絵は額に入れるととても綺麗に見える
それは絵が綺麗だからこそ余計に栄える様に見えるのであって
人の人生の出来事は額に入れて想いやる時間は無い
そんな時間が来る前に人の一生はあっけなく幕を閉じてしまうからだ
但し、例外も勿論ある
『女の恋愛を教えろー!?』
そう話を相談しに来た隊士に私の声が思わず大きくなった
そりゃこの屯所内には隊士としてであれば女は私しか居ねぇけども
いや私女って扱いされてたの?君らの中で?え?
「都佑さんだって恋愛の一つや二つしていたんじゃって!」
『うぅーん…そりゃした事あるけどもなぁー
モノに寄るよ?恋愛のなんの話だよ…』
「好きな人と寄り添いたいと、女の人の幸せって何ですか?」
おっと結構重い話題が出て来たぞ?
男の人だからもっと軽く「ヤれるの?」とか下ネタに
走るかと思ったんだけど、案外真剣な事で驚いた。
女の幸せ、か。
『そりゃその女が自然に笑えられる場所が幸せだろうね
女って好きな場所居たい場所の為ならやることするもんだよ』
「へぇー守ってもらいたいとかって思うんですか?」
『そりゃ勿論そうでしょうよ。男の背中見てかっこいいって
思って惚れて付き合って添い遂げたいって家庭もって
安心する場所を求めるのは普通だよ。』
普通の女であれば、の話だが。
別の隊士が私もそうなのかと聞いてくる
それは話の流れによって勿論だろう
『私?私はそんな幸せ要らないね』
「ええ!何でまた…」
『何でと言われても、前からそう
”言い聞かせてしまった”罰だよ
それに本音言ってると皆離れて行ってたし?』
私に恋愛なんて早い話だった
恋心は親を見て周りを見て育つものだ
普通の生活をしていた私だって恋愛もしていた
片想いで終わっていくものが多かったが
幸せな家庭も持った記憶もある
でもそれが幸せとは私は感じれない。
『私はね、恋愛に向かないのよ』
「向かない?」
『親愛ってわかる?親を愛する子供の無邪気な行動』
「嗚呼、餓鬼が甘えていくやつですよね」
『ソレを奪ったから私は恋愛出来ない』
「…仰っている意味が良く分かりませんが」
人は必ず親愛から始まり恋愛に発達しそのまま添い遂げる愛になる
それが女であろうが男であろうが相手が同性であろうが
愛は変わらないし愛おしいと思えば愛である
ただ、私の場合はその恋愛に発展しなかっただけだ
その理由はただ一つに尽きている
『私の親ってね離縁してるの』
「え?」
『ママは急に言った、”パパとママの何方が良い?”って。
今も目を閉じれば抱きしめられた感覚がする。
その感覚を持って誰かを好きになんて出来ない。』
「それでも好きになっていいんじゃ」
おい、と別の隊士が声を出すが、私は首を横に振って
話の答えを口にだしていく
『ママもパパも好きなのに、何方かを手放すの。
何方かに見捨てられて愛されない者に
誰かを愛せる様な権利も動議もなってはならない。』
私はそう言い聞かせた事を思い出す
そういえばそんな情を持った時はかなり幼かった
『そう感じたのが9つの時』
「こっ!?ここのつ!?!?」
『あれ?早かった?皆それ位に憶えてない?』
「憶えるかぁああ!っつーか餓鬼が何で
そんな感情持ってるんですか!
普通ありえなー…すいません」
そうだ、普通じゃない。
だから、私に回答は出来ない。
でもこれは言える
『額に入れちゃ駄目だよ』
「はい?」
『人の感情想いを飾ってしまっては駄目って言ってるの。
好きなら好き嫌いなら嫌い、それで終わって忘れる。
忘れないまま居ると人間不思議と額に飾るのよ。』
その状態で居たいが為に
その感情を持ち続けたいが故に
感情を額に入れて綺麗に維持する
『そうすればもうその感情から逃れる事も忘れる事も出来ない
死ぬ迄その額を見て笑う事しか出来なくなってしまう。
だからこれは忠告だよ』
私の様にならないで。
そう言った後後ろから聞き覚えの声の反論に驚き声の方向を向いた
山崎「良いじゃないですか、飾っても」
『駄目だよ、あと私の事尊敬してるからって
近くに居ても隊士さんら駄目だからね?
寧ろ私の様になったら切腹させるからな?』
「えっ?!何でですか!!」
『私なんぞを目標にすりゃ碌な事は無いし、
私の様な生き方をするならば…嗚呼まぁ言った方が早いかな?』
私の情はとてもじゃないが、彼らに真似出来るとは思えない
ならば言って諦めさせてしまおうじゃないか
『私が何時も感じている感情を教えてあげようか?
一言でいうのなら私の情は”額縁”だよ』
山崎「額縁?あの絵を飾る?」
そう、何でも良い額だ。
観て鑑賞して笑って泣いてその場を観ているだけの情
それはとても楽な感情だ
だって観るだけなのだから。
『極端な話欲が無い。欲が出ても高望みをしない。
それは手に入らないと知っているから。』
それを知ったのはたった8歳の頃だった。
数字を言うと案外驚く隊士たち
やはり自分は異常だったらしい。
『手に入らないのであれば創りあげればいい。
創り上げて絵を描いてその絵を見つめる』
最初は自分がと望む物は手を出していたさ
でも、何となく自分が望んで良い物かどうかを左右し始める
気が付けば他人が喜ぶ姿を観て「楽しい面白い」感情が沸いた
其処から私は自分優先を止めた
『気付けば手を伸ばさずにその場から遠くを観て笑う様になる
その景色が例え辛くて現実じゃないと言い聞かせても
全てを遠くの方で観て笑い、一瞬の感情を飾っていく』
それを出来始めたのは15の頃だった
それまでどうしても諦めきれなかった
でも、自分が認めるだけでストンと落ちた
『感情を絵の様に飾って眺めていると痛みは快楽になる
自分が痛みを感じて他人が傷を付けているのを観ると
自分を守ろうと他人の前で痛まないフリをし始める』
他人を守り自分を守る為の仮面
それを付け始めたのは10歳になったころだ
涙を流して落ち込んでいた誕生日
小さな愛犬と二人で笑って決意した頃
『自分を自分で無くして他人と生活をしていると
親にも甘えなくなり他人に迷惑をかける行動を極端に嫌う様になる
他人が笑えば自分も笑う。そこだけ見つめて居れば痛くない。』
けれど、両親が離縁したことが心残りらしく
私はどうしても額縁から離れることができないままで居る
そして医者と都佑のカミングアウトの暗さに都佑は笑い
「別に最期が悪夢だって良いよ」と明るくいう
何故なら”醒めない悪夢は何度も心の中で繰り返されているから”
父も母もこの世界も元の世界も、皆が笑っている
その中にポツンとある2つの白い椅子
花畑の中、隣には前世の10歳の自分が座っている。
そこの隣に腰を掛けてクスクスと笑いあう。
手を伸ばせば両親の手と繋がり
少女は笑って都佑の頬に頬を摺り寄せる
都佑も摺り寄せてやり返すと二人で笑いあう。
そんな世界なんてあり得なくて
その花畑の2つの椅子に座る現実が”醒めない悪夢”
ということは、都佑はまだ知らなかった。
PPP
医者から涙がもう少し溜まるまでと念を押されて
とりあえず日常を過ごしていると
何処からともなく涙が溢れやすくなる。
困ってパ二くる都佑に沖田や土方らは擦らない様に
優しく涙をぬぐってやるとスグに消えてなくなる
笑っている都佑だが涙は顔は正直で
どうか彼女が幸せに笑っていられる場所だけでも作ろうと考える
すると丁度神楽が遊びに来て都佑を連れ出す。
女子会というものに参加するようにと言われたのだ。
勿論土方達はOKして寧ろ連れていってくれと言った。
丁度その日の夜から三日間居なくなるのだ。
それを言っていいのか分からずそのまま三日間別の場所で暮らす都佑