魔女は永久に続く世界を持っている。
それは悪魔と契約を交わしたことで力を得る。
その魔力が大きな厄災を運んでくることを
魔女は知っていて力を使うのだろうか?
『…(って言ってもねぇ。)』
収穫祭終わった午後の昼下がり。
肌寒い中、廊下を歩きながら考えていたメルは
ふむと資料を見ながらとある個室に入り資料を置いて
膝をつき手に顎を乗せて大きなため息を吐いた。
皆と力を合わせて何とか掴んだこの力。
それを狙ってやってくる輩が多いのは仕方がない。
確かに魔力という名の力は多くあるし、それを使って魔法が使えるのは確かだ。
オリアス先生達のことも守れたし、一件落着と思っていたが、
入間君を狙う輩が出て来たのか分からないが
アブノーマルクラスを狙った者がいた事は確かな奴はいた。
勿論ロビン先生とタッグを組んで
一応今回は追い払うことにした。
ここまでは教職員に伝えている全てだ。
『(でも、奴は言っていた。)』
オリアス先生達を呼んで思考の共有をしながら
魔術を使って貰いつつ、生徒の審査を行っていた。
その中で私は一人の魔女に出会っていた。
白い髪の、銀色の目を宿した者。
ーお前が選ばれた者か
ーそれが何?
ー…これをやる。次の満月迄に決めておけ。
そう言われて貰った本を読み、深いため息を吐いた。
中身は魔女と悪魔の関係について深く記載されているものだ。
選ばれた者は新月の夜、魔力を持たなくなる。
力を失う証拠として、髪の毛の色も黒くなるらしい。
ここは…まぁ、カツラで何とかするからいいとして。だ。
『(悪魔が魔女に対して悲惨なことを行っていた事まで渡すとは…試されてるな。)』
本当に悪魔と居ていいのか。
何時でも他の魔女に渡せる力だと、言いたいのだろう。
どれ程残酷なことをやっていたのか、どれ程悲惨な結末になることか。
嗚呼、そんなもの私にとって
全くもって、関係ない。
私は誰の親に生まれたのかも分からない者だ。
今はミレイユに育てて貰った後は
バビルスでずっとお世話になっている。
確かに人間だ。私は人間である。
でも、だから悪魔に魂を渡す愚か者になるな
と言われる筋合いは無い。
というか
『…私の魂は私の物だもん』
天使に悪魔に人間に、私の魂を、
あの時間を渡すつもりはサラサラない。
あの優しくも少し胸が苦しくなった
薄暗い箱の中のことを。
私は忘れた覚えはないのだ。
この願いを込めながら、
私は多くの悪魔を育てるつもりだ。
例え誰もが否定してもいい。
悪魔では無い観点からの意味合いだって
悪魔に必要なものだと思っている。
全てが悪い訳ではないのだ。
そう、悪くない。なんにも、悪いことはないのだ。
魔女
それは魔法が使える者。
それは人間が悪魔と契約した者。
永久の魔女
それは魔女を統べる者。
それは力の源を司る者。
その永久の魔女、アル・カナシスの正体。
それは
『(悪魔の、魂を喰らって成る者だとは…言えない)』
それはオリアスやダリ、カルエゴ達を裏切るというものだ。
その昔、まだ魔界が荒れていた頃、ミレイユの師匠
魔女のタヴァンがこの世界を鎮めるための契約を交わした。
人は愚かで、愚鈍で、恐ろしい者だ。
欲望に忠実で、悪魔よりも物理的な力も無ければ知恵もない。
それでも、その人に宿った一つの願いの深さは底知れない。
魔女は、魔を統べる
即ち、魔を知る者。
その魔を…喰らいつくし、
魔力をその身に宿し、そしてこの地を…魔界を統一して来た。
『(逆に言えば…魔王の裏で大きな基盤、
即ち、器を魔女が作り上げて来たということ)』
それは底知れない力であり、
そりゃあそんな地球よりも
ただっぴろい世界の広さを
一人の人間が力を使って維持するなんて
寿命も短くなるものだ。
だが、この本に書かれている事で幾つが疑問が浮かぶ。
私の魔女と、いや永久の魔女にしてくれた
あの森が一体どういう意味を成すのかだ。
考えても見て欲しい。
魔界が統一されたのは
強い悪魔が一番に君臨し、統一したから。
それだけならまぁ分かるが、
それにしても何故
「巨大な魔力を放っても世界が崩壊しないか」だ。
理科の実験的なもので、
生物学等で教科書から色々読み解いたが
この世界は地球の内側、
即ちマントル側にある場所ではないのは確かだ。
だって月が二つある時点でおかしい。
太陽が回っていて、且つ月が二つと考えたら
地球とは違う銀河系にある場所の、
地球と全く違う生物、
それがこの場所で悪魔が住んでいるという仮説。
だがこれは一つ面倒なことがある。
それだと瞬間移動していないといけないし、
そもそも何故
「人間界と魔界が繋がる門がある」のかどうかだ。
異空間というならば話は終わるが、
その理由も勿論…この本に書かれている。
『(参ったな…確かに、どうして悪魔に見惚れたんだろう?)』
この本が本当の真実を書いているというのならば
この世界で、私は悪魔とつるむのは大変よろしくない。
だって悪魔は、魔女が力を受け継ぐための
ただの「食事」でしかないのだから。
悪魔が人を食い物と言うのであれば
魔女も悪魔を食い物と言うのだ。
性行為は単に悪魔の一部を体内に取り込むだけの
一時的なものに過ぎない。
人は一度経験した体験を何度も想い出し、
それを未来に繋げるように生きていく者だ。
だから一度悪魔の一部を体内に宿したら、
多少の時間くらいは魔力を使って魔法が扱える。
永久の魔女になるための契約を交わした時、
血が必要になったのもそのためだろう。
体内に魔力の宿った悪魔の血を、
受け継いで大いなる力を、
人ならざる人に、なる。
人間は成るために、実験体を作っていたのだ。
それが
『魔女の…真実』
これが世に出回れば大事だし、
いや下手したら天使の話が出ている時点で
人間界では魔女狩りが起きている可能性が非常に高い。
悪魔の方でもこんな話が出回れば魔女狩りは間違いなく起きる。
それに悪魔が魔女狩りをするのにメリットが幾つもある。
まず魔女は大前提として人間である者、
肉体も魂も全て最初は人間であるのだ。
悪魔は人間を食い物としている。
それは悪魔の餌が転がっているということ。
悪魔にとって人間は毒だ。
力も再生能力だって悪魔にとって薬以上の期待が出来るものだ。
だから一度食べてしまえば人の欲望が宿り、
どんどんと欲に忠実になりさらに人を殺して食べようとする。
そして最終的には悪魔そのものになる。
それは人間も同じで、悪魔の力を想いを
身体に宿すことで魔力を得ることが出来る。
その力を使って身体が死なないのは、
単純に悪魔の魔力を人側が無意識下でセーブしているから。
使えるタガを外さないようにさえすれば、
通常思いつく反応以上を上回るなんて造作もない。
現に悪魔は魔術が扱える。
それは体内にある魔力があるから。
血に巡る魔力があるからだ。
人もそれを使えるようになる。
それは、人間にも毒なのだ。
そう、魔女は悪魔の、魔力を宿した人間。
すなわち通常の人間にはない筈の魔力が食えるということ。
まぁ簡単に言えば栄養剤と野菜の違いみたいなものだろう。
野菜は確かに身体に良いが、
栄養剤は野菜ではカバーできないものも
含まれていることが多いし、短時間で回復する。
そりゃあ大量の人間を食わなくても、
魔力の付いている魔女を食えば
今までの倍いやそれ以上の力を短時間で得ることが出来る上、
魔界を支配することも容易くなるものだろう。
魔女が人間界に生きれないのは幾つか理由がある。
まず天使の十字架に非常に弱い。
正確に言えば神々の導きによる聖書の言葉だ。
私も前世では悪魔やら天使やら見て見たくて
あわよくばお友達になって
ピクニック行きたいとかやりたいと思っていたので
その事前調査ということで、
どんな悪魔が天使が生きているのかと
何冊か買って読み解いたことがある。
いや正直中二病な魔術とか作って
解き放とうとしてたよ。
勿論魔力なんて宿っていないので
そんなもの出たことは一度も無かったが。
その天使の使いである人に、魔女は非常に弱いのだ。
通常生物は天敵がいない場所なら無限に増殖するだろう?
それと同じく、魔女は悪魔に力を渡し、そして力を得たことで
魔界での適応に成功し、魔界程ではないが
人の暮らせる場所を確保したということだ。
その場所が、前に魔女会議をしたあの場所ということだ。
そして、魔女は元々人である状態。
この本から推測するに、大昔の初代魔女の者が
人間界と魔界を繋いだということだろう。
まぁそれがタヴァンかどうかは知らないが
…いずれにせよ、これは不味い。
『(新月の夜だけ…魔女の力は効力を失うのか)』
そういや前にリンが「新月だけは気を付けてね」
って言ってたような気がしなくもない。
お茶会の時で、お菓子が余りにも美味しくて
今まで全く想い出せていなかったが、
あれは新月の夜のみ魔女は力を失う
…そこは人と変わらないということか。
人は明かりがないと恐怖を感じ不安を抱く者だ。
魔力は力は意志が不安定になるとその分効力も弱まる。
出せる力も出せなくなるというのだ。
多分頑張れば力を使えることも可能だろうが、
通常の数倍は疲弊するのは間違いないだろうな。
まぁ最悪…死ぬ、なんてことはまずないだろうが。
『(不老不死という記述がない、
というか永久の魔女になってしまったが最後、
厄災が降り注ぐ話がとても細かいな…まるで)』
何度も繰り返してしまっているかのようだ。
まぁ、何度も夢の中で出会っている
あの時間を起こすつもりは更々無いし、
そうそう大事を起こさない為にも、
私は人間界ではなく此処、魔界で悪魔と共に暮らしているのだ。
そう、悪魔の中で、「普通」という居場所を探し続けている。
『…憐れな者だ。』
其処には無いというのに。
「メルちゃ〜ん!ど〜こ〜?」
『あ、はーい!』
パタンと本を閉じ、
メルは宙に切った異空間に本を仕舞い込み
座っていた場所から起き上がり声のする方に走った。
「お、いたいた。ダリ先生が呼んでたよ〜」
『ツムル先生!分かりましたー!』
「おう。」
ニコリと笑って手を振って歩くその姿は、
教師という形にも見えるし、一般男性としても見える。
カッコイイなぁと素直に思う。それはその人が悪魔であるから。
人は人、悪魔は悪魔。
決して、触れることは叶わない場所で。
『(私は、望んでいるんだ)』
魔女と人と、悪魔が。
仲睦まじく笑い合う時間を。
『(そんなこと、在り得ないというのに)』
だが、現実はどうだ。
魔女が悪魔をヒトを狩るその姿は
まさしく子供が恐れた「悪魔」そのものだ。
魔術を使い、人ならざる者になり、
悪魔と化したその姿は
本当の悪魔よりも悪魔らしく生きるのかもしれない。
魔術を使うということは、即ちそういうことだ。
私は、
『(私は)』
「そう生きたくない」
そう、生きたくない。
私はこのままこの時間のまま、生き続けたい。