ややっこしいコトバはいらない


それから更に時間は過ぎ、籠ってから三日目に突入した夜
部屋には殆どが自分の書いた資料になっていた
煮詰めすぎるなと言われたな?

それは無理だ。

と答えた事を土方さんには言っていなかったので
勿論夜に来た土方さんにげんこつを食らった

痛いです。おこだよ。

土方「ったく、その力を仕事にも出して欲しいもんだ…」

『無理です興味ないんで』

土方「何で!?っつーかさらっと作業進めようとすんな!!」

だってあとちょっとだもの…と、そう
ちらりと自分の机を覗き見る様に目を変えた
自分の書いた物は山崎君に買ってきてもらった
クリアファイルに少々束になりながらも一つ一つ
入れたものが三つめに行きそうだった

それに自分の目の下にはクマが軽く乗っていた
そりゃ怒るのも仕方がないだろう
と、感じながらもふわふわした脳内をどうにかして
切り替えようとするのだが…眠くなってきた。

今日はこのまま布団を敷いて眠ってしまおう
土方さんが私を寝させる迄居そうな気がしたし
お風呂はもう入った後だったので別に問題は無い

ただちょっと、うん、ちょっと寝る前にーって思ってただけだ。
まぁその「ちょっと」が三時間経過していた時は
流石の私でも二度見したよ?うん。びびった。

土方「…にしてもかなりの量だな、何か手掛かりは?」

『かなり…有力な情報源ですね。
お陰様で大分自分の事等知れました。』

伝説が5つ、
少女地球半崩壊説、蘇生説、不老不死説、
前世説、あとは未だ解読出来ないものが一つ

術の扱いが三つ
朝狼用、夜狼用、薄狼用だ。
一番収穫の大きかった物で
これがまた効果倍の仕組みや
その術の発動条件迄書かれていた

薄狼だけでなく夜狼や朝狼用の術も
念の為憶えて置いて損は無いだろうと
後で清書しようとしている最中だったのだが
これは明日にでも持ち越して別に問題無いだろう。



後は

『土方さん』

土方「あ?なんだ?」

『…お風呂入りました?墨臭いです。』

土方「んだとてめぇ…
あーあ、心配して損したわ」

『私に心配とか暇ですか?』

土方「んじゃねーよ!!暇だったら大量の…
嗚呼後でやらねぇといけねぇや…」

そう頭を抱えだした土方さんに
私は少々申し訳ねぇと感じながらも
察しの良い勘が怖いと思っていた

墨臭いなんて嘘なのだが
若干傷付いている顔をした土方さんに
少々こっちが罪悪感を抱いてしまった

そう頭を抱えながらも土方さんが明日の昼頃から
外に行く予定を入れていると言って
そのまま部屋から出ていく
…明日彼の嬉しい事の一つ位やってあげよう。

ってか私も?私も何ですか?と首を傾げていると
其処に沖田さんがやって来てとんでもない事を話した


『は?マジで?』

沖田「マジでさぁ、っつー訳で準備して寝ろぃ」

そういって彼は私の首裏を綺麗に叩いた
嗚呼待って、意識が、とおの


半目だった都佑は沖田の手刀により
確実に夢の中に旅立ったのを土方は外から目視で確認し
部屋の中にもう一度足を入れた

沖田「…こりゃ朝迄ぐっすりでぃ」

土方「お前本当に良くそんな事やるよな…
まぁこうでもしないと寝ねぇけどよ」

膝を広げつま先立ちながら座り煙草を吸った土方
その目線の下には沖田の胸の中で肩を縮めて
少し辛そうに眠っている都佑

よくよく見ると顔色が悪いのは恐らくここ数日煮詰めたからだろう
山崎が「止めておいた方が良いですよー」とかなんとか
言っていたのにも全く耳を貸すことは無く
集中すると其処から離れない様になっていたのを耳にした

一日に二回くらいは様子見をしていたが
その時はどうやら上手く誤魔化していたらしい
…もちろんバレていたのだが

沖田「爺さんの術でこの部屋にある書物は全て
見えない様に加工されてやすしねぃ」

土方「何を知っているのか知らねぇが
煮詰める程の情報が頭に叩き込まれているのは確かだな」

あの全てがどうでも良いと諦めていた羽黒未夜が
都佑として名前を呼ばれ出してから
少しでも自分からと欲を外に出し自分を持ち出していた
それに関しては土方だけでなく沖田や近藤らも嬉しい気持ちはあった

まぁここまで煮詰めると、間を取ってほしいとは
少々悩みの種としては小さい問題を頭の中で浮かばせては
消した事は土方のみが知っている事ではあるが。


沖田「明日が楽しみでさぁ」

土方「へぇ、お前も楽しみとかあるんだな」

沖田「土方死ねコノヤロー」

土方「…そいつちゃんと寝かせてから寝ろよ
後俺は死なねぇし呼び捨てにすんな」

沖田「そうは言ってもこいつが離れねぇんで
『やぁ、だ』さ?」

土方「あ?」

急に高い幼い少女の声色が聞こえた
然も「やだ」と否定の声だ

何処からか侵入して来たかと考えたが
それにしては夜遅いしそもそも聞こえた音が
かなり近かった事に二人は脂汗を浮かばせた

『や、ぱぱ、まま』

沖田「おめぇ、泣いて…」

沖田の隊服を掴み丸まっていく都佑
その目には涙が溢れ、身体は小刻みだが震えていた

『か、ないで』

”いかないで”

その言葉を知った沖田と土方は目を開いた
パパとママの言葉からして両親から離されたのだろうか
苦しそうな顔に沖田は「大丈夫でぃ」と優しく抱きしめてやる

すると都佑は少し寂しそうな顔をした後
嬉しそうな顔で涙を一つ零し終えた後何も呼ばなくなった
零れた涙を掬ってやった土方は彼女の夢がどうか
悪い夢でない事を祈った

沖田「あーあ、安心しきった顔しやがってぃ…あ、外れる。」

土方「こんな顔も出来るんだな…」

すやすやと寝息を立て始めた都佑
眉は上がり微笑みながら沖田の服から手を放す
それと同時に沖田はそっと布団の中に彼女を手放し
布団をかぶせてやると部屋を出た

土方も少し沖田が出ていく姿を耳で感じながらも
都佑の髪を少し撫でてから部屋を後にしたのだった


眠っている少女の様な顔色はもう悪い夢を見ている様な顔では無かった