魔女の神聖樹だし。
皆持っている樹と変わらないから。」
そう言って席を外すリンにメルたちも後を追う
外にあった大きな樹の下においでとリンが此方に手をこまねく
「このカードと本に水をつけて、血を一滴落とす」
そう言って手渡された白い本と
カードに裏表をみつつ神聖樹の下に浸ける
手を切って血を出して落とし、
前に願ったものを思い出しながら眼を閉じるだけ。
『(あの子を助けたい…)』
そう願うだけで、目の奥が光った気がしてメルは目を開いた
すると液体は乾いて本の中に吸収されていく。
同時に暗い青にエメラルドの縁が金色と一緒に記されていく
本の中には文字が書かれており、カードにも絵が描かれていた
「これが貴方専用のタロットカードよ。
毎晩月夜に置いていたら
カードの中央にある星が溜まっていくわ。
星の量が多い程正確な答えが出来る優れものよ。」
ただし一人一日一度まで。願い事は一つで
確実に当たるタロットだから注意してね。
そう言ったリンにメルは大きく頷いた
星は全部で5つあり、一つ占うごとに消えていくらしい。
ありがとう!と言って説明書の本をちゃんと読む事ねと言われた。
「へぇータロットねぇ」
「あら、オリアス様は占星術に興味があるの?」
『興味どころか、もうその手の悪魔だよ』
「あら!なら丁度良いわ。
通常の星よりも正確じゃない!!
メル良いわね、貴方占星術師で占い師出来るわよ。」
いやそれは本当にいいのか?そう疑問に思うメルを放置して
リンが話を続ける
「このタロットは曖昧であればあるほど効果を発揮しないからね」
注意するのよーと言って笑う。
これじゃあ菓子折りとの引き換えになってしまった。
なんかごめんねと言うメルに良いのよと首を横に振った
「私もかなり助けられちゃったし」
「実はメル様達と別れた後案の定リンが
魔女のいざこざに巻き込まれてな。
頂いていた紙を見せると何も言わずに逃げて行ったんだ。」
「魔力値測ったら普通にテトレベルの威力だったから
あの後ちゃんと家に帰れたのか心配で心配で…」
ひぇ早速効果あったんだ。
そう青ざめるメルに
オリアスは脂汗をかきながら話を聞き続ける
「こんな初歩の初歩を渡して喜んでくれてもうどうしようかと…」
「物欲皆無だからな…分かるよその辛さ」
『待って?二人して何でそんな頷いてるの???』
君が主に欲しいもの出さないからだよ。
そう心の中でオリアスとリンは声を大にして叫んだ