瞼の向こう

貴方の瞳に映る者は私では無くて
何故か安心して、何故か胸が苦しくて
私は一体何を思い出せていないの?
私は一体何を心の届かない奥底に落としたの?

「・・・願わくば人が笑って居られますよう」

今日も私は全く違う願いを呟く
過激集団の中に軽く入って軽く捻って帰る
朝方になるからとカツラを被っていて
正解だった

髪の色は今白い雪の様に白く淡い色に変わっている感じがする
髪の色だけでなく心の震えが止まらない

「どうしたんですか羽黒さん!」
「だ、大丈夫」

この震えは人を殺めなれたものからじゃあない
分かっている分かっているからこそ苦しい
嗚呼心臓よ速くこの鼓動を止めてください

「ですけど顔も青い所か白いですよ!
屯所に帰る前に病院行きましょう!?」

そう腕をとられた後力が入らず
そのまま抱きしめられる
嗚呼、あたたかい。この人も生きている

「羽黒さん!羽黒さんしっかりしてください!」
「大声出してどうしや・・・未夜!?
駄目だ意識が朦朧としてやがるぜぃ、山崎!」

この人も、あたたかい、生きているのだ
生きているのに、生きているというのに

なんで?何でと疑問が頭の中を埋め尽くしていく
そのスピードは、早送りをしているカメラ
死骸に群がって行くアリの様な


「な、んで、つめ、たいの」
「え?」

手を伸ばし身体を支えてくれている人は
こんなにも温かいのに
私を観ているだけの貴方は冷たい。

貴方が冷たいなんて私は知りたくもない
私のこの記憶はこの世界の記憶よりも
余りにも平和過ぎて困る

側で笑って居る貴方の生活
妙にリアル過ぎておかしいと思っていたが
まさかこれは自分の過去では無いのか?

朝狼は成人期の準備に前世の記憶を観ると聞いた
嗚呼、それではこの人も生きていた人
笑って温かい笑顔なのに、触るととても冷たいの

「や、だぁ」

貴方の笑顔から涙がこぼれ落ちた
意識を手放した後、
私はこれからどれ程の悪夢に
自身を殺したくなるのか。

この時分かっていたらそのまま消えたのに。


「(嗚呼)」

土方さんとミツバさんの顔が思い浮かぶ
二人の手を取ったあの日
隣にあった鏡に映った人が別人で
焦ったものだけど、よく思い出せば

あの時二人の顔は黒く塗りつぶされていた


一体誰だったのだろう?
私は一体誰の夢を見ているのだろうか?
土方さんら二人の面影を一体




”誰と誰に”心を寄せているのだろうか?









「・・・未夜?」

目を覚ました場所は、病院では無く
自分の部屋の中だった
左手にはお医者様と近藤さん
右手には沖田隊長と土方さんと奥に山崎さんが居た


「・・・此処は」

「おめぇの部屋で、まだ倒れて3時間だぜぃ・・・」

「貧血とストレスの溜まりすぎで
一瞬脳震盪を起こしただけです。」

そうだ、起きたらスマホをつつかないと
今何時かも分か、る

「あれ?スマホ無いなぁ、何でだろ?」

その軽く高い声に動揺もせず
私は聴き慣れない筈の単語に疑問を抱いた



「(今、どんな事を口走った)」

今なんて言ったのか自分でも分からなかった
ふわりとした感覚はとても心地が良く
誰でも仲良くなれそうな、そんな気軽さが見えた

「…やはり」

何がやはりなのだろう?
そもそもこの場所は自分の部屋ではないだろうか?
というか君らが何故そんな青い顔をしているのだろうか?


というか何でそんな怖い顔をしているのだろうか?


顔が引きつる、いや此れは笑って居るのだろう
何故か自分事が他人ごとに感じられる間ふと
先ほど呟いた「スマホ」の意味を頭の中で整理して結論が出た


この時代には元から無かったではないか。


「ーっ」


ゾクリと現実と夢が逆転している事に
自分の脳内に血が引く

すると目の横から白い髪の毛が重力に逆らい下に落ちていく

バサリ、その色は『何色』?


「う、そ」

それは色素が無くなった様な透明に近い色
力の使い過ぎという事を物語っていた

「・・・あ、なんで」

「頭の診察にとカツラは外させてもらいました」

真っ白な腰にも満たす程の髪が見える
顔が青ざめ、スマホをつついていた世界では無いと知る

父の顔が犬の顔が黒く塗られていく
段々濃くなるクレヨンの色を指で拭いたいが
そんな事も出来ないまま時間が過ぎていく

「いやだ」

畳のある部屋もテレビの部屋も玄関先も裏口も
皆みんな、セピア色になり褪せていく

「いやだ」

首を横に振り頭を抱えた
傍に居た医者が動揺を隠しながら私に問いかける

君は誰?此処は何処?
嗚呼、やめてそんな言葉聞きたくない

この記憶にある”現実”を無かった事にしないで欲しい
これは夢?夢と言わせたいだけなのだろう?

ねぇ、そうでしょう?

「元々その髪だったにしては髪色が変化します
噂には聞いていましたがもしや貴方は「言わないでっ!!」」


急に怒鳴った自分の顔はきっと酷いものだろう
それでも倒れた後の冷たさと夢の中にいた
土方さんとミツバさんの顔と黒い二人を想いだす



「やだ・・・ごめん、なさい」

「・・・分かりました。この事は他言無用にします。
また様子がおかしくなればお呼び下さい」

「ありがとうございました」

パタンと閉まった後すぐに涙が溢れこぼれ落ちた
嗚呼よりによってこの人達にバレた

「やだっやだいやだ・・・」

「未夜・・・何があったんでぃ?」


違う何があったんじゃない
”前から教えて無かっただけ”なのだ




















息を整えた後、腹をくくった未夜は静かに話を進めた

「私の種族は狼族です」

山崎「狼族、あの絶滅したっていう幻の!」

土方「知ってんのか山崎」

山崎「治癒の出来る朝狼と
戦闘狂いの夜狼の二つの種族で構成されていて
稀に二つの力を持つ者が居るって噂で」

全く持って何処から仕入れてきたのかわからないが
確かに山崎の言っている事は正確な情報だ

狼族は主に二つ、種族の内訳としては三つの部類がある。



朝狼(ちょうろう)、彼の言った様に
回復をメインとして動く人間だ
髪の色は白いか明るい色をしている為目で確認して問題ない


夜狼(よろう)は攻撃をメインとする”術”を使う
知力を使い隙を見つけて狙う為狼族の名前にもなった
狼が使われているのはこれも一つの由来でもある


「朝狼と夜狼の力を半分持ち、極々稀に産まれる者
その力に恐れをなして、二つの種族は彼らを忌み子と呼ぶ」

朝でもなく夜でもない
昼でもなければ真夜中でもない

春も夏も秋も冬でも必ずその時間に産まれる

それは決定事項、それは揺るぎない物語


「その奇妙な者達を、彼らは薄狼(はくろう)となずけた
…黙っていてすいません、薄狼でましてや女である事は
なるべく人に伝えたく無かったんです」

近藤「はく、ろう?」

「人の年齢はさておき、薄狼としては
まだ成人期処…か、幼体にすら入っていない赤子の状態なので(多分)
回復攻撃その他諸々まだ力が弱いんですがね。
握力もかなり少ないですし」

土方「いやいやいや!なら何時もの腕はなんだよ!!」

そうツッコミを入れる土方に、
剣を受けた事のある沖田や山崎は大きくうなずいた
彼女の何処に握力が少なくか弱い女の話になるのだろうか

そう言った土方の方に起き上がり手を取り一気に力を入れる
急に握って来られた土方もあの握力に殺されるかと片目を瞑ったのだが

土方「…は?お前、俺をおちょくってんのか?」

「術使わなくてコレ(掴んでいる握力)なんです…悪いかコノヤロー」

沖田「土方の力が劣ったせいでぇ」

土方「俺の名前を呼び捨てにすんなつって分かんねぇのか総悟ぉ!!」



少なくともあの日から時間は経ったのに
私の心の奥底には今も尚笑い声が絶えない
少女の暑い夏の日差しに閉じていた目を掠めた