土方「山崎、あれから様子はどうだ?」
山崎「別に問題ないんですけど…
どうしても食堂には行けないらしくて」
都佑が拉致され監禁され犯された(中は未遂)
その日から3日も月日が経過していた
次の日に部屋に入ろうとすると戸を開けただけで
酷く怯え、急遽近藤が訳を言ってお妙と神楽を呼び
二人が中に入るのは少しは警戒しているのだが
それでもマシになった様で、暫く屯所から離れようと
案を出したのは意外にも近藤だったのだが
都佑は全否定し、すぐに体調を整えるからと言った事に
我儘を言うんじゃないと怒鳴ってしまい、それに都佑は
目を丸くして、そのあと笑った
すいません。そう言って笑った顔は、前に見た未夜とそっくりだった
それから都佑はお妙の方に行き部屋から一歩も出ないとの事
なにもする気が起きない、眠い。それ以外は腹を空かせて出るか
トイレや風呂以外には大体布団から出てこないとの情報に
土方は頭を抱えた
近藤が言った事が原因なのか、犯されまがいの事が原因なのか
はたまた彼女が前世でレイプをされていた事が知れたのが原因か
・・恐らく全てが重なって彼女の精神状態が
かなり悪い状態になっているのだろう。
このまま行けば隊から外す事も考えている
近藤に土方は少し考えていた
このような一件があれば必ず制御系のチョーカーを
何処から使ってやらかしてくる輩も来るだろう
もうこの場所には帰っても危険なだけだ。
土方はそう思っていたのだが、どうしても彼女の笑顔が離れない
あの笑った笑顔は何処かで見覚えがある。
寂しそうに「分かった。もうしないよ。」なんて
利口な子供の、まるで”手が届かない物を諦める”様な目が
痛々しくて堪らなかった
引き取った後チャイナから聞いた話であるが
都佑は寧ろ土方らに心配と迷惑をかけてしまった。
強い意志がない前世を持つ今はやはり幸せ処か不幸を呼ぶ。
そう言って涙も流さずに笑っていたらしい
いっその事涙を流して駄々をこねる位なら良いものの
防御が低い時に攻められ、
自分が一番かくして起きたかった物まで全て話しバラされたのだ
涙も引っ込み、周りにこれ以上迷惑や心配をかけまいと必死だったのは
チャイナの口調ですぐに察した
二日目の夜中に山崎が監視兼心配で様子を見に行くと
都佑は月夜に手を伸ばして笑っていた
『どうして私が私で居れば皆不幸になるのかな?
望んで我儘言っちゃうから
こんな感情育てなくて良いって分かってた。
そうだよ私、もう良いの、何も望まない望んでは駄目だよ。』
そういって彼女は自分の首を軽く締めて首を振って笑ったそうだ
”パパとママが離れた様に、私は手を伸ばしては駄目だ”
そう髪の毛をふわりと手で上げて術を使う
さらりと使える術に笑って手を広げて舞っていたそうな
嬉しそうではなく、唯々、寂しそうに。
目を閉じて
耳を塞いで
彼女が幸せになれる場所があると言うのならどうか教えて欲しいものだ
医者に相談すると「方法は二つしかないのぉ」としか言わなかった
死ぬか生きるか
薄狼が外に情報が出回ってしまった今
都佑の精神状態もかなり危うい
下手をすれば世界が崩壊するきっかけを
産む可能性だってあるとの事
然し彼女は自殺ができない
薄狼は自殺願望の強い人間が生まれるので
死ぬ寸前になると回復が行われてしまうのだ
その為儀式として彼女が一番想いを馳せている人間に薄狼の時間
薄暮が見える時に鞘から刀を取り出して殺すしかないとの事
それを三日目の昼に苦痛ではあったが、説明をすると
都佑は即死にたいとは言わなかった
『後戻り出来ない処迄育っちゃったんです
…あんなに死にたいと思ってたのに貴方達の居場所が
余りにも心地よくて生きたいと願っちゃう…それでも私は』
今死なないと、世界を殺しかねない。
そう黒い闇が都佑の地面から舞い上がってきた
闇は地面のみを腐らせてすぐに消えた
その場所だけ水を湿らせても全く草は生えず
彼女が薄狼であり敵にもなりかねないと言う事を目で見て知ってしまった
現状を医者に伝えると彼はもう手遅れだと首を横に振った
狼族の血が流れている医者は行けばすぐに殺される
それだけは理解しており、誰が好きなのかを
そしてなるべく速く殺す様に医者は近藤と土方に話した
死刑宣告であった
その日の内に話して置いたほうが良いと
近藤さんは良い、何気に行きたくない自分が居たが
逃げると同じような気がし、彼女の元に二人で出向いた
部屋にはお妙と心配で来ていた万事屋の三人
そして途中から来ていた沖田に加えて近藤と土方が入った
沖田は近藤の隣に座り近藤は都佑に向かって
悲しい報告をする前に土下座をして謝った
『そんな謝らないで下さい、元々は私が悪いんですから』
近藤「いいやお前さんは悪くない。
真選組にも落ち度があった…それに」
『私は殺されるんでしょう?』
新八「は?都佑さん?何言って」
『薄狼は精神状態が危ういと感情の左右で
意識を失い世界を半壊さえさせた例もある
その前にね?儀式をして死ぬの』
愛する人に殺されてようやく薄狼は死に至れる
何故か嬉しそうに笑って話す都佑に
笑いごとじゃねぇんだぞ、と土方が声を出す
死ぬことに一体何の恐怖があるのか
そうサラリと言った都佑の眼は寂しそうだった
『ほんと、皆のお陰でさぁ?私ね?
大分元に戻っちゃって、結構もがいてたんだよ?
”駄目だよ、そんな感情抱いては”ってさ』
『なのに皆揃いも揃って私を純粋な状態に戻しちゃう。
そうすれば力はそりゃ高まるし良いけど、それは同時に
かなり心が脆くなってしまうの』
『前世の私は望む事を捨てたの。
望めば今の様に誰かを心配させ傷つける。
否定なんてさせないよ、君らの眼でスグに分かる。』
そうゆっくりだが何故か早く聞こえる口調に
土方達は何も言わなかった
銀時「じゃあてめぇは何も言わずに
上の世界の勝手に乗っ取って
はい死にますって心臓を捧げちまうのか!?」
『うん。だって一番好きな人に殺されるんだもの。
私今とっても嬉しくて、うれしいんだよ?
まぁでもその人には悪すぎて申し訳ないんだけどね』
神楽「都佑好きな人いたアルか!・・あ、でも」
自分の所為で傷つけてしまう
嗚呼もしかすると踏み外せばこの世界は
死んだ直後に終わるのでは無いだろうか?
そうなれば私はスグに自分を止めよう。
自分だけが傷ついてしまえば。
新八「何か方法はないんですか、何か!!」
『新八君、甘えた事は言っちゃダメ』
そう目を丸めてほほ笑む都佑に
お妙は「大人の女性なのね」と少し悲しそうに俯いた
『良い?望みは必ずしも叶うとは限らない。
私がどうしてこの感情のまま100年も生きているか
新八君が一番心が壊れそうだから、教えてあげるね?』
新八「なんかさらっと貶された気がするんですけ…」
銀時「・・・・おま、それは」
”手を伸ばしている自分に溺れるの”
そう言って手を伸ばしてあるわけもない場所に手を伸ばしきる
『近くにある、届く場所にある。でも届かない、
嗚呼届くわけがない。其処に欲しいモノは存在もしないのだから』
沖田「っ、」
『なら愛そう己を底の無い世界に足を滑らせ
欲しい世界に目を閉じて要らない声に耳を塞いで
自分だけが居る場所を作りだせば良い』
私はそうやって生きてきた。
『もしも自分で居たければ真似すると良いよ。
したいとも思わないだろうから言ったんだけどね?』
新八「都佑さん、貴方は一体、どれ程の感情を押し殺したんですか?」
『殺してなんか居ないよ?居なかったのよ』
神楽「え?」
求めようとする自分等”元々”居なかった
そう言い聞かせて嬉しそうに笑う都佑に
新八は、其処に居た全員が胸を痛めた
数えきれない程の感情を押し殺した事は確か
彼女は一体何度欲を出し、何度ほしい物が手に入らないと知り
何度諦め、何度現実を受け止め、何度笑ったのだろうか?
愛おしく感じる程に、己に言い聞かせるには
一体何度世界が回った時間を過ごしたのだろうか
『薄狼はこんな感情を持った上で転生するの。
逆に言えばこんな感情持たないと
此処にも居なかったんだけどね』
新八「…すいません」
『楽しいのよ?自分が余りにも愚か過ぎて指さして鼻で笑うの。
傷つけて傷つけて無かった事にまでしても、どうしても私は戻るの。
この現実も、此間も、ずっと、ずっと前も。』
笑えない程に自分が変わらないのだ。
それが薄狼の特徴でもあり、恐ろしさでもある。
人間は変わっていく生き物であり
志は変わらない人が集まり強い力を発揮する。
時間がたてば志が変わるものだっている
然し彼女は変わらないのだ
何年何十年何百年経っても元に戻る
丸い円を描く様に
彼女の感情は最初に戻ってしまう
弱さであり強さでもあるその心こそが純粋無垢
彼女は笑っていた
『さて、医者からは後なんて言われました?』
土方「…なるべく早く殺してやってくれ。
そして好きな人を、教えてやってくれ。と言っていた」
銀時「んだよそれ…死刑宣告じゃねぇか」
土方「俺だって!!んな事聞きたくもなかったんだよ…」
土方達が仮に束になって世界と闘おうが
都佑は悲しみ寂しくなり力は発揮されてしまう
自我が亡くなればもう止まらない
その前に人ひとりが死んでしまえば問題ないと言うのだ
見捨てなければいけないのかと、歯を食いしばる
都佑の布団の上で土方の胸倉を掴んでいた銀時に
布団の中から起き上がって『私ね?』と話し出す
『私好きな人が居るの』
銀時「…お前、何言って」
『前世から見ててね?私も食べたことあるけど
どうしても量は無理でね?嗚呼!この人かっこいいな。
って一目見て素直に思ったの』
煙草を吸っていない土方も銀時と同じく
嬉しそうに笑って話す都佑を見つめた
『そのアニメの主人公はね?銀色の髪でフワフワ天然パーマなの。
木刀を持って色んな人を助けて守っていく江戸のお話し』
沖田「そ、れ…」
『鬼って言われてる人でね?私も見たとき
「ぜってぇ会ったら怖い」って思ったし実際怖かったなぁ
マヨネーズ好き過ぎだろー!って見た通りだったんだよね!』
目を開けて真正面を見る
『そのアニメの名前は、銀魂。』
右隣に居た、胸倉を掴まれていた方を向く
『私が一番好きな人は土方十四郎さんです。
ずっと前から、外の世界から今も好きでした。』
それは彼の心に響く
目を開いて、誰も何も言わなくなる
土方「・・・お、れ?」
『えへへ、隠すの上手かったでしょう。
誰も分からない様に隠してたんです!
…って言っても、私もう死ぬんですけ』
土方「嘘、じゃねぇんだよな?おいおいそんな」
『我此処に誓い命ずる
真選組副長土方十四郎に力を与えん事を』
目は青く光り土方を射抜く
金縛りにでもあったかのようになったが
すぐに身体は動いた
土方「てめぇ今何を!!」
『鞘から薄狼の刀を取れる様にしました。
これで私は何時でも貴方に殺されます。』
土方「・・・・っ、俺ぁ、お前を殺せ、ねぇよ」
『明日の薄暮にて切腹を命じる』
銀時「おい!何を!!」
『何処に逃げても無駄ですよ土方さん
鞘は必ず貴方の傍に行き私の心臓を突き刺してくれる
ご安心下さい!土方さんが死にそうになるなら
記憶は全てなくなりますから!!』
新八「え?記憶?」
『何故あんな大災害が起きたのに皆知らないのかな?
…薄狼はね死ぬ時に夢と錯覚させて君らの記憶から
その出会った薄狼の記憶を消してしまうの。』
近藤「け、消す?」
『最初だけだよ、安心して。皆無かった事に』
なるから。
なんて言う前に私は土方さんにぶん殴られた
布団から飛ばされる程に殴ったということは
かなり苛立っていると見た
土方「なに勝手に進めてんだよ…俺は斬らねぇし殺さねぇ」
『術を掛けたからもう逃れられないよ。
妖刀並の術から逃れる訳…ん?間てマテ待て』
急に都佑が首をかしげた
『いや待てよ?妖刀「村麻紗」、トッシー、気合で変わった、
うっ頭がぁあああ!!そうだぁあああ!バカぁあああ!
この人使えねぇじゃん!そうだ!術不可能じゃん!!あいぇええ!?』
急に暴れだした都佑に土方が殴ったところがおかしかったかと
沖田や銀時がこそこそと話し出す
『そうじゃん!妖刀で抜けた土方だもん!
あっれぇ!私結構マズイ人好きになったなぁ!?
なったよなぁ!私のアホ!術無効者じゃん!』
新八「あのー…なんの話ですか?」
『妖刀みたいな曰く付きの物に勝てる精神力って事は
ある意味術の効果が増量しないと使えないのよ…
半分増量でかろうじてなんとかなったと言う事って
私マジでヤバい人好きになった?は?
あの時銀さんにしろって私ぃいい!って待てよ?
銀さん=土方さんだから駄目じゃね?詰んだな?』
『バカ!バカなの!死ぬの?いや逆だよ!死ねねぇじゃん!!
妖刀並み以上の術かけろ?は?無理だよ?
千年置いて出直せってもんでしょ?無理しんどい好き。』
神楽「なんか最後告白してるネ」
そう真顔で口元を隠しながら言った爆弾発言に
土方は顔を赤らめていく
『私バカだよ!そうです私がバカなんです。
ってボケツッコミ総動員してるバヤいじゃねぇよ!
えーっと妖刀のそうだ!強化系チョーカーぁあ?』
土方「おぉ、こいつの事か?」
『ああああああ!!!チョーカー!私のチョーカー!!
渡せ!それで最大限使って操って殺るから!!!』
土方「てっめ!変換ちげぇだろ!つぅーか飛びついて
くんな!!好きじゃねぇのか!恥じらいは!?」
『岡本都佑、恥じらいなんて物は
5歳の時に道路に捨ててきました。
っつー訳でとっ…むぅ?』
銀時「はいはい、多串君の味方する訳じゃないけど
銀さんだって都佑ちゃんが死ぬ原因になるもんは
出来ればきれいさっぱり無くしたい訳よって事で
総一郎君この子頼むわ」
そう身体を飛ばしたのをさらりと受け止めたあと
「総悟でさぁ旦那」と突っ込む沖田に都佑は
二人が何をしようとするのか脳裏に勘が入る
土方「万事屋と仲良くしろって言ってたのはてめぇだったよなぁ?岡本」
『いやいやいやそんな仲良しこよしは私望んでないですから
離せ!ってか何どさくさ紛れて銀のチョーカーつけてるの!?』
銀時「銀さんの物っていう証拠だよねーそれー
んじゃやりますか」
そう木刀を抜いた銀時と自前の妖刀を抜いた土方
それに青ざめる都佑
土方・銀時「「これで無しだぁああああ!!」」
空中に飛ばした金のチョーカーは二つの刀により
ヒビが入り、そのまま粉々に砕け散ってしまった
勿論それには真っ青のまま都佑は口を開けていた
土方「とりあえずコレでこれ以上
術が使えなく様にはなったか?」
『妖刀でさえ操れないバラガキ好きになった
私がバカだよー知ってるよぉーうう。
薄狼の人言ってたじゃぁーん”妖術系から抜けた
人間には基本の術は使えんから好きになるなよ”
って無理だよじっちゃーん。むりぃー。
私80年前位から好きなんだもーん。むりぃ。
身近に居る人絶対他の奴好きになっても
斬り殺しに来るからぁこの人達ぃ。むりぃ。
ちぬーちにたいーちねぇえええおこおおお』
沖田「軽く落ち込んでやすが、まぁ大丈夫でしょう」
土方「最後の方怒ってるよね?」
くそっ、好いている人でなければ斬れないって
とんでもない情報にしたの一体誰だよ…
なんなんだよ、こんちくしょう・・・・