くすぐるように笑うから

熱は微熱ながらも冷えピタを貼って部屋から出て
数メートル先で昼休憩なのか隊士が寛いでいた
其処に足音を余り立てずに寄り何をしているのか聞いてみる

「嗚呼!都佑さんこんにちは!」
『こん、ちには…ってなんか恥ずかしいね』
後ろの頭を撫でながら下の髪先をいじりながら
会話に入る、然し前と違い如何せん恥ずかしい理由が幾つかある

「都佑さんの名前自分は可愛いと思いますし
寧ろなんで今迄そんな名前伏せてたのか不思議ですよ」
『あはは、ありがとう。私も本当は名前好きだから
ラフに生きていたかったんだけどね、ちょっと諸事情で』

どうしても本名は避けたかった。
その理由の一つが、新選組でもある。

『新選組は精神面がしっかりしていないと生きれない。
昔は不安定で駄目なんだけど、ちょっと色々あって
こっちの方で過ごさないと行けなくなったから…
ちょっとまだ慣れなくて困惑中』

「そう、ですか…なんかすいません」

『いいや!寧ろ急に副長らに
命令されて呼んでくれてありがとうね。
これでも申し訳なくてどう接していいか
自分でも分からなくてさぁ、困ってたんだよね。』

前世という事や薄狼と言う事は伏せている点
とても有り難いが、この性格上バラす事が極めて高い
その為接し方をどうすれば良いのか困惑していたのは本音だ

冷たくすれば元の温かい情が邪魔をして
逆にストレスになって直ぐに医者にバレてしまう
1か月も休みにされて正直途方にくれていたのだが
銀さん達江戸の少しずつ広がっていく人脈には
かなり救われているので、頭が上がらない。

「寧ろそんな風なら何故新選組なんか男所帯に?」
『あー…まぁ最初は男として潜入したからなぁ。
本当は悪い人間が正義名乗られるのは嫌だから
こっちから排除しようとして来た…なんてね!嘘だよ!?』

半分本音だったりするが、持ち前の笑顔で
最近の隊士は「なんだー驚かさないで下さいよー!」
なんて高校生男子の様なノリで返してくれる為
物凄く此方としたらありがたかったりする。


山崎「あ!都佑さん!ミントンしませんか?」
「山崎!そんなミントンなん
『え!?いいの!?してもいいの!?』…は?」

急に目を輝かせ始めた都佑に隊士全員きょとんとする
その間都佑は目を閉じながら前世の記憶から
丁度昨日ミントンしていた事をふと思い出したのだ

山崎「おお、本当に!?」
『うん!丁度身体動かしたかったし!
…ザキーみんなー私が昔なんて呼ばれていたか知ってる?』

ニヤリと笑う都佑に少し首をかしげながらも
ミントンを渡すザキこと山崎、羽を渡して距離を取る
都佑に隊士は「鬼って感じじゃないよな」と言った返しに
「それ、副長な」と指を指して笑う


『ふふ、この数日で分からない男はお主等
股間にぶら下げてるもの、ちゃんとモノホンか!』
山崎「都佑ちゃん何気にとんでもない事発言してるけどいいの!?」
『ち○ち○は引きちぎって自分の股間にとっつけるもんだぁああ!!』

隊士「「ちげぇえええええ!!!!」」

急にラリーが始まったのと都佑の予想外の下ネタに
隊士は突っ込みを入れて騒いでいると、背後から
「なんだ?」と覗き込みをしてくる煙草の煙

土方「おめぇら何くつろいでんだ?ああん?」
『ち○こ!股間!引き、ちぎるっ!』
土方「ごっらぁ!岡本!何えげつねぇ
事言いながらミントンしてんだ!ってか
ザキ!!てめぇ何誰の許可で養生者連れてやってんだ!!」

『てへぺろ!こわ方』
土方「こわ方じゃねぇ!!」

そう言いながらもちゃんと山崎のほうを見て羽を飛ばす
山崎は山崎で異常に上手い都佑のリレーに驚いていた
笑いながらもまぁ下ネタとちょっと言葉を取ればかなり
えげつなくなる言葉を放つ程の余裕があるということだ

医者からは適度な運動とは言われているが
果たしてこれは適度なのだろうか?
そう、きっとそう。

山崎「都佑ちゃんが、やりたいって、言い出したんです、よっ!」
土方「あ?岡本、そうなのか?」
『れっつ!おティンティン!!!』

土方「だから下ネタやめろ!!」

都佑が一気に攻めたものでギリギリ間に合わなかった山崎
上手過ぎるミントン裁きに驚き凄いと都佑の傍に行き目を輝かせた

『ほ、ほんと?…っ!』

少し首を傾げながらもザキが首を縦に勢いよく振ると
嬉しそうに目を輝かせ始める

『えへへ!ありがとう!楽しかったよ、ザキ!!』

ぱぁああ、なんて効果音が付きそうな程
向日葵の咲いた様な笑顔を振り撒いた都佑
ウキウキとする都佑に隊士は最初に言っていた
都佑が昔なんと呼ばれていたのかを
屯所内に歩く二人に聞くとザキも気になっていたと返し
都佑からミントンを貰う

土方「昔の呼び名?」
沖田「なんかあったんですかぃ?」

『”好奇心の塊”って呼ばれてた。』

そう言うと其処にいた全員が都佑を見て
「あぁ〜」と少し縦にうなずく
それに都佑は少し不愉快そうに眉を中央に寄せた

『むぅ…良いもん!いい汗かいたし!
気の済むままに昔動いていたらそう言われただけだもん!』
近藤「子供らしくて良いじゃないか!」
『むぅ…近藤さん私コレでも22歳なんですけど』

そう頭を撫でる近藤に聞いたこともない爆弾発言に
隊士だけでなく近藤も驚き手を引っ込める

「え!?ガチなの!?」
『本当ですよ、今年で23になります。
…だから昔の様に笑って無邪気に暮らすのに
余り乗り気じゃなかったんです。』

山崎「見た感じ若く見えるんでパッと見
沖田隊長と同年齢だと思ってたんですけど…」
沖田「俺もですぜぃ、幼顔ってことですかぃ…」

『…むぅ、ごめん。なんか爆弾発言したね。今の忘れぶっ』
沖田「忘れる訳ねぇじゃねぇですぜぃ…なぁ?都佑ちゃん?」

カァと少し頬が赤くなる都佑
すぐに訂正して逃げようとする都佑の背中の服を掴み
逃げないようにする沖田の顔はドSの顔になっていた

『ふぇぇええ!だからこんな性格に戻したくなかったんだよ!
いや正確にはどうあがいても性格戻るんだけどね!?
なんか怖いですけど!沖田さん!?ちょっと!?』
沖田「こんな、おもちy…んんっ、こんな
面白いもん放って置くのこそ駄目でしょう?」

『今玩具って言おうとしたよね!?したよな!?
聞いた!私の耳察知した!危険察知した!神楽ちゃぁあ!
神楽ちゃん何処ぉおお!!』

ピーピー半泣きの声を出して右へ左へ首を振って
神楽の名前を叫びだす都佑に少し機嫌が悪くなる
沖田の頭が神楽の足に直撃する


土方「んなっ!?チャイナ!」
神楽「都佑ー大丈夫アルかー?
神楽様が来たからにはもう大丈夫アルネ。
私にこのサディスト野郎は任せるヨロシ!」

沖田「っのチャイナ!何俺の至福を邪魔するんでぃ!」

至福!?私を確実にいじり倒そうとしたのが至福?!
いや分かる私だってこんな状況の人居たらいじり倒したくなる。
分からなくはないけど、自分だったという自覚が無いのだ


神楽「あぁん?都佑の泣き声が聞こえたから飛んできたヨ
こんなむさ苦しい処居ないでとっとと万事屋に移動するネ」
沖田「てめぇナメてやがるなっ!!」

そう神楽は腕を胸元に置いて少しのけ反って呆然としている
都佑と喋りながら刀を抜いた沖田の攻撃を軽く身体で避けたり
傘で受け止めたりして喧嘩をおっぱじめている

土方「おめぇら…っ!」

クスクスと笑いを堪えて神楽と沖田を見ていたのは
都佑本人で、口元を両手で隠しているが目が笑っており
口のニヤケも手で隠しきれていない

その嬉しそうに笑う姿に神楽と沖田も見て驚いて手が止まり
都佑の方をガン見していた

『っくくっ…ふふっ、ってあれ?もうおしまい?』
神楽「都佑って面白い奴ネ、銀ちゃんとマヨラーが
喧嘩しているのを遠目で此間笑ってたヨ?」
『あっ!こらっ!神楽ちゃん駄目だって!!』
土方「あの時見られてたのか…」

クスクスと笑っているのも束の間
神楽がきょとんとした顔で首を傾げ
都佑が神楽の口を塞ぎに行く程に
恥ずかしかったのか少し顔が赤くなっていた

それに土方は少し斜め上の屯所の空を見上げ
煙草を外に向けて吹いた
その土方を見て都佑はふと記憶の中に居た
顔も見えなかった人の名前を呼ぶ

『…パパ?』
沖田「は?」
『ーっ!かか、神楽ちゃん!遊びに行こう!?
近藤さん土方さん皆さん私お出かけしてきまぁああすうう』
土方「あっちょっおい!」

ドドドと音を立てる様に顔を隠すように俯き神楽の腕を掴み
そのまま玄関先まで廊下を走っていった

土方「(パパ…って事は父親?)」

都佑の言った名前の後の眼の色は
もう二度と会えない様な絶望した目をして
彼女がまた何か言えていない事があるのかと
少し不安になりながらも、とりあえず周りにいた人を
早く仕事場に戻すようにと刀を抜こうとすれば
すぐに隊士達は逃げるように仕事に戻っていく

沖田「…あんな顔、見たことねぇでさぁ」
近藤「まだ少し出し切るのに照れ
くささが残るのは仕方がないとして…」
土方「俺達に話せる事は話しても良いと思うんだが」

そう都佑の目の色が明らかに悲しそうで
胸が少し傷んだ三人にふわりと優しい風が吹いた
空を見上げれば、まだ昼下がりの雲ひとつない晴天だった



ーくすぐる様に笑うから
もっと笑って欲しくて、
でも君は壁一つ必ず作っている。

土方「(もう少し気を許しても良い
…だなんて無理な話ではあるが)」

それでも、すぐに振り向いて笑って
「ただいま」だなんて声を聞くと
鬼の副長もフッと笑みが零れる