3Dの2次元に酔う

『いや好きだけどいや好きだけどさぁ////』

土方「いい加減諦めろよ」

次の日の八時頃、土方さんがやってきた。
私は咄嗟に言った発言が夢だと信じたいのだが
聞いた本人と周りがそんな事を言わせない処か

神楽ちゃんは「お似合いアルネ、さっさと子供見せるヨロシ」
なんてさらっと言うし
お妙ちゃんも「お金もあるし顔も良いし良いじゃない」
とか言うし

土方さんも「好きだ」なんて夜に帰る直後言ってたのには
夢だと言い聞かせて寝たんだけど(そりゃもうぐっすりと)

朝から休暇らしく、着流しの状態でお妙ちゃんは
お出かけして今私と土方さんしか家に居ないって言うか
何で妙ちゃん私を置いて出て行ったの?

いやお留守番をと言ったのは私ですけど
土方さん何軽く入ってきてんの?
隣に居るしってか近いので
私が少しずつずらして居ると、察知してか隣に座りなおす

勿論距離を開ける為に座りなおしているので
そう近づかれると頭の中がフワフワ綿菓子になってしまう

両手で頬を触って熱を逃がしながら立ち上がり
近くの柱に少しだけ身体を隠して話す

『私よりもミツハさんどしたんですか!
想い人でしょうしぃ?私は別に…』

遠くから見ているだけでいい。

微笑んで笑って幸せにしている処を
手が届かない距離で手を伸ばしている
自分を好きで居ればそれで良い

彼だって好きな人は突き放す
私だって好きな人は突き放したい
甘い蜜は知ると敵に隙を付かれて死んでしまう

土方「あいつの事は、確かに好いていた…だが
あいつだって亡くなった奴に囚われてると
嫌がるのは目に見えて分かる」

そうだとしても、私は土方さんが好きで。
そうだとしても、私は貴方と付き合えない。

薄狼だから?前世の記憶があるから?
私が私であるから?
嗚呼、全部だ。

私が私であるからだ。


土方「嫌々言っている割には
本当に否定はしねぇんだな?」

『むぅ///ほ、惚れてた弱みです…』

土方「惚れてるの間違いじゃねぇのか?」

ニヤリと笑って覗き込んでくるので
それに驚き目を丸くして顔が赤くなるのを
見せないように今度は部屋の襖に隠れる

片目だけ覗き目が合うと肩を分かりやすく動かせて
頬が赤くなったりならなかったりするのに
見ていて飽きないと笑いを堪えるので土方は精一杯だった

『だって私前世で土方さんの事知ってたし好きだったのは確かですもん
でも今好きかは知らないし!好きだとしても”ファンとして”かもだし!』

土方「じゃあ本当に好きにさせりゃあ望みはあるってことだな?」

『ぴゃっ////!?そそっ///そそんな,
うっ//むぅ////…むー』

無理なんて勿体無い事を分かっている自分が憎いです。
そして土方さんそんなキャラですっけ?あれ?
私が知っている土方さんもっとクールですけど?

それに

『…私パパとママが好きなんです。
まだ居ないとダメなんです、私が私で居ないと
パパは笑わないしママは傍で居てくれないから』

土方さんが好きだ。
それでも私がyesと言えないのは
幼い頃に自分に約束をした言葉がまだ縛っている

”捨てられた時間よ止まれ”

『何時帰ってくるか分からないですから
だからだから』

土方さんが居る場所とは違う場所を振り向いた
何処にも居ないゐないイナイ。
知っている知っていた知りたくなかった
理解している、もう無駄だと。

土方さんがミツバさんを想う様に
私はパパとママを想うのだ
土方さんは私を好きになってくれても
私はパパとママを想うのだ

ずっとずっと想って想って想い続けて
叶わない場所に身体を置くのだ
目を瞑って耳を塞いで何もかも忘れて笑って

誰も私を観ないその日も尚
私はパパとママを愛しているのだ
別に両親の愛情を捨てる訳ではない
どうしても強くなってしまう為
振り切れないだけなのだ


土方「…待つよ、俺ぁ」

『え?』

土方「お前がその、親父さん達とケジメ付けて
こっち振り向いてくれる迄、俺ぁ待つさ」

違うのだ

私は首を横に振る

彼のことが好きだからこそ
私は前を見ないで後ろばかり観る
笑って笑って無邪気に喜ぶ自分が

土に塗れて笑って「楽しい」
そう笑って言えた日が好きで
その隣はパパとママが良いと思っていて

お父さんやお母さん(前世の両親)でも
父上や母上(今世の生みの親)でもない

パパとママ(前世の仲の良かった両親)が好きなのだ

二人に会いたい会って笑って安心させたい
それは多分、私(前世の幼少期)にも言える事で
待ってくれるなんて滅相もない

『私は…きっと怖いんだと、思うんです』

土方「怖い?」

大人になれば二人に会えない
気持ちが育ってしまえば二人に会えない
全て変われば、二人に会えない
心の中でしか、二人に会えない

捨てられた感情は今も私の性格にもなっている程
私は幼く手を伸ばして笑っていた時間が止まっている
もしも時間が進んでしまえば

二人は私を観てくれないかもしれない
二人は私に笑ってくれないかもしれない
二人は私を忘れてしまうかもしれない

まだまだ子供で居たいのだ。

それでも、もう”100年”

『春も夏も秋も冬も朝も昼も夜も
夢も明日も本当は何も要らない。』

二人の傍に居られるのならそれだけで良い。
何も要らない何も望まない。
だからどうか叶って欲しい

幼い私がまだ涙を流している
笑って笑って笑って


土方「…辛い、な」

『ううん、嬉しくなるんですよ?
馬鹿なの、本当に昔から私はバカなの。』

笑って笑って涙を流して笑う
玄関先の私は今も帰りを待っている

『私が玄関先に居ないのは”二人を待ってしまう”から。
望んでしまうんです!帰って来ないのに居る訳も無いのに』

二人は私の眼にも二度と映らない
だって私は別の世界に生まれ変わってしまったから

朝も夜も春も夏も秋も冬も

何処に居ても何処かに行っても

二人は私の前にも私は二人の前にも現れない


二度と


『薄狼はね?一つだけ夢を失うんです。
大きな力を得る為に既定を作った』

それは既にあった事項
変えられる事は出来ない事項

『私パパとママに会えないんです。
会っても幸せに笑わせれない…
そう、願っちゃったから。』

そう笑って振り向くとすぐ傍に土方さんが居た事に気付く
抱き締められているのだと感じたのは土方さんの服の匂いと
声が近かった処だ

土方「…笑えねぇ時は、笑わなくていい」

”思いっきり泣いて良いんだ
悔しくても何でも子供は泣くのが仕事だから”

『っ、ごめっ…ほんとは!!
会いたい!会って話して笑って笑って笑って…』


ねぇ、なんで?
パパはお外ばかり行ってしまうの?

ねぇ、なんで?
ママは私を見てくれないの?

ねぇなんで?
二人は作り笑いで困って頭を撫でてくれるの?

『会い、たいよぉ、やだぁ、やだぁ、わたっ
ただっ、なんでっ』

こんな小さな願いも叶わないのだろう。

そう土方さんの着流しを掴んで胸に頭を押し付ける
すると更に強く抱きしめてくれた
暖かい身体が何時かのパパの様な温かさに涙は止まる術を忘れた


++

土方「…腫れたな」

『あんなに泣きゃしゃーないですよ』

どれ位泣いたのか知らないが、かなりスッキリした。
土方さんには感謝してもしきれない。
すっきりしたから、さようなら。

なんて彼も勿論縦に頷いてくれない


土方「俺じゃ、役不足か?」

『そんな!…寧ろ勿体無いんです。
私なんぞが幸せになっちゃ駄目だって言い聞かせてたから』

卑下する事で何とか維持できていると思っていた
土方さん達は私がそうすると怒って来るので
私は余りこういう話はしない。

『パパもママも仲良く居させられない私が
他人と仲良く居れるなんて望む方が苦しい』

土方「お門違いだろ、んなもん…
一緒にして、溜め込み過ぎなんだよ」

『そんなことないよ、寧ろこんなの序の口だった』

つい昨日言われた新八君の言葉を思い出す

『一体何度斬り捨てたんだろって昨日ふと考えたんです
そしたらね?数え切れなくて、少なくとも幼い頃は押し殺してた』

初めて自分の感情を本当に殺してしまったのは8歳の時だった
瀕死だったのもあり、11には何とか環境により回復はしたが
8歳以前の様な無邪気さは戻らなくなって
逆に9歳位の大人を他人を気遣う胸の痛くなる様な人が定着した

『だから本当に隠したい時は綺麗に閉じ込められる様になった
それが出来た時の虚しさは半端じゃなかったのを覚えてますけどね』

土方「…もう、んな事はねぇ、俺がさせて堪るか」

『あはは、じゃあ私が閉じ込めようとしたら助けて下さいね
私は全力で土方さんから逃げるので』

土方「地獄の果て迄追いかけてやるさ」

嗚呼、そうやって私が喜ぶ様な言葉をくれる。
この世界が夢であれば私は涙を流して嫌だと言うのだろうか?
それとも

『土方さん』

土方「ん?」

『好きです』

目を開いて此方を見た
青い目に私は嬉しくて微笑んだ

土方「…付き合って、くれ、んのか?」

『…不束者(ふつつかもの)ですが、それでも宜しければ』


そう言って私は一歩引いて軽くお辞儀をした
土方は夢じゃねぇかと動揺していたのに対して
都佑は何処か遠くを見て手を振った

自分の後ろに誰か居るのかと土方は振り向いたが
其処には誰も居ない

それでも笑って都佑は手を振った
もう、幸せになっていく。と言って


晴れた秋空の下、俺と都佑の交際が始まった