好きで好きで好きで好きだ。

『ああ!しんどい!もう胸がしんどいっ!』

屯所から奇跡の脱出劇をやり遂げた私は
江戸のとある民家の裏手で声をかなり押し殺して
息を整え、状況整理をしていた

『なんなの?しぬの?心臓、苦しい・・』

土方さんを見るだけで心臓がもう飛び跳ねて困っています
どうも皆さんおはこんばんにちはー
江戸の民家裏の一角で深呼吸を繰り返しています
岡本都佑今年できっかけから100歳になりました。
実際は100超えてるけど…

って何とんでもねぇ暴露してるんだろう。
最近の纏めを極端にまとめますと、


『どったんばったん大騒ぎ』

いやもう本当にそれに尽きますありがとうございました。

って違うからね!?終わらないよ!?
まだ次のページもレッツゴーするからね!?
そんな突っ込みをしている暇もない私

今から遡る事3時間前、事件が起きたのです。

+++

『おはようごじゃいま…』

土方「お、おう」

朝っぱらからやらかしている都佑になんとか土方は笑いを堪える
それに沖田も土方に間違えて「土方しね」と取れる様な言い回しに
土方はそっちの方に意識が向き怒り出す

都佑が言葉を噛んで詰まってしまうのはこの日から
本格的に前世の身体になってしまったのだ。
前は少しだーけ時期に合わせて戻っていただけだったのだが
医者も予想以上に速い段階で前世に戻ったなと驚いていた。

と言うのが一番の原因だ
まぁそもそも薄狼の幼体後期最後になる=前世と同じ身体
性格も記憶以外は殆ど前世と同じになってしまうのは自然現象

普通の人間なら自然現象処の騒ぎではないが
狼族柏木からすると「問題ない」話である。

然しそれはあくまでも狼族の一般論
都佑の前世にはこの世界の話にまつわる全て
そう、アニメ漫画「銀魂」が存在していた
上に都佑本人はその「銀魂」ファンであるのだ


もう一度言おう



銀魂ファンなのだ。


ファンである故にどうしてもニヤケが止まらない
憧れの人たちが生で目の前で自分の名前を呼んでくれるなんて
オタクを生きていた前世の自分がどうしても感動以外の何物でもなくて
それを隠す為に脳内が何時もよりも更にフル活動していたが為に
言葉をかみまくっている。

嗚呼言っておくがこれが初めてではないぞ。
因みに朝から三度、既にやらかしている。
一度目は山崎、二度目は近藤、三度目は土方

挨拶をする度に心臓がとんでもない動きをしている
特に土方の前になると顔に熱が集まってくるので
それを隠そうとフードを被っての招集に参加になった

何時もならフード等とってろ。なんて寧ろ脱げと頭の上にある
フードを後ろに思いっきり引っ張ってくるのだが
さすがに今日の動揺にはたじろいでいるのか、
一切そんな事はやらない処か
「体調は大丈夫か?」と心配までしてくる始末


そんな優しさに自分の心臓は高鳴り
顔を隠していないと話も出来ない

前世の上っ面技術を駆使しても
心のときめいた熱は隠し切れない
都佑はアニメの記憶だけは
無かった方が心臓の為にも良かったのに
と、このとき心の底から感じた

近藤「ーーで、この度都佑ちゃんが復帰した処で
隊員から補佐にしようと思うんだが、異議はあるか?」

『待ってそれ私が異議出しますって何ですかそれ!?』


前半の話全く聞いてなかった。ごめん、ゴリラ。
いやゴリラって程の巨体でもない気がするけど…
嗚呼でも江戸からしたら巨体ではあるのだろう。

そんなどうでもいい情報を整理していると近藤さんの隣から
土方さんが、聞いてなかったのか?と首をかしげる

土方「隊員として行動していると如何しても
斬り込みはひっついてくる、柏木さんから話を聞いたんだが
”様子が落ち着けば血を見せるな”って言われてんだ」

血を匂いを知れば夜狼の血が動き敵味方見境なく攻撃する。
過去に薄狼が世界を半壊させた例もある程だ
出来れば真選組自体を辞めた方が良いかもしれない、が。

『現状を変える事はご法度ですからねぇー』

「そのまま養生するって方法は無かったんですか?」

『んな事お前らで決められたら私本当にブチ切れるぞ』

目を細めて敵を見る様に辺りの人間を観てから畳に視線を移した
かつてまだ、人が人で在ったとき、江戸より前の時代に
一度だけ全世界が半壊した記録がこの世界にある。
その半壊させた人は、たった8歳の姿をした幼い少女だった。

『薄狼は代々かなり扱いに難をしていてね?
種族内でも忌み嫌われ幼体前なら即暗殺。
切り殺し塵にして跡形も無い様に…
と決められていたんだけどー』

山崎「ここっ!?殺!?」


かなりの力を持つ薄狼、まぁ逆に言えば
奇跡を起こす事の出来る者…神に近いなんて言われたり
故に崇高されたなんて色んな説が立っている
ぶっちゃけ国を納める人の隣に居る人間ではある。

それを軽く言った都佑に流石の近藤も動揺しているが
別に私はこの場所が気に入っている。

『色々出来るが故に人ではない者
色々を知った上の人間が薄狼を欲しいが故に
戦争を起こし、戦争が嫌いな薄狼が怒り狂い
世界を滅ぼしかけたなんて話は多分実話でしょうし

それが君らの無言一致で私を追い出すなら
私そんな事軽くやってのけちゃうだろうし敵になるし』

山崎「なんかとんでもない事喋っちゃっているけど大丈夫なの!?」

『柏木さんが言う様に血を見れば多分
その少女の様に暴走するのは確かでしょう。
って言っても薄狼は色々手を出せるが故に
条件があるんですけどね!』

例えばつい最近まで武術として使用していた重力操作
これは一つだけ条件があり、その条件が
男女共に握力が両方10以上ある事。たったそれだけ。

勿論術の効果や威力が高くなればなるほど必然的に術の条件は増える
その為にチョーカーがある

「じゃあ、簡単に江戸を滅ぼすことが」

『…勿論成人期に入れば一度に30人近くの人を殺す事は容易い』

そのはっきりと言える現実が余りにも怖い話ではなる
心臓が、心が冷え切る様な冷たさに耐えきれず都佑は
同じく回復も出来る、更に性格上は病気並みに温厚なので
滅多に怒り我を忘れる事は一生にある方が稀なのだ。

念には念を入れて、との言葉がある通り
医者とは色々条件が揃う様な時に暴走しない様にと
制御系のチョーカーを作ったばかりで今日取りに行くのだ

制御系のチョーカーを付ければ増力系及び回復系
全ての薄狼の力を使えない様になる。
簡単に言えば熊がチワワになると思ってくれて構わない。
大きな力を持った奴を小さく寧ろ可愛い程にまでさせる超優れ物

『丁度補佐と位も上がる事ですし
そろそろ君らにも話して置いて損はないだろうし?
近々屯所内の人間全員VS私で
刃物何でも御座れの死合を行おうと思ってましたので』

土方「おいおい、そりゃ聞いてねぇぞ」

『勝てないと薄狼じゃない唯の女ですからね。
勿論君らも男として真選組として本気を出す
まぁ訓練と思っても良いだろうなぁー
…と昨日思い付いた話なので』

近藤「めっちゃ急!?つか勝てると思ってるの!?」

勿論、私を誰だと思ってるのだろうか?

『世界を半壊させる程の力を持つ器がある
と言う事は逆に君らを一網打尽に出来なければ
…近藤さん、私をその場で処刑して欲しい』

「そんな!!」

『じゃあ!』

器が完成しないで成人を迎え
怒り狂って暴走が止まらなくなってみろ
江戸だけでなく今度は世界を滅ぼすかもしれない

そんな事が出来たなら、私は今度こそ私を許さない
2度と己を認めず、憶えている最期迄呪い尽くすだろう
…まぁそんな事になったの話ではあるのだが


土方「逆に言えば器を完成させりゃ生きていいって事だろ?
なら俺達で出来る限りやりゃあいい…それにそろそろ平和過ぎて
たたっ斬れる様な事がありゃ良いとは思っていた。近藤さん」

これは私を前世をこの世界を守る為でもある
まぁかなり大袈裟に盛ってしまったが、間違いは言っていない。
少女があの日どんな事を願って暴走したのかは、私は知らない。
それでも、何故かこの人達には言っておかねばと思った

上に上がれば危険度は寄り増す。
チョーカーの使い方も教えておけば
その人以外外す事は不可能になる事も話し

とりあえず「私が副長補佐になった」ということ
そして「私が薄狼の恐ろしい顔がある」ということを話すと
会議は終了、一同は持ち場に戻ったのだ

+++

終始頬に熱が入っていた私は手で何とか冷やして
薄狼の事を少し考え更けていた

『…あの子は寂しかったのかなぁ』
沖田「さっきの餓鬼が半壊させたって話ですかィ?」
『まぁ、そんな処』

少女は一体何を感じて怒り狂ったのだろうか
少女は気持ちを抑えきれない程何を感じたのだろうか?
答えは何となく自分の中に、ある。

あるからこそ、この答えに触れない様な生き方をしたい。
きっとこれに触れれば彼らを傷つけることにもなる

もしも私の感覚が間違って居なければ
この感情が正解の二文字ならば

一体少女はどんな気持ちを願っていたのだろう


『(こんな気持ち、少女には余りにも重過ぎる)』

目を閉じて少し深呼吸をした


山崎「そういや都佑さん今日ってまさか
…熱、あるんですか?終始真っ赤ですけど」

シリアスに持ち越そうとしていたのだが
反対側から入ってきた山崎に都佑は
素っ頓狂な言葉が脳内に響く

声には出してないが多分顔は驚いた顔を・・・
・・した・・・すまねぇ。慣れねぇ。
羽黒未夜として生きていた頃の方が
まだかっこよくてマシな気がする。

未夜に戻りたいと思う自分が少ししか居ない事に関しては
喜んだ方が良いのか嘆いた方がいいのかわかりゃしないが
とりあえず、副長補佐はなんとかしたい。


え?無理だよ?私生きている心地しなくなるよ?
心臓がもう動揺の二文字で埋め尽くされるよ?


『副長の隣って言うのが、危険度下がるのか
上がるのかわかりゃしなくて…』

故郷に帰る事はもう出来ない場所に来ている為
どうしても仕事に出た方が良くなった自分の身体が忌々しい
医者は血を見せないほうが良いとは言ったらしいが
アレは恐らく何方かと言うとーーー


”味方が自分の所為(せい)で傷付き赤い血を浴びる事を避けろ”


と言う意味合いの方だろうし。

察しのいい私はすぐに医者の言った意味が分かった
にしても近藤さん、なんで近藤さんの傍じゃないのですか…
100歩譲って土方さんの仕事は確かに経験すれば物になるし為にもなる。

そんなこたぁ一日行動を共にすればスグに分かる事だし
昔から何度か為になった事も幾つかあった。

然しそれは昔の、”羽黒未夜”として生きていた頃の話だ。
今は哀しくも”岡本都佑”として生きているし
更に銀魂ファンであり私の一番好きな推しの人は

土方「おい、何ぼけっとしてるんだ
早く見回り行くぞ」

この手首を掴んだ土方十四郎なのだ


ファンであり好きな人として見ていたのもあって
その感情が思いっきり込み上げてきて眉が下がり
顔に熱が高く集まってくるのを感じると


『ぴゃぁああああああ!/////
やっぱり無理ですぅうううう//////!!』
土方「ふぶっ!」

思いっきり腕をジミーのほうに飛ばして
顔面当たった後に土方の腹に風を作り出し飛ばした

なるべく威力は無い様に顔を下に隠して
目を瞑り後ろに歩いていた隊士の方にぶち当たったのを
観た後、熱が下がらないまま

更にそれを見ていた沖田の胸倉を掴み
『あぁああああ無理ぃいい!!////』
と軽く手に重力操作を使い
涙目のまま背負い投げをかました

その後

都佑はそのまま逃走した。


のが、二時間前のお話し。


それから30分かけて屯所から逃げた処で銀さんとばったり会った

銀「おぉー都佑ちゃんじゃねぇか、もう復帰して良いーー」
『ふぁああ銀ちゃんやんかぁああ!////』

照れくささでつい逃げようとしたが
私のパーカーの象徴でもあるフードを掴み
逃げない様に掴まれ、顔を覗いてくる


銀「…おまっ、なんて顔」
『ぴゃぁああああ無理ぃいい////!!』

余りのカッコよさに全身に震えが来て
そのまま火の粉を作り出して腹に投げつけ
離れた直後其処からとんずらする


ごめんなさい。
もう、銀魂主人公の顔の良さを忘れていた。

すっかりきっぱりさっぱり忘れてた
土方さんや銀さんみたいな良くよく考えたら
リアル居ると「うーん」って思うけど
二次元として考えると「其処に居るのすらしんどい」
と言った天と地の差程のときめきが心臓を揺らす


屯所から土方さんloveの私の熱がそう言えば
銀さんもイケメンだったと脳内がアニメを思い出し
速攻昔の熱が再発し、その照れ隠しにと攻撃して逃げる

熱いと言っている銀さんには悪いが私は今逃げている。
もう何処に行っていいか分からないからと走っていると
前から神楽ちゃんと新八君に会う

新八「嗚呼!都佑さん今日はー
『こっち来ないで!!』…え?」

嗚呼なんか誤解産んだ?だいびょうぶ?
いやいや私の脳内が大丈夫じゃないな、噛んでる。
思いっきり噛んでるし顔の熱は下がりそう処か
上がって寧ろ神楽ちゃん可愛すぎて抱きしめたい…

なんて感じていると後ろから少し腹が燃え消えた銀さんと
何で攻撃したのか分からない鬼の副長が猛スピードで走ってきた

それには新八や神楽も真っ青、逆に都佑は真っ赤にして
顔がニヤケそうになり、叫びながらそのまま地面に風を作り
空に飛んでそのまま民家の下に降り、術を使い気配を消して
難を乗り越えて来た、のが数分前




此処で冒頭の叫びを解き放ったのだ。
幸いこの場所から飛んだ場所はかなり距離がある
徒歩で来ようとするならばまだまだ時間がかかるハズだ。


『そそそっそれにしても何であんな…かっこいいの』

土方さん好きだけど!いや断言する!好きです!!
でもそれは一ファンとしての好きだから…ってまぁ
だからこそ私が逃げているんだけど、心臓が張り裂けそうになって
もう気持ちが抑えられないんだけど

『ふぇえ…皆よく考えれば顔整ってるし、イケメンなんだよなぁ。
ときめきなんて思い出さなければ一ミリも感じなかったのにぃいい////』

そう地団太を踏んでもいけない。
とりあえず落ち着けそうな場所をと探していると
思わぬ人に出会った


「あら?都佑ちゃん?」
『おっ!お妙ちゃん!?きゅーちゃんも!!』
九兵衛「一体何事だ?真選組の隊服を着て」
『とと、とりあえずこっちきてぇええ』

そう二人の手を取りそのまま術を使い目を光らせる
足を強く踏ん張った後、勢いよく民家の家に突撃する
勿論二人は都佑を止めようとしたが

サラリと身体が壁を通った視線にお妙と九兵衛は顔を青くする
目の前に視線を変えると目をトパーズ色に変えた都佑が
何かを呟きながらそのままお妙の家の方向に走っていた

++


『はぁ…とりあえず、ひと段落…』
妙「都佑ちゃん、一体何事?
貴方がこんな事するなんて、何か…あら?貴方」

顔の真っ赤な都佑に妙が察したのに
都佑は深くうなずいた
九兵衛は何か全く分かっていないが
妙が大声を上げそうになったのを術で止めた


『声が大きいです!…巻き込んで
すいません、実はその…あの、私!』

土方「岡本ー、俺をそんな舐めるなよぉー…?」

背後からとんでもない殺気が溢れ出す
九兵衛の顔を見ると青ざめており、妙は
銀さん、神楽ちゃんとつい先ほど会った人の名前を呼んだ事に
都佑の背中は寒気を通り越して頭も綺麗に冷える


嗚呼、このまま熱が消えて欲しい。
そのままでそのままの自分で居れば良い
然し後ろを振り返る前に自分は妙の後ろに隠れて
声だけでも心臓がまた高鳴り出す自分に困っていた

おお、バクバク心臓が鳴ってるなってる
良い子だねー今日も元気に生きています。
お父さんお母さん、ちょっと
今、息を引き取りそうになってます。

銀「お妙、お前その後ろの奴出せば何も言わねぇ」
土方「嗚呼、メガネの姉貴、そいつを寄越せ。
行き成り上司の腹にぶち込みやがって…
お仕置きしねぇといけねぇなぁ?」

照れていた顔が今度は恐怖の顔に変わるのを自分でも感じた
声が黒く何時もより低いので、確実に怒っているのは確かだ
いやでもこんな事話したくないと言うか、話せない。

話してはいけない気がする。
それは何処か自分の中で確信を突きそうだ
と言うかそもそも

「映画銀魂観てから土方さんのファンで目も見れません
無理です。好き過ぎてしんどいんです。心臓が。心が。」

…なんて理由で避けてるなんて言えるわけがないし
言っても理由になりそうにないし
ってか何だよってなりそうだし…


そもそも

『…急に、なんか、ごめんなさい』

きっと君らは私を信じてくれない。
だからそっと心の奥に閉じ込める。
あの日の様に。
何時か信じてくれると願いが叶うと
願ったあの夏の暑い日の夜の様に

様に

きっと

きっと

土方「あー…なんで急にあんな事したんだ」

声に出したい、話したい。
本当の事を言って楽になりたい。
この人達に全てを話したい。
なのに

『ちょっと驚いちゃって、自分でも良く
分からないんですけど、もう大丈夫そうなので!』

こんなにも自分を変えられる自分が居る。

他人に隠し切れない事実を隠して
好きだと言えなくて。
たった一言だ、好きなんて本当に一瞬

喉から出てしまえば良いじゃないか
なのにそんな事をしないのは
土方さん達と自分の仲をこれ以上悪くさせない為だろう

その行動は前世でも在った事であり

『(私はそんな一瞬も親でさえ見せなくなったのは
…きっと少女と同じ時期だ)』

8歳の少女は一体どんな気持ちだったんだろう。
きっとこの愛おしい感情を押し殺せずに爆発したのだろうか?
それとも

妙「…都佑ちゃん?どうしたの?」
『え?何が?』
九兵衛「な、涙」


大事にし過ぎて逆に大切な物を
傷付けてしまったのだろうか?
私の様に

今の、私の様に

目を丸くしてポロポロと零れてきた
その眼は色を灯し出す
心が空きそうになる、この切ない感情
叶わない、そんな自分で決めつけるには速い感情

しかし私は知っているのだ
知っているから、涙がこぼれる

『あれっ?なん、でかなぁ?』

答えはもう出ている
全て認めてあげれば良いだけなのに
なのに私は否定してしまう

自分を自分として見てしまえば、それはもう
私(前世の幼子)では亡くなる気がして

『(嗚呼そうか私は否定してようやく
幼子の感情を維持出来ているのか)』

幼い頃の世界が、好きで好きで、堪らなくて。
周りに居る心配してくれる皆が、好きで好きで。
土方さんが、好きで。

好きなんだ。

好きだから、否定してしまうのだ。

今の関係が好きだから、これ以上悪くならない様に
そっと今を維持する為に、否定を繰り返すのだ。

『(嗚呼、なんて事を望んで自然にやっちゃうのかなぁ)』

丸くなり口元に手を当てて九ちゃんの胸に頭を寄せる
九兵衛は幼い頃女として生きさせてくれなかった話を
脳内の記憶が鮮明に過去を見せてくれる

その幼い九兵衛が、まるで幼い己の様に感じて。
胸に頭を擦り付けて深呼吸をすると、涙は直ぐに止まる。
涙の原因は大体理解出来ている。

『ごめん、急に…ちょっと不安定でね?』
九「仕事に復帰はまだ速いんじゃ」
『いいや、もういい加減戻らないと医者に怒られちゃう』

薄狼の後期、審判が目と鼻の先なのだ
そろそろ攻撃を身体に染み付かせないと
この世界を壊さない様に、器を速く完成させたい。

もう未完成のままで居ては許されないのだ。


今もまだ、両親の顔も声も思い出せなくなる。
少女の顔も、殆どぼやけていて、まだ、私は

『(戻れる。なんて馬鹿な感情を抱いている)』


嗚呼、大馬鹿者過ぎて神様も見放したな