それ以来都佑は一切動かなくなった
彼女が暴走した一週間後の朝
土方は近藤と医者、何かあったときの為と
一番隊を引き連れて都佑の部屋に来た
土方「山崎、様子は」
先に居た山崎に確認を取るが
下を向いたまま下唇を噛み
「みていられません」と悔しがった
山崎「寝る以外は何もせず
脱水になりかけると飲み物を飲む位で
栄養のある飲み物や固形物は全て戻しました」
近藤「そう、か」
かなりやせ細りやつれている都佑
もう彼女の中に光も何も感じない筈なのに
この時間がいとおしく感じているのか
チョーカーはピンク色に近い赤が光り輝いていた
目は黒く何処か遠くをみていながらも
口元は微笑んだりするそうだ
柏木「…そんな、あるわけがない。」
驚き目を丸くしていた柏木に土方は目を細めた
柏木「笑っておる、全て、捨てた色をした後なのに」
沖田「どういう事でさぁ」
未夜がしているチョーカーは少し勝手が違う制御系チョーカーで、
感情が表に出ない様な人の情を色に変え
他人が知れる様な物になっている
その為無表情でも話をするだけで色が答えてくれる為
嫌でも色が明るければその者は嫌とは思っていないのだ
柏木「黒や白は決意を表し、”絶望”の色であるんじゃ。
一日其処らで色が変わる様な物ではない…なのにも
目が死んでながらも色は夕焼け色の様な赤を光らせておる」
それは未夜が心を殺してはおらず
一度世界が真っ暗に見えただけで直ぐに意識を切り替えたのだ
柏木は「人が行くとどうなる」と山崎聞く
山崎「俺や沖田隊長、土方さんの時は
紫色か青、稀に淡い緑を放ってました」
柏木「…そうか、あの子の殺気はお前さんらを守るものと言う事じゃの」
近藤「一体どういう事ですか?」
そう首をかしげる近藤に馬鹿共ばかりが居るから
あやつも振り切れんのかもしれん
と軽く真選組を罵倒する柏木に土方が少し苛立てた
柏木「紫は”迷い、動揺、多種の感情混入
”青は”悲しみ”緑は”平和”を知らせるのじゃ
お前さんらに言いたい事は恐らくこういう事じゃろう」
≪皆私が傷付けたのに彼らは私の傍に歩み寄ってくる
私の前に現れたら駄目だと殺気を立て逃がそうとする。
離れて笑って居たらそれでいいのに
私は皆が私を見てくれる事に安心してしまう。≫
柏木「≪自分以外の場所で笑って居る皆が居れば良い≫」
そう柏木が言った言葉にその場にいた全員が疑う
然し次の瞬間都佑が目を疑う様な行動を起こす
顔を手で隠し「いないいないばぁ」をしていた
コロコロと一度目は未夜の様な鋭い目
二度目は優しそうなぱっちりした幼い顔に似合う目
三度目に都佑は目の色を輝かせた
土方達には一度も見せた事も見た事も無い
何も知らない様な無邪気な瞑らな目
瞬きを繰り返しながらキャッキャと声をあげて
幼子の様な声で何もない場所に手を伸ばして笑って居た
『いないよ?』
そう手を伸ばし切った後
彼女の目の色が真っ黒になった
日差しの真下に居た光が急に洞窟の中に落ちたかの様に
一瞬で目の色が気配が変わった
『誰も居ないパパもママも君だって
君は私だ。私だったもの、私のモノ、私その者』
ふわりと髪が舞い上がる
それと同時に都佑が
目を開きながら首に手をかける
嬉しいのだろうか?口元が笑って居る
然しその声は高くなるも低い言葉を連ねていく
『嗚呼、君は私で私は君だ。
そんな簡単な事も”ふり”で誤魔化すから
近藤さん達だって私をみなくなるんだよ。
自業自得だ、お前は、私は』
”所詮要らない人だったのだ”
そう言い切った都佑の首元には真っ黒に光り輝くが
一瞬で紫色に変わり淡いピンク色に変わると色は落ちていき
光は放つことはなくなった
『そうだ、他人を見るからこんな羽目になるんだ。
言っただろう?都佑、君は人に甘えてはならない。』
沖田「…っ!!」
『甘えるからこうなる、自分を創り上げて?
自分だけを見て居れば良い。ほら、もう!大丈夫。』
何が大丈夫なのだろうか
ケタケタと笑って居る彼女の身体が毛布から剥がれて漸く酷いという事が分かる
胸の下辺りから骨が浮き上がっている処を触ってクスクスと笑う
背伸びをした後に出る骨は、食事を採っていない証拠で
今すぐにでも生かすなら食べねばならなかった
『…大丈夫、なんだけどなぁ』
君は、未だ其処に居るんだ。
そう続けて言った彼女の声は酷く寂しそうに聞こえた
方向は見えてないのにも関わらず
何処か土方を観ている様な感覚で
術を使えない筈の力が出て小さな少女を創り上げたではないか
ニコニコと笑う少女を見て都佑は涙を流す
力なく、笑い嬉しそうにも、悲しそうにも、笑う
『君の、櫛がかけたら…良かったのかなぁ
私が君じゃないと分かれば!こんなっ!
…こんな気持ちも断ち切れたのかなぁ』
肩を落としヘラヘラと笑う都佑
それにきょとんとした顔で笑う少女
山崎「…かれこれ、コレをもう数える限り20回はしています」
土方「にっ、なんだその数…」
柏木「あれが彼女が、岡本都佑が
薄狼として生きている証拠ってことじゃ
あんなの序の口じゃろうし、お前さんらの前では
無い場所でやっていた事なんじゃが
…最近ああいう事をしなくなったと此間笑っておったよ」
大事な人達が出来たと
笑って居たいと心から思える場所が出来たと
護りたい、世界が目の前にあると
嬉しそうに笑っていた都佑の笑顔が
土方の心の中には、顔だけ黒く塗りつぶされていた
クレヨンで塗りつぶされている様で
チラホラ頬は見え隠れするのにも
見たい顔が思い出したい顔が思い出せなくなっていた
柏木「空想の友達を無理矢理現実に創りあげ
何とか精神状態を保っている。って処じゃの。
ありゃもう手遅れじゃのう、手を差し伸べても取らんぞ」
自分の中に情を維持して時間と自分の思い込みで凌いでいく
そのやり取りを何度もして自分の中に叩き込み
誰とも心から笑わず手を取らず一人で
たった独りで生きる術を作り出した
柏木「いや、元々手遅れじゃったのか。
じゃなきゃ薄狼にもなっておらんなぁ。」
近藤「一体どういう事ですか、あの子は」
『パパとママに会えないから、薄狼になったんだね。』
土方「っ!?てめぇ!一体何処から!!」
瞬時に柏木の前に現れた都佑
乱雑になっている髪の毛を左右に揺らし
後ろで手を組み何もしない様に意思表示をする
それを見て柏木は驚きはしたが直ぐに都佑に質問をした
柏木「お前さんのソレは一体何時の年齢じゃ?」
山崎「何時?」
『んとね!コレの時かな』
両手で指を折り右手の親指だけを折るが
途中で『一番初めならこっちかな?』と
首を傾げながら右手の人差し指も折った
それに隊士が「18?」と声を出すが
都佑は無邪気に笑って違うと首を横に振った後
目の色を落として顎を引き口に出す
『8歳の時だよ』
沖田「っ、(な、んだこの殺気)」
目は黒く土方らを見て居た
鋭くないぱっちりとした目が下から上に見上げているのが
更に恐怖を感じさせる
柏木「…と言う事はもう100年は経って居ると言う事か。
そりゃそんな色にもなるわい、それにそれ位じゃ制御仕切れない
”誰かが傷付けば問答無用で飛び出すのを伺っていた”って処か?」
『ぉおぉー!すごーい!流石警戒していた人その一だわ。
そうだよ、此れ位の抑制?制御?封じ?は私効かないよ。
”都佑ちゃん”を創り上げて遊んでいた位だし。』
ニコニコとしていながらも殺気は変わらない
気を抜けば殺される、そう少なくとも近藤も感じていた
それを察したのか都佑は『君らを殺せないよ』
と言って寂しそうに笑った
肩をあげて落とし寂しそうに少女に手招きをする
すると少女は気付いたのか此方の方に壁をすり抜けて
都佑の前に止まり身長差がある為顔をあげて
次の指示を待つ犬の様に目を輝かせていた
『…君が嫌がるのはわかってるから、今悩んでいるのよ?
うーん、別に前の状態でも君らと上手く付き合えるんだけど
此処を分かれ目にするのも手かと遊んでたんだけどね?イマイチなの。』
「前の、状態?」
『そう!この少女を崇めて崇拝し心の核にするの』
そうして他人に興味をぐっと低くさせて
それなりに気になる様な素振りをさせる。
すると大体人間は興味ある様な行動は素と勘違いする
それを使い仮面を幾つも創り上げ、
人間と話す度に”自分を入れ替える”
『これが楽だからそう切り替えようとやってたけど
ノリに乗れないから飽きたのかなぁと思っててね
誰も死にそうな気配無いし、暇だからとりあえず
”都佑ちゃん”創って遊んでた』
案外楽しいのよ?一度やるとハマるからお勧めはしない。
そう言い都佑は自分の名前にちゃんを付けて少女を呼んだ
すると嬉しそうに目を輝かせ口は横にめいっぱい開くと
二カッと太陽の様な眩しい笑顔を見せる
それに同調する様に都佑はニコリと笑った
嬉しそうにはしゃいでいる少女を見る時は優しい目をしている
誰にも見せない、優しい目
沖田「…狂ってやがる」
『堕ちた方が楽な事もあるし逆に辛い事もある。
私は楽だっただけ、私が君であった事も、無かった事にして
脳内を心を惑わせて酔いさせているだけ…処で私に何の用?』
そう沖田を見た目は少女を見て居た目とは逆の目に変わる
流れる様に変わる事に、苛立ちと困惑と、あんな目を
見せてくれる様な機会も無くしたのかと、いろんなものが
交じり同じ様に沖田は都佑を睨む
すると直ぐに察知したのか、少女が泣きそうな顔で
沖田の前に現れて両手を広げた
『…っ、大丈夫だよ、私は傷付いてなんてない。
だからそんな顔しないで?大丈夫だいじょうぶ、
だから今だけはちょっと眠っててね、すぐ迎えに行くから。』
そう言って少女を後ろから抱きしめて首を絞める
その行動は意外だったと驚き土方が止めに入ろうとしたが
少女は嬉しそうに笑って泡となり消えた
『…で?』
柏木「お前さんとよりを戻したいと」
土方「んなっ!爺さん!!」
『無理だね、だって君らも”都佑ちゃん”を傷付ける。
誰も誰も、中になんて入れさせない。』
その冷たい目に土方は動揺する
普通の攘夷志士ならば別に何ともない
然し彼女はつい数日前まで傍で笑って居た人だ
近藤や隊士に怪我を負わせた後に言い放った言葉に
居させてやれないと土方が言った言葉が響いている様だ
それもそのはず、彼女は人一倍”傷付きやすい”のだから。
そして同時に人を瞬時に突き放すのも人一倍。
決めた事は曲げない主義の彼女だ
もう二度と笑わないだろう
然しそれでもいい
土方「協力して欲しい事が出来た。頼む、力を貸してくれ。」
沖田「土方さん!?」
都佑の力を使えば今度の山は苦も無く済むし
何よりカギになるのが彼女だ。
今更どの面下げてとは思う
だが彼女が動く理由は此方にもある。
『ことわー』
土方「コレを断れば俺達だけじゃねぇ、
江戸中の人間に被害が及ぶ…お前が守りてぇ奴なら
この言葉だけで分かってくれる、と、信じてる」
そう土方が頭をあげ、彼女の様子をうかがう
都佑は目を開いて驚いていた
数日前の様な、優しい目で
ずるい。と優しい声で俯いて言い放った
『でっ、…真選組の人間だけでなく
無差別に斬り殺すかもしれない。
それでも、私を真選組の人間としてまた置いてくれるの?』
近藤「また?何勝手に辞めてんだよ…
端からお前を辞めさせるつもりはなかったよ。」
『あぁ?』
沖田「ぶっ」
生々しく猫がニャーと言う様な声で返事を返した都佑に
殺気も何もなくなった切り替えの早さと、主に素っ頓狂な声に
沖田は思わず噴き出した
『ったく、お前らもお人好しだなぁー私には負けるだろうけど?』
柏木「どうやらワシが焦る程でも無かったようじゃの」
『いんや?結構ヤバかったよ、一歩間違えば暴走してたし。
ヤバーい場所に片足突っ込んでたのは事実だよ。』
そう軽く言い出した何時もの調子に
案外簡単に戻った都佑に隊士達は少し安心した
のも束の間、柏木の顔色が変わった
柏木「…は?んな見え透いた嘘を」
『感情によって色が変わるのは驚いたしヤバいと感じた。
君らに知られない事で守ろうとしたけど無謀だってわかったし
そもそも斬った後、物凄い闇が襲ったんだよね。』
あの闇はとても寂しく冷たかった
だから直ぐに私は幼い”都佑ちゃん”を”自我の中に居れなくした”
そうすることで本来の自分が分からなくなり自分の首を絞める事にはなるが
何も知らない少女は本当に何も知らないままで居られる
その笑顔が守れるのなら
何度も何度も砕けても笑ってくれるのなら
私は何度でも少女(前世の自分)を守ろうと思った
『お蔭さまでついさっき迄何とか自分の核を
想い出して”また”心の中で確認をしていた処なんだよ
君らが”あんな状態の私”を知ったから消そうかと思った』
それは暗殺なんてものじゃない
そもそも無かった事になんてしてしまおうかと
本気で考えた
『でも、あの子は寂しそうに笑って”駄目だよ”って言ってくれた。
だから私はあの子を創り上げて自我を何とか戻したんだよねー。』
柏木「それが出来ると言う事は…一体何人の己を殺した?
一体どれだけ前世で傷をつけ『柏木さん!!』・・・あ」
土方「前世?…一体何の話だ」
おっと、眉間に皺が寄っていますよ土方コノヤロー
そう思ってるのが顔に出ていたのか、何故か
「呼び捨てすんな」と言われた。何でだよ。
『あー…柏木さんの失態ですからね、今度板チョコアイス奢ってよね。』
柏木「すまん、ってか薄狼であれば大体知っておったと思っておったんじゃが…」
そう言った柏木に都佑は乱暴に頭をかき殴り髪の毛をいじりながら
とりあえず場所を移動しよう。その言葉に少々乗り気では無かったが
土方は渋々彼女の言う通りにしようと足を前に出した
+++
『あー櫛で髪の毛が生き返るー』
沖田「あのぼさぼさが一度でそんな綺麗になるのが不思議でぃ」
それは私も思う。と言い返しながら部屋を大きく隊士が座れる様にと
廊下の方を全開にして化粧台から櫛とゴムを取り
少々乱暴ではあるが櫛を髪にとかして綺麗に身なりを整えていく
風呂は別に身体の状態を見て寧ろ入ると危険だと知っている都佑は
服はそのままで頭の上から向かって右側の髪の毛を少々多めに取り
左側で三つ編みを見て作業しながら土方の回答に話を進める事にした
『薄狼は別名”神の情け”とも呼ばれている者で全員が転生、
つまり前世の記憶を持ったまま生まれるの。』
「前世・・・」
柏木「薄狼になる条件で一番重要なのが”前世の罪”を永久に持つ事じゃ」
山崎「罪って…都佑さん何を」
『いいや寧ろしていないの。』
薄狼は”無罪を罪と決めつけ叶わない願いを持つ者”を救う一つの手段である
『私は昔ね、パパとママと三人で笑って暮らしてたの
とっても楽しかった、あの頃は友達なんていらなくて
山と虫や動物が友達だった』
大きな物や小さな物、身動きがとりにくくなるモノや
速く動けるようなモノまで、目新しい物は楽しんでいた
『でも毎晩二人は喧嘩してた。
私はそれを観るだけしか出来なかった。
そのまま二人は別れた、私は言えなかった。
だから私は私を恨んだ。』
二人が好きだと。同じくらい好きだと。
だから二人の間で笑いたいと暮らしたいと。
駄々をこねたかった、我儘を言いたかった。
でもそれは二人の不幸になるのではないかと
そう感じ取った自分は何時しか
一切我儘を言えなくなっていた
柏木「”家族の別れ”がお前さんのカギになっていた訳か」
『我儘を言えなくなったのが8歳だった
それから目の色が死んでいって今思えば
恐ろしい経験をしたと思うよ』
だってまだ、8歳(やっつ)だ。
二桁にさえなっていないのに
怯えて震えて怖くて怖くて耳を塞いだ
『嗚呼お前(私)は臆病者だ。怒らせて傷付ける悪い子だ。
と言い聞かせて自分を殺したのが10歳になる前の夏の日。
それから殺すのに躊躇はしなくなったかな。』
近藤「たった…10歳で?」
嗚呼、そうだ。
『手を伸ばさないのも彼ら(父と母)の幸せ。
笑ってくれるのなら私は心を殺してだって二人の笑顔が見たかった。
でも皆私を”可哀想な子供”として優しく接した』
それが余りにも酷い現実に見えて、直ぐに自分を殺したのを憶えている。
忘れていた記憶であるのにも関わらず、昨日のように感じてしまう。
『ママが私を捨てた?そんなもの信じない。
ママはきっと長い長い家出をしただけだ、だから
何時でも帰って来て良い様に時間を”止めた”』
山崎「止めた?その時は普通の人間じゃなかったんですか?」
『ん?君らも出来ると思うけど…あれ出来ないかな?』
そう首を傾げ三つ編みをした後今度は
前髪も三つ編みの方向に向かって編み込む
理解が追い付いていない様な顔に都佑は
「知らない方が当たり前か」と笑った
『”幼少期の自分の性格を止めた”んだよ。
優しくて可愛らしい無邪気で何も知らない様な子供。』
土方「ーっ、おまっ」
それは何時でもママが帰って来た時に出迎えられる様に
帰って来る筈もない現実を見て居るにも関わらず
都佑は”叶わない願い”に手をだした
何度も言うが、別れた時は10になる前の夏の日だった。
9つだったのだ、まだ二桁もいかない幼い子
なのに大人が懺悔する様な感情を彼女は既に経験した。
経験しなくても良い感情を、経験してしまった。
『”都佑ちゃん”と名前を付けて自分を自分で心の奥底に押し込めた後
別の自分を創りだして心を、自分で傷付けて生きていったんだよね。
死ぬ間際には流石に殺さなかったけど。まぁそんな感じ!』
沖田「何で、そんな明るく言えるんでさぁ…
聞いた話でありゃ、寧ろ苦しかったでしょうに」
『寧ろ私はあの時笑えたの、”お友達が出来た!”って手を差し伸べた。
それが”両親の離婚による精神疾患”だと大人が知っていても。
無邪気に笑って、私は手をのばせられた。』
周りの目なんて気にしないのがモットーだった私
可哀想なんて優しくしてくれる周りに同級生は
「ずるい!」なんて言ってたのも聞いたことがある。
自分ばかり良い事は駄目だと感じたのはその時位からだ
他人が喜び笑って居る間に自分も喜べればと
今思えばかなり謙虚ななりふりだったと胸が痛い
『ま、過ぎた話だったんだけど、その”叶わない願い”が
神の情けとしてこの世界で産まれ
術使いの人間とは更にかけ離れた
情け処か地獄かって思う様な事になった訳でさぁ』
やれやれと首を横に振って両手を曲げて溜息をつく
『実際今は前世の幼少期のままである少女を使って
何とか自我を保っているだけなんだけどね。
逆に其処を突かれると直ぐに死ぬから宜しく。』
山崎「え?死ぬってまさか物理じゃないですよね?
…あれ?え?ウソですよね?」
柏木「薄狼は物理攻撃を受け止めるのは得意じゃが
精神攻撃にはめっぽう弱い筈なんじゃが・・お前さんは
ちょっと違う様じゃの」
それに死ぬと思っていた都佑が首を傾げる
柏木「通常の薄狼であれば瀕死であれば何度でも回復するんじゃ
その代わり精神攻撃には弱く、今回の件であれば
閉じ込められた時にもう死んでいる筈」
では都佑は?
柏木「お前さんも薄々気付いておるんじゃろう?
己の状態に、感情に。見て見ぬふりをするのが上手いお前さんなら」
…バレた?
とでも言いたげな顔をして
きょとんとした後直ぐに笑いながら
頭の髪の毛を掴み頬に擦り当てながら話す
『多分前世で死んでも死にきれない程自分を殺したからかな
耐性がある程度付いていて傷付くけど大体浮上して
元に戻る様な仕組みになんかなってる。』
山崎「なってるってそんな他人事のような…」
『他人事だよ?何言ってるの山崎君や』
だって自分は都佑で無いのだから。
そう言い聞かせる様に息を吐きながら目を細め笑う
まさに確信犯の顔
『自分の中で一番良い記憶を持ち”それ”を守りながら
自分の感情を殺し続け、他人の攻撃に慣れ他人は自分を
愛さないと知らせ、自分だけを愛する様にする』
そうすれば他人は傷付かないし自分だって傷付けない
だって自分だけを愛すれば良いだけだ
其処が幸せ。それで幸せ。その場所で幸せを感じれば
多くの物は望まずに小さな物で幸せに感じられる。
加えて何かあった時にも直ぐ対処出来るし
いざとなれば自分が傷付き感情を消し
別の自分を創り上げてまた”自分”を創り上げてしまえばいい
まさに捨て駒
その言葉がぴったりだった
『だから皆が優しくしてきた時はまずいと思ったんだよ』
土方「あ?なんの話だよ急に」
『薄狼は一時的に前世の一番好きな状態の性格になるんだよね
優しくて幼い無邪気なあの頃が皆に知れ渡って行く頃
同時に、こんな状況も考えていたの。』
当たっていた事に笑うしかない話である
嬉しそうに笑っていた少女の様な私は
先の辛い現実さえもいち早く知り情報を作っていた
全ては自分を守る為に
『だから”都佑ちゃん”の櫛は欠いてあげれない』
櫛で解す事も、欠(か)けもしない
自分自身だから櫛をかいてあげれない事
記憶は残りその感情は欠ける事も無い事
その二つの状態を知った土方は自分が
今どんな顔をしているのかわからなかった
いいや、知りたくもなかった
ただ知ったのは
その後ふわりと風がないのにも髪の毛が浮かんだ都佑
胸元に温かい感情が集まったのか
チョーカーは優しい朱鷺(とき)色に光る
黄みがかった淡く優しい桃色の色に困った様に笑った事だけだ